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ドラマ『バリー Barry』感想(ネタバレ)…次のシーズンも演技を続けますか?

バリー

ビル・ヘイダー主演の高評価作…ドラマシリーズ『バリー』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Barry
製作国:アメリカ(2018年~)
シーズン1:2021年にU-NEXTで配信(日本)
シーズン2:2021年にU-NEXTで配信(日本)
シーズン3:2022年にU-NEXTで配信(日本)
製作総指揮:アレック・バーグ、ビル・ヘイダー ほか
DV-家庭内暴力-描写 性描写 恋愛描写

バリー

ばりー
バリー

『バリー』あらすじ

元海兵隊員で今は殺し屋をしているバリー・バークマンという男は、仕事に意味を見いだせずにいた。失敗しているわけではない。ただ、この淡々と誰かを殺しにあちこちに行っては家に帰るという日常に心が沈んでしまっているのだった。そんなある日、殺しの仕事でカリフォルニアに足を運んだとき、偶然にも演劇に情熱を捧げる人たちに出会い、そこでバリーも活力を受け取る。殺し屋から俳優に転職できるだろうか…。

『バリー』感想(ネタバレなし)

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殺し屋は俳優に転職希望

演技の世界では「メソッド演技」という言葉がしばしば耳に入ってきます。

これはロシアの俳優で演出家でもある“コンスタンチン・スタニスラフスキー”が俳優たちを指導する際に生み出していったもので、その演技クラスを受講した教え子たちがアメリカにその手法を持ち込み、「スタニスラフスキー・システム」という演技論として確立。1920年代にアメリカの演劇の世界に対して大きな影響を与えることになります。

具体的にメソッド演技というものは何なのかと言えば、役柄の内面的な部分に着目して役者自身がその感情をその身で持って味わうことで生々しい演技を生み出すという方法です。例えば、誰かに恋をしている役柄であれば、役者は本当に恋をしているような感情になってそのまま役に活かす…といった具合。

このメソッド演技を好んで実践する人はメソッド・アクターと呼ばれ、初期の代表例であれば、『欲望という名の電車』(1951年)の“マーロン・ブランド”が有名ですし、今もたくさんのメソッド演技を取り入れる俳優がいます。

しかし、メソッド演技に否定的な意見も業界では聞かれます。一番の理由は、役者への負担の問題。感情移入を極端に強いる手法ゆえに、俳優に精神的圧力が多大に降りかかり、依存症などの弊害を引き起こしやすかったり、それこそ心を病んでしまうことだってあり得ます。実際、そのメソッド演技がもたらした悲劇として挙げられるのが、『ダークナイト』の“ヒース・レジャー”の死でした。

とくに近年は俳優と言えども「ひとりの労働者」「ひとりの人間」として、その人権や人格を真っ先に尊重すべきだという価値観が高まっています。メソッド演技はハラスメントの温床にもなりやすいですし、積極的に奨励して褒め称えるような演技論ではなくなっていく傾向が今後も目立つかもしれません。

その賛否吹き荒れるメソッド演技を面白おかしく題材に組み込んだドラマシリーズが2018年から始まって話題でした。

それが本作『バリー』です。

このドラマ『バリー』の物語は、殺し屋を生業とするひとりの男が主人公。でも次から次へと敵をぶちのめしていくアクションサスペンスというわけでもありません。本作の主人公は殺し屋業をしているのですが、その仕事にやりがいを見い出せなくなり、ふと演劇の演技に出会い、そこに魅力を感じていきます。そして殺し屋から俳優へ転職しようと決意する。でもそう簡単に足を洗えないのが殺し屋業界のジレンマ。どっちにも足を突っ込んだ状態で、殺し屋と演劇、2つの世界を行ったり来たりして右往左往する姿を描くブラックコメディです。

主人公は人生を殺しに捧げてきたのでそれ以外を知らず、感情さえもあまり持ち合わせていません。そんな主人公が演劇の世界でどんな演技論に辿り着くのか…そんな奮闘に注目です。コメディですが大爆笑というよりはシュール系ですけどね。

ドラマ『バリー』はアメリカ本国では「HBO」で放送されたのですが、批評家からは大絶賛。エミー賞やゴールデングローブ賞でも受賞・ノミネートをどんどん記録しており、必見のコメディドラマの定番としてピックアップされやすい一作になりました。

そのドラマ『バリー』を生み出したのが、原案・製作総指揮・主演と関与している“ビル・ヘイダー”。モノマネ芸が得意なコメディアンだったのですが、アニメ『サウス・パーク』でプロデューサーを務めたり、多くのコメディ映画で実力を見せたりと、多彩な活躍を展開。『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』にも出演していました。そしてついに『バリー』で自身の看板となるような大成功をおさめたという感じです。本作は本当に“ビル・ヘイダー”の“ビル・ヘイダー”による“ビル・ヘイダー”のためのドラマですからね。『バリー』ではいくつかのエピソード監督も手がけていて、大忙しながら実に楽しそうです。

もうひとり“アレック・バーグ”という人物も原案・製作総指揮に関わっているのですが、彼はドラマ『シリコンバレー』などを手がけたクリエイターであり、コメディは慣れたものです。

そんな“ビル・ヘイダー”と共演するのは、ドラマ『JUSTIFIED 俺の正義』の“スティーヴン・ルート”、『ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち』の“サラ・ゴールドバーグ”、ドラマ『GOTHAM/ゴッサム』の“アンソニー・キャリガン”、ドラマ『ハッピーデイズ』の“ヘンリー・ウィンクラー”、ドラマ『シカゴ・メッド』の“ポーラ・ニューサム”、ドラマ『ビリオンズ』の“グレン・フレシュラー”など。

ドラマ『バリー』は日本では過去にはAmazonでデジタル配信していたのですが、今はHBOと独占契約している「U-NEXT」が取り扱っており、そこでシーズンを通して鑑賞することができます。

シーズン1は全8話。1話あたり約30分で見やすいです。すごくミニマムな作品ですし、展開も整理しやすいのでそんなに難しく考える必要はないでしょう(まあ、主人公は終始悩んでいるんですけど…)。

転職を頑張る主人公を見守ってあげてください。

オススメ度のチェック

ひとり4.0:演劇界に興味があるなら
友人3.5:手軽なドラマを観たいなら
恋人3.5:異性愛ロマンスあり
キッズ3.5:やや大人向けだけど
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『バリー』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『バリー』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤):俳優になれるかな…

綺麗で落ち着いたシックな部屋。でもそのベッドには頭を撃ち抜かれた男が横たわっています。その隣で男が片づけをして無言で去っていきます。その物静かな男は、帰りの飛行機に乗り、何事もなく帰宅。誰もいない地味な部屋が出迎え、無言でシャワーを浴び、暇な時間はひたすらゲームをして、それで時間は過ぎていきます。

これがバリー・バークマンの人生でした。元海兵隊のバリーの今の仕事は殺し屋です。クリーブランドに住みながら、殺しの依頼があれば、あちこちへと飛ぶ。そんな日々。腕はありました。しかし、バリーは殺しばかりの生活に飽き飽きとしていました。

自室で寝ているとフュークスに起こされます。バリーの殺し仕事の元締めです。

「なぜ2日かかったんだ?」と言われながら「必要なのは変化だ。ロサンゼルスに旅してみないか」とまたも仕事を持ってきました。次のターゲットはチェチェン・マフィアのゴラン・パザールという男の厄介ごとを始末するものらしいです。断る理由もなく、無感情に引き受けます。

用意されていたダサい車で依頼者の元へ。パザールとその手下のハンクに会うと詳細を話してくれます。パザールの妻オクサナと不倫関係にあるライアン・マディソンを殺すことでした。ライアンはフィジカルトレーナーで、その妻と隠し撮りでしっかりヤっているところもおさえています。

さっそくライアンを尾行。彼はある建物に入っていきます。その建物裏でひとりでやけに口汚く罵りまくっているサリー・リードという女と遭遇するバリー。どうやら台本の練習のようです。なんとなく中に入るとサリーは演劇教師のジーン・クジノーに演技を怒られていました。

「才能のカケラもないのにこのクラスにいるべきではない」

サリーはその怒りを演技に反映。演技が格段に良くなり、みんな拍手喝采。ジーンは「舞台の上で人生を創造するんだ」と熱弁します。

その場にいたバリーはライアンと演技にでるハメになり、流されるままに棒読みで台本を読み上げます。でもステージ上で拍手をもらうと不思議な高揚感がありました。

俳優の卵たちと飲み会に誘われ、楽しそうな一同を見て、バリーは新鮮な気持ちになります。愛想のいいライアンから「バリー・ブロックというステージ名はどう?」と提案され、「またな、相棒」とわざわざハグまでしてくれる親切さ。

全然ターゲットを殺す気配のないバリーをフュークスは心配してきます。「彼らに励まされて自信を持てた。気分がいいんだ」とバリーは上機嫌。でもフュークスは「ライアンを殺せ。これがお前の唯一の仕事なんだ」と忠告します。

悩むバリーはジーンに素質があるかを聞くと「バカの演技だ、演技以外のことをやれ」と言われます。バリーは「人を殺すしかできない」と深刻な心情を吐露。しかし、ジーンは今のバリーの告白を即興でやった演技だと思ったらしく、気に入ってくれます。

「君の名前は?」と聞かれて、「バリー・ブロック」と答えるバリー。

俳優になってみようかな…。

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シーズン1:演技は人の心に何をもたらす?

ドラマ『バリー』はジャンルとしては典型的な殺し屋転職モノです。『ジョン・ウィック』シリーズとか、『Mr.ノーバディ』とか、日本だと『ザ・ファブル』とか、『ベイビーわるきゅーれ』とか。殺し屋を辞めようとしているけど引退させてもらえない、辞めたはずなのにまたやるハメになる、一時的に違うことがしたいのに結局は殺しに戻ってしまう…。

「殺し屋」という職業は現実的にはフィクショナルなものとして観客に受け取られているので、その姿は傍から見ればユーモラスで、それでいて現実の転職などの難しさとも重なって親近感もあったり…。

ドラマ『バリー』の場合は主人公が演劇の世界に移行したいと思っているというのが特徴ですが、これが同時に演技界の、それこそメソッド演技のような業界慣習を皮肉るような効果も与えています

ずっと殺しの世界で感情が麻痺してしまったバリーは、演技を通して生きがいを見つけます。そこで感情を取り戻していく一種のリハビリの作用を与え、自身の従軍経験や殺し屋経験を演技に活かしつつ、周囲に少しずつ才能が認められる。ジーンもサリーもこれはせいぜい従軍経験を活用したメソッド演技的なアプローチなんだと思い込んでいますが、当のバリーは絶賛リアルタイムで殺し屋続行中であり、かなりメンタル的に右往左往しています

本作は「演技が人の心を癒しました」という安直な性善説で片付けるのではなく、「でも演技やその指導は人の心に介入して傷つけることもあるよね」という事実も包み隠さず提示し、そんな世界で悲喜こもごもに生きる俳優たちをコミカルに描いています。

バリーを演じる“ビル・ヘイダー”のちょっとオーバーな表情の付け方をする演技がいちいちツボに入りますし(第2話でライアンが殺されたと聞かされ、さっそく演技が炸裂するシーンとか)、本質的なテーマは実はシリアスなんですけど、表面的にはなんだか笑ってしまう軽さもあって、本当に不思議な手触りのドラマです。

バリーが憧れる「普通の人間らしい人生」は手に入るのか、それとも演技で終わってしまうのか…。

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シーズン2:人生の転落劇

ドラマ『バリー』のシーズン1では、戦友だったクリスをやむを得ず殺してしまい、パザールも殺して、フュークスとも縁を切り、完全に殺し屋業から身を引きました。しかし、真相に気づいたジャニス・モス刑事に迫られ、銃を向けられ、そしてバリーだけが戻ってくるという意味深なシーンで終わりました。

シーズン2では、良い関係だったモスが消えたことでジーンは悲しみに暮れていますが、バリーは演技人生に邁進しています。けれども、新たにクリストバルと手を組んだハンクは身がヤバくなってバリーに近寄ってきて、さらにフュークスもローチ刑事に捕まってバリーの犯罪関与を立証するべくおとり捜査に加担させられます。

足を洗いたいバリーは“もう殺しなんてしない”と固く自分に言い聞かせているのですが、そこに現れたのはサリーにDVをしていたサム。ここで明かされるバリーの過去。バリーは従軍時代に同僚アルバートを殺された怒りで無実の市民を射殺してしまうほどに感情のコントロールがもともと苦手な人物なのでした。でもサムは殺さずにグッとこらえる。バリーの成長が感じられるシーンです。

ここで話題騒然の第5話「ロニーとリリー」。面白すぎる!と手を叩いて喜びたい、何度も繰り返し観たいくらいの、神がかっている最高のスラップスティック・アクションです。ほんと、ここだけ“なんなんだ!”ってくらいの最高瞬間風速が吹いてる。

シーズン2はフュークスもハンクもバカ度がさらにオーバーヒートしてないだろうか…。なんでバリーの周囲には極端なアホしかいないんだ…。

一方、もうひとりのバリーと言えるサリーの物語も切ないですね。昔の男に酷い目に遭った経験を演技にぶつける辛さ。加えて男であるバリーの方があっけなくキャリアアップしてしまうことへの複雑な気分、#MeTooをよくもわかっていない男たちがそのムーブメントに便乗できるネタとしか自分の企画を受け取っていない屈辱…。終盤は劇が評価されたようでサリーにも救いがあるといいですが…。

そんな中、サリーはせっかくの理解者であるジーンとの関係をフュークスに潰されたことで、怒りを抑えることはまたもできなくなり、自分の指導したギャング団をほぼ壊滅。

モスの死体は発見され、フュークスはジーンに「バリーが殺した」と耳元で囁き、バリーは「バークマン」に戻ってしまいました。

シーズン2はまさにバリーが舞台から転落する人生劇。もうこの人生をドラマにするしかないよ…。

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シーズン3:さらなる転落劇の続き

※シーズン3に関する以下の感想は2022年9月9日に追記されたものです。

ドラマ『バリー』のシーズン3はシーズン2以上の衝撃だったのではないでしょうか。

完全に殺し屋に戻ってしまったバリーは自己嫌悪に浸りながら“殺し”の仕事に依存。でもジーン・クジノーがバリーがジャニス・モス刑事を殺したと知ってしまい、問い詰められ、迷ったあげく、この俳優人生が終わったジーンのキャリアを再復活させることで償おうとします。ジーンは過去にハラスメントなどで相当やらかしているらしく、評判が地に堕ちているので大変なのですが、演技という仕事に過剰に希望を抱いているのがバリーらしいですね。

一方、ハンクはクリストバルと恋仲になって個人的には幸せ満喫しているのですが、まさかのクリストバルの義父であるフェルナンドをボスとするボリビア人勢力が乗り込んできてチェチェン人勢力は窮地に。またもバリーの助けを借りようとしますが、そこにフュークスの帰還で事態は混戦。さらに兵士時代のバリーの同僚だったアルバード・クェンが捜査に参戦(生きていたのかよ!)。もうカオスすぎる…。

また、サリーも頑張っています。DV経験を生かして作ったドラマ「ジョプリン」が大成功。プレミアも拍手喝采で、Rotten Tomatoesでは98%の高評価。ところが動画配信サービスでは打ち切りに。アルゴリズムが決めたと言われても納得いかない…なんで評価の低いライバルのドラマよりも高評価のこっちがキャンセルになるんだ…。もうこれもあるあるすぎて笑うに笑えない、クリエイターの叫びだった…。

ちなみにサリーのドラマ内で出演していた俳優のケイティを演じた“エルシー・フィッシャー”、良い演技だったな…。『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』からこんな俳優に成長しているとは…。

で、かんしゃく玉が破裂したサリーは動画に撮られて大炎上。そこからバリーの騒動とクロスオーバーし、勢いのままに家に上がり込んだギャングをサリーが殺してしまいます。そしてバリーもジーンに騙されてジャニスの父のジム・モスの家に侵入し、そこで待ち構えた特殊部隊に逮捕されて…。

ついに主要キャラがみんな落ちるところまで落ちてしまった『バリー』。これはもう殺しとか演技とかどころの話ではないけど、どうやってここから物語が復帰するんだろう…。サリーはミズーリ州ジョプリンに独りで旅立ってしまったけど、バリーはさすがにもう自由は効かなさそうだし…。

でもこのドラマ『バリー』はひょんなことで物語が180度方向転換して動き出すから予測つかないですけどけどね。

『バリー』
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer 98% Audience 90%
S2: Tomatometer 100% Audience 92%
S3: Tomatometer 100% Audience 88%
IMDb
8.4 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
7.0

作品ポスター・画像 (C)HBO

以上、『バリー』の感想でした。

Barry (2018) [Japanese Review] 『バリー』考察・評価レビュー