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映画『トラップ』感想(ネタバレ)…このお父さん、怖いです

トラップ

監督も怖いです…映画『トラップ』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Trap
製作国:アメリカ(2024年)
日本公開日:2024年10月25日
監督:M・ナイト・シャマラン
トラップ

とらっぷ
『トラップ』のポスター。男の顔がアップで赤く映ったデザイン。

『トラップ』物語 簡単紹介

クーパーは娘のライリーのために、世界的歌手レディ・レイブンのアリーナライブのチケットを手に入れてあげ、一緒に楽しみに会場へと向かっていた。ついに憧れのスターに生で会える瞬間が訪れ、ライリーは大興奮だった。しかし、クーパーはある異変に気づく。会場は通常では考えられないほどに厳重なセキュリティで、多数の武装した警察隊が揃っていたのである。その理由をクーパーは察する。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『トラップ』の感想です。

『トラップ』感想(ネタバレなし)

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ダークMNS

「ダークMAGA」を大はしゃぎで自称する“イーロン・マスク”が、「ドナルド・トランプばかり暗殺されそうになるなんておかしいですよね。カマラ・ハリスはなんで狙われないの?」といった感じで暗に暴力を扇動するコメントをしていたりしましたが、そんなSNS独裁者の大富豪は知らないのかもしれませんが、何かしらの暴力のターゲットにされる有名人というのは別に珍しくありません

最近も2024年8月に世界的人気ポップスターの”テイラー・スウィフト”が予定していたオーストラリアのウィーンの3回のコンサート・ツアーが、襲撃事件を計画していた数人が逮捕されたことで中止となりましたBBC。数万人を動員できるイベントの中止は大変だったと思いますが、人命を最優先にしたかたちです。

正直、警備が土壇場で犯罪を防ぐのにも限界があります。ましてや、とてつもなく大勢が集う会場で、たったひとりの犯罪者を見定めて未然に捕まえるのなんて至難の業です

犯罪者の中にはとにかく有名人を狙って注目を集めたいという欲望だけで行動を起こす者もいます。どこからやってくるかもわからない犯人を迎え撃つのは、著名人であっても大変なものは大変。勘弁してほしいところです。

今回紹介する映画は、そんな狙われることもあり得るポップスターのライブ会場に「よりにもよって!」という極めつけのとんでもない奴が入り込むスリラーです。

それが本作『トラップ』

本作は、まあ、監督の名前から説明しましょう。はい、“M・ナイト・シャマラン”です。「ダークMNS」とは自称してないけど、そう自称していてもおかしくはない、シャマランさんです。

説明不要の“M・ナイト・シャマラン”ですが、最近は『オールド』(2021年)、『ノック 終末の訪問者』(2023年)と、比較的小規模な製作で、相変わらずの資金確保もセルフ・スタイルで頑張っています。もうこの人、ずっとこの調子で生涯を突っ走るんじゃないかな。

毎度鑑賞者を弄ぶような仕掛けを張り巡らせたコンセプトの映画を届けてくれる“M・ナイト・シャマラン”。今回の映画『トラップ』は、ライブ会場が舞台となります。“レディー・ガガ”や“テイラー・スウィフト”から着想を得ているのか、それっぽい感じのポップスターがコンサートをしている広い室内会場です。

で、これはどこまでネタバレしていいのか…。おそらくオリジナルの公式でも、日本の宣伝でもここまでは堂々と明かしているので、ここでもそこは明かしておきましょうか。

このコンサートを楽しみにきた父と娘の親子が主役です。いかにも仲良さそうな父&娘という雰囲気。

ところがこの父親、とんでもない凶悪犯だった…。

ライブ会場ではこの凶悪犯が来ているらしいという情報を警察が入手したことで、大勢の警備員が動員され、物々しい厳戒態勢の中、逮捕するべく動き出します。

本作はそんな「捕まるか? 逃げれるか?」の緊張感を味わうシチュエーション・スリラーとなっています。ご時世なんて嘲笑うかのような設定ですよ。

ここまでネタバレして大丈夫?と思うかもしれませんが、平気です。全然面白さは台無しになっていません。むしろこの前提を知ったうえで、ここからどんどん展開が進み、ハラハラドキドキさせてくれます。

無論、いつもの“M・ナイト・シャマラン”なので今作も観客の好き嫌いは大きく分かれると思うのですけど、個人的には楽しい一作でした。久々に“M・ナイト・シャマラン”の悪趣味度合いが(私の観測データによれば)100%超えを示した気がする…。私の中では『ヴィジット』(2015年)に匹敵するレベルの悪趣味さでしたよ。

怖いというか、ダークユーモアが満載というか…。笑えるかどうかの絶妙なラインをついてきます。

『トラップ』で主役を演じるのは、『パール・ハーバー』『ブラックホーク・ダウン』など2000年代初期は大作にガンガンでていた”ジョシュ・ハートネット”。最近は大人しいキャリアでしたが、ここにきてこの本作で強烈なインパクトを残してくれました。

共演は、ドラマ『スタートレック ピカード』“アリソン・ピル”『Foster』”ヘイリー・ミルズ”、ドラマ『Run the Burbs』”ジョナサン・ラングドン”など。

ひとりでシャマランの仕掛けるイタズラに引っかかるのも良し、友達と観に行って「なんだよこれ~」と言いながらイタズラの感想を語り合うのも良し。ただ、小さい年頃の子どもにこの映画を親が見せるのはちょっと酷い奴だと言われても仕方がないと思いますが…。

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『トラップ』を観る前のQ&A

✔『トラップ』の見どころ
★悪趣味さたっぷりの展開の数々。
✔『トラップ』の欠点
☆悪趣味さについていけるかはその人しだい。

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:シャマランに弄ばれて
友人 3.5:気楽に鑑賞して
恋人 3.5:作風が好きなら
キッズ 2.5:多少の残酷な描写あり
↓ここからネタバレが含まれます↓

『トラップ』感想/考察(ネタバレあり)

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あらすじ(前半)

フィラデルフィアにて、10代のライリーは上機嫌でお気に入りのポップスターであるレディ・レイブンのシャツを着て、車内で熱唱していました。隣で運転するのは父のクーパー。今回、娘へのご褒美としてそのレディ・レイブンのアリーナライブのプラチナチケットを手に入れ、今まさに2人で会場に向かっているのでした。クーパーも嬉しそうな娘の姿に満足そうです。

会場前は大勢の人でごった返しています。とくにある場所では、バスから降りてくるレディ・レイブンをひと目見ようとたくさん集まっています。警備員に囲まれて降りてきたその姿にみんなが歓声。手を振ってくれ、ライリーも感激です。

その後、2人は列に並びます。やはり大物のスターというだけあってか、会場には大勢の警備員がいます。しかし、入り口にズラっと並ぶ警備員にクーパーは目をとめます。セキュリティ対策とは言え、妙にその警備は厳重です。監視カメラも増設されている真っ最中で、アサルトライフルを持った武装警備が配置されています。

そんなことを気にしている場合ではないと切り替えて、ハシャぐ娘の可愛い姿をスマホで撮って記録するクーパー。

会場の席はかなり前のほうで、ライリーは興奮。他の若者たちに囲まれて、今か今かと始まりを待ちます。

全体が暗くなり、ついに開幕。憧れのスターの声が聞こえ、歓喜の悲鳴が充満します。そしてパフォーマンスが始まりました。ライリーはこれまでにないほどにテンションが上がり、信じられない体験を会場一丸で味わっています。

途中でクーパーはトイレに行くことにし、娘に「ここにいるんだぞ」と念押し。ライリーはうっとりしており、父の言葉に一応は返答します。

トイレの個室でクーパーはおもむろにスマホを取り出します。そこにはどこかの場所で拘束されて監禁状態の男が画面にリアルタイムで映っていました。犯人はクーパーです。

そうこうしている間に会場の警備は尋常でないほどに増加。会場前にたくさんの武装兵が並び、ターゲットを外に出すまいとします。

娘のもとに戻ったクーパーは家族についてしんみりと語るレディ・レイブンの言葉に一緒に耳を傾け、みんながスマホのライトを掲げてピアノ弾き語りに合わせます。

ふとクーパーが会場の片隅に目を向けると、ある男が警備員に連行されています。不審者は取り調べを受けているようです。

ジェイミーというスタッフから事情をこっそり聞くと、FBIが「ブッチャー」として知られる連続殺人犯がコンサートに来ることを把握し、逮捕するために張り込んでいることを知ります。つまり表から普通に逃げられません。純粋な好奇心で質問したような顔をしながら和やかにその場をやり過ごすクーパー。自分がその殺人犯だと知る者は当然いません。そのはず…。

会場内で警備の目をかいくぐり、ステージの前に戻ったクーパー。警察がどこまで身元をおさえているかはわかりませんが、なんとか逃げ出す方法を考えなくては…。

この『トラップ』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2024/10/25に更新されています。
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不謹慎だけど笑ってしまう子どもの悪用

ここから『トラップ』のネタバレありの感想本文です。

映画『トラップ』のお父さん、クーパーはひと言で表すなら「サイコパス」です。王道のサイコパスっぷりが全編とおして描かれまくっており、「こ、こいつ…ヤバイぞ…」と震撼するのがしばらく観客の反応になります。

まず何と言っても、人を監禁している真っ最中なのに平然と娘とライブを見に行っているという出だしからして「おい!」ってツッコミたくなるほどにクレイジー。普通に考えたら犯罪の中でも最も油断できない監禁行為なわけで、目を離せないし、緊張するだろうに…。にもかかわらず見守りカメラでペットの様子を眺めるくらいの感覚でスマホでチェックしてるだけですからね。

クーパーのヤバさを映す描写は止まりません。ところどころで銀髪の老女が傍にいるという心理ホラーな演出もありますが、通常の言動だけでもヤバさはじゅうぶん伝わります。

基本、この男、何かひとつの関心に執着しだすとそのためなら手段を選ばないところがあります。

自分が捕まりそうになっていると発覚してからは、もう娘とのライブの思い出は二の次です。いかにやり過ごし、ここから脱出するか…それだけが頭を埋め尽くしています。

子どもを階段から突き落とすのも、店員を爆破で熱傷を負わすのも、何も躊躇いが無し。ライブの場でもどうにかして逃げ口がないかをあれこれと思案。

ちょっと笑ってしまうのは、近くの床から登場する仕掛けをみてあそこから逃げられないかという考えでいっぱいになり、あの床下への関心を口にするのですが、さすがの娘のライリーも「おかしいんじゃないの?」とツッコむシーン。娘としては「全くパパはたまにこういう意味不明なこと言うよね」くらいのやれやれな気持ちなのかもですが、私たちはもう知っていますからね。この男が正真正銘でヤバイということを…。

こうなってくると娘への愛情を示すような仕草も本当に白々しく、観客としては娘の子が不憫すぎて笑ってしまう状態に…。ラストでも「やっぱりこの男には娘の愛はあるんだ」と一瞬だけ観客を騙し、すぐさま裏切ってきますからね。

ライリーという娘の何もわかっていないチグハグさがこの映画のシュールなユーモアを多く占めてますし、子どもの無邪気さを不謹慎に利用して演出の道具にするのが“M・ナイト・シャマラン”の手癖だな、と。

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クレイジーな親バカ映画

映画『トラップ』はこの主人公だけでも悪趣味なのですが、私はこの映画のコンセプト自体がもう悪趣味の極みだなと呆れてしまいました。

本作、そもそもの企画の発端は、“M・ナイト・シャマラン”の娘とのコラボレーションなんですね。つい最近、娘のひとりである“イシャナ・ナイト・シャマラン”『ザ・ウォッチャーズ』で長編映画監督デビューを果たしましたが、もうひとり娘がいます。それが“サレカ・ナイト・シャマラン”です。

“サレカ・ナイト・シャマラン”は音楽アーティスト活動をしており、『トラップ』でもレディ・レイブンを堂々と演じています。本作のために楽曲を用意し、かなりこの映画のキーパーソンです。

“M・ナイト・シャマラン”的には愛する娘と共同で映画作りできてハッピーという、これはこれで親バカ映画なんですね。

でもその中身がこれなんですよ。ポップスターのライブ会場にサイコパスなシリアルキラーが紛れ込み、台無しにしていくという…。

これ、“サレカ・ナイト・シャマラン”のアーティストとしての宣伝にはなっているのかな…。観客はもうクーパーという男に全ての目を釘付けにされてしまうので、“サレカ・ナイト・シャマラン”が踏み台にされてるだけな気もするけど…

“M・ナイト・シャマラン”もどういう気持ちでこんな映画を思いついたんだよと私なんかは思ってしまうのですけど、“サレカ・ナイト・シャマラン”もノリノリみたいだったので、「ああ…この親にしてこの子ありなんだな…」と。

作中でのレディ・レイブンはクーパーの自白に直面し、後半はコントロールされてしまいます。このパートでは一部はレディ・レイブンの視点になるのですが、普通にドン引きの表情をしてるのがまた笑ってしまう…。まあ、ショックですよね…自分がステージでハグした娘の父がこんな常軌を逸したヤバイ奴だったのですから…。

レディ・レイブンの必死の配信SOSで事態を突破しようとしますが、クーパーはまだ焦りません。ここでライリー、レディ・レイブンに続く第3の不憫キャラが登場。妻のレイチェルです。

このレイチェルも「怪しいと思ってたならもう少し良い手はあったのでは?」と思わなくもないのですけども、クーパーがヤバすぎて頭がパンクしていたのかもしれない…。うん、そういうことにしておこう…。

『トラップ』のクーパーがあまりにも魅力的なサイコパスなので、「これは『スプリット』のアイツといい勝負だぞ…もしかしてクロスオーバーしないよね?」と思いながら観ていたのですが、それは無さそうかな?

いつか“M・ナイト・シャマラン”のサイコパス・アベンジャーズが作れそうだな…。

『トラップ』
シネマンドレイクの個人的評価
6.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)
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関連作品紹介

M・ナイト・シャマラン監督の作品の感想記事です。

・『サーヴァント ターナー家の子守』

作品ポスター・画像 (C)2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED

以上、『トラップ』の感想でした。

Trap (2024) [Japanese Review] 『トラップ』考察・評価レビュー
#サイコパス #父親 #監禁