暗くなったら帰りましょう…ドラマシリーズ『フロム -閉ざされた街-』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2022年~)
シーズン1:2024年にU-NEXTで配信(日本)
シーズン2:2024年にU-NEXTで配信(日本)
シーズン3:2025年にU-NEXTで配信(日本)
原案:ジョン・グリフィン
自死・自傷描写 交通事故描写(車) ゴア描写 性描写 恋愛描写
ふろむ とざされたまち
『フロム 閉ざされた街』物語 簡単紹介
『フロム 閉ざされた街』感想(ネタバレなし)
ドアを開けるのは怖いに決まってる
配達員が来てもドアを開けない女性を茶化す動画を作った日本郵政はあまりよく理解していないようですけども、一般的に「家のドアを開ける」という行為は、単なる開閉の動作だけでなく、それ自体が自身の安全性に関わる重大な瞬間です。
ドアを開けた瞬間、そこには無防備な隙ができるわけですから。どんなに厳重な鍵を備えようとも、ドアを開けるそのワンシーンは意味がありません。
なので恐怖が生じます。あまりに日常的にドアを開けることを繰り返していると、慣れてしまって感覚が鈍ったりもしますが、ドアを開けることは本来緊張感があるものです。
だからホラーのジャンルでは、この「ドアを開ける」という展開がよく活用されます。開けて大丈夫なのか…ドアの先にいるのは危険な存在ではないのか…。疑心暗鬼が渦巻く中、このドアを開けてしまったら何が起こるのか…。観客は観たいようで観たくないようで、そんな好奇心と恐怖心の狭間で見守るしかできません。
今回の紹介するドラマシリーズも、そんな「開けるの? 開けちゃダメだ!」で始まる恐怖が開幕早々に待っています。もちろんそこにいるのは配達員ではない…けれどもよく見る配達員の姿そっくりかもしれない…。
それが本作『フロム 閉ざされた街』です。
本作はアメリカのドラマシリーズで、2022年から「Epix」(後に「MGM+」)で放送が開始しました。
当初から宣伝では大ヒットとなったドラマ『LOST』と重ねてアピールしており(本作の原題は『FROM』で、同じアルファベット4文字)、確かに大雑把に通じるものはあります。
『LOST』は旅客機の墜落で島に取り残された何人かがサバイバルしながら繰り広げる人間模様が主軸で、その島は妙に不思議なところで、先の読めないミステリアスなSFが展開していきました。
この『フロム 閉ざされた街』は、島ではなく、小さな町で、なぜか町の外に出ることはできない状況になっており、その謎の町に閉じ込められた人たちの群像劇となっています。その町では暗くなると家の中に絶対に籠らないといけなくて、ドアを開けてしまったら…。
無論、ネタバレはできませんが、「どういうこと?」という常識外れの現象や事件が連発し、登場人物も視聴者も翻弄されることになります。
原作はないのですが、“スティーヴン・キング”をリスペクトしているようなホラー要素があちこちに散りばめられており、そういうトーンのジャンルが好きな人はハマるでしょう。相当にゆっくりとしか謎解きは進まないので、根気強く視聴しないといけないですが…。
原案は“ジョン・グリフィン”というクリエイターによるもので、本作が本格的な初の大仕事のようです。
『フロム 閉ざされた街』に出演する俳優陣は、ドラマ『LOST』にもでていた“ハロルド・ペリノー”、『そして、ひと粒のひかり』の“カタリーナ・サンディノ・モレノ”、ドラマ『ザ・スタンド』の“アイオン・ベイリー”、ドラマ『SUITS/スーツ』の“デヴィッド・アルペイ”、ドラマ『When Hope Calls』の“エリザベス・サンダース”、ドラマ『FBI: 特別捜査班』の“スコット・マッコード”、ドラマ『グッド・ドクター 名医の条件』の“リッキー・ヒー”、『Lune』の“クロエ・ヴァン・ランドシュート”、『One Must Wash Eyes』の“ペガー・ガフーリ”、ドラマ『Slasher』の“コルテオン・ムーア”、『シンクロナイズドモンスター』の“ハンナ・ケラミー”、『Honor Society』の“エイブリー・コンラッド”など。
登場人物はとにかく多いですが、まあ、役割や立場も発揮しているので、覚えにくいということもないと思います。
『フロム 閉ざされた街』は2024年時点で、シーズン1からシーズン3まで続いており、各シーズン全10話(1話あたり約45~60分)。家のドアの施錠を確かめてから視聴を楽しんでください。
『フロム 閉ざされた街』を観る前のQ&A
鑑賞の案内チェック
基本 | 残酷な遺体などの描写、拷問の描写があります。また、子どもが殺される展開があるので注意です。虫の群れがでてくるシーンがあるので苦手な人は気を付けてください。 |
キッズ | 暴力的な描写がやや多めで、怖いシーンが多々あります。 |
『フロム 閉ざされた街』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(序盤)
ベルを鳴らしながら町を歩くひとりの黒人の男。彼の名はボイド。まだ明るく、日没まであります。しかし、それを耳にした人たちは子どもも大人も続々と家に帰っていきます。ダイナーでさえ閉店にし、みんな従います。いつもの習慣のように…。
ひととおり町を巡るとボイドは郵便局に足を運びます。入り口には96日間何も起こっていないという知らせがあります。
その夜、ミーガンという少女は家の窓の外に祖母がいるのを目にし、思わず窓を開けてしまいます。その瞬間、その祖母だった存在は凶悪な見た目に変貌して襲ってきて…。
翌日の朝、ミーガンの父フランクは呑気に他人の家から帰ってきましたが、自宅の前では住人たちが集まっていました。そして怒りあらわにボイドはフランクを家の中に引っ張っていき、窓を封鎖しなかったフランクを責めます。部屋にあったのは無残な母娘の亡骸でした。
別の場所、とある道路。ジムとタビサのマシューズ夫婦は子どもで長女のジュリーと幼い息子のイーサンを連れて家族でキャンピングカーでドライブして旅していました。
順調に走行していましたが、唐突に進路方向に倒木が道を塞いでいる状態に直面。やむを得ず、迂回して小さな町に辿り着きます。いつの間にかスマホの電波もないです。この町は寂れていて、壊れた車がやけに多く目につきました。
道がわからずに困り果てていたマシューズ家にボイドが近づき、丘の上の道をずっと進んでいくように指示します。しかし、ずっと道なりに進んでいたはずなのにあの小さな町に戻ってきてしまいました。
何度やってもあの町に戻ってきてしまうので、夫婦は喧嘩になります。そのとき、対向車線の車が猛スピードで近づき、ハンドルを切ってしまい、車は道を外れて横転。ジムが目覚めると、イーサンが負傷していました。
反対車線の車を運転していたのはトビーで、トビーの車の後部座席にいた朦朧としている男はジェイド。すぐさま駆けつけたボイドと、治療の技術を持つクリスティによって手当てが始まります。ボイドの補佐をするケニーは動ける人を町の家に避難させます。
夜になる前に対処しなければ…。
シーズン1:謎が大渋滞だよ!

ここから『フロム 閉ざされた街』のネタバレありの感想本文です。
謎が謎を呼び、解決どころか毎話で疑問が増えていく『フロム 閉ざされた街』。正直、シーズン1だけでは全然何もスッキリはしません。
とりあえず夜になると外に「姿形を自由に変える怪物」がわんさか出現し、家に侵入する隙があれば容赦なく襲って無残な死体に変えていくことだけは第1話で明確に示されます。
あの謎のクリーチャーは物理的に確かに存在しているようです。自分たちで家に能動的に侵入できず、招き入れないと入れないあたり、どこか吸血鬼みたいですが(魔除けも効くし)、人間を襲うのは捕食などの意図はなさそうで、本能的にしても狙いは不明です。対面する相手の親しい人物になりすませるので、心理的な作用がありそうですが…。
そしてあの町は何なのか。本作は登場人物の人種も年齢もバラバラで、特定の地域性をださないようにしています。それゆえに安易に予想できず、謎が深まっています。
ジムとタビサが作中で推測するように、この町に迷い込んだ人は実はみんな死んでいて煉獄にいるだけなのでしょうか。
謎の声に翻弄されるサラには特定の誰かを殺すような指示が舞い降り、腕の傷跡でも伝えてきます。これは聖痕のようで、どこか宗教じみています。カトリ神父はこれは新たな聖書の創造のための試練と独自解釈しますが…。
また、この町は車でしか来れないようで、ボイドも妻アビーと息子エリスと初めてここに来た過去が振り返られます(アビーは錯乱して手当たり次第に人を撃ち、やむなくボイドは妻を射殺することに…)。やはり倒木がフラグの様子。逆にそれ以外の共通点があの迷える住人たちには見受けられません。
トリックなどではなく、時空がねじ曲がっている感じも観察でき、古い時代の痕跡もあるし…(南北戦争時代の兵の幻覚とかまででてくる)。
シーズン1の終盤まで畳みかけるように謎の連発です。謎の白い服の少年、木にぶら下がった謎の瓶、謎のシンボル、謎の電気、謎の蜘蛛、ラジオ塔からの謎の警告の声、謎の地下…。謎のリストが増えていく…。
やはり子どもの頃からいる最古参のヴィクターが一番の鍵なのか…。
本当にこの謎を全て回収してくれるのかというそれだけが気になるシーズン1でした。
シーズン2:虫獲りできるよ!
『フロム 閉ざされた街』のシーズン2は、前シーズンのラストでバスが到着し、人数も追加されました(大半が死ぬけど)。管理するコロニー・ハウスのドナの疲労が増えるだけですね…。
そうです。別に新顔が増えてもあまり謎解きには役に立ちません。むしろ謎が余計に引っ掻き回されたり、疑心暗鬼が増えたりと、そっちの苦労が目立ちます。
婚約者のマリエルと再会できたクリスティは嬉しかったでしょうけども(マリエルは薬物依存症の離脱症状で辛いし、あまり楽しくは過ごせません)。それにしても妊娠中のファティマもそうですが(今回のラストでエリスと結婚する)、この作品はバイセクシュアルの恋愛模様が盛んです。
それよりも謎。謎です。こっちは謎リストがズラリと残ってるんです。
ジムはラジオから聞こえてくる声などから推測し、この町は何者かに監視されていて何かの実験ではないかという疑念を持ちます。ランドールにいたっては他人不信で危険な行動にでまくる始末。
そして今度は蜘蛛じゃなくてセミです。このドラマ、虫で攻めるタイプだったのか? こうなってくると、集団幻覚とかの可能性もでてきます。エルジンなどバス乗客組も何か共通の疑念があるのは、やはり幻覚の共有のせいなのか…。ボイドの体内に移ったかにみえる寄生虫はこの異常現象の原因なのか…。それで怪物を倒せるっぽいですが、今作では怪物の解剖もできましたけど、もし幻覚なら何も信用できませんからね。
シーズン2の序盤で登場した髭もじゃ痩せ拘束男マーティンと同様に、ラストではジュリー、マリエル、ランドールが謎の地下空間に鎖で繋がれ苦痛に呻いている(別の場所では昏睡状態にある)というわけのわからない状況。
そうこうしているうちに、タビサは謎の塔に到着して、頂上で白い服を着た少年に突き落とされ、外の世界にある病院で目を覚ますという衝撃の展開。
シーズン2は本当に何一つ謎は解明されていないけども、終わり方を考えているのかこのドラマは?…と心配になるばかりの私でした。
シーズン3:プールで溺れるよりも嫌だよ!
『フロム 閉ざされた街』のシーズン3。3歩進んで2歩下がる(たまに4歩くらい下がる)というヤキモキさせる焦らしに視聴者がどれくらい耐えられるのかという我慢比べになってきました。
前シーズンの衝撃のラストで町の外にひとり脱することができたタビサはヴィクターの父ヘンリーと遭遇し、ヴィクターの母ミランダがあの町と関連があり、ボトルツリーから始まっているらしいことを知ります。しかし…救急車ごとヘンリーと一緒にあの町に逆戻り…。また戻るのかよ…。
そしてタビサが出られたからといってそんな希望にならないことを、あのプールの壁に埋まった状態という過去最悪級の死に方で突き付けるという…。見方によってはだいぶギャグっぽい絵面なんだけど、もう笑う気分もない…。
今回はジェイドは相変わらずシンボルに憑りつかれ、ファティマは妊娠したと思ったら凄いものを産むし、エルジンは着物女性にそそのかされて拷問を受けて酷い目に遭うし…。それにしてもいきなり和風ホラーな存在をだしても、場違い感のほうが強くて全然怖くはなかったな…。
また、シーズン3では明らかに怪物(というか異常現象)が悪意を増しており、単純に殺すのではなく、残忍な殺害の場をみせつけるとか、嫌がらせ電話をかけるとか、心理的に追い詰める陰湿な手口を駆使してきます。最初のシーズンにあった怪物的恐怖は薄れ、ちょっと人間臭くなったので、この方向変化はジャンルのあり方として賛否はありそうです。
進みそうで進まないなと思いながら観ていると、またもきました、終盤での超展開。ここだけ1歩2歩どころかバク転宙返りで前方にすっ飛びます。ヴィクターの母のミランダと繋がる人物はあの人で、腹話術人形と会話する元住人クリストファーと繋がる人物はあの人…。どういうこと?と過去最大のクエスチョンマークが視聴者の頭に群がったところで、薄黄色スーツの老人があの人を残忍に殺して…。
次はちゃんとまともに解ける謎はでてくるのか? その前にみんな仲良くしよう。ね。
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△(平凡)
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作品ポスター・画像 (C)MGM+ Studios
以上、『フロム 閉ざされた街』の感想でした。
From (2022) [Japanese Review] 『フロム 閉ざされた街』考察・評価レビュー
#サバイバルミステリー #バイプラス