2018年版の続編です…映画『ハロウィン KILLS』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2021年)
日本公開日:2021年10月29日
監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン
ゴア描写
ハロウィン KILLS
はろうぃん きるず
『ハロウィン KILLS』あらすじ
老齢となったローリー・ストロードはブギーマンことマイケル・マイヤーズとの40年に及ぶ因縁の戦いに決着をつけたはずだった。しかし、まだ悪夢は終わっていなかった。ローリーが仕掛けた業火から生還したマイケルは、過去を背負う町であるハドンフィールドでさらなる凶行を重ねる。その恐怖に立ち向かいブギーマンと戦う者がいる一方、恐ろしさのあまり暴徒と化す者も現れ、ハロウィンの町は混沌としていく。
『ハロウィン KILLS』感想(ネタバレなし)
ハロウィン(今度は10月)
2021年もハロウィンの時期がやってきました。
去年はコロナ禍で自粛ムードでしたが、今年はいよいよハロウィン全力全開だ!…と思いたいところですが、自治体からは「ハロウィンで仮装して街で密集しないで」というお達しがでているようですね。まあ、ハロウィンって密になって移動して接触して回るイベントだからどう考えても相性が悪いもんなぁ…。
はい、だったらそんなときこそ映画です(なんでも映画に繋げていくスタイル)。
ハロウィンにはみんなでホラー映画を観ようじゃないですか。私は何度も言っているんですが、アメリカではハロウィンはホラー映画を観るという慣習が出来上がっており、毎回この時期はホラー映画が公開されて大ヒットするのが定番。日本もマネしていきたいものです。
でも肝心のホラー映画が公開されないのが…と例年は愚痴をこぼしてきましたが、2021年はちょっと違います。今年の10月の日本の映画館はホラー映画がわりと目立つのです。
その中でもこれぞハロウィンに観る映画!と太鼓判を押せるのが本作『ハロウィン KILLS』です。なにせタイトルが「ハロウィン」で、しっかりハロウィンが舞台ですからね。これ以上ないでしょう。
さて初心者のために簡単なシリーズ解説からいきましょう。このシリーズ、ややこしいです。
始まりは1978年公開の“ジョン・カーペンター”監督の出世作である『ハロウィン』。スラッシャー映画(殺し屋が出てきて死体がいっぱい映る映画のジャンル)の代表作で、ハロウィンである10月31日に謎の正体不明の殺人鬼(ブギーマン)が町に出没し、殺戮を繰り広げ、恐怖のどん底に突き落とす…というお話。
この『ハロウィン』シリーズはその後も続編が作られまくったのですが、厄介なことに「この作品はあの作品の続編」「今度はあの作品と関係あるけどこの作品とは無関係」「新しくリメイクで再始動しよう」などと繰り返した結果、複数のタイムラインが乱立する状況になってしまいました。
そこで一旦仕切り直してあらためて初代1作目の続編として原点回帰を狙った作品として公開されたのが2018年の『ハロウィン』でした。タイトルは同じですけど1作目の続編なんですね。
で、今作『ハロウィン KILLS』はその2018年の『ハロウィン』の続編。新時代のタイムラインになってからは2作目なので「ハロウィン2」と言えるけど、初代から物語接続性の流れで数えると3作目ですし、シリーズ全部を集計すればフランチャイズの第12作目にあたります。やっぱりややこしい…。
監督は前作から“デヴィッド・ゴードン・グリーン”が続投。
俳優陣も前作から、“ジェイミー・リー・カーティス”、“ジュディ・グリア”、“アンディ・マティチャック”、“ウィル・パットン”などの顔ぶれが再登板。
そして初代1作目で襲われていた男の子、トミー・ドイルの大人になった役で“アンソニー・マイケル・ホール”が出演し、今回は物語を大きくかき乱します。ちなみに初代1作目でトミー・ドイルを演じていたのは別の人です。また、こちらも初代1作目で登場したリンジー・ウォレスの役で“カイル・リチャーズ”が出演し、こっちは1作目と同じ俳優によるカムバックです。
前作は日本では4月に公開するという暴挙に出ており、私も散々文句を言ったのですが、今作『ハロウィン KILLS』はちゃんと10月公開。この時期じゃないとやっぱりね。それにしても凄いタイトルですよ。「ハロウィンが命を奪う」って意味ですから…ハロウィンを盛り上げる映画というよりはハロウィン嫌いのアンチとかのキャッチコピーみたいだ…。
『ハロウィン KILLS』は鑑賞の邪魔にならない程度の控えめな仮装をしてもいいので映画館へどうぞ。
『ハロウィン KILLS』を観る前のQ&A
A:1作目の『ハロウィン』(1978年)とその新たな続編の『ハロウィン』(2018年)を鑑賞するのがオススメです。『ハロウィン KILLS』は2018年の『ハロウィン』のエンディング直後から始まります。
A:人体破壊描写(ゴア)を含む殺人描写が山盛りです。前作よりも多いです。苦手な人は注意。
オススメ度のチェック
ひとり | :シリーズが好きなら |
友人 | :ハロウィン気分で |
恋人 | :怖い映画が観たいなら |
キッズ | :残酷な暴力描写満載だけど |
『ハロウィン KILLS』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):死んでません
1978年10月31日、まだ高校生だったローリー・ストロードは精神病院を脱走した殺人鬼マイケル・マイヤーズに狙われるハメになり、おぞましいほどの恐怖を体験しました。しかし、それで終わりではありませんでした。40年後の2018年10月、マイケル・マイヤーズはその後は厳重に精神病棟で管理されていましたが、刑務所に搬送する途中にまたも脱走。高齢となったローリーのもとに再度現れたのです。ローリーはかつての恐怖のトラウマと対峙し、このマイケル・マイヤーズを娘のカレンと孫娘のアリソンと一緒に撃退。家の地下に閉じ込めて火を放ち、完全に勝利しました…。
ところがそうはならなかった…。
かなり負傷したローリーは、カレンとアリソンに支えられて軽トラックで病院へ向かっていました。その横を消防車が通り過ぎます。誰かがローリーの家の火事を通報したのか。ローリーは瀕死ながらも消防車を止めようと声を張り上げますが届くわけもなく…。
現場に到着した消防士は火災で激しく燃える家に突入し、取り残された人がいないかを確認します。するとひとりの消防士が床の崩落で地下室に落下。体勢を立て直そうとすると背後から白いマスクのマイケル・マイヤーズが強襲します。そしてマイケル・マイヤーズは燃え盛る家の外へ。家の前にいた複数の消防士はその姿に震撼。そのまま次から次へと襲われることになり…。
一方で、近所のバーでは大人たちが盛り上がっていました。ステージにトミー・ドイルが立ちます。彼は40年前のマイケル・マイヤーズの凶行から生き延びたひとり。犠牲者に追悼し、一緒にバーに集まったリンジー・ウォレス、マリオン・チェンバーズ、ロニー・エラムといった生存者を紹介し、讃えます。
しかし、そんなお祝いムードはすぐに吹き飛びます。バーのテレビではローリーの家の前で大勢の消防士が惨殺された事件を速報していました。マイケル・マイヤーズは戻ってきた…。
その頃、ローリーが緊急搬送された病院でも、マイケル・マイヤーズが再び殺戮をこの町で開始したという噂が徐々に広まっていました。アリソンとカレンはマイケルが生きていると知り、困惑。とりあえずなんとか一命をとりとめて今はベッドで眠るローリーには知らせないようにします。
マイケル・マイヤーズによって重体となったフランク・ホーキンス保安官もこの病院に運ばれ、ローリーと同室になります。フランクもまた40年前にマイケル・マイヤーズと対峙し、同僚を撃ってしまった後悔を引きずって生きていました。被害者の苦しみは癒えるものではなく、しかも今はまたも危機に直面してしまったわけで…。
病院はマイケル・マイヤーズによって重傷を負った人々やその家族などでごった返すようになり、そのうちこの病院にマイケル・マイヤーズがいるのではという真偽不明の情報まで飛び交うようになり始め…。
今回も殺しまくる(それしかしない)
『ハロウィン KILLS』はフランク・ホーキンス保安官の回想を冒頭に置きつつ、前作のエンディング直後からスタート。
本作は全体的に1981年の『ハロウィンII』(公開時の邦題は『ブギーマン』)の構造をなぞっています。物語上の直接の繋がりはありませんが、似通っているところは多いです。
まず序盤の炎上する家からのマイケル・マイヤーズ(ザ・シェイプ)の復活。ここは『ハロウィンII』のラストを思わせる展開です。そこからの消防士大量殺人のシーンなのですが、それぞれが斧や電動ノコギリで応戦するもズタズタに殺されていく姿、なんか消防士であるせいか、どことなくフェティッシュだ…。
今作でもマイケル・マイヤーズは背後でこっそり動きながら無言で淡々と殺していくスタイルです。過去作のオマージュな殺害方法を見せてくれるあたり、このやり方に芸風すら感じる。
でも『ハロウィン KILLS』はとにかく殺しまくりましたね。さすが「Kills」とタイトルに銘打っているだけある。子どもであろうが老人であろうがお構いなし。1作目の生存者もかなりやられてしまったり、もう作り手も躊躇いなしです。こちらも『ハロウィンII』と同様にハロウィンの町で本物の殺人者が出没してしまったらという恐怖の延長線をしっかり描いていました。
一部では今作ではマイケル・マイヤーズが同性愛カップル(ビッグ・ジョン&リトル・ジョン)を殺すのでホモフォビアだと非難もあがっていたのですが、マイケル・マイヤーズは殺害相手を選り好みしないとは言え、同性愛カップルがいたって幸せなまま物語が終わった『キャンディマン』もあったことですし、対照的になりましたね。
あれほど殺害事件を明らかに引き起こしているんだったらさすがに重武装のチームで遠くから射殺すればいいのに…とは思ってしまいますけどね。いつもなら平気で核兵器使う国なのになんでこういうときだけ躊躇するんだ、このアメリカは…。
今作はコミュニティの集団心理を描くことをテーマにしているので、「マイケル・マイヤーズvs武装警察」みたいなジャンル化にはなっていませんでした。
ずっと病院でステイホーム
『ハロウィン KILLS』の主題はコミュニティの集団心理です。
今作では病院に人が密集し、その群衆がある精神病患者をマイケル・マイヤーズだと思い込み、「殺せ!」と雄たけびをあげながら殺到してパニックになるという展開に発展していきます。あげくにそのマイケル・マイヤーズ扱いされた男は病院の窓から身投げして死亡してしまうことに…。
いわゆる「人間は怖い」系の後味ですが、おそらく『ハロウィン KILLS』はドナルド・トランプ時代のアメリカのカオスを風刺しようとしているのだと思います。2021年のアメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件とも重なるような光景でした。
今回はそれを半ば焚きつけてしまうのがトミー・ドイルという白人男性というのも象徴的。彼も確かにかつての被害者です。そんな存在が過去のトラウマによって次なる騒乱の火種になってしまう。被害感情をこじらせたマジョリティな群衆の怖さを描くということで、本作は前作とは異なる被害者像を映し出したとも言えます。
一方で、前作からの主人公であるローリー。今回は『ハロウィンII』と同じくずっと病院内です。ただ、今回は病院にマイケル・マイヤーズが襲ってくることもないので、本当に物語に絡んできません。凄い気迫で注射刺したりはしたけど…。
前作では“私は被害者女性という枠におさまる気はない”というストレートなメッセージを感じ取れる大逆転劇で盛り上げてくれたのですが、今作はそのカタルシスがないのでやや退屈ではあります。明らかにローリーとマイケル・マイヤーズの決闘は次回に持ち越しですからね。
マイケル・マイヤーズにとってもコロナは辛い
そうです、本作は3部作らしく、次回は『Halloween Ends』というタイトルで決定済み。しかも、なんと物語は『ハロウィン KILLS』のラスト直後ではなく、時間経過して2022年になるとかで、コロナ禍の出来事も反映するとか。「え? じゃあ、マイケル・マイヤーズもコロナウイルスで死んじゃうんじゃないか…ワクチン打たないと…マスクも不織布のやつにしないと…」と思ってしまうのですけど、どうなっていくんだ…。もうさっぱりわからない。
得体のしれないマイケル・マイヤーズですが、『ハロウィン KILLS』の終盤では集団にボコボコにリンチされ、それでも反撃にでる姿から、一種のアメリカの負の感情の具現化のような存在にも見受けられます。大切な人をまたも失ってしまったローリーの喪失感はコロナ禍と重ねて、その苦しみからの立ち直りを描くということになるのかな。
展開はますます読めない感じになってきましたが、こうなってくるともうハロウィン、関係ないよね?…と思わないでもない。2022年のハロウィンはせめてみんなで気楽に仮装できるような状況になっているといいですね。そうじゃないとマイケル・マイヤーズさん、浮いちゃうから…。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 39% Audience 70%
IMDb
6.0 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
作品ポスター・画像 (C)UNIVERSAL STUDIOS ハロウィン キルズ
以上、『ハロウィン KILLS』の感想でした。
Halloween Kills (2021) [Japanese Review] 『ハロウィン KILLS』考察・評価レビュー