え? 映像化の権利?…映画『俺たちのアナコンダ』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2025年)
日本公開日:2026年4月3日
監督:トム・ゴーミカン
おれたちのあなこんだ

『俺たちのアナコンダ』物語 簡単紹介
『俺たちのアナコンダ』感想(ネタバレなし)
アナコンダ、再撮!
1900年代半ばあたりまで、自然ドキュメンタリーと言えば、それこそ当時のアカデミー賞で長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した『猛獣境ゴロンゴロ』(1960年)のように、未開の大自然に撮影クルーが冒険感覚で挑み、その秘境っぷりを映像で撮ることに主眼が置かれていました。確かに自然や動物を撮る技術は当時はあまり進歩しておらず、こうした自然ドキュメンタリーが撮影技術の飛躍の格好のアピールの場でもありました。
とは言え、多少の学術的な内容は担保していても、その構成自体は「西欧人が非文明的な地をエキゾチックかつセンセーショナルに撮る」という植民地主義的な視点があからさまにありました。
昔のアカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画賞受賞作の他の自然ドキュメンタリーをみても、『白い荒野』(1958年)や『大自然の闘争 驚異の昆虫世界』(1971年)のように、現代の視座からはどう考えても科学的にかけ離れているものが多々ありますし…。
そんな自然ドキュメンタリー史を知ってか知らずか、自然ドキュメンタリー撮影班がアマゾンのジャングルで巨大アナコンダに襲われるという荒唐無稽な映画が1997年に作られました。その名もずばり『アナコンダ』です。
この映画、アニマルパニック…というか、ほとんどモンスター映画なのですけど、たぶん製作者は真面目にシリアスに作ったつもりだったのでしょう。
でもあまりに馬鹿々々しい内容だったので当時から「つまらなさ」が逆にネタとしてウケて、いつの間にかカルト映画化しました。シリーズ化していき、中国版も含めるとすでに6作になるほど。
で、今回、2025年にハリウッドでリブートされました。
それが本作『俺たちのアナコンダ』。
原題は「Anaconda」なのですが、邦題はこのノリで合っているので大丈夫です。本作はあの1997年の『アナコンダ』が大好きな大人たちが自分たちでアマゾンでリブートを撮ろうとして、巨大アナコンダに襲われる…という、ハチャメチャにメタな物語だからです。『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』と同類のおバカ・コメディです。
監督を務めるのが、あのアホに突っ走ったメタすぎる『マッシブ・タレント』を手がけた“トム・ゴーミカン”だと聞けば、まあ、納得はできますが…。

主演は、『マインクラフト ザ・ムービー』の“ジャック・ブラック”と『アントマン』の“ポール・ラッド”の2人。もうあまりにもいつもどおりの“ジャック・ブラック”と“ポール・ラッド”であり、他に言うことはないです。お察しのままのマヌケな騒ぎを起こしまくってくれます。
共演は、ドラマ『チャド・パワーズ 人生コンバート大作戦』の“スティーヴ・ザーン”、ドラマ『ウエストワールド』の“タンディウェ・ニュートン”(タンディ・ニュートン)、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』の“ダニエラ・メルシオール”、『アイム・スティル・ヒア』の“セルトン・メロ”など。“セルトン・メロ”なんて『アイム・スティル・ヒア』ですごくシリアスな演技を観たばかりなのに、雲泥の差だよ…。
さっきも言ったように、1997年の『アナコンダ』のセルフパロディ的なメタな映画なので、元映画を必ず観ろとは言いませんが、元映画に出演していた主要キャストくらいは事前に調べておくといいと思います。映画の中身は「巨大アナコンダに襲われる」というただそれだけなので、理解も何もない単純さなのでね…。
『俺たちのアナコンダ』を観る前のQ&A
鑑賞の案内チェック
| 基本 | — |
| キッズ | 人が死ぬ描写はありますが、子どもでも観れる内容です。 |
『俺たちのアナコンダ』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(序盤)
とある小さな結婚式向けの映像スタジオ。そこで働くダグは、自分の考案した結婚式用の映像を絵コンテつきで熱弁していました。ホラーが好きということもあって、ハリウッド映画風のスリルあるものを作り込むつもりでした。脳内で構図もバッチリです。しかし、誰もそんなのを求めていません。
一方、俳優のグリフは気合を入れながらメイクをしていましたが、仕事は医療ドラマのささやかな出番しかない医師の役です。そのうえ、熱の入りすぎた演技はことごとく監督に嫌われ、クビになってしまいます。このままでは一生、こじんまりとしたテレビ俳優どまり…映画にもでたいのに…。
ソニー・ピクチャーズ・スタジオのスタジオセットをとぼとぼ歩くグリフは『アナコンダ』のポスターを見かけます。1997年のカルト・クラシックです。ジェニファー・ロペス、アイス・キューブ、ジョン・ヴォイトなどが総出演し、アマゾンの密林で巨大アナコンダに襲われながらも展開される人間模様。酷評する人もいましたが、その魅力は知る人ぞ知る…。
ダグはケニーやクレアといった昔からの友人たちに囲まれ、誕生日パーティーを祝われていました。もちろん大親友のグリフもいます。
子ども時代に作った映画をみんなで鑑賞。あの頃は楽しかったです。自分は素晴らしい映画を撮る未来がこれから待っていると思っていました。
翌日も4人で昔話に花が咲きます。話題は『アナコンダ』の話です。セリフも覚えているほど、4人のお気に入りの映画でした。
すると、おもむろにグリフは自分が『アナコンダ』の権利を持っていると口にします。ひょんなことから貰ったというのです。そして、「4人でインディーズでリメイクしよう」と持ち掛けます。
しかし、ダグだけは参加を即決できません。ここで今の仕事を放りだすと家族に迷惑をかけてしまう…。ほどほどの人生に満足を見出さないと…。もう子どもではないのだから…。それを聞いてグリフは寂しそうに去ります。
けれども、ダグは家に帰ってもモヤモヤ。やはりこんな退屈な仕事でいいわけがない…。思い立って夜中にグリフの家に駆けこみ、『アナコンダ』をリブートしようと決意を告げます。
こうして、かつての情熱を再燃させたダグは脚本を書きだします。オリジナルを超える名作にしなければ…。予算は現実的に考えればたいしてないです。でも可能性は無限大。
出来上がった脚本を3人は傑作だと絶賛。アルコール依存をなおも引きずるケニーは自分が撮影したいと張り切ます。
そしてついに4人は意気揚々とアマゾンへ飛び立ちました。機内でアナコンダの生態もバッチリ調べました。もう完璧です。現地では蛇に手慣れているカルロス・サンティアゴが大きい蛇を用意していました。
そこにボートレンタル業者の娘だと名乗るアナという女性も加わり、いざ船を出発。
ここからは自分たちの夢が実現する始まりの一歩。そう思っていました…。

ここから『俺たちのアナコンダ』のネタバレありの感想本文です。
アナコンダ? それよりヘッドバットが…
最初に言っておきますけど、元映画である1997年の『アナコンダ』も、2025年の本作『俺たちのアナコンダ』も、アナコンダ自体は本当にどうでもいい扱いです。別にメインの登場人物たちは蛇には関心がなく、その動物に魅せられているわけでもありません。ただ、とんでもないモンスターとして現れて、ギャーギャー騒ぎになるだけです。
アニマルパニックものって、どうしてその生き物が存在して、襲ってくるのかというバックグラウンドが曲がりなりにも用意されていて説明されたりするものですが、このフランチャイズはあまりそのことに関心がありません(多少の設定があったりしたことはありましたが)。アナコンダはアナコンダでいいんです。他は考えていません。
ただ、今回の『俺たちのアナコンダ』は「さすがにそれじゃああれかな」と思ったのか、一応の要員として蛇解説担当のカルロスが同行します。彼がものすっごく熱心に蛇についてうんちくを語るのですけども、専門家というよりは胡散臭い観光の客引きみたいなもので、作中で終始浮いています。そして、コイツもバカです。
はい、そうです。この映画で大事なこと。それはみんなバカであること。今回はかつてないほどに底が抜けた“おバカ映画”になっていました。
でも、今作でちょうどいい匙加減に行きついたのではないでしょうか。むしろこの振り切ったバカさがずっとこのフランチャイズに求められていたんです。
だって今さら自然ドキュメンタリー撮影班の人間模様なんて描いて何になるのか? 真面目に環境問題をテーマにするような柄じゃないし…。巨大な亀がでてくる『ガメラ』だったら環境問題を扱うに相応しいのに、巨大な蛇がでてくる本作だとダメなのはなぜなんだろうか…。
今作『俺たちのアナコンダ』のメインの4人…ダグ、グリフ、ケニー、クレアは、いい年した大人たちですがバカです。
あのヘッドバットだけで大盛り上がりするトークの場面は、コイツらのバカさが最も滲んでいるでしょう。もうあんなにバカなら、人生の鬱屈とか感じてないんじゃないだろうか…。全部ヘッドバットの話題でストレス吹き飛ばせるよ…。
後半も緊張感はゼロで(人が死んでいるのだけど)、あれだけヤバい状況下で展開する、排尿恐怖症のケニーのおしっこ騒動も、実にくだらないです(社会不安障害をネタにしているけど、最後は円満に解決してるし、OKですかね)。
極めつけは怒涛のごとく始まる、ダグの遺体を囮に使う作戦。不謹慎すぎるだろというアホさに、さらに上乗せして実は生きていたダグの大混乱逃走。おまけに頭に乗っけたイノシシも生きているというギャグの三段重ねで、こんなのアナコンダだって爆笑するよ…。“ジャック・ブラック”だから許されるギャグでした。
違法なリブートは許さないけど…
『俺たちのアナコンダ』にて“トム・ゴーミカン”監督の得意分野が炸裂するのがハリウッド風刺で、配給のソニーがこの脚本アイディアを許可してくれたのは、懐の大きさと考えていいのかな。
1997年の『アナコンダ』の映像化の権利があると勝手に主張し、自分たちだけでリブートを撮り始めた奴らの物語ですから。肝心の本家のソニーの正規フランチャイズ続編制作班もちゃっかり登場し、巨大アナコンダに壊滅させられているし…。
それでもオタクの夢を叶えさせてくれる物語ではあります。「白人のジョーダン・ピールになれるぞ」と自画自賛するダグたちに、ささやかな自己満足が沸き上がったならそれで良し。
無論、本当にダグらみたいなことをしたら、ソニーからの差し止め命令では片付かず、いろいろな権利侵害の賠償責任で、ダグたちの人生がますます終わるとは思うのだけど…。
でもこの映画がどこかほっこりするのは、すでに「AIで映画を作ろう!」みたいなことを言いまくる人たちが湧いている中、ちゃんと自分たちで映画を手作りする喜びに向き合ってくれているからなのかもしれません。現地で撮って、演技に悩んで、脚本を何度も手直しして、ときに予期せぬトラブルに見舞われる…それこそ映画製作の醍醐味。これを省略するAIなんて、映画の一番面白いところをカットするのと同じです。
そうやって作られた映画が傑作になることを保証するわけじゃないし、この『俺たちのアナコンダ』みたいにほぼ中身の無い作品になることもあるけど、作る過程は面白かったなら結果オーライじゃないですか(そういうことにしよう。だって楽しいんだもん)。
『俺たちのアナコンダ』の終盤は、1997年のオリジナルに花束を渡しに行く、とてもハリウッドらしい(こちらもおバカな)サービス満載で、とりあえずファンに満腹感を与えてくれます。
“アイス・キューブ”は『ウォー・オブ・ザ・ワールド』の後遺症が私にはまだ残っているので、これは『アナコンダ』なのか、それともあのSFの世界なのか、頭の中では混乱してしまったけども…。
あえて厳しいことを言うなら、“ジェニファー・ロペス”はあんな中身のダグたちの非正規リブート映画を好みはしないだろうな…。言わされている感がある…。
『俺たちのアナコンダ』の次は、ソニーはどんな映画オタクの夢を「自社の著作権」を強調しつつ描くのだろうか…。
シネマンドレイクの個人的評価
–(未評価)
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)
以上、『俺たちのアナコンダ』の感想でした。
作品ポスター・画像 (C)Sony Pictures 俺たちアナコンダ
Anaconda (2025) [Japanese Review] 『俺たちのアナコンダ』考察・評価レビュー
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