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『アンビュランス』感想(ネタバレ)…たぶんマイケル・ベイなりに救急隊員を讃えている

アンビュランス

たぶんマイケル・ベイなりに救急隊員を讃えている(ただし爆発する)…映画『アンビュランス』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Ambulance
製作国:アメリカ(2022年)
日本公開日:2022年3月25日
監督:マイケル・ベイ

アンビュランス

あんびゅらんす
アンビュランス

『アンビュランス』あらすじ

アフガニスタンからの帰還兵であるウィルは、出産直後の妻が病に侵され、その治療には莫大な費用がかかるが保険金も降りない。国への貢献も何の意味もなかった。なんとかして治療費を工面しようと、血のつながらない兄のダニーに助けを求めるウィル。犯罪に手を染めるダニーが提案したのは、3200万円ドルもの大金を強奪する銀行強盗だった。計画通りに事が運べばよかったが、狂いが生じて2人は警察に追われ…。

『アンビュランス』感想(ネタバレなし)

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救急車でカーチェイスして爆発します!

英語で「パトカー」は「police car」、「消防車」は「fire truck」です。だったら「救急車」はきっと「メディカルなんとか」とか「ホスピタルなんとか」とか「エマージェンシーなんとか」になるに違いない!…そう考えるのも無理はないって思うじゃないですか。少なくとも英語力の浅い私は昔はそう純粋に想像してその心の中の正当を信じ切っていましたよ。

まさか英語で救急車を「ambulance」と呼ぶとは…。

なんだよ、アンビュランスって!と毒づきたい気分ですが、そもそもどういう語源の単語なのか。何でもこの単語はもともとは「歩き回る、巡回する」という意味があるらしいです。救急車って別に歩き回ったりしないよね?と疑問に思うでしょうけど、これは原点にあるのが大戦時の衛生兵なんですね。あの『ハクソー・リッジ』でも描かれていた、戦場をひたすらに歩き回って応急処置をして負傷した兵士を運んでいく、あれです。馬車を使った救急車は南北戦争のときにすでにあったようです。自動車が普及し始めた1920年代から中期にかけて私たちの知る救急車が一般化しました。今は救急ヘリもありますね。

そんな救急車ですけど常に私たちを助けてくれる存在ですが、コロナ禍以降はその頼もしさを痛感することはさらに増えました。救急隊員の疲労はとても大きかったと思います。厳戒態勢の感染対策で患者の可能性がある人を扱い、搬送する病院が見つからず、何時間も集中しないといけない…。激務の連続。コロナ禍を切り抜けられたのは間違いなく救急隊員の皆さんの誠実な仕事のおかげです。本当にありがとうございます。

今回紹介する映画もきっとその救急車で職務にあたる救急隊員へのリスペクトが捧げられた作品なんだと思いますよ。ただ、ちょっと爆発するんですよね…。

それが本作『アンビュランス』です。

本作は銀行強盗が発生した現場に急行した警官が負傷、その救護のために1台の救急車が真っ先に駆け付けたはいいのですが、運悪く強盗犯と鉢合わせ。そのまま救急車がハイジャックされてしまい、病院に負傷者を運ぶどころではなくなり、追跡する警官車両と派手にカーチェイスをしていくという、アクションサスペンス映画です。救急車側としては最低最悪のシチュエーション。救急車ってカーチェイス向きの車だったかな…。

その『アンビュランス』を手がける監督がご存じ破壊王の“マイケル・ベイ”『トランスフォーマー』シリーズのようなエンタメから、『13時間 ベンガジの秘密の兵士』のような戦争映画まで、ジャンルはアクション中心に豪快に撮るのが特徴ですが、唯一無二の得意技は「爆発」。もう爆発系の能力者なのかというくらいには爆発させまくります。加えてカーチェイスをするのが定番であり、今作『アンビュランス』はその主体となる車が救急車という…。それでいて爆発もボンボン起きますからね。“マイケル・ベイ”監督にできないことはないな…。

本作『アンビュランス』は2005年のデンマーク映画『25ミニッツ』のリメイクだそうですが、完全に“マイケル・ベイ”色に染まりまくっているのは言うまでもありません。たいていの人がイメージする“マイケル・ベイ”監督作どおりの品質です。というかそうじゃなかったことがない監督なんですけどね。“マイケル・ベイ”自身も元の映画を観ていないと言い切っていますから。

一応、本作はコロナ禍の最中に作られ、“マイケル・ベイ”監督もコンパクトに作れる内容のものを提案したらしいですけど、そのわりには相変わらずドカンドカンと吹き飛んでいましたよ。確かに救急車の中だけで展開されるシーンもあるにはあるけど、結局はカーチェイスしていることには変わりないからね…。

そのぶん『アンビュランス』の俳優陣はメインキャラクターは比較的少人数な方です。ひとり目の主人公は“ジェイク・ジレンホール”(ジェイク・ギレンホール)。今回もよく怒鳴って喚いて絶叫する彼が見れます。酸欠にならないのかな…。2人目の主人公が、『キャンディマン』や『マトリックス レザレクションズ』の“ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世”。作中の扱いとしては“ジェイク・ジレンホール”に振り回される男です。

そして真の主人公にして今作の最大の苦労人、それが救急隊員(救急救命士)を演じる“エイザ・ゴンザレス”。なお、“マイケル・ベイ”監督はこれまでやたらとセクシーに女性を魅せることを多用しがちで、過去作ではその女優に性的な嫌がらせをしていたのではと女性蔑視で批判されてもいましたが、今回の『アンビュランス』では“エイザ・ゴンザレス”は一切セクシャルなオブジェクティフィケーション化されていません。さすがに反省しているのかな。その代わりものすっごく巻き込まれ損な日を送る救急隊員だけど…。

たぶん“マイケル・ベイ”監督なりにこのコロナ禍のヒーローである救急隊員を讃えているんじゃないかなと思いますが、映画を観終わった後に心に残るのは爆発だけかもしれません…。

オススメ度のチェック

ひとり3.5:監督作品が好きなら
友人3.5:派手なカーチェイスが見たいなら
恋人3.5:ロマンス要素は薄め
キッズ3.0:やや上映時間が長いけど
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『アンビュランス』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『アンビュランス』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):救急車を乗っ取る!

ウィリアム(ウィル)・シャープは立派な勲章をいくつも獲得しているくらいには軍での功績を持っていました。しかし、退役して以降、その戦果などは何の役にも立ちません。生活は決してラクではありませんでした。

しかも、今、23万ドルがどうしても必要になっていました。妻のエイミーの手術のためです。幼い子もおり、家族の未来がかかった瀬戸際。けれどもどこに電話しても公的な支援は無し。焦るばかりで無力感だけが募ります。

一方の別の場所。救急隊員として働いているキャム・トンプソンは救急車で現場に駆けつけていました。酷い車両事故です。腹部を貫通負傷している子どもを落ち着かせ、すぐに病院へ搬送。大丈夫と母親をなだめ、的確に仕事をこなします。これが彼女の毎日でした。

その頃、後がなくなったウィルは最後の手段として、ある場所へ向かいます。そこにいたのはダニーという男。ハグして再会を喜ぶ2人。実は養子で出会った兄弟なのです。子ども時代の思い出を懐かしみます。

しかし、今のダニーにはもうひとつの顔もありました。それは犯罪。豪快に犯罪を実行して大金を得ており、実際の生活はかなり裕福です。ウィルはダニーからおカネを借りることを考えていました。ところがダニーは思わぬ提案をしてきます。3200万ドルを狙った銀行強盗に参加しないか、と。しかも、今からです。そこまでの大金は別に欲しくないし、そもそも危険な犯罪。急な話に心の準備はできませんが、ウィルは押し切られ、同行することにしてしまいます。

黒いバンでダニーとウィルは仲間と一緒に銀行へ。ウィリアムは緊張の中、やるしかないと覚悟を決めます。そしてまだ静かな銀行を手際よく制圧。

その銀行にひとりの警官ザックが立ち入ります。すぐに何かおかしいと怪しむ警官。建物内に足を踏み入れ、ダニーが銀行関係者のふりで対応。隙を見て背後から銃を突きつけ、ザックを人質に。

しかし、トラブルは連発。バンは故障してしまい、警察が接近。そこからロサンゼルス市警察(LAPD)のSISという特殊部隊に包囲され、一瞬にして銃撃戦が勃発

ダニーとウィルは警官ザックを人質に駐車場へまわりますが、揉み合いになり、ウィルは警官をはずみで撃ってしまいます。重傷となった警官に慌てる2人。外の強盗仲間はどんどんやられていき、警官を置いて2人は外に出るも警官に包囲され、中へ引っ込みます。

重傷の警官ザックのもとに別の警官が駆け付け、救急車を呼びます。キャムは到着し、警官を乗せて救急車を出発させます。しかし、そこに現れたのがダニーとウィル。すぐにダニーは救急車を乗っ取る手段をとり、ウィルが運転することに。

出入り口で警官に囲まれるも、ウィルは誤魔化して、通過できます。しかし、運転手だった救命士のひとりの遺体を発見し、すぐにハイジャックされたと警察側も把握。大規模な追跡体制で、ヘリコプターも配備。

救急車を追いかけるとんでもない1日が始まります。

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手術シーンはギャグです

『アンビュランス』は簡単に言えばよくあるカーチェイスものであり、追いかけられる側と追いかける側がいる普通の構図。ジャンルを変える斬新さのようなものはないです。

ただ冒頭から異様にハイな感じがします。ウィルという主人公のあの状況は、まだわかる。退役軍人の社会的支援の浅さは問題になっていますからね。

そこからダニーという男(養子ゆえに異人種兄弟ですがそこはわりとどうでもいい)が登場するのですが、この“ジェイク・ジレンホール”の演じる男のキャラ付けが登場した瞬間にぶっとんでいるのがわかる。なんというかカネを稼ぎすぎて倫理観のネジが欠落しているような、「こいつと真面目な会話はできそうにないな」というヤバさがある。ほんと、こういう役をやらせたら“ジェイク・ジレンホール”はいつも楽しそうです。

「今から銀行強盗しようぜ!」というそんな「カラオケいこうぜ!」みたいなノリで言われても困る誘いを平然としてくるのですけど、こうなるともうウィルは従うしかない(いや、断ってもいいと思うけど)。

そしてあれよあれよという前に救急車ハイジャックです。この観客にツッコミをいれる時間さえ与えない急展開っぷりはさすがの“マイケル・ベイ”監督。

救急車を警察が通しちゃうのはびっくりですけどね。どう考えてもウィルは挙動不審だったと思うんだけど…。

ここで本作のあえて言えば新鮮さ。救急車でカーチェイスしつつ、中には応急処置をするという、なんだそれなミッション。あげくにはビデオ通話でリモート指示をもらいながらの手術を決行しないといけなくなりますから。あれは“マイケル・ベイ”監督的にはギャグ・シーンのつもりなのかな(覚醒してしまうくだりとか完全にコメディ)。

その間も救急車は爆走。救急車ってその車体から言ってもどう考えてもカーチェイスで速度を出せない車両だと思うのですが、そんなことは知りません。というか本作の追う側である警察、妙に手際が悪かったな…。

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トランスフォーマーと戦う気なの?

『アンビュランス』の映像面は飽きないと言えば飽きない、一定のエンターテインメントを常に間隔を開けすぎずにぶっこんでくれるので刺激はありました。

やたらとぐるんぐるん流れるように回しながら撮るカメラワークは今作はとくに激しいですし(でも苦手な人はかなり酔うと思う)、ほぼそのカメラワークだけで臨場感を誤魔化していると言えばそう思わなくもないレベル。おそらく今作はコロナ禍での撮影なので、そんなにスタッフを配置していないでしょうし、キャラクター数も多く一か所に集められない。最低限度の制作現場のパワーでできる“マイケル・ベイ”監督の盛り付けだったんだと思います。

爆発は相変わらずの「トランスフォーマー」級の大規模な爆炎でしたけどね。あれ、さすがに爆発が巨大すぎてもはや何がどうなってああ爆発するのかさっぱり意味不明で、完全にリアリティとかないのですけど、“マイケル・ベイ”監督は花火職人みたいなものですからね…。爆発を芸術として捉えているので、その意味では今作の爆発は100点でした。

まさかミニガン車両がでてくるとは思わなかったけど…。あれが登場したとき、私はこのまま改造車両同士の大バトルでも展開されるのかとヒヤヒヤしましたよ…。あれはもう「トランスフォーマー」と戦うときの武器じゃないですか…警察に使っちゃダメだよ…。

『アンビュランス』の物語の最大の欠点は、このカーチェイスが膠着状態でどん詰まることは最初から目に見えているので、観客はそのもう推察がついているゴールに向かって突き進む車をただ眺めているという、そんな130分以上を過ごす…ということですかね。

今作の苦労人であるキャムのことを考えると、壮大な兄弟のどうしようもない友情構築ごっこに付き合わされただけな感じもして、可哀想でしかないという気持ちがラストは残るんですけども、あれで良かったのかな…。キャム、なんかあのまま仕事に颯爽と復帰していくノリでしたが、職をクビとかにならないのかな…。アメリカの救命士は日本と違って民間じゃなかったかな…雇用も不安定そうだけど…。

ウィルも警官のザックに最後は庇われるという感じでしたが、冷静に考えてもウィルももっとしっかりしないとダメだし責任はありすぎるだろうと思わなくも…。

もし“ジェイク・ジレンホール”が兄弟で強盗に誘われたとしても、絶対にその提案には乗らないようにしよう…それだけはこの映画で教訓として得たものです。そういうことで納得しておこう。

『アンビュランス』
ROTTEN TOMATOES
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IMDb
6.5 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
5.0
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関連作品紹介

マイケル・ベイ監督の映画の感想記事です。

・『6アンダーグラウンド』

・『トランスフォーマー 最後の騎士王』

・『13時間 ベンガジの秘密の兵士』

作品ポスター・画像 (C)2022 Universal Studios. All Rights Reserved.

以上、『アンビュランス』の感想でした。

Ambulance (2022) [Japanese Review] 『アンビュランス』考察・評価レビュー