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ドラマ『Devs』感想(ネタバレ)…デヴスの結末を予測できるか?

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デヴスの結末を予測できるか?…ドラマシリーズ『Devs』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Devs
製作国:アメリカ(2020年)
シーズン1:2022年にDisney+で配信(日本)
原案:アレックス・ガーランド
交通事故描写(車) 恋愛描写

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『Devs』あらすじ

リリー・チャンはアマヤという巨大テクノロジー企業の暗号化部門で働いていた。ある日、同じ職場の恋人の男性がその研究成果を認められ、アマヤのCEOであるフォレストの誘いで「デヴス」という部署に異動する。そこでは誰も見たことがない秘密の開発が行われていた。ところが、詳細をよく知らないリリーの前にショッキングな出来事が起こる。これは避けられなかった無惨な悲劇なのか。それとも別の意味があるのか…。

『Devs』感想(ネタバレなし)

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アレックス・ガーランドがドラマで描くのは…

はい、あなたがこのページを閲覧することはわかっていました。

いや、もうちょっと待って、ブラウザバックしないで…。確かに気持ち悪い文章の始まりだけど、これは今回紹介するドラマシリーズと関係ある話なんです(懸命に呼び止める)。

一体どういうことなのか。それは本作を観てくださいとしか言いようがありません。

そのドラマシリーズとは『Devs』です。

意味深なタイトルですが、本作を語るならまずは監督から言及する方がいいでしょう。その人とは“アレックス・ガーランド”です。

イングランド出身の“アレックス・ガーランド”はもともと小説家で、自身の原作小説『ザ・ビーチ』がそのまま“ダニー・ボイル”監督によって映画化されたことで、この映画業界に足を踏み入れます。そして脚本を手がけた『28日後…』(2002年)がスマッシュヒット。この話題をかっさらった実績で、脚本家としても注目の人物となり、『わたしを離さないで』『ジャッジ・ドレッド』など脚本作が増えていきます。

しかし、ここで“アレックス・ガーランド”のキャリアに激震が…。初監督作となった2014年の『エクス・マキナ』が非常に高評価をおさめ、マニアも唸るビジュアルやストーリーもあって、一気に注目SF監督のトップとして頭ひとつ抜きん出ました。

その後は2018年に『アナイアレイション 全滅領域』、2022年には『MEN 同じ顔の男たち』を監督し、その硬派なSFスタイルを深めています。

そんな“アレックス・ガーランド”がドラマシリーズも手がけていたことは日本ではあまり知られていません。そのはずでその“アレックス・ガーランド”が企画し、全エピソードの監督と脚本もやりきった本作『Devs』は2020年の作品なのですが、「FX」制作ということもあり、日本では日の目を浴びる機会が全然ありませんでした。

そのドラマ『Devs』が日本では2022年に「Disney+(ディズニープラス)」で配信が始まったことで、やっと見やすくなったので、これはSFファンは必見と言えるのではないでしょうか。

『Devs』は“アレックス・ガーランド”監督の作家性がこれまた濃密に封入された作品で、言ってしまえば『エクス・マキナ』の姉妹編みたいな感じです。『エクス・マキナ』はテック企業に勤める主人公がそのCEOに招かれて“秘密の発明”を見せてもらうことでサスペンスが展開していくものでした。この『Devs』もスタートはほぼ同じで、やっぱりテック企業に勤める主人公(厳密にはその恋人)がそのCEOに招かれて“秘密の発明”を見せてもらいます。

じゃあ、その“秘密の発明”とやらは今回は何なのかという話ですが、『エクス・マキナ』は高度なAIを持つアンドロイドでした。『Devs』はというと…それは言ったらつまらない。ヒントはこの記事の冒頭の文章ですね。ネタバレ無しで視聴するべきです。

正直に言って『Devs』は“アレックス・ガーランド”監督作の中でも最も難解でややこしいSFの領域に突入していますし、明らかに一般ウケはしないと思いますが、SF好きはあれこれ満喫できると思います。いかにも“アレックス・ガーランド”監督が好きそうだなと思うポイントもたっぷりありますよ。

『Devs』のもうひとつの特徴は、主人公がアジア系だということです。こういうジャンル作品でステレオタイプなものを抜きにして、アジア系が普通に主人公をしている作品は2020年代になってもいまだに珍しいです。『Devs』はアジア系のステレオタイプに陥らずにちゃんと主人公をやっており、そこだけでも新鮮ですよ(そんな世の中、とっくに卒業してほしいのですが)。

その『Devs』の主人公を演じるのは、日系イギリス人の“ソノヤ・ミズノ”。“アレックス・ガーランド”監督とは深い付き合いで、『エクス・マキナ』ではセリフ無しだったものの印象に残る役で、その後も『アナイアレイション 全滅領域』や『MEN 同じ顔の男たち』でもキャスティングされているのですが、ついに『Devs』では堂々の主役。もちろんセリフもたくさんあるし、活躍しまくりです。

共演は、『ホテル・エルロワイヤル』の“ニック・オファーマン”、ドラマ『Pachinko パチンコ』の“ジン・ハ”、ドラマ『グッド・ワイフ』の“ザック・グルニエ”、『DUNE/デューン 砂の惑星』の“スティーヴン・ヘンダーソン”、ドラマ『メア・オブ・イーストタウン』の“ケイリー・スピーニー”、ドラマ『スタートレック:ピカード』の“アリソン・ピル”など。

『Devs』はミニシリーズで、全8話。1話あたり約43~57分で、スローペースで物語は進行するので、じっくり腰を据えて鑑賞しましょう。

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『Devs』を観る前のQ&A

✔『Devs』の見どころ
★アレックス・ガーランド監督らしい濃厚なSF。
★ソノヤ・ミズノ演じるアジア系の主人公。
✔『Devs』の欠点
☆スローペースで物語が進むので根気が要る。
☆難解なSFであり、わかりやすいものではない。

オススメ度のチェック

ひとり3.5:監督の作品が好きなら
友人3.5:SF好き同士で
恋人3.0:異性愛ロマンス要素少し
キッズ3.0:やや難解だけど
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『Devs』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『Devs』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤):何一つ変わらない

窓越しに朝の光を浴びていたリリー・チャンは同居している恋人の男性セルゲイ・パブロフと朝食をとります。

「楕円曲線はRSAより優れている」「暗号化部門で働いている私に部外者が言うわけ?」「同程度の暗号だと?」「量子コンピューターの攻撃に対して同じ弱点がある」「RSAは力技すぎる」

そんな会話をしつつ、2人は一緒に出勤。ドアの前でホームレスのピートが寝ている横を通り過ぎて挨拶し、「amaya」と書かれたバスに乗ります。2人が勤めるのは森の奥にあるアマヤの本社。木よりも巨大な女の子の像が立っています。2人はバスを降り、少し緊張した面持ちで入り口で別れます。

セルゲイは会議室で他の同僚とプレゼンテーションのために座っていました。そこにCEOのフォレストがやってきて「世界中が我々の量子ビットを妬んでる。我々を政府の監視下に置くべきだと競合他社が新聞に書かせたのさ」と語りつつ、セルゲイたちの線虫シミュレーションの結果を見ます。

線虫の動きと同期し、10分先の未来を予測した動きも可能という結果に満足そうです。しかし同期させた30秒後に相関性が失われてしまうと知ってそこで発表を終わらせます。

セルゲイだけを残して「Ai部門ではなく、デヴスに加われ」とフォレストは告げました。

すぐにセルゲイは警備主任のケントンから身分チェックを受けます。モスクワ生まれのカレシのセルゲイに対してケントンはロシア人と中国人の結婚は心配だと淡々と指摘してきます。虹彩と指紋、唾液を採取し、セルゲイはフォレストに案内され、外を通ってある建物へ。

職場でリリーは窓からフォレストと歩いていくセルゲイを目撃します。

「何をしているのか当ててみろ」とフォレストに言われ、セルゲイは「デヴスだから何かを開発している。システムの応用ですか? AIではない。暗号化でも検索エンジンでもない。バイオ関連? 核関連?」と推察しますが、見当もつきません。

辿り着いたのは少し離れた位置に建つ不思議なコンクリート建造物。鉛製のファデラーシールドがいくつも周囲に立っており、破られない真空空間の奥にラボはあるそうです。

内部のキューブ型ラボに立ち入ると中央にマシンが鎮座。「何量子ビットですか?」「その数を数字で表すのは無意味だよ」

その美しさに目を奪われる中、「規則は1つだけ、何も持ち込めず、何も持ちだせない。それ以外はオープンだよ」とフォレストから説明を受けます。

「それで何をすればいんですか?」「それを教える必要はない」「ただ座ってコードを読むんだ。きっとわかる」

画面に向き合うフォレスト。じっと見つめていましたが、急に立ち上がり、吐いてしまいます。気を取り直してまたモニターに向き合いますが、同じ部屋にいたケイティが飲み物を渡してくれ、「ゆっくりでいい」とアドバイス。

「このコードは現実なのか? それとも理論上のもの?」「理論じゃない」「でもこれは全てを変えてしまう」「いいえ、もし本当なら何一つ変わらない」

セルゲイは外へ出て帰ろうとします。しかし、夜道でフォレストに遭遇し、「宇宙は決定している。物理的法則のみで定義される。全ては規定され、逸脱しない」「腕時計を使い、コードを盗んだ。君がしたことは君にしかできない」と言われます。

そしてセルゲイは不意に現れたケントンに襲われ…。

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マルチバース大嫌い男の私利私欲

『Devs』は最初は「これは『エクス・マキナ』で見たやつだな」と既視感満載なのですが、まず気になるのは一体何を開発しているのかということ。コードだからコンピューターのようなハードよりも、AIなどのソフトウェア系なのかなとあれこれ想像していくわけですが、その答えはすぐに提示されません。

前半はまさかの企業スパイによるスリラーが展開されていきます。焼身自殺映像でボーイフレンドのセルゲイの死を目の当たりにしたリリーでしたが、そのセルゲイが実はロシアのスパイではないかという疑惑が浮上。そうなってくると自分とセルゲイの関係も本当の愛ではなく、任務のために都合がいいから接近してきただけなのかという疑念が持ちあがり、リリーは二重でショックを受けます。自分が生きてきた世界がまるで虚構だったと突きつけられた気分です。

ケントン相手に大芝居をうって統合失調症のふりをして情報を盗み出すなど、意外な駆け引きの上手さを発揮するのですが、それでも精神病棟送りになってしまう屈辱を味わいます。

しかし、もっと凄い衝撃を受けることになります。それがこの「デヴス」の存在。

イエス・キリストの映像がぼんやりと再現され、これは過去の映像を見られるタイムマシン的な装置なのかと思ったら、多世界解釈(エヴェレットの解釈)など物理学用語が頻発していき、しだいにフォレストの目的が判明していきます。

その目的とは事故で失った妻と娘の死の喪失をテクノロジーで乗り越えること。具体的には娘を創造し直すことでした。バイオテクノロジーではなく、アンドロイドでもなく、決定論に基づいてコードで再現するというのがまたややこしいことをするなという感じですが…。

それにしてもリンドンをクビにしてまで多元宇宙(マルチバース)に嫌悪感を示したり、もはや面倒くさいオタクみたいなのですが、ああいう娘への極度に理想化された愛着という描写は、おそらく極端な自己理想を投影した”女の子“表象への執着が特徴として観察される世間のオタク像への風刺でもあるのかなとも思いました。

とは言え、そこは“アレックス・ガーランド”監督作。単純な風刺ではなく、ものすごく何重にもオブラートで包んでいくような世界観構築で、ちょっとずつその全容を不気味に見せていきます。このあたりのセンスは相変わらずでしたね。

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神様になれなかった、でも幸せだった

また、『Devs』はおそらく“アレックス・ガーランド”監督的には『エクス・マキナ』よりもジェンダー面でのアプローチが進んでいるのだと思います。

そもそもあのフォレストは見た目が髭面ということもあって、典型的な男性の神様像に近い姿をしています。やっている研究もまさに神の行いに近しく、「Devs」は本当は「Deus」(ラテン語で神の意味)だったという事実からもわかるように、テクノロジーで神になり、自分の娘を復活させるという私情を達成しようとしています。

一方で、結局のところ、終盤ではその「Devs」の主導権を握るのは、同僚で主任設計士でもあるケイティ、そして上院議員のレインです。つまり、女性たちであり、とくにケイティはかなり初期からフォレストの狙いとは別の己の研究意欲を満たすためにこの開発に捧げてきたことが徐々にわかってきます。

本作は神になろうとした男がむしろ神の創造物になってしまい、それをコントロールするのは女性であるという、いわば聖書へのアンチテーゼになっている物語だとも解釈できるでしょう。

同時にフォレストとリリーは「Devs」の創造の世界で理想の人間関係の中で生きることになりましたが、しかしながら、それを見つめているケイティたちの世界も誰かの創造の世界ではないと言い切れないですよね?という根本的な疑問を投げかけてこのドラマは幕を閉じます。もちろんそれはこのドラマシリーズを見ている私たち視聴者の目線の存在も合わさることで、より生々しさが増すという演出です。このあたりも「見る・見られる」という映像作品の構造を巧みに活かしていました。

ちょっと“アレックス・ガーランド”監督版の『マトリックス』と言えるのかな。

『Devs』の不満を書くなら、物語自体が相当にスローペースで、人間関係の構図がなかなか判明してこないわりには、終盤になってもサイド・キャラクターの物語はそんなに掘り下げられずに終わるのはもったいなかったです。リンドン、スチュワート、ケントンあたりはもっとドラマが欲しかったな…。

未来を完全に予測するほどの決定論を否定しつつ、虚構であろうが現実であろうが幸せなら人はそれでいいのかもしれないという、デジタルなリバタリアニズム・ストーリーだったのかもしれないですね。

『Devs』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 82% Audience 78%
IMDb
7.7 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
6.0
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同じくアレックス・ガーランド監督作。
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作品ポスター・画像 (C)Disney

以上、『Devs』の感想でした。

Devs (2020) [Japanese Review] 『Devs』考察・評価レビュー