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『キング・オブ・エジプト』感想(ネタバレ)…全部キンピカなだけじゃないか!

キング・オブ・エジプト

全部キンピカなだけじゃないか!…映画『キング・オブ・エジプト』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Gods of Egypt
製作国:アメリカ(2016年)
日本公開日:2016年9月9日
監督:アレックス・プロヤス

キング・オブ・エジプト

きんぐおぶえじぷと
キング・オブ・エジプト

『キング・オブ・エジプト』物語 簡単紹介

「生命の神」であるオシリス王の統治により繁栄を誇っていた古代エジプト。ここでは圧倒的な栄光が神の力によって降り注ぎ、人々に安定をもたらしている。しかし、弟セトのオシリス謀殺により王座は奪われ、人々は暴虐なセトに苦しめられていた。暴力と支配はエジプトを変えた。オシリスの子で、王座と視力を奪われたホルスは、コソ泥の青年ベックと手を組み、セトを倒すべく立ち上がる。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『キング・オブ・エジプト』の感想です。

『キング・オブ・エジプト』感想(ネタバレなし)

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この映画のエジプトはファンタジーです

突然ですが、皆さん学校で「エジプト文明」について世界史で習ったと思いますが、覚えていますか。「ナイルの賜物」「ファラオ」「ピラミッド」「ツタンカーメン」「ヒエログリフ」「パピルス」…頑張って覚えた用語もたくさんあるはずです。「あー、こんなにたくさん覚えられないよ。歴史が苦手だし、暗記なんて無理。なんかいい方法がないかなー」そんなことを頭の片隅にぼや~と考えた人の中で「あ! 映画で覚えよう!」というアイディアにいたった怠慢な受験生もいるかもしれません。

そのとき、インターネットで「エジプト 映画」と検索したら、この映画がでてくるでしょう。『キング・オブ・エジプト』…? へぇ~、これ、ぴったりなんじゃないか。よし、観よう。

はい、残念でした。本作『キング・オブ・エジプト』は受験生の味方ではありません。いや、その言い方は不適切だった。受験生の教材にはなりません。これは「映画でわかるエジプト文明!入門編」ではないのです。

確かに古代エジプトが舞台です。しかし、世界史で学んだあのエジプトは忘れてください。なぜなら、この映画はエジプト神話を下敷きにしたファンタジー映画だからです。なのでエジプトという名の架空の王国だと思って気楽に考えましょう。

なにがファンタジーかといえば、まずビジュアル。「時代考証?そんなもん知るか」といわんばかりの奇想天外な建造物が目を引きます。なかには1015mの超高層タワー(ちなみに現代の世界一高い建築物はドバイの高層ビルで829.84m)が登場し、エレベーターっぽい仕掛けもあり、その技術は古代ではなく未来です。もはやピラミッドなんて大したことないレベルに思えてしまいます。凄いなぁ、エジプト。

そんな国は神と人間が共存している世界となっています。普通に神がいるのです。普段は人の姿をしていますが(それでも人よりも身長が高い)、力を発揮すると姿を変えます。神的な力があれば、あの近未来建築物もなんとなく納得いく感じがします。全てが金色、ピカピカです。凄いなぁ、エジプト(2度目)。世界観の

雰囲気は、『マイティ・ソー』の北欧神話の世界に近いです。それを数百倍煌びやかにしたものだと思ってもらえればいいでしょう。

エジプトであるにもかかわらず、登場人物のほとんどが白人であるがためにアメリカでは批判され、スタジオと監督が正式に謝罪することになったらしいですが、これだけファンタジーを全面に出していれば、ツッコむのもアホらしい気も…。だって、これを正史のエジプト文明だと言い張りますか? こんなのにわざわざ現地の人を起用したら、もう逆にそっちのほうが失礼でしょう。日本を描いた外国映画でもありますよね。とてつもなくヘンテコな日本描写の世界観にしっかり日本人を起用しているときの何とも言えない「あ…お疲れ様です」的な同情心。

本作はエジプトで公開されたのかな…どんな反応だったのだろう…。

なんと『マッドマックス 怒りのデスロード』とキャストや製作スタッフの多くが被っているらしく、例えばキャストだと“コートニー・イートン”がヒロインとして登場します。撮影も『マッドマックス 怒りのデスロード』と同じくオーストラリアの砂漠で行ったようです。

色々書きましたが、あんまり難しく考えずに見れる映画です。ファンタジー映画が大好き、ストーリーやドラマなんてどうでもいい、映像を楽しみたいという人向けなのは語るまでもなく。間違いなく「ファンタジーな古代エジプト」をアトラクション体験できます。個人的にはこういう吹っ切った作品は大好物なのですけどね。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『キング・オブ・エジプト』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):神の血は金だ!

古代のエジプト。神々は人間に混じって暮らすことにします。しかし、神は人とは明らかに異なる存在。その体には血ではなく金が流れていました。そしてあらゆる獣に姿を変えることもできました。

エジプトは2人の兄弟神によって分割されていました。生命の神「オシリス」は王としてナイルの肥沃な大地を治め、その弟にして砂漠の神「セト」は不毛の地を治め、孤独を耐え忍んできました。しかし、そのオシリスが王座をひとり息子の「ホルス」に譲るときが来たのです。

人で賑わう街中。青年のベックは恋焦がれているザヤのために服をプレゼント。盗んできたものですが…。お姫様のような服を着せてあげると約束していましたが、現状は貧しい日々です。

一方、戴冠式を前にしていたホルスは…爆睡していました。優雅に目覚め、召使にお世話されます。昨夜は獅子を気楽に狩ったりとかなりハメを外しました。愛の女神であるハトホルと談笑する時間もあまりなく、大衆の前に姿を現さないといけない時間になりました。

会場には埋め尽くす群衆。ベックとザヤも一緒です。来賓も多いです。守護の女神であるネフティス。知恵の神であるトト。そしていよいよオシリスの登場。「今日、新しい王が誕生する。彼も自らの遺産を残すだろう。我が息子ホルス。天空の神」

そして前に出たホルス。ひざまずき、王冠を与えられる…その直前。民衆の間を割って前に歩いてくる男がひとり。セトです。贈り物に狩猟笛を渡します。「吹いてみろ」と言われて勢いよく吹くと、なぜか軍隊が進軍してきます。

セトはオシリスに対して「俺と戦え」と宣戦布告。戦いたくないとオシリスは近づきますが、セトはその体に容赦なく刃物を突き立て、「私が真の王になる」と民衆に告げます。「跪け。さもなくば死だ。人間ども、俺を敬え。さもなくば奴隷にする」

父を殺されたホルスはセトに戦いを挑みます。圧倒的なパワーで蹂躙するセト。互いに煌めく獣の鎧に変身し、盛大に戦闘を続行します。「お前は王の器ではない」…そう言いながらセトはホルスの目玉をもぎとり、トドメを刺そうとします。ハトホルの制止の声でなんとか命は助かります。

こうしてセトが王となり、エジプトの街は一変。人間の大部分は奴隷になり、ベックは隙を見てザヤを探しに行くことにします。ザヤは王宮で雑用をこなしていました。ザヤはベックに「今夜は宝物庫に忍び込むチャンスだ」と教えてくれます。そこにはホルスの目が保管されており、それさえあればホルスはパワーを取り戻すはず。盗みに関しては自信があるベック。策を練ります。

セトは偉大な神であるラーへの敬意の証となる塔を見上げます。これで自分の偉大さも伝わるに違いない。

そんな中で闇夜に紛れてベックは動き出しますが…。

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やりたい放題だった

見終わった感想は…ゴージャスでした。あれ、おかしいな。脳内の語彙力が通常の3割くらいしか発揮できない。これはエジプトには付きものの呪いじゃないか。ヤバいな。このままだと何もしゃべれなくなるかも。助けて、神様。

そんな戯言はさておき、映像的な部分から言及するなら、ピカピカしすぎて目が痛くなってきます。神の血まで金色ですから、凄惨な暴力シーンでも残酷には見えません。

はっきりいってストーリーやドラマは飾りです。とくに主人公ベックの存在がどうでもよすぎる。ベックが物語に絡む動機も無理やりなのですが、なぜかベックは人間なのに異常に強いというご都合設定が謎です。最後にベックには神の力が宿っていた!みたいな展開が待っているのかと思いました。無難にホルスが主人公でも良かったのではないでしょうか。

知識の神トートの扱いが可愛そうでしたね。神なのにスフィンクスの問いに一発で答えられないのはどうなのでしょうか…。あとアヌビスが意外というか良い奴で、そこは好きです。

ストーリーやドラマは残念極まりないのですが、一方でつまらないとは断言できないのが本作の魅力。

理由としては、展開がとにかく早い。長いセリフでドラマを延々続けることもなく、次々と場面が進みます。2時間の映画なのにダレません。逆にあっさりしすぎるくらいです。

2時間の劇中の間にアホみたいなゴージャスな映像をどんどん見せられるので、だんだん楽しくなってきました。変身後の神vs神のシーン、謎のトラップ、巨大蛇とのバトルと、映像だけは飽きません。そのかわり、エジプト感がしだいに薄れていくのですが…。

一番アホだなぁと思ったのは、太陽神ラーの描写です。よくわからない宇宙空間に浮かぶ飛空艇みたいな場所に暮らしているラー爺さん。ホルスとベックの二人と会話していると、いきなりこれまたよくわからないけど凄そうなモノとド派手な戦いを始めるシーンはもうエジプト感ゼロです。でも、ラー爺さんもあっさりセトに負けるんですね…。

乱戦シーンがないのは予算の都合なのかもしれませんが、もったいなかった。このぶっ飛んだ世界観、意外と好きな人はハマる映画なんじゃないかと思います。

本作は、ゴールデンラズベリー賞で最低作品賞、最低監督賞、最低脚本賞、最低主演男優賞、最低スクリーンコンボ賞の5部門でノミネートされましたが、これはもうご褒美といっていいもの。この映画は貶されることで強くなっていく不屈の文化を持っています。大人しく墓に埋葬されるような存在じゃありません。呪ってやりますよ。

では最後に世界史の問題を出しておきますね。

問題1. 以下の中から、エジプト文明に関する説明として正しい文章を選べ。
①大衆を奴隷として苦しめていたセトはジェラルド・バトラーの姿をしている。
②古代エジプトには超高層タワーが存在し、豪華絢爛な文明を象徴している。
③神はだいたいがピカピカしている。

問題2. 以下の文章を読み、空欄に当てはまる適当な語句を答えよ。
古代エジプトは( ア )と人間が共存し、生命の神と呼ばれるオシリス王の統治により繁栄を誇っていた。しかし、弟セトのオシリス謀殺により、壮絶な戦いによって王座は奪われ、人々は暴虐なセトに苦しめられた。オシリスの子で、王座と両目を奪われたホルスは、( イ )の青年ベックと手を組み、エジプトの王に君臨するための鍵を握る重要なアイテムの神の眼を盗み出すべく、困難極まりない冒険の旅に出た。

答えは映画で確認してください。これで受験も完璧ですね(無責任)。

『キング・オブ・エジプト』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 15% Audience 37%
IMDb
5.4 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★

作品ポスター・画像 (C)2016 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. キングオブエジプト ゴッズ・オブ・エジプト

以上、『キング・オブ・エジプト』の感想でした。

Gods of Egypt (2016) [Japanese Review] 『キング・オブ・エジプト』考察・評価レビュー