もしくは壊す方法…映画『マインクラフト ザ・ムービー』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2025年)
日本公開日:2025年4月25日
監督:ジャレッド・ヘス
まいんくらふとざむーびー
『マインクラフト ザ・ムービー』物語 簡単紹介
『マインクラフト ザ・ムービー』感想(ネタバレなし)
この作品は映画業界を壊したのか?
企画の報道があったときから、「これは良くも悪くも話題になるだろうな」と容易に直感できた映画がついに劇場公開され、案の定、良くも悪くも話題になりました。
それは何かって…『マインクラフト ザ・ムービー』のことです。
ゲームの映画化が今や大盛況の時代、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が2023年にゲームのアニメ映画化でトップを飾ったばかりですが、ゲームの実写映画化でトップを飾るならきっとこの『マインクラフト ザ・ムービー』だろうと思っていました。
本作はタイトルのとおり、『Minecraft(マインクラフト)』というゲームを実写映画とした作品です。日本でも「マイクラ」の略称で、子どもから大人まで幅広く親しまれている、今、世界で最も有名な人気ゲームのひとつです。
一応、「マインクラフト」を一切知らない人のためにゼロから簡単に説明すると、本作は広大な広い世界を冒険・探索するタイプのゲームなのですが、明確なストーリーがなく、ゲームをする人(プレイヤー)が自分で目標を設定し、高度な創造性を提供するゲームプレイ要素を備えています。こういうゲームを「サンドボックス・ゲーム」と呼びます。
「マインクラフト」の場合は、世界の全てが四角い立体のブロック(ボクセル)で自動生成され、プレイヤーはキャラクターを操作して、そのブロックを自由に壊し、さらには組み直して設置することができます。つまり、ブロック遊びのように創造力しだいで好きなものが作れます。小さな家でも、大きな城でも、村でも、大都会でも…。作るのはそれなりに根気がいりますけども、可能性は無限大です。
そのうえ、敵が襲ってきたりと、サバイバル要素もあったり、いろいろな動物がいてそれを資源にしたり、本当に豊富な選択肢があり、プレイヤーに全てが託されることになります。
この圧倒的な創作の自由度と比較的親しみやすいデザインも相まって、スウェーデンの企業「Mojang Studios」が2011年に開発した「マインクラフト」はロングヒットを続け、子ども向けの学校教材に活用されたりもしています。
そんなある意味では最も現実からは遠いと言える…簡素化された仕組みとデザインを持つゲームを実写化するというのは、正直、「どうやるの?」と誰しも困惑するものです。
そして予告動画が公開されるとたちまちそのシュールな絵面が話題騒然となりました。CGIでリアルに作られたキャラの気持ち悪さといったネガティブな反応もあったわけですが、でもとりあえずの注目度の高さなのは間違いありませんでした。
こうして劇場公開を迎え、映画は表向きは特大ヒットしました。
しかし、こうやって振り返ると、本作『マインクラフト ザ・ムービー』のヒットの背景は、「いかにヘンテコな映像を見られるか」という期待(もしくは怖いものみたさな関心)によるところが大きいなとあらためて感じますね。これも映画の面白さの一部だと言い切っていいのかあれですけど…。
その世間の本作に対する反応を象徴する出来事が劇場公開時期に起きて、それはVFX未完成版の本編動画が流出した事件です(Kotaku)。完成していないものとは言え、制作上の映画の全編が海賊版というかたちで流出するのはなかなか珍しい事例なのですが、それ以上にその流出した動画への大衆の反応が印象的でした。
実写の俳優が未完成の荒いCGIの背景やキャラを相手に演技している姿があまりに可笑しさを漂わせており、そのクリップのSNSでバズりました。
やはり多くの人はこの『マインクラフト ザ・ムービー』に最高級の映像表現や極上の物語よりも、気軽にウケれる映像の一発ネタを求めているんだな、と。
また、海外では映画内の特定のミーム的なシーンが流れた際に劇場で絶叫したりと迷惑行為をする事件も発生し、この映画の性質がさらに悪い流れを刺激している感じもみてとれます。
映画はネットでバズってこそだ!という考え方は今の映画業界ではどんどん主流になりつつありましたが、この『マインクラフト ザ・ムービー』は完全にその極端な振り切りをみせた映画だと思います。それは同時に映画は長尺の宣伝コンテンツであり、ゲームなどの商品を売るという大目標を達成することが優先されるという、商業的思考を固定化することにもなるわけで…。
なので『マインクラフト ザ・ムービー』は批評家から低評価を受けがちですが、作品自体よりもこういう業界の体質の方向性全体を根本的に危惧する声もあって、それは私も警戒感を抱くところではあります。
『マインクラフト ザ・ムービー』の誕生と成功は映画界そのものを本当に変えてしまう初動になるのかもしれません。それは創造か、破壊か…。「良くも悪くも」なんて言葉で誤魔化すことはいつまで可能なのか…。
何はともあれ、気になる人はどうぞ鑑賞してみてください。
『マインクラフト ザ・ムービー』を観る前のQ&A
鑑賞の案内チェック
基本 | — |
キッズ | 子どもでも観れます。 |
『マインクラフト ザ・ムービー』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(前半)
スティーブは子どもの頃から採掘に興味があり、やる気はじゅうぶんでしたが、当然ながら採掘場は危険なので子どもが来ていい場所ではなく、あっけなく追い返されるだけでした。
そして大人になった今…採掘とは全然関係ない仕事をしていました。こんなことをしたかったわけじゃない…。今度こそ採掘をしよう。そう思い立ち、あの採掘場へ単身で足を踏み入れます。大興奮でツルハシを振りまくっていると、不思議な青白く光る四角いアイテムを発見。
すると全く別の世界へ辿り着きました。その世界は全てが四角。ヒツジなどの生き物までどこか角ばっています。しかも自由にその四角を組み合わせ、家を自由に作ることもでき、スティーブは楽しみまくります。やりたいことが何でもできる。人生は一瞬にして輝きました。
デニスと名づけたオオカミも飼い犬同然に仲間にして、新しく開いたポータルでもっと不気味な世界へ行ってみます。そこはネザーと呼ばれ、ピグリンという豚みたいな二足歩行の種族が闊歩していました。
スティーブはその支配者に投獄されてしまい、なんとかオオカミにあの鍵となるキューブのアイテムを任せ、現実世界のベッドの下に隠させることにします。
ところかわって、1980年代のビデオゲームのチャンピオンだったという過去の栄光に囚われたままにオッサンになってしまった元人気ゲーマーのギャレットは、経営するビデオゲーム店は傾き始め、倉庫オークションで売れそうなものをゲットできるチャンスに賭けます。しかし、お宝はなく、ガッカリするだけ。
一方、少年ヘンリーとその姉のナタリーは母の死後に引っ越しをして人生を再スタート。不動産業者のドーンが紹介してくれた家でぎこちなく暮らしに馴染もうとします。その家の近所にはギャレットのビデオゲーム店がありました。
発明好きのヘンリーは学校でヘマをしてしまい、それがきっかけでギャレットがオークションで手に入れた荷物の中に変なキューブがあるのに気づきます。
それが大冒険の始まりになるとは知らずに…。
マイクラ、実写でやってみた

ここから『マインクラフト ザ・ムービー』のネタバレありの感想本文です。
私が映画館で観たのは…完成版…だったんだよね?
内心ではそんなことも思った『マインクラフト ザ・ムービー』。
映画開幕の最初の10分からして凄まじい情報量でしたよ。「待て、落ち着け」と一時停止したくなるレベル。主人公のスティーブが「マインクラフト」の世界に迷い込んでそこで馴染んでいく姿、そしてゲームおなじみの要素を超ハイテンポ&ハイテンションで映し出します。
私は「マインクラフト」をプレイしたことがあるから、だいたいついていけていたけど、これ、ゲーム未見の人は理解できるのかな?
一応、言っておくけど、こんな高速のテンポ感でプレイすることを要求されるゲームではないですからね。映画だと2倍速みたいになってましたけど…。
前半に現実社会パートが挟まれ、そこだけは少し落ち着きますが、マイクラ世界にギャレット、ヘンリー、ナタリー、ドーンが飛び込むと、もうまたもや超ハイテンポ&ハイテンションに突入し、そこからラストまで一気に駆け抜けます。
ほんと、怒涛のごとく、アイテムやキャラクターをだしまくるんですよ。
『マインクラフト ザ・ムービー』を監督したのは、カルト映画と語り継がれる『ナポレオン・ダイナマイト』の“ジャレッド・ヘス”で、確かにどことなく2000年前後のコメディのタッチがあって、作家性もでてはいたのですけども、それにしたってそれと「マインクラフト」を合わせるとこうもなってしまうのか、と。徹頭徹尾おふざけに振り切るバカ映画でいくというのも全然OKなんですが、このクオリティか…なんて…。
で、調べてみたら本作は制作の段階で、人気YouTuberにもアドバイスを求めて作ったそうなのです。それを聞いてなんだか合点がいきました。
本作、各シーンがYouTuberが作りそうなコンテンツのノリなんですよ。「マイクラの○○を実写で再現してみた」の企画映像集を上映しているような感じといいましょうか。
「初めての家を作ってみた」「オオカミを骨で手懐けてみた」「ネザーに行ってみた」「村で村人と触れ合ってみた」「レッドストーン回路で鶏肉製造装置を作ってみた」「作業台で何か作ってみた」「ダイヤ装備を揃えてみた」「エリトラで空を飛んでみた」「水バケツ着地してみた」「パワードレールでトロッコを爆走させてみた」「チキンジョッキーと戦ってみた」「エンダーマンと目を合わせてみた」…他にもいろいろ。
「マインクラフト」をプレイしたことがない人は上記の羅列が何を言っているのか半分以上はさっぱりだと思いますけど…。
実質は実写のパロディ動画の詰め合わせで、それで「これは映画です」と成立させてしまっているのを観ると、何とも言えない気分になる…。
おバカ映画じゃない創作もできたはず
『マインクラフト ザ・ムービー』は7割くらいはCGアニメーション映画ですけども、マイクラ世界に違和感たっぷりに異世界転生スタイルで降り立つ人間勢は、その存在感をどう成り立たせるかで明暗が分かれた感じでした。
“ジャック・ブラック”と“ジェイソン・モモア”が一番馴染んでいるのは見てのとおり。2人が同一画面内にいるとそれだけでとにかく絵がうるさいです。
“ジャック・ブラック”に関しては、なんでしょうね…“ジャック・ブラック”だった…。そうとしか言いようがない…。
“ジャック・ブラック”演じるスティーブは、映画ではものの10分未満しか描かれていませんけど、要するにあのマイクラ世界での熟練プレイヤーになっているんですね(エリトラを複数所持していることからもわかるように攻略し尽しているのでしょう)。それを“ジャック・ブラック”は勢いだけで表現し、かつ自己流のパフォーマンスを交えているので、やっぱりエンターテイナーだなって感心もしました。
“ジェイソン・モモア”はこちらも定番のピンク・スタイルで、マイクラ世界との相性の良さがあります。このゲームのアイコンになっている敵キャラであるクリーパーをああやって倒してくれるのは“ジェイソン・モモア”だけです。
この2人に完全に押されて、残りのヘンリーを演じた“セバスチャン・ユージーン・ハンセン”、ナタリーを演じた“エマ・マイヤーズ”、ドーンを演じた“ダニエル・ブルックス”は、若干影が薄くなってましたが…。“ダニエル・ブルックス”なんてもっと潜在性のある俳優だと思いますけどね。
しかし、“ジェニファー・クーリッジ”という隠し玉がいるとは想定外でした。あのロマンスだけでスピンオフを描いてほしいくらいにはもっと見たかったですよ…。
全体的に『マインクラフト ザ・ムービー』で私が一番残念に思ったのは、パロディ動画すぎるという根本的な部分はさておき、元のゲームにあった「創作性」に対する敬意が、かなり幼稚なテンションで片づけられてしまったところです。
ピグリン軍隊をゴーレムたちで迎え撃ちます!とかそういうことじゃなく、もっと創作が人間の心にどう作用するのか(良い作用も悪い作用もあるでしょう)を丁寧にじっくり向き合ってほしかったな、と。『ニッツ・アイランド 非人間のレポート』とか『イベリン 彼が生きた証』とか、ゲームとリアルの人間との関係性を誠実に映し出したドキュメンタリーがあるわけですし、「マインクラフト」だってそんな人間ドラマがいくらでもあるはずで…。
あらためてゲーム原作じゃないけど創作性という共通点のある『LEGO ムービー』はふざけつつもそこにしっかり忘れていなかったんだなとその良さを実感しましたよ。
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)
作品ポスター・画像 (C)2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
以上、『マインクラフト ザ・ムービー』の感想でした。
A Minecraft Movie (2025) [Japanese Review] 『マインクラフト ザ・ムービー』考察・評価レビュー
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