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『神と共に 第一章 罪と罰』感想(ネタバレ)…この韓国映画、暴走してます

神と共に 第一章 罪と罰

この韓国映画、暴走してる!…映画『神と共に 第一章 罪と罰』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

英題:Along with the Gods: The Two Worlds
製作国:韓国(2018年)
日本公開日:2019年5月24日
監督:キム・ヨンファ

神と共に 第一章 罪と罰

かみとともに だいいっしょう つみとばつ
神と共に 第一章 罪と罰

『神と共に 第一章 罪と罰』あらすじ

人間は死ぬと49日間に7つの地獄の裁判を受けて、すべてを無罪で通った者だけが現世に生まれ変わることができる。ある日、死を迎えた消防士ジャホンの前に、冥界からの使者で地獄の裁判の弁護と護衛を務めるヘウォンメク、ドクチュン、カンニムの3名が現れる。裁判は順調だと思われたが、実はジャホンには秘密があった。

『神と共に 第一章 罪と罰』感想(ネタバレなし)

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韓国映画史を塗り替える大ヒット作

どこの国の映画業界でもなんだかんだ言ってやっぱり莫大な予算を投じた映画を大ヒットさせてみたいという願望はあるもの。もちろん低予算のインディーズ系映画も素晴らしいものがたくさんあるのですが、ビッグバジェット大作を成功させることは一種のロマンがありますよね。それだけで業界が活気づくし、映画にあまり関心のなかった一般層を映画というエンターテインメントの世界へ招く切符にもなってくれます。できれば定期的に巨大大作の花火をあげたいところです。

東アジアを見ていけば、日本でも2019年は巨額の制作費が投じられたと言われる『キングダム』が公開され、それなりにヒットしたみたいでホッとしました。映画ファンですから、どんな映画もヒットしてほしいものですけど、こういう予算をかけるチャレンジが実を結ぶのはきっと製作側のモチベーションにもなるでしょうし、嬉しいです。

一方、中国では同国映画業界では珍しいSF大作である『流転の地球』が大ヒットして受け入れられたことで、新しい市場の開拓の船出となる喜ばしい出来事もありました。

しかし、ここ最近で言えば一番頑張ったのは韓国かもしれません。2017年、韓国映画歴代観客動員数ランキングの2位に食い込む大作が登場したのです(現時点;1位は以前として『バトル・オーシャン 海上決戦』)。

それが本作『神と共に 第一章 罪と罰』。“第一章”とタイトルに含んでいることからわかるように連作であり、続く『神と共に 第二章 因と縁』も韓国映画歴代観客動員数ランキングの12位を記録。二部作構成でここまでのお手本のような大ヒットなんて羨ましいくらいです。

この『神と共に』シリーズ、大ヒットも凄いことなのですが、特筆すべきはその内容。実は思いっきりファンタジーアクション映画なのです。どうしても韓国映画というと社会派もしくは人情ものなイメージですが、本作はそれらに加えてガッツリとハリウッドにも負けないVFX全開の映像が縦横無尽に展開しています。死んだあとの世界である“あの世”を描く映画なのですが(原作はウェブコミック)、想像の斜め上をいくとんでもないスケールです。

これ、観ないとそのインパクトが伝わらないと思いますが、私も鑑賞前の“きっとこんなものだろう”という予想をはるかに上回る中身に驚愕しました。完全に『ハリーポッター』とかマーベル映画みたいな路線ですよ。

韓国もこういうジャンルにお金をジャンジャンかけるようになってきたのか…。『新感染 ファイナル・エクスプレス』といい、最近の韓国映画のジャンル開拓力は凄まじいですね。

監督は“キム・ヨンファ”という人で、これまでかなり奇抜な設定の映画を撮ってきた人です。例えば『カンナさん大成功です!』では、整形(ただし完全に骨格からして違う)によって人生が変わる女性をコミカルに描いています。『ミスターGO!』にいたっては、野球界でゴリラ(ゴリラっぽい人という意味ではなく動物のゴリラ)が活躍するというどうかしているスポーツ映画です。

『神と共に』シリーズも“キム・ヨンファ”監督の大胆さが光っているのは言うまでもないですね。

キャスト陣は、『猟奇的な彼女』でおなじみの“チャ・テヒョン”、『1987、ある闘いの真実』や『お嬢さん』での熱演も記憶に新しい“ハ・ジョンウ”、『背徳の王宮』の“チュ・ジフン”、天才子役として名を馳せてきた“キム・ヒャンギ”、他にも“イ・ジョンジェ”“キム・ドンウク”と韓国の名俳優たちの打ち上げパーティなのかな?と思うほどの揃いっぷり。

韓国映画の歴史に残る一作ですので、気になる方は見逃さないように。続く『神と共に 第二章 因と縁』もそれと月日をあけずに公開が待っていますから。

ちなみに公式サイトでは、物語のおおよその流れがもろに掲載されているので、ネタバレが嫌な人は要注意です。

オススメ度のチェック

ひとり ◯(派手な映画を観たいなら)
友人 ◯(エンタメ満載で盛り上がる)
恋人 ◯(感動的な物語もあり)
キッズ ◯(子どもでも素直に楽しめる)
↓ここからネタバレが含まれます↓

『神と共に 第一章 罪と罰』感想(ネタバレあり)

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地獄さん、少しやりすぎじゃないですか

人は死ぬと49日間のうちに7つの地獄で裁判を受けなくてはならない。その地獄とは、殺人、怠惰、ウソ、不義、裏切り、暴力、天倫…。もしその7つすべてを無罪で通った者がいれば、現世に生まれ変わることができる。

そんな設定がある『神と共に 第一章 罪と罰』の世界観。輪廻転生を基軸に、生前の業が裁かれるこの要素といい、いかにも「仏教」全開の映画となっている本作。こういう宗教色の強い作品というのは、どうしても人を選びやすいですから、忌避されたり、イマイチ乗れないことも多々あるジャンルです。

でもこの『神と共に 第一章 罪と罰』は宗教的な教示のような堅苦しさは一切抜きにして、徹底的にエンターテインメントにアレンジすることで、その小難しそうな敷居の高さを完膚なきまでに打ち壊しています。この思い切りの良さ。これこそこのシリーズの最大の特徴でしょう。

日本でも毎年ご丁寧に映画を製作している某宗教団体がいますが、『神と共に』シリーズは非常にお手本になるのではないか…(余計なお世話です)。

なんといってもビジュアルです。冥界のような“死後の世界”を映像化した映画は山ほどあって、ハリウッド作品にも無数にあるし、日本でも最近なら『DESTINY 鎌倉ものがたり』などがありました。たいていの場合、“死後の世界”はイマジネーション溢れる映像で壮大に描かれることが多いです。

しかし、『神と共に』シリーズは一言で言えば「やりすぎ」。「なんでそうなるの!?」と50回くらいは鑑賞中にツッコミたいほどの“考えたら負け”な映像の連続。そこまで必然性はよく考えたらないのだけど、無駄に派手なんですね。ことあるごとにスペクタクル要素満載の絶体絶命の危機が起きます。ドーン!と来て、ちょっと休んだらまたドーン!で、また小休憩後にドーン!…だいたいこの繰り返し。追いかけられたり、落ちそうになったり、襲われたりと、終始落ち着かないです。

そのおかげか、一応、裁判が行われるので“法廷劇”スタイルになってはいるのですが、そんな難解な弁論に熱心に耳を傾ける必要はほぼなく、子どもでもわかる単純明快な映像に酔いしれていればいいだけ。もうこれ、ディザスター映画ですよ。きっとこの冥界には、ローランド・エメリッヒか、マイケル・ベイがいて、演出の指示を出しているに違いないです。絶対にそうだ。そんな冥界、行きたくないなぁ…。

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これは裁判なのか…

話を軽く振り返ると、いきなりクライマックス(文字どおり“人生の”)。火災現場でビルから落下する消防士のジャホン。少女を抱え、自分を下に地面に落ちるという、キャプテンアメリカ級の勇猛果敢さ(作中で韓国の消防士をアベンジャーズに入れるみたいなことを言っていましたが…)。しかし、ジャホンは死んでいるのでした。

そのまま冥界に有無を言わさず引きずり込まれると、弁護士のカンニム、護衛のヘウォンメク、補助弁護士のドクチュンとともにわけもわからず7つの裁判をする流れに。

初軍門という冥界の入り口(駅の改札口風なのが謎)を通って、最初にたどり着いたのは火蕩霊道の先にある変成大王が仕切る「殺人地獄」。続いて三途の川の先にある初江大王が仕切る「怠惰地獄」。そのまま、剣樹林の奥にある泰山大王が仕切る「ウソ地獄」、寒氷峡谷の向こうにある五官大王が仕切る「不義地獄」、天地鏡を超えた先にある宋帝大王が仕切る「裏切り地獄」、真空深穴に落ちた下にある秦広大王が仕切る「暴力地獄」、千古砂漠の下から出現する閻魔大王が仕切る「天倫地獄」…一気に進んでいきます。さすがに一作の中だけでこの7つを描き切るのはいっぱいいっぱいだったのか、明らかに途中の裁判が省略気味で駆け足でしたが、じゅうぶんすぎるボリューム。

ここで最初の裁判の時点でなんとなく薄っすらと気づくのですが、この裁判…結構、テキトーだぞ…と。まず殺人を裁くと言っているのに、“間接的な”かたちで人を死に至らしめた案件も対象になるんですから。じゃあ、なんでもありじゃないか。そもそもだったら終盤に明らかになるジャホンのあの母への行為もここで裁かれるべきでは?と思うのですが、それは殺人未遂だから対象外なのか。まあ、考えてもしかたがないか。

とにかくこの裁判、私が知っている裁判と違って、「検察vs被疑者&弁護人」という構図ではなく、裁判官(と下っ端の判官)が直接、罪を問いただすという、“学校の先生に呼び出される”も同然のかなり一方的な名ばかり裁判であり、この時点で不公平なのですが、そのうえ、法律もよくわからない。結果、なんか知らないけど、裁判官ポジションの大王を納得させれば勝ちという、とんだパワートーク・ゲームになっているんですね。

かなりのアバウトな裁判だからこそ、敷居が低いとも言えるのですが…。

しかも、ジャホンを弁護することになる3人の使者も、本音は「49の魂を裁判に通過させれば蘇りのチャンスが得られる」という明らかな下心ありの私利私欲で弁護しているだけなので、司法に関わる者としての倫理観もへったくれもないわけです。こんなのリアルな司法関係者が見たら怒りますよ。

まあ、どうせ地獄だし、そこにいる奴らなんてこんなものか…。

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善行は大事だから

そんな裁判が雑でもいいのです。『神と共に 第一章 罪と罰』の本筋は実はそこではなく、ジャホンの抱える家族との問題の起きた過去と、悪霊化したスホン(ジャホンの弟)の死という2つの謎をめぐるミステリー。下界である現世に降り立ったカンニムがやたらと都合のいい能力を使いながら、その真相を明らかにしていくパートが、裁判シーンと交互に、時に連動しながら挟まれます。

スホンは兵役中に一等兵のウォン・ドンヨンの手により誤射されてしまい、それがきっかけで死亡。しかも、死を隠蔽したい上司がスホンを森に埋めた際、まだかろうじて生きていたスホンは生きたまま埋められるという苦痛を味わいます。

しかし、さすが本作。ここでも地道な探偵ごっこなどせず、唐突なアクションバトルに突入。「名探偵コナン」かな…。この悪霊化したスホンとカンニムのさっぱりよくわからない高速バトルなど、映像だけは凄いもので、あげくにラスト付近はトルネード魔人みたいになった巨大スホンとのカオスすぎる大激戦。もう、私は一体何の映画を見に来たのだったか…そんな疑問が頭をよぎりますが、そこは強制的に思考ストップしておきましょう。

結局、最後に明らかになったのはジャホンの罪。子どもの時の兄弟喧嘩以降、15年も家に帰らなかった理由。それは病気で治る気配も見えない母の姿に絶望したジャホンが弟含む家族3人で心中しようとしたということ。それは弟に発見され、未遂に終わり、家を出たジャホン。自分の行為を悔い、ひたすら家族のためにお金を稼ぎ、人のために生きたジャホンは、自分の罪を告白し、転生を許されて光に消えるのでした。

なんか大味な映像だらけだったわりには、最終的には「善行は大事」というシンプルなオチに帰着しましたが、仏教ってそういうものだからね(え、そうだっけ…)。

これでめでたしめでたし…とはならない本作。

ここから49人目の戦いが始まる。もう私はこのノリで突っ走る映画に頭でついていく自信はない。こうなったらこっちも捨て身でいくしかない。そう思うのでした。

まあ、最後の“マ・ドンソク”の登場でテンションがガン上がりなので、次も観ますけどね(単純なアホ)。

少なくとも私はこの超雑な裁判、クリアできそうにない…。幼い時、罪もない虫たちを好奇心でいっぱい殺してしまいました。ここに罪を告白します。きっと地獄に行ったら、虫たちに体を喰いつくされる刑になるんだろうな…。

『神と共に 第一章 罪と罰』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 50% Audience 83%
IMDb
7.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 5/10 ★★★★★

作品ポスター・画像 (C)2019 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS All Rights Reserved.

以上、『神と共に 第一章 罪と罰』の感想でした。

Along with the Gods: The Two Worlds (2018) [Japanese Review] 『神と共に 第一章 罪と罰』考察・評価レビュー