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『クリーピー 偽りの隣人』感想(ネタバレ)…まだまだいくぞ、次はお前だ

クリーピー 偽りの隣人

まだまだいくぞ、次はお前だ…映画『クリーピー 偽りの隣人』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:クリーピー 偽りの隣人
製作国:日本(2016年)
日本公開日:2016年6月18日
監督:黒沢清

クリーピー 偽りの隣人

クリーピー 偽りの隣人

『クリーピー 偽りの隣人』あらすじ

元刑事の犯罪心理学者・高倉は、刑事時代の同僚である野上から、6年前に起きた一家失踪事件の分析を依頼されていた。そんな折、新居に引っ越した高倉と妻の康子は、隣人の西野一家にどこか違和感を抱いていた。そして、高倉のもとに現れた西野の娘・澪がある事を告げる。

『クリーピー 偽りの隣人』感想(ネタバレなし)

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クリープな隣人をひとまぜして…

突然ですが、某乳製品メーカーから発売されているコーヒー用クリーミングパウダーに「クリープ」という商品があります。クリーミングパウダー全般を「クリープ」と呼んでいることもありますね。

でも、この「クリープ」という言葉、和製英語です。それどころか、「クリープ」という言葉を英語圏の外国人の前でうっかり使おうものなら、「えっ」と怪訝な顔をされてしまいます。

というのも「creep」という単語に聞こえてしまうから。この単語は「忍び寄る」とか「ゾッとする」という意味で、あまり良いイメージの言葉ではありません。形容詞の「creepy」は、日本の若者では頻出のワード「キモイ」と同じような使い方もできるほどです。あんまり迂闊に使うと厄介な言葉なので注意です。

話をメインの映画に戻します。本作『クリーピー 偽りの隣人』は、クリーミングパウダーが鍵となる話ではもちろんなく、「creep」のほうの話。キモイどころではない、それこそゾッとするような隣人の狂気を描いたスリラー映画です。

監督は黒沢清。1997年の『CURE』以降、世界的に有名な日本人監督のひとりであり、最近でも2015年の『岸辺の旅』が第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞しました。今年は本作『クリーピー 偽りの隣人』以外にも10月に『ダゲレオタイプの女』が公開されており、大作映画をポンポンつくれるあたりさすがです。

『クリーピー 偽りの隣人』はサイコパスを題材にしている点は『CURE』と同じ、崩壊しかけている夫婦の歪さを題材にしている点は『岸辺の旅』と同じ。実に黒沢清監督らしい映画です。

黒沢清監督の映画はリアルとは違う独特の作風がありますから、世界観含めて楽しむことが大切。本作は物語の構成自体はシンプルなので、黒沢清監督作品が初めての人でも問題ない一作だと思います。

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『クリーピー 偽りの隣人』予告動画

映画『クリーピー 偽りの隣人』予告編
↓ここからネタバレが含まれます↓

『クリーピー 偽りの隣人』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):となりはどんな人?

「俺、やりもしないで諦めるの嫌いなんです。それよりもやったほうがいいじゃないですか」「どうせやるなら楽しいほうがいいし」

そう語る松岡という男を聴取する刑事の高倉。相手は連続殺人犯ですが、高倉は手慣れており、冷静沈着でした。

ひととおり聴取を終えたところ、野上が松岡は検察の手に移ると説明。しかし、高倉はまだ話を聞きたいようです。「彼は完璧なサイコパスだ。あんな貴重なサンプルは滅多にお目にかかれるもんじゃない」…8人殺している男に夢中になる高倉に呆れ気味の野上。

しかし、そのとき松岡は逃走。被疑者が凶器を持って逃走!と注意を流しますが、松岡は女性を人質にとり、階段で緊迫状態に。一同が駆けつけ、固唾をのんで見守ります。

高倉は松岡に語り掛けます。「君にもモラルがあるんだろ」

「じゃあ、後ろ、向けますか」と挑発する松岡。「向けるよ」と素直に従う高倉。すると松岡は高倉を躊躇なく刃物で刺し、女性の首を切りました。一斉に撃たれ、倒れる松岡。

それからしばらく後。高倉は警察をやめて家でのんびり。今は大学の先生をしていました。引っ越してきたばかりで妻の康子と一緒にお隣に挨拶に行きます。

お隣は冷たい対応。次に違うお隣りへ。奥まった場所に玄関がある家で、チャイムを押すも反応なし。また今度にしようと帰ります。

高倉は大学の講義でこう語ります。連続殺人犯は「秩序型」「無秩序型」「混合型」の3つに分けられると解説。「混合型は分析不可能で、手の打ちようがない。自分が経験したのはすべてが混合型でした」

講義が終わって暇な高倉。同僚が整理していたデータの中にあった、日野市で一家3人が行方不明になった事件に興味を持ちます。妹が残っていると教えてくれ、本多早紀、当時中学3年生だとのこと。思い出す高倉。言うことが何度も変わって証言能力なしということになったようです。今の居場所はわからないらしく…。

妻はひとりまたあの留守だった家へ。チャイムを鳴らすもやっぱり反応なし。しかし、男が出てきました。小柄そうなどこか挙動不審な男。

いきなり手土産に対して「何ですか?これ」と言い放ちます。「チョコレートです」「僕ね、チョコレート、嫌いじゃないですよ」

さらに続けます。「おたく、犬、飼ってます? 犬も好きですよ」「ええ、ちゃんとしつけしますので」「え、犬にしつけするんですか。いいと思いますよ、そういうの」

西野という隣の男はこちらに目もくれずに家に引っ込んでいきました。

一方の高倉は例の事件の本多家へと同僚の大川と行ってみます。玄関は静か。しかし、これ以上介入すべきじゃないと家に入るのをやめました。

帰宅。妻は隣の西野の感じ悪さに不機嫌でした。「まあ、いるよ、そういう人」と高倉は呑気に発言。「でもたいてい凶悪犯は感じのいい人だったっていうからそういう意味では安全かな」とも。

次の日、大学に野上が訪ねてきます。「日野市事件の現場に行かれたそうですね」とさっそく情報を掴んでいました。どうやら野上もあの事件が気になるようです。なぜあれは犯罪性も曖昧なのに事件と呼ばれているのか、その家族の唯一の生き残りの妹はなぜ証言不能とされたのか。

高倉も考えていました。あの事件現場には犯罪現場特有の感触がある、と。

こうして事件が動き出します。それは開けてはならない不気味な隣人への扉になるとは全く知らずに…。

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おまえもサイコパスなのか

『クリーピー 偽りの隣人』は明らかにリアルな描写を避けている部分が多々あります。最も顕著な例が、警察の描写でしょう。はっきり言ってあんな警察ありえません。元警察といえ他者に情報を流しすぎですし、警察が不審死したにもかかわらずろくに捜査していないですし。でも、本作の場合は製作者の意図的なものだと思えたので私は気になりませんでした。

振り返ってよく観ると、実は映画冒頭に世界観設定の説明があるのです。それは、高倉による大学での講義の場面。そのなかで、犯罪者には「秩序型」と「無秩序型」と「混合型」があり、とくに「混合型」は分析不可能で手の打ちようがないと語っています。そして、本作が扱うサイコパスがこの警察も犯罪心理学も役に立たない「混合型」。警察は無能だし、行動分析しても意味ないよと言っているわけです。

さらに、権力や科学では太刀打ちできないサイコパスに「映画」で挑むというスタンスが明確に打ち出されてます。これこそ「映画」らしい映画だと思いましたし、映画で描く意味もあります。

本作ではサイコパスとの闘いの勝ち負けはコントロールのパワーで決まるという明快なロジックで描かれています。その点、竹内結子演じる康子はコントロールの力が弱い人間でした。飼い犬をしつけていますというわりには、そんな感じには見えないし、夫にも従うばかり。対する香川照之演じる西野は吠えられまくっていたのも序盤だけで、すぐに犬を懐柔してみせます。

では西島秀俊演じる高倉が最後に西野に勝てたのはなぜなのか。それは高倉自身がサイコパスだからなのではないでしょうか。

劇中でも高倉の執念的なコントロールっぷりが露出しているシーンがいくつかありました。例えば、冒頭の妻との会話…「学生と話していると結構面白い」「俺、案外大学の先生向いているのかもな」のセリフ。ところが、その後に映る講義風景を見ても授業にそこまで面白そうな雰囲気がある描写もなく、高倉自身も「授業がないときは何すればいいの?」と大学で暇そうにしているのです。これは大勢の前で持論を展開する自分に満足している表れに見えました。日野市一家殺人事件の生存者である早紀や、妻である康子への詰め寄りも言うまでもなく、結果どちらも傷つけることに。高倉こそ「creepy」です。

本作、残酷な演出が少なめなのは個人的にちょっと残念でした。まるで薬だけで全ての洗脳を実行しているような感じも違和感ありました。どうせ薬を用いるなら西野がもっと薬を楽しげに準備させるような、“クスリ”狂っぷりをみせてほしかったです。

それにしても、西野(というか香川照之)が味のあるいいキャラでした。「犬にしつけするんですか」からの「いいと思いますよ、そういうの」とか、「まだまだいくぞ~」とか、名言多しなのもナイス。正直、西野があのまま殺されなかったらどこまでいくのか見てみたかった。自分がコントロールされる側なら、高倉よりも西野のほうがいいです…ね(すでにコントロールされているみたいな文章)。

『クリーピー 偽りの隣人』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer –% Audience –%
IMDb
?.? / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 7/10 ★★★★★★★

作品ポスター・画像 (C)2016「クリーピー」製作委員会

以上、『クリーピー 偽りの隣人』の感想でした。

ホラー
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