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『ヒルシェンの雄鹿』感想(ネタバレ)…シカシカ詐欺にご注意を!

ヒルシェンの雄鹿

シカシカ詐欺にご注意を!…映画『ヒルシェンの雄鹿』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Hirschen
製作国:ドイツ(2014年)
日本では劇場未公開:2015年にNetflixで配信
監督:ジョージ・インシ
ヒルシェンの雄鹿

ひるしぇんのおじか
ヒルシェンの雄鹿

『ヒルシェンの雄鹿』物語 簡単紹介

自然溢れる山あいに位置するヒルシェンという名前の小さな村は、人口も減っていき、外から訪れる人もおらず、村民の誰もが将来を心配していた。このままでは過疎化でこの村は消滅しかねない。そんなとき、車でシカを轢いて怪我をした男を助けたヒルシェンの住人たちは、困窮している村の経済を立て直す奇抜なアイディアを思いつく。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『ヒルシェンの雄鹿』の感想です。

『ヒルシェンの雄鹿』感想(ネタバレなし)

シカさん、ありがとう

田舎の道路を車で走っていると野生動物が飛び出してきて危ない目に遭ったという人も少なくないと思います。そんな日本の道路で交通事故を引き起こしうる野生動物で最大級のものは「シカ」です。とくに北海道に生息するエゾシカは体格が非常に大きいため、車で衝突すれば車は大ダメージを免れません。北海道警察の報告によれば、2016年に北海道ではエゾシカが関係する交通事故が1936件も発生したそうです。北海道を観光する際は注意して運転しましょう。

シカとの交通事故は困ったものですが、それを地域振興に利用するという逆転?の発想を思いついた村を舞台にしたヘンテコな映画があります。

それが本作『ヒルシェンの雄鹿』

まず、以下の本作の予告動画を見てください。

…どうですか、意味がわからないでしょう?

全く映画の内容が伝わってきません。というか、伝える気が感じられません。もう意味不明です。
今までいろいろな映画の予告動画を見てきましたが、ここまで珍妙な映画の予告動画はなかったですね…。
しかも、肝心の映画作品についても、日本の大手の映画データベースサイトにも載ってなくて、調べるのに少し苦労しました。

本作は“ジョージ・インシ”という俳優でもある人物が監督した、ドイツのインディペンデント映画らしく、そのとおり自主制作感たっぷりの映像となっています。コメディなのですけど、シュール系です(まあ、これは予告動画で察しが付くと思いますが)。

あと、作品の舞台が変わってるのですが、これは「ネタバレあり感想」で後述します。

とりあえず言えることは「シカさん、ありがとう」ですね。はい、以上です(投げやり)。

“ヘンな映画”マニアは、観ておくリストに加えてもいいのではないでしょうか。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『ヒルシェンの雄鹿』感想(ネタバレあり)

チロル地方

『ヒルシェンの雄鹿』の舞台となっている村、とても綺麗なところでした。

この場所は「チロル地方」です。

ヨーロッパのアルプス山脈東部の地域で、歴史的な事情により、今はオーストリアとイタリアに分割されていますが、元はひとつの地方でした。現在の区分はオーストリアの北チロルと東チロル、イタリアの南チロルとトレンティーノとなっています。

チロルと聞いて思い浮かぶお菓子があるでしょう。「チロルチョコ」です。このチロルはチロル地方に由来しているようです。確かに緑豊かな山脈の間に立ち並ぶ、ちょこんと小さい色鮮やかな家々はチロルチョコっぽいですね。

『ヒルシェンの雄鹿』は撮影の舞台がチロル地方である以外にも、出演している俳優がこの地方出身ですし、チロル地方の民族音楽も耳に残りまくるくらい使われていました

観光地にもなるほど美しい景観を持つチロル地方なのですが、本作で主人公たちが暮らす村は、ずいぶん“残念”で…。なんだろう、観光地の現実と苦労が垣間見られる作品でしたね…。

シカにお任せ!

住人がどんどんいなくなって活気を失っていく「ヒルシェン」の村。どんなに景観が綺麗でも人がいなければ意味はありません。そんな平凡で退屈なこの村に、ある日、車で通りかかってシカと衝突した男性が運びこまれてきます。

意識が混濁し、記憶もおぼろげな男性でしたが、それでも一人が村に来るだけで経済的には助かることに気づく村人たち。そして、ピコーン!と頭をよぎった計画を実行に移します。

干し草を道路わきの森にいそいそと設置し、別の場所でシカの着ぐるみ(二人合体)を着用して演技練習に汗を流し、車の走る道路へ飛び出しを試みる一同。無理だと諦めかけると、2台の車が事故った!

これによって、村の修理工場にも仕事が入り、売店にも人が来て、宿にも泊まり、軽食屋もオープン。ウハウハじゃないですか。

味をしめた村民は、この手でいこう!とシカ(着ぐるみ)飛び出しを継続。事故、事故、事故…で、若干の負傷をした人がたくさん町を訪れるようになり、村に活気が戻ります。

しかし、保険会社の人が来てこのあたりで不可解な事故が多発していることを指摘。もうこの手は使えないと落ち込みますが、最後の切り札は村に研究所を建てることでした。でも、それもクラーエンという別の地域で工事が始まると、担当の博士に言われ、村民がっかり。

ところが、村に研究所業者が間違って来てしまい、しかも慌てた博士の乗る車が飛び出してきたシカ(本物)のせいで川に転落。なんだかんだでリピーターも来そうな予感で、村の人は笑顔で終わりました。最後のシカのドヤ顔のような雄姿が印象的でした。

とまあ、こんなストーリーの作品だったわけですけど、うん、長い! 2時間もあって、このゆっくりペース。でも、これが田舎なのかもしれない。ダラダラと家で観るならこんなのでもいい…かな。まあ、最後のメイキングで楽しそうだったので良しです。

皆さんはシカに車でぶつかったら素直に警察に連絡してくださいね。

『ヒルシェンの雄鹿』
ROTTEN TOMATOES
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IMDb
?.? / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 4/10 ★★★★

©Netflix ヒルシェン雄鹿

以上、『ヒルシェンの雄鹿』の感想でした。

Hirschen (2014) [Japanese Review] 『ヒルシェンの雄鹿』考察・評価レビュー