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『ロスト・バケーション』感想(ネタバレ)…カモメと学ぶ生存フラグのたてかた

ロスト・バケーション

カモメと学ぶ生存フラグのたてかた…映画『ロスト・バケーション』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Shallows
製作国:アメリカ(2016年)
日本公開日:2016年7月23日
監督:ジャウム・コレット=セラ

ロスト・バケーション

ロスト・バケーション

『ロスト・バケーション』あらすじ

医学生のナンシーは、休暇を利用して亡き母が教えてくれた秘密のビーチを訪れる。日が暮れるまでサーフィンを楽しむナンシーを突然サメが襲う。なんとか近くの岩場に逃げ着くも、サメは周囲を執拗に泳ぐ。海岸までの距離はわずか200メートル、時間とともに潮が満ちて足下の岩場が沈もうとしていた…。

『ロスト・バケーション』感想(ネタバレなし)

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やっぱり夏はサメ映画

「サメ映画」というジャンルは今や有名すぎてあらためて語ることもないのですが、サメ映画を見たことのない人に「おすすめは?」と聞かれると結構困っていました。というのも、サメ映画のノリをある程度知っている前提なお約束的流れが確立しています。「サメ映画=B級映画もしくはマニア向け」みたいなイメージを推進するようなぶっ飛んだ世界観の作品や悪趣味に偏った作品も実際多いです。サメ映画を一般に認知させた名作『ジョーズ』(1975年)でさえも、今の若者が見たら、あのBGMのせいもあって、ギャグっぽく見えかねません。

しかし、そんな悩みも解決しました。間違いなく本作『ロスト・バケーション』サメ映画を一度も見たことがない人にもおすすめできる一作です。

古臭いマニアックな要素は一切なく、今の若者が見ても面白いといえる現代的なサメ映画に仕上がっています。若者受けを狙っているのか、映画序盤がCMやイメージビデオのようなおしゃれな映像になっているのも印象的です。とにかく敷居は低いので安心してください。

本作の凄いところはまだあります。本作は初心者向けサメ映画でありながら、これまでのサメ映画にはないオリジナリティもしっかり揃っているのです。

まずなんといっても本作がシチュエーション・スリラーだということ。シチュエーション・スリラーとは舞台となる状況を狭く限定したなかで恐怖が襲ってくる作品をいいます。

普通、サメ映画の舞台は海です。海は本来、広大で自由な空間のため、シチュエーション・スリラーにするにはひと工夫がいります。従来の作品では例えば『ジョーズ』は船の上、『ディープ・ブルー』(1999年)は研究施設のように人為的な要素で舞台設定をしていました。

ところが本作は違います。原題の「The Shallows」の意味するとおり舞台は“浅瀬”です。このひとつの舞台だけで映画一本を描ききっています。このありそうでなかった舞台設定で繰り広げられるサスペンスのアイディアがとにかくワクワクハラハラします。この舞台が本作の肝なので、邦題はそのまま「シャローズ」にしてほしかったくらいです。

そして忘れてはならないのが主役。一般的にサメ映画ではサメハンターとか研究者とかいろいろなポジションの人が登場して、またひとりまたひとりと襲われていくのが定番。しかし、本作の主人公は医学生のナンシーひとり。しかも水着美女です。サメ映画ルールでは水着美女はたいてい真っ先に死んだりするのですが、本作では彼女ひとりなので、当然、死ぬわけにはいきません。彼女ひとりに全ての役柄が集約されています。このシンプルなシチュエーションがサスペンスをいい感じに味付けしています。ちなみに、実は彼女以外に相棒キャラが登場するのですが…それは見てのお楽しみ。

グロな描写よりも痛い描写がたっぷりで、見終わったら絶対にサーフィンはしたくなくなりますが、見ないのはもったいない映画です。この夏、見る映画に迷ったらとりあえず本作を見ましょう。

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『ロスト・バケーション』予告動画

映画 『ロスト・バケーション』 予告2
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ロスト・バケーション』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):そのビーチは秘密の場所

砂浜でサッカーボールで遊んでいたひとりの少年。波打ち際に見慣れないヘルメットのようなものが流れついているのを発見します。それにはヘッドカメラが装着されており、楽しそうにサーフィンしている映像が再生されます。しかし、何やら様子がおかしく、水中に映っていたのは、大きな口をあけた巨大なサメ…。

医学生のナンシーはかつてが訪れた秘密のビーチにひとりでやってきました。それは森の奥地にあり、現地の人であるカルロスに車で案内してもらいます。友人は飲みすぎてダウンしているのでホテルに置いてきました。

到着です。そこは見渡す限りの綺麗な砂浜。人はほとんどいません。思わず笑みがこぼれます。最高の環境です。ここが母の思い出の地なのか…。

あの遠くに見える島は妊娠している女の人みたいな形だと語りますが、カルロスはそうは見えないと否定。「どうやって帰るつもりだ?」と聞くと「Uber」と答えるナンシー。

「ビーチの名前はなんだっけ?」とナンシーは尋ねますが、なぜかカルロスは頑なに答えようとしませんでした。

ナンシーは水着に着替え、サーフボードを取り出し、準備をします。

そして海へ。水に浮かび、波のもとへ向かいます。手際よく波を回避し、どんどんと沖合へ。

すでにサーフィンを楽しんでいた2人の男が話しかけてきます。でもスペイン語なのでよくわかりません。「ビーチの名前は?危険なものはある?」と質問すると、岩礁があって日に数時間だけ顔を出すこと、火傷サンゴにも注意するように教えてくれます

ナンシーはサーフィンを始めます。大波を見事に乗りこなし、たっぷりとエンジョイ。充実した時間はあっという間に過ぎていきました。

少し休憩し、妹のクロエとビデオ通話。メキシコの波は最高だと感動を伝えます。するとが顔を出し、医学校を中退しないでくれと小言を言ってきます。「救えない病人もいる」と弱気を言うと「ママのことか」と父。帰ってこいと頼まれますが、切ってしまいます。ナンシーもここにいつまでいるつもりかは整理できていません。

再び波に戻るナンシー。不安でざわめく自分の心を落ち着かせます。

日が暮れるのも近い時間になったので、2人組の男は砂浜に戻っていきました。ナンシーは最後の1本を泳ぐつもりで残ります。

そのとき、水中で何かの気配を感じます。

そして壮絶なバケーションを味わうことに…。

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自然は敵であり、道具であり、友達である

『ロスト・バケーション』はとにかく自然(野生生物)の使い方が上手く、フル活用しています。サメ映画だとたいていサメ以外の自然や生物は背景や環境映像にすぎなかったりするので、こういうふうに重要視してくれるのは生き物好きの私としてはとても嬉しい。主役のサメの見せ方ももちろん良かったですが、サメ以外の動物も印象に残るサメ映画は珍しいのではないでしょうか。

最初にクジラの死体をどーんと見せるインパクト絶大な導入はお見事。ここから序盤のおしゃれなバカンスは終わりをつげ、地獄が始まることを示す前兆として、これ以上ないアイテムです。

人間とサメ双方にとって危険なサンゴやクラゲを登場させたりと、安易に人間vs自然の構図にしないのも現実的で気に入りました。あと、イルカやカニの「大変そうですね」的な他人感もいいです。

そして、一番は主人公と同じく負傷するカモメ。『FAKE』の猫と並んで、今年の助演動物賞の最有力候補です(勝手に作った)。さすがに主人公の独り芝居では間が持たないゆえの配置なのでしょうが、これまた単なる動物ではなく相棒に近いキャラの扱いといえます。

ちなみにこのカモメ、ナンシーに「Steven Seagull」というあだ名をつけられていました(たぶん字幕では反映されてなかった)。これは俳優「Steven Segal(スティーブン・セガール)」が元ネタ。どうりで頼もしい奴だったわけですよ。

そんな自然や野生生物と対比させるように、21世紀の今を代表する最先端のガジェットも上手くミックスしていました。ナンシーはスマホアプリのSNSやUberなどを当たり前に使う現代っ子なわけで、そんな現代の若者が自然の恐ろしさを知る話でありつつ、決して現代(もしくは若者)を冷笑するような狙いは本作にはありません。ナンシーはウェアラブルカメラを駆使して最終的に発見されるわけですし。本作は前述した安易に人間vs自然の構図にしないというのも合わせて、社会的メッセージが大きく目立たないつくりだからこそ、構えず気軽に見れる良い映画になっています。

不満もなくはないです。一番の不満点はサメの倒し方。あれだとサメがさすがに馬鹿っぽいです。あの油で火だるまにする方法で良かったんじゃないかと思います。なんなら、クジラごと炎上させてもいいのではとも思わなくもない…。少なくとも人工物(照明弾)と何かの自然物を組み合わせて利用して勝ってほしかった。

ほか細かいツッコミをするなら、クジラの死体にすぐ気づかないのはなぜ?とか、獣医じゃないんだからカモメは診れないだろうとか、あの酔っ払いおやじの登場が唐突すぎるとか(最初死体なのかと思ってしまった)、まあ、多少ありますが、全体的に良かったので気にならなかったです。

それにしても、子どものときにサメ映画を見てなくて本当に良かった…。確実に海に行けなくなります。

『ロスト・バケーション』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 78% Audience 59%
IMDb
6.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 8/10 ★★★★★★★★

以上、『ロスト・バケーション』の感想でした。