サメより怖いものが襲ってくる!?…映画『海底47m』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。
製作国:イギリス(2016年)
日本公開日:2017年8月12日
監督:ヨハネス・ロバーツ
かいていよんじゅうななめーとる
『海底47m』物語 簡単紹介
『海底47m』感想(ネタバレなし)
短いようで遠い「47m」の恐怖
夏真っ盛り。夏の映画といえば…サメ映画ですね。夏休みシーズンはブロックバスター大作やら配給会社一押しの邦画やらがひしめき合っている映画館ですが、そんな列強の中で今年もしっかりサメ映画が公開されています。
去年の夏のサメ映画は『ロスト・バケーション』でした。この映画は、人に知られていない隠れた秘境のビーチを訪れてサーフィンを楽しんでいた女子医学生が突然サメに襲われ、海にポツンとあった近くの岩場に逃げ着き、潮の満ち引きで海面に沈みつつある岩場から巨大サメが泳ぐ海を泳いで脱出しようとするシチュエーション・スリラー。常に持続するスリルと、いかに危機を脱出するかという知能&体力戦が楽しかった作品です。
そして、今年の夏に公開されるサメ映画『海底47m』もまたシチュエーション・スリラーとなっています。
舞台は『ロスト・バケーション』の“海面の岩場”とは真逆。タイトルのとおり“水深47mの海底”です。檻に入って水中の生き物を観察する「ケイジダイビング」を楽しんでいた女性二人が、檻ごと海底に落下して…さあどうする?的な絶対絶命な状況に陥ります。
ダイビング経験が全くない私なのでイマイチ実感がないですが、全くの素人でも最大水深12mまでなら体験ダイビングという形でインストラクターとともに潜れるそうで、通常のレジャーダイビングだと最大でも40mが水深のギリギリらしいです。つまり、水深47mは絶妙なヤバさのシチュエーションなんですね。
本作は低予算映画ではありますが、『シャークネード4(フォース)』や『PLANET OF THE SHARKS 鮫の惑星』のようなB級お笑いサメ映画とは違う、リアルで緊迫感溢れる真面目なサメ映画なので、そこは期待していいでしょう。
主人公姉妹のうちリサを演じるのは『塔の上のラプンツェル』で声優を務めた“マンディ・ムーア”。歌手活動がメインな彼女が、なぜ抜擢されたのだろう…。とにかく、おおいにパニクってくれます。
では、海底47mへいってらっしゃい。
『海底47m』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):見るだけ?
プールではしゃぐ女性2人。「いいお尻ね」なんて軽口も飛び出す気楽な雰囲気です。「私を旅行に誘ってくれてありがとう」「女同士のほうが楽しい」と満喫していました。ケイトとリサは休暇でメキシコを訪れています。
しかし、その夜、リサはひとり泣いており、ケイトにステュが仕事に来なかった理由を白状します。仕事ではなく、フラれたのだ、と。人生でたったひとつの幸せを失ったとショックを隠せないリサ。
出かけようと励ますケイト。夜中の1時ですが踊り飲み、嫌な気持ちを吹き飛ばします。海で朝を迎えるなんてサイコー!
そこで出会った地元の男たちにケージ・ダイビングについての話を聞きます。リサは泳げないから不安そうです。しかし、男は「水深は5mくらいで、動物園の逆パターンみたいなものだから大丈夫」と安全を保障します。「退屈な女にはサメの写真は撮れないでしょ」とケイトに言われ、リサは乗ることに。リサはその男のひとりとキスをして、過去を吹っ切れそうなポジティブさになっていました。
翌朝、サメの看板を見てリサは不安がまたぶりかえしてきます。あの男の人たちもよく知らないし、アクティビティはホテルを通せって言われていたし、ステュだって気を付けろって言ってたし…。それでもケイトはステュはクズだからと頑な。
船長のテイラーは「ダイビングの経験はある?」と聞き、「ええ」と即答する2人。
沖合寄りの船までボートに移動。そこにあったのはわりとボロそうなケージ。クレーンで取り付けてあり、ギシギシいってます。さらに船は沖合に移動します。周りには何もありません。
到着早々、血生臭い餌を撒き始めます。海に赤い色が広がります。ケイトもどことなく不安になってきました。
しばらく待つ一同。サメの背びれが見えてきました。巨大なサメにテンションがあがります。一方でリサは気持ち悪くなり「できそうにない」と弱っていました。それでも懇願するケイトに根負けして、折れることに。
まず男2人がケージの中に。6m近いサメがケージの間近に近づいているのが上からも見れます。中の男たちは盛り上がっているようです。
次はケイトとリサの番。ダイビングスーツを身につけ、準備をします。タンクには200気圧のエアがあって「100になったら知らせる、50になったら引き上げる」と説明を受けます。呼吸が速いとエアの減りも速くなるからリラックスだと言われます。
男たちが戻ってきて、いよいよケイトとリサがケージに。ケージが水面下まで沈み、ケイトが先に入ります。続いてリサです。
海中の中はアッと驚くような美しさでした。魚たちが優雅に泳ぎ、青い世界が全方向に広がっています。興奮してワクワクする2人。不安は吹き飛んでいました。
写真を撮りあっているとカメラを落としてしまいます。そこで出現したのはサメです。巨大な体格に圧倒される2人。もう1匹います。
するとガツンとケージに衝撃が。ウインチの問題だと船長。「引き上げて」とリサ。「私はずっといたい」とケイト。しかし、急にケージはどんどん落下してしまい…。
一気に真っ逆さま。絶叫。
ドン。海底に鈍い音とともに着地。ワイヤーは外れ、孤立。
今いるのは海底47m。地獄の始まりです。
軽い言動の奴は死ぬ(運命)
不満だらけな現実から逃げるためメキシコで休暇を満喫していたリサとケイトの姉妹二人は、現地で知り合った男とイイ感じになり、テンションMAX。このへんの音楽がジャンジャンかかるパートは、『ロスト・バケーション』の序盤を連想しますね。ただ、『ロスト・バケーション』との違いは、主人公たちがチャラチャラしているということ。サメ映画を見慣れた人ならご承知のとおり、サメ映画において「バカな奴」「軽い言動の奴」はたいてい死にます。もうこの時点で彼女たちに降り注ぐ不幸が決定づけられてます。
ただ、すでに序盤から示されているリサとケイトの性格の違いがこの後の展開に影響してきて、本作の面白い部分になってきます。いざケイジダイビングからの地獄への落下。奮闘むなしく、巨大ホホジロザメによって真っ先に命を狩られたのは、良くも悪くも行動力があったケイトでした。
まあ、これは大方の人の予想どおりだと思いますが、この後、ケイジダイビングを嫌がっていた慎重派のリサに起こる悲劇が…。
サメだと思った? 残念でした!
まさかの幻覚オチですよ。
檻に足を挟まれたリサ。そこへケイトからの通信が。ケイトが生きていることに力が湧いたリサは、BCD(浮力調整装置)を使って檻の下敷きになった足をなんとか解放。ケイトのもとへ泳いで彼女を抱えながら、フレアを駆使して巨大ホホジロザメがうじゃうじゃいる海を泳ぎ飛ばし、無事に海面へ。サメに足を噛まれるも、船に到着。
これ、全部、ボンベの窒素による幻覚でした。リサは相変わらず、檻に足を挟まれたまま…。
いや、劇中でその“幻覚”要素を使う不穏感は確かに匂わせていましたが、こんな大事な場面で思いっきり使ってくるとは。“夢でした”オチはどうしても使うとストーリーがチープになってしまう諸刃の刃なのですが、本作はなかなか大胆な使い方をしてきました。
ただ、私の個人的感想としては、本作のこの大胆さによって、シチュエーション・スリラーの肝である「どうやって脱出するのか?」という観客の関心事をぶん投げちゃったのは残念でした。結論は「救助チームが助けに行くから、じっとしていろ」ってことになりますからね。あの救助チームがサメに襲われないのもご都合主義感がありますし…。
もちろん、そこが主人公の精神的追い込まれ方を最大に表現していて良いんだよ!という評価も理解できますが。それなら、思い切ってバット・エンディングにしてもいいのかも…。
魅力的な映像(幻覚)
苦言多めになってしまいましたが、本作には魅力的なシーンもあって、後半、フレアを使うと複数のサメがふっと映像に映し出される場面とかは怖かったです。でも、幻覚なんですけど…。あと、海面に上がった後、サメの目をえぐって格闘するとは思わなかった。でも、これも幻覚なんですけど…。
やっぱり、良いシーンが幻覚なのはなんかテンション下がるなぁ…。
まあ、次作「海底48m」で、リサが復讐として本物のサメ・ファイトを披露してくれればOKです(そんな続編の予定はありません)。ちなみに、ホホジロザメは水深680mくらいは潜れるらしいですよ!(無茶な期待)
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 54% Audience 36%
IMDb
5.6 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 5/10 ★★★★★
関連作品紹介
続編の感想記事です。
・『海底47m 古代マヤの死の迷宮』
作品ポスター・画像 ©GAGA Corporation. All Rights Reserved.
以上、『海底47m』の感想でした。
47 Meters Down (2016) [Japanese Review] 『海底47m』考察・評価レビュー