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『ダーク・アンド・ウィケッド』感想(ネタバレ)…あの正体を考察する

ダーク・アンド・ウィケッド

暗黒で邪悪な存在がそこにいる…映画『ダーク・アンド・ウィケッド』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:The Dark and the Wicked
製作国:アメリカ(2020年)
日本公開日:2021年11月26日
監督:ブライアン・ベルティノ
ゴア描写

ダーク・アンド・ウィケッド

だーくあんどうぃけっど
ダーク・アンド・ウィケッド

『ダーク・アンド・ウィケッド』あらすじ

両親から離れてそれぞれ暮らすルイーズとマイケルの姉弟は、父の病状が悪化したとの報せを聞き、久しぶりに生家であるテキサスの人里離れた農場を訪れる。父はそこで母に見守られ、ひっそりと最期を迎えようとしていた。ところが母は「来るなと言ったのに」と子どもたちを突き放す。やがて彼らは両親の様子がおかしいことに気づく。そしてその夜、悲劇が起こる。それは想像を絶する恐怖の幕開けで…。

『ダーク・アンド・ウィケッド』感想(ネタバレなし)

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実家に帰るんじゃなかった…

「コロナ禍の感染者数も減ってきたし、そろそろ実家に帰ろうかな…」

そんなふうに思っている人も多いであろう今の社会。でも大丈夫ですか。もしかしたら…実家がホラー映画の惨劇の舞台とかになっているかもしれませんよ。しばらく家を離れていたら何が起こってもおかしくありませんし、そんな可能性もゼロとは言い切れない…。実家に帰るんじゃなかったと後悔するかも…。

今回紹介する映画も、実家に帰ったら悲惨な恐怖を味わうことになるという、身の毛もよだつスリラー映画です。それが本作『ダーク・アンド・ウィケッド』

『ダーク・アンド・ウィケッド』の物語はとてもシンプル。まずアメリカのテキサスの田舎の実家に2人の姉弟が里帰りしてきます。2人とも大人で、独立した生活を歩んでいたのですが、高齢の父親が危篤状態でそう長くはないということで帰省してきたわけです。このあたりは、まあ、よくある話。

ところが、その実家がどうもおかしい。寝たきりの父親の面倒を見ている母(妻)の様子が変…あれかな、長く添い遂げてきたパートナーが亡くなりそうということで精神的に不安ということなのかな。それだったらまだ理解できます。しかし、その異変がどうも常軌を逸しているような気がしてくる…。

そして、事件が起こってしまい、そこからジワジワと恐怖が家を侵食していくという、心理的なスリラーになっています。ショッキングなシーンもあるのですが(特にゴア描写もある)、映画自体の派手さは抑えめで、ゆっくりと進行していくタイプの作品です。

この『ダーク・アンド・ウィケッド』を監督したのが、“ブライアン・ベルティノ”。2008年に『ストレンジャーズ 戦慄の訪問者』で長編監督デビューを飾り、これがマニアの間でヒット。このデビュー作はタイトルどおり謎の訪問者に襲われる男女を描いたものでした。2014年には『鮮血ピエロの惨劇』という映画を監督し、こちらは「撮り続けないと殺される」というシチュエーションに追い込まれた人々を描くもので、設定が凝っていました。2016年の『ザ・モンスター』はシングルマザーが正体不明の生物に森で襲われていく恐怖を描いており、この作品は私は“ブライアン・ベルティノ”監督作の中でもお気に入りです。2018年にはデビュー作の続編である『ストレンジャーズ 地獄からの訪問者』も手がけました(脚本のみ)。

ずっと得体のしれない恐怖に追い詰められていく人々を一貫して描いてきた“ブライアン・ベルティノ”監督ですが、今回は自身の出身地であるテキサスを舞台に実家に帰る主人公を描くということで、結構自身の人生とも重ねやすい感じで作ったのかなとも思います。

そして“ブライアン・ベルティノ”監督のフィルモグラフィーの中でも最も説明的要素が少なく静かににじり寄ってくるような映画になりました。本当に情報が不足ぎみの物語で、観客としては「え?なに?え?なに?」とずっと「もっと情報をくれ」ポーズをしたくなるほど…。そこも含めての楽しさですけどね。

俳優陣は、『最後の追跡』の“マリン・アイルランド”、『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』の“マイケル・アボット・Jr”。そして、ホラー好きにはおなじみかもしれない『キャンディマン』(昔のね)の“ザンダー・バークレイ”も登場します。

『ダーク・アンド・ウィケッド』は本当に説明がないので得体のしれない感覚を体中で感じながらも混乱状態で終始鑑賞していくことになるのですが、その答えが映画で明らかになるわけでもありません。後半の感想では私なりの考察っぽいこともしていますので、たまには恐怖を咀嚼してみるのもいいでしょう。

実家に帰る前に観る映画ではないかもしれませんが、とりあえず実家に帰ってみて親の様子がヤバいくらいにおかしかったらテキトーに理由をつけて出ていくのもいいんじゃないですか。自分の命を最優先に。

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『ダーク・アンド・ウィケッド』を観る前のQ&A

Q:怖いのが苦手でも観れる?
A:人体破壊描写(ゴア)を含む残酷描写が部分的にあるので苦手な人は目をつむってください。

オススメ度のチェック

ひとり3.5:監督ファンは注目
友人3.0:盛り上がるタイプではない
恋人3.0:怖いのが苦手でないなら
キッズ2.5:残酷描写が多め
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『ダーク・アンド・ウィケッド』予告動画

予告動画ではショッキングなシーンのネタバレも多少はあるので、新鮮に鑑賞したいなら予告動画を観ないほうがいいです。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『ダーク・アンド・ウィケッド』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):来るなと言ったのに

家畜の世話をするひとりの高齢の女性。夜中であるものの、ヤギたちに優しく言葉をかけて、愛おしそうに接します。どこかでは遠吠えが聞こえ、家畜小屋周辺のあちこちにぶら下がっているオオカミなどの害獣除けのような物音を発するお手製の品が、カランカランと音をたて、家畜は怯え…。

そして、家の中でひとり台所に立っていた女性は、ふと後ろを振り返り…。

月曜日。朝。若い女性がテキサスの田舎にある実家を訪ねてきます。ルイーズにとっては久しぶりの家です。ただ、母はあまり歓迎的ではなく、「来るなと言ったのに」と辛辣に呟きます。しかし、そうも言ってられませんでした。ルイーズの父は寝たきりで、もうそう永くはないことは明らか。看取るためにルイーズもやむなくやってきたのです。

弟のマイケルは近所の老齢のチャーリーと作業をしており、ルイーズとも軽く会話をします。やはり母からは良い歓迎は受けなかったようです。

家族3人集まっての久しぶりの食事。しかし、そこに温かい団欒はありません。会話はゼロ。耐え切れずにマイケルが言葉を発しますが、母を慰める言葉をかけるも、母は気が立っており、席を離れてしまいました。

ルイーズとマイケルは姉弟で2人並んで外で話し込みます。母がああなってしまったのはやはり父を失うという不安からなのか。けれども今となってはできることはありません。看護師の人がたまについてくれていますが、もう最期を迎えるのを待つくらいです。

夜中、母は調理していると背後で物音を聞きます。それでも包丁をトントンと動かし続け、そのペースをあげると、ついには自分の指を切り落とします。しかし、動じることはなく、さらに何本も指を切り刻んでいき…。

火曜日。ルイーズとマイケルは血まみれの台所を目にし、戦慄します。母を必死に探す2人は、外で大声を張り上げ、ついに発見。母は家畜納屋で首を吊っていました。急いで2人で必死に母の体を降ろしますが、時すでに遅く…。

水曜日。完全に意気消沈な2人。寝たきりの父を囲み、途方に暮れます。父を看取るはずだったのに母の死をみてしまうとは…。そこへ看護師。彼女いわく母は何か父のそばで囁いていたらしいです。しかし、父に対して囁いていたわけでもないとか…。

ルイーズはシャワーをあびていると父がすぐそこで棒立ちしている錯覚に襲われ、絶叫。気のせいにしては生々しい恐怖でした。

マイケルは母の日記を見つけて、それを読んでいきます。「悪魔」と何度も書き綴られており、尋常ではない精神状態を思わせます。ここまで追い込まれていたのか…。

木曜日。夜、勝手に電気がつくマイケルの部屋。そこでマイケルは窓の外に母が立っているような光景を目にして…

金曜日。ルイーズは起きると自分の顔が血だらけで驚きます。そして唐突に鳴り出す電話。自分たちさえも狂いかねないほどの恐怖。もうこの家にはいられない。でも出ていくわけにもいかない…。

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ゆっくりと実家の邪悪に沈む

『ダーク・アンド・ウィケッド』はとにかくゆったりと話が進みます。こういうスローペースで進行する映画のことを「Slow-Burn Movie」と英語で呼んだりするのですが、この本作はまさにその典型例です。

しかし、『ダーク・アンド・ウィケッド』はゆっくり進行しつつも映画全体に漂う不吉な不気味さは最初から全開です。このテキサスのド田舎では絶対に何かあるなと確信させる、そういう異様さに包まれています。

視覚的には序盤の母のうっかり指切断事件ですね。切断というか、みじん切りみたいにしているけど。ここの「うわぁ…」となるような不快感マックスの衝撃の後に、翌日の母首つり事件。考えられるかぎりにおいては最悪の実家帰りです。誰が実家に帰省して親の惨い死を見たいと思うのか…。

しかも、まあ、百歩譲って母が自殺したとしても「悲しい事件だったね」とお葬式でもして三々五々集まったと後にそれぞれで喪失感を胸に家に帰ればいいのですが、今作ではそうもいかない。なぜならまだ寝たきりで死にかけてはいるものの死んではいない父が残されているからです。面倒を看ないといけない義務が子どもたちである姉弟に発生し、この不吉な家に縛られることになってしまいます。

この心理的な束縛が本作の嫌らしさです。人にとって実家というものは負荷にしかならないこともあるという…。ルイーズとマイケルはこの実家の沼地にハマったのでした。

そこからの映画における恐怖描写は序盤ほどのショッキングさはありません。ルイーズは父のおぞましい幻影を見たような気がするし、マイケルは母の姿を見た気もする。でも確証はなく、そんなはずはないのに恐怖だけが蓄積していく。

作中でしだいに明らかになるのは母も同じ状況だったのではないかということ。その日記を読んでいくことで「母は狂っていたのか」という疑いが持ち上がりますが、答えは見えてきません。

そんな中、恐怖はチャーリーにも波及し、自分を撃って命を絶つ事態に。そして、土曜日。ここでヤギさんの大量殺戮という本作最大級のインパクト映像(日本のポスターでも使われている)が登場。なんだろう、ホラー映画でヤギは殺されまくりでやや不憫ですね…。ちなみにあの劇中でなにげなく登場する3本足のヤギ。CGとかではなく、本当に3本足のヤギだそうです。

最後は日曜日。ここでもう決定的なことが起こり、それが起こった瞬間にこの映画は終わりを迎えます。文字通りのバッドエンドですが。

ここまでの流れだとドラマ『真夜中のミサ』の序盤に似ている構成で、本来であればこの後の展開を気にしてしまうのですが、映画はこれで終わりなのでちょっと物足りなさは確かにありますね。

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あの正体は何なのか

『ダーク・アンド・ウィケッド』では結局のところ、あの恐怖の正体はわかりません。種明かしとなる背景説明が終盤にあるわけでもないですし、謎解きとなる答え合わせ的な展開もないからです。いわゆる「観客が勝手に受け取って考えてね」というスタイルであり、このわからなさ具合を恐怖にするのが売りであり…。

こういうなんだかわからない恐怖が襲ってくるのは基本的にはホラー映画における鉄板です。『ハロウィン』や『悪魔のいけにえ』でもそうですが、相手の実像が不明だからこそ恐怖が増幅される、そういうものです。

ではあえて『ダーク・アンド・ウィケッド』の恐怖の正体が何だったのか、考察をしてみると…。

まず作中で何度も言及されるとおり、あれは悪魔の仕業なのか。明らかにヤギの大量死からもわかるように野生動物の仕業ではありません。殺されているのがヤギだということで推察もできますが、悪魔の定番をなぞるような描写が多いので『ダーク・アンド・ウィケッド』も悪魔であることをそこまで否定する気もないのでしょう。

そもそもこの舞台となっているテキサス含むアメリカの田舎の地方では、悪魔にまつわる民間伝承がとてもたくさんあります。テキサスには「Devils River」という川もありますし、「デビル」の名がつく地名や生き物の愛称も珍しくありません。日本人感覚的には理解しづらいですが、おそらくこの地域に暮らす人々の間では悪魔への恐怖は歴史的に根深いのでしょう。

一方で別の解釈もできて、それが家という束縛。とくに家父長制への恐怖心ですね。そもそもルイーズもマイケルもこの実家にはそこまで帰りたいとは思っていなかったようで、あまりホームへの愛着を感じさせません。それは推測するに、この家でのかつての暮らしはあまり良いものではなかった…とも考えられます。

ことさら父への恐怖は前からあったのかもしれません。しかし、今はその父は死にかけている。そこにあの残された家族の複雑な心境が窺えます。

でも父はまだ生きているので家を離れられない。ここでまたも束縛が発生する。つまり、父が危篤となっても家父長制はなおも健在なのです

そういう目に見えぬ家族に覆いかぶさっていた恐怖が『ダーク・アンド・ウィケッド』の土台にはあるのかもしれないと想像してみるのも面白いですね。

世の中には実家に帰りたいと望む人もいれば、実家には二度と戻りたくないという人もいるし、実家から出たいと思っても出られない人もいる。

いろいろな束縛が家にはあるのです。

『ダーク・アンド・ウィケッド』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 91% Audience 62%
IMDb
6.1 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
6.0
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『ストレンジャーズ 戦慄の訪問者』
同じくブライアン・ベルティノ監督作。
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作品ポスター・画像 (C)2020, Panther Branch, LLC All Rights Reserved ダークアンドウィケッド

以上、『ダーク・アンド・ウィケッド』の感想でした。

The Dark and the Wicked (2020) [Japanese Review] 『ダーク・アンド・ウィケッド』考察・評価レビュー