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『ドント・ブリーズ2』感想(ネタバレ)…続編もやっぱり嫌なんですけど

ドント・ブリーズ2

あの盲目の老人(強)が続編でも容赦なし…映画『ドント・ブリーズ2』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Don’t Breathe 2
製作国:アメリカ(2021年)
日本公開日:2021年8月13日
監督:ロド・サヤゲス
児童虐待描写 動物虐待描写(ペット)

ドント・ブリーズ2

どんとぶりーず2
ドント・ブリーズ2

『ドント・ブリーズ2』あらすじ

ひとりの少女が盲目の老人の暮らす屋敷で育てられていた。穏やかで静かな生活を望む老人だったが、少女はもっといろいろな経験をしたいと思っていた。そんな2人の前に、狂気に満ちた謎の武装集団が現れる。彼らは人の命を殺めることに何の躊躇いもない。そして次のターゲットはこの少女だった。しかし、なりふり構わず家に踏み入ってきたこの集団を黙って見過ごす老人ではない。再び恐怖が動き出す。

『ドント・ブリーズ2』感想(ネタバレなし)

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あの狂気の老人、再び

新規タイトルの映画が大ヒットしたとき、その映画の2作目を作るぞ!となって、その2作目が成功するかというのはかなり大事なポイントです。というのも、ここで2作目も良い結果を出せればシリーズ化も企画進行できるわけですから。そうなってくるともう立派なシリーズもの。堂々たる自社タイトルとして製作会社も大満足。多くの映画企業はこういう理想的なサクセスストーリーを求めて、日々いろいろな映画を作りだしているわけです。

しかし、現実はと~っても厳しい。1作目はヒットしても2作目はどうなるかはわからないもの。もしかしたら1作目とは打って変わって大不評の惨敗になるかもしれない…。そういうことも残念ながらよくあります。

こういう「2作目もいけるか?」という挑戦に踏み出しやすいのはホラー・スリラーのジャンルです。比較的低予算で作れるので挑戦しやすいのが理由にあります。仮に失敗しても損失は少なくて済みます。だからホラー・スリラーの映画の世界では、そんな2作目たちがいっぱいあります。

最近だと『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』『海底47m 古代マヤの死の迷宮』『ハッピー・デス・デイ 2U』などがわりと成功した部類の2作目でしょうか。

そんな中、この映画もついに2作目が登場です。それが本作『ドント・ブリーズ2』

本作はタイトルのとおり、あの2016年に公開されて話題となった『ドント・ブリーズ』の続編です。この『ドント・ブリーズ』は当時のその年のホラー・スリラー映画界では一番の話題作のひとつでした。あまりに有名になりすぎて、以降も「ドント・なんちゃら」みたいな便乗邦題が連発したくらいです(たいていはテキトーなネーミングで内容と全然関係ない)。ちなみに日本の配給(ソニー)は「ドンブリ」という愛称を推してるみたいですね(公式サイトのURLが「donburi-movie.jp」になっているし)。そんなに定着していない気もするけど…。

とにかくこの『ドント・ブリーズ』、タイトルは「Don’t Breathe=息を止めろ」の意味ですが、バイオレンスな盲目老人が若者を襲うという緊迫のスリラー…なのですが、実際に観てみるとそのタイトルの要素以上のドン引きなショッキング要素があって、鑑賞者の記憶にはそっちが鮮烈に刻まれるという…(あえて詳細は書かないでおこう)。なんというか、盛大なタイトル騙しですよ。ホラーとしては確かにホラーでしたけどね。

その『ドント・ブリーズ』も大ヒットしたので当然のように2作目が制作。そして生まれたのがこの『ドント・ブリーズ2』。盲目のあの老人が出てくるのは前作と同じ。そこで1作目とどう変えてくるのか。ぜひとも目撃してほしいです。2作目だからってやたらと派手に激変したりせず、ちゃんと1作目のトーンを守っています。あの衝撃の“アレ”は出てくるのかは…言いませんけど…。

監督は前作の“フェデ・アルバレス”は製作にまわり、今回は前作で脚本に関わった“ロド・サヤゲス”が監督に抜擢。製作には相変わらず“サム・ライミ”が関与しています。

主演は当然この人。盲目の戦慄の老人を怪演した“スティーヴン・ラング”。今回もムッキムキの殺人マシーンなオーラでスクリーンを釘付けにします。ポスターを見ると、かろうじて渋い大工のオッサンに見えなくもないですけど、その手にあるトンカチは人を殺す道具ですからね。

もうひとりの主役と言ってもいい、女の子を演じるのは“マデリン・グレイス”という子役なのですが、この子も今後はキャリアが伸びていくのだろうか。

前作同様に『ドント・ブリーズ2』も暗いシーンが非常に多いので、なるべく大きなスクリーンで鑑賞するのがオススメです。もちろん音を立てずにじっと物語の緊張感とシンクロしてください。隣にポップコーンをカリカリ食べている人がいたら…きっと後ろから“スティーヴン・ラング”が頭をかち割ってくれる…そう妄想してね。

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『ドント・ブリーズ2』を観る前のQ&A

Q:『ドント・ブリーズ2』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:前作と話は繋がっていますが、それほどでもありません。時間があれば観ておくとより楽しめます。とくに舞台となる建物の構造の使い方が1作目と反転していたりして、そういう点にも注目するといいです。
Q:怖いのが苦手でも観れる?
A:グロテスクでバイオレンスなシーンは多めです。ショッキング度は…前作よりは低いかな?

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:前作をおさらいしつつ
友人 3.5:スリラー好き同士で
恋人 3.0:怖いのが平気であるなら
キッズ 2.5:暴力描写満載
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ドント・ブリーズ2』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):またも侵入者たちが…

11歳の少女フェニックスは、退役軍人で盲目の父親であるノーマンと愛犬のシャドーと共に過ごしていました。ここは周囲に人はあまりいない静かな場所。ノーマンは目が見えないものの生活はできており、それでももうかなりの老体です。フェニックスはノーマンの髪を切ってあげたりとできるかぎりの世話をしています。

ノーマンは愛する者を失った経験からフェニックスに対しては過保護でした。ましてや最近は臓器密売組織による誘拐が頻発しているらしく、フェニックスを独りにはできません。いつも愛犬のシャドーを一緒にさせて家の近くだけを行動範囲にさせていました。フェニックスは他の子どもとも過ごしてみたいと訴えてみますが、ノーマンは厳しい口調でそれを拒否。フェニックスにはそんな現状がやや退屈です。

しかし、チャンスが訪れます。ある日、家に生活必需品物資を届けてくれる退役軍人のヘルナンデスに同行して街へ行くことを許可されたフェニックス。ノーマンに内緒ですが、火事によって無残に焼け落ちた家へと向かいます。実はフェニックスは以前はこの家で暮らしていました。思い出のものはみんな焼け焦げて炭になっており、見る影もありません。

そのとき、物音が…。怖くなったフェニックスは急いでその場を離れます。

その後、公園で孤児院と思われる同年代の子が遊んでいるのを見つつ、自分も輪に加わることに憧れつつも何もできないフェニックス。そして、公園のトイレで不審な男に絡まれます。シャドーが吠えてくれたことで男は何もしませんでしたが、明らかに怪しい。

その日の夜、ノーマンの家からの帰り道、ヘルナンデスは謎の集団に惨殺されてしまい…

この集団のリーダーはレイランという名で、次の狙いをあのフェニックスに定めていました。まずは邪魔な犬のシャドーを誘き寄せて排除。そして、家へと侵入していきます。

一方、森の中で愛犬の亡骸を手探りで発見して悲痛の感情に浸るノーマン。またも愛する者を失ってしまった…。しかし、愛犬が殺されたらしいことを察知して、すぐに家へ直行。まさにフェニックスが誘拐されそうになっている瞬間でした。

ノーマンは恐ろしいほどの迫力で侵入者を躊躇いなく殺していきます。それはフェニックスさえもショックを受けるほどの怖さ。またひとりまたひとりとレイランの手下たちはあの世へと送り込まれていきます。

実はこのノーマン、8年前にも家に強盗目的で侵入してきた若者たちを殺していった経験があったのでした。しかも、さらなる過去もあって…。

レイランはノーマンに「秘密を知っている」と語りかけます。こちらの隠しておきたい過去はもう知られているようです。であればなおさら逃がすわけにはいかない。ノーマンの殺気は命を救えるのか、それともさらなる罪を上塗りするだけなのか…。

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恐怖から守護者へ?

2作目を作るときは1作目から構造を反転させるものも多いですが、この『ドント・ブリーズ2』もそうで、あの1作目の恐怖の具現化だった盲目老人を今作では主人公に据えています。しかも、少女を守るボディーガード的なヒーローとして

これは映画によくある「少女を守ろうとするオッサン」の構図ですね。他にもいくらでも同様の映画は思い浮かぶと思います。

しかし、少なくとも1作目を観た人ならわかっている。この盲目老人は少女を守るという柄ではないということを。なにせ1作目のときは…あんな狂気じみたことまでしていたのですから。

つまり、序盤で提示される本作のベタな構図をすんなり信用できません。これ、本当に大丈夫なのか…という感じで常に信じ切れない警戒心が付きまとうわけです。それをわかっていて嘲笑うかのように、冒頭から“襲われて逃げている”風の映像を見せたり、観客をおちょくってきます。この悪ふざけ、“サム・ライミ”だな…。

そして悲劇は繰り返される。またしても盲目老人の家に侵入者が(ちょっと前作と比べてセキュリティが弱い気もするけど)。しかも今回は馬鹿な若者たちではありません。クレイジーな殺人も躊躇わない集団です。怒らせてはいけない奴を怒らせてしまった…でも相手もヤバイ。事実上の「殺人鬼vs殺人鬼」。ただ今回も地の利があるので盲目老人が優勢で、序盤は圧倒的な破壊力で侵入者たちを恐怖のどん底に陥れていきます。

ここのシーンは本当に怖いですが、観客としては観ている立場が違うので、「やっつけろ!」という応援もできますね。前作の展開に対するステージ2としてもよくできています。今回はこの家が盲目老人を閉じ込める空間になってしまい、前半山場の火事の中の脱出劇になっていくのもスリリング。よく目が見えないのに出られましたよ。

さらに後半も強い。この盲目老人、結局どこに行っても最強なんじゃないか…。

こういう「恐怖の存在」を続編で「守ってくれる頼もしい存在」に転換するアイディアは『ターミネーター2』へのリスペクトでしょうか。もともと1作目の頃からあのしつこさといい、盲目老人はターミネーターっぽいところがありましたしね。

『ドント・ブリーズ2』はその構成の“都合がいい”部分を指摘するような、意地悪さがある2作目でした。

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犬の名誉挽回

『ドント・ブリーズ2』、その企画の土台となる設定はいいのですが、最終的な盲目老人の扱いに関してはかなり甘々な感じになってしまったのは否めないと思います。

最終的にどうオチをつけるのかなと思ったら、「少女に赦してもらう」展開ですからね。まだ自己決定能力のない少女相手に“良い部分”を見せて心を入り込んでいくというのは、一般論として一番ダメなことで、普通に犯罪の出だしになるのですけど…。

第一、今回の猟奇的悪役ポジションであるあの男女。あの行動動機も正直かなり強引で、そもそもあんなやぶ医者状態で手術してもいくら適合者と言っても失敗リスクは跳ね上がるでしょうから意味ないんじゃ…。

あのフェニックスことタラも、今回の一件で殺戮を経験してしまいましたからね。絶対に幼い心にトラウマを刻み込んだと思うので、あんなエンディングの希望溢れる感じはないと思う…。

個人的には盲目老人はとことん救いようのない倫理を吐き捨てるような暴力のどん底に堕ちていってほしかったです。私なりの理想は盲目老人と互角で戦える最強の存在とかが出てきてほしかったです。聴力を失った老人とかね。そういう対決はいかにもジャンル映画っぽいじゃないですか。もしくは同じく盲目の女性を対峙させるというのも良い。それこそ『サイレンス』みたいな主人公と激突することで、初めてあの盲目老人の罪は曝け出されて断罪されていくことになるのかなとも。

ただ、本作には盲目老人よりも名誉挽回できた存在がいるのです。それは「犬」

前作でも犬は恐怖の存在で、執拗に追いかけてくる恐ろしさでした。今作のシャドーは立場が変更。こちらも守る存在に。実はこの犬の犬種は「ロットワイラー」といって(愛称は「ロッティー」)、この犬種は『オーメン』(1976年)にも印象的に登場し、巷では怖い犬のように扱われてきましたが、根は優しい利口な犬です。『ドント・ブリーズ2』ではそのホラー映画のせいで印象が悪くなった犬の汚名返上に用意された物語にもなっていました。まあ、死んじゃうのですけど。

それでも次に現れる新顔の犬も可愛いですよね。この犬関係のところはスラップスティックというか、本作の数少ない癒し要素。「家に帰れ」と言われてしっかり元の主人の居場所をバラしてしまう犬がシュール。

エンディングではまだかろうじて生きているかのような雰囲気もあった盲目老人。これは3作目もあるのかな。今度は盲目の人だけが集まるサバイバルデスマッチとかに参加してほしい。

『ドント・ブリーズ2』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 51% Audience 89%
IMDb
6.4 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
5.0

作品ポスター・画像 (C)2021 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved. ドントブリーズ2

以上、『ドント・ブリーズ2』の感想でした。

Don’t Breathe 2 (2021) [Japanese Review] 『ドント・ブリーズ2』考察・評価レビュー