中身は地獄!…アニメシリーズ『ハズビン・ホテルへようこそ』(シーズン2)の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2025年)
シーズン2:2025年にAmazonで配信
原案:ヴィヴィアン・メドラーノ
性描写 恋愛描写
はずびんほてるへようこそ

『ハズビン・ホテルへようこそ』(シーズン2)物語 簡単紹介
『ハズビン・ホテルへようこそ』(シーズン2)感想(ネタバレなし)
シーズン2の開業です
このホテルなら1年中宿泊していたい…そんなホテルのシーズン2が2025年に順調にやってきました。
もちろん『ハズビン・ホテルへようこそ』のことです。
作品の基本的な紹介はシーズン1の感想で書いているので割愛します。
2019年10月のパイロット版に始まり、2024年には「A24」×「Amazonプライムビデオ」のタッグで本格始動。今やYouTube発インディーアニメの中ではトップクラスの勢いで大成功をおさめました。
「VivziePop」の愛称で知られる“ヴィヴィアン・メドラーノ”が中心になって創造された世界は「Hellaverse」と呼ばれ、『ハズビン・ホテルへようこそ』を主軸に、スピンオフ『ヘルヴァ・ボス(Helluva Boss)』も展開。この『ヘルヴァ・ボス』のアニメシリーズも、2025年から「Amazonプライムビデオ」に移転し、日本語版でも楽しめるようになり、ますます身近になりました。
シーズン2もあの世界観が全開です。他に言うことなし!
そう言えば、英語版の声優陣を紹介してなかったので、ここで軽く触れておきましょう。
地獄だけど思考はレインボーなお姫様主人公「チャーリー」の声を演じるのは、ブロードウェイ『ミーン・ガールズ』の“エリカ・ヘニングセン”。そんな姫を愛して寄り添うガールフレンド「ヴァギー」の声を演じるのは、『ミラベルと魔法だらけの家』の主人公役でおなじみのラテン系の“ステファニー・ベアトリス”(バイセクシュアル当事者)。淫らに魅了する「エンジェル・ダスト」の声を演じるのはブロードウェイ『Harmony』の“ブレイク・ローマン”(バイセクシュアル当事者)。案外と義理堅い「ハスク」の声を演じるのは『遊星からの物体X』の“キース・デイヴィッド”。無邪気に殺意を振りまく「ニフティ」の声を演じるのは、ドラマ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』の“キミコ・グレン”(日系ということでシーズン2では日本語歌詞も…)。悪魔的声色で耳を撃ち抜く「アラスター」の声を演じるのは、『トゥカ&バーティー』のイラン系の“アミール・タライ”。テレビの顔の「ヴォックス」の声を演じるのは、ブロードウェイ『お熱いのがお好き』の“クリスチャン・ボルレ”。なんだかんだで一番可愛い「サー・ペンシャス」の声を演じるのは、ブロードウェイ『ビートルジュース』の“アレックス・ブライトマン”。天国の純真な罪を抱える「エミリー」の声を演じるのは、ブロードウェイ『ハミルトン』のインド系の“ショーバ・ナラヤン”。天国で憎しみに身悶える「リュート」の声を演じるのは、ブロードウェイ『ウィキッド』の“ジェシカ・ヴォスク”。他、多数です。
ちなみに、2025年10月20日にブロードウェイのマジェスティック劇場でこのフランチャイズの楽曲がパフォーマンスされた一夜限りのコンサートがあったのですが、その模様が『ハズビン・ホテルへようこそ ライブ・オン・ブロードウェー(Hazbin Hotel: Live on Broadway)』としてこちらも「Amazonプライムビデオ」で配信されているのでファンはお見逃しなく!
『ハズビン・ホテルへようこそ』(シーズン2)を観る前のQ&A
鑑賞の案内チェック
| 基本 | 下品なセリフが一部あります。 |
| キッズ | 低年齢の子ども向けではありません。 |
『ハズビン・ホテルへようこそ』(シーズン2)感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(序盤)
どんどん数が膨れ上がる罪人を抱える「地獄(ヘル)」は定期的に「天国(ヘブン)」からエクソシスト軍隊を送りこまれ、罪人たちは情け容赦なく駆除されていました。この殺戮に立ち上がったのが、地獄を生み出したルシファーとリリスの娘であるお姫様のチャーリー・モーニングスターです。
チャーリーは当初は罪人たちを更生する贖罪のための「ハズビン・ホテル」を開業し、これで人口を平和的に減らす代替え策を試していたのですが、天国の自惚れたアダム率いる軍勢との戦いを避けられなくなり、一大決戦に個性豊かな仲間とともに臨みました。
結果、アダムを打ち倒し、撃退することができました。罪人が天国の存在を倒すという異例の事態でした。
それから時は少し経過。ハズビン・ホテルは再オープンで大繁盛していました。罪人たちが長蛇の列を作っています。チャーリーのガールフレンドであるヴァギーは受付で大忙し。チャーリーとホテルの成功のために力を貸したアラスターは仕事を丸投げ。ハスクはバーで忙しくしていますが、その前でエンジェル・ダストは自分のセクシーさをアピールするのに夢中。チェリー・ボムもただ時間を持て余しており、無邪気なニフティはいつもながら自由です。
ただし、この盛況は嬉しいものではありません。来訪者の関心はチャーリーについてなのです。いろいろな噂が飛び交っていました。「彼女は天使の血を飲んで、ゲイ・パワーを復活させるんですか?」など突拍子もない質問が次々と飛び込んできます。
当のチャーリーはあの天使軍との戦いの最中に絶命したサー・ペンシャスの悲しみに沈み、平和的解決をとれなかった自分を悔やみ、部屋に籠りっきりでした。みんなの前では平静を装って笑顔でいようとしますが、どう考えても無理が丸わかり。
チャーリーは取材陣に囲まれてもろくに対応できず、バクスターという科学者と出会うと、発明家だったペンシャスと重ね合わせてしまい、贖罪を成功させようとまたがむしゃらに張り切りだします。
でもホテルに来た人は天使を殺したいだけで更生に興味はありません。やむを得ずに戦っただけなのに、殺し屋のホテルだと世間に思われています。
その頃、ヴォックス・テック社というメディアを牛耳るヴォックスは注目されっぱなしのチャーリーに一泡吹かす作戦を考えていました。ヴォックスは拠点のVタワーで、ヴァレンティーノやヴェルヴェットといった同僚とチーム「V」の体制で対抗意識を燃やします。
一方、チャーリーを父のルシファーが騒ぎから脱出させてくれ、ひと息ついたチャーリーは「ママだったらもっと上手くこなせるのに」と劣等感を抱きつつ、癖になっている母の留守電にメッセージを入れる行為をまた繰り返します。何年も前に姿を消して以来、母は連絡をくれません。
再び決心したチャーリーは「ハズビン・ホテルでは天使は殺しません。平和のためのホテルです。私たちと同じ夢を信じるなら歓迎します」と訪問客の前でスピーチしますが、それを聞いてみんな呆れて帰ってしまい…。

ここから『ハズビン・ホテルへようこそ』のネタバレありの感想本文です。
あなたの好きな楽曲は?
魅力的なキャラクターが織りなすミュージカルが最大の見どころのひとつとなっている『ハズビン・ホテルへようこそ』。シーズン2はさらにパワーアップしていました。
全部の楽曲に触れたいところですが、さすがに長くなりすぎるので、いくつか紹介すると…、まず第2話でアダムの幻影をまとって復讐に憑りつかれる天国のリュートがパワフルかつ自傷的に熱唱する「Gravity」。リュートはどうやら上司のアダムに秘めた愛を感じていたようですが(あんな糞野郎を愛してしまうこともある…)、それを失い、シーズン2では精神的にかなり追い詰められ、罪人抹殺にますます執着しています。
このフランチャイズは歪んだ二者以上の間の従属関係を描くことに定評がありますが、リュートの存在がシーズン2でより強く焦点があたり、堕落する天国側のリュートの葛藤も目が離せません。
一方、天国と地獄で引き裂かれてしまったペンシャスとチェリー・ボムが決して届かない掛け合いで歌いあう第3話の「Piss (A Love Song)」は打って変わって正統派なラブソングでした(だいぶバトルしているけど)。ペンシャス、シーズン2もずっと可愛かったな…。ペンシャスの人間だった頃の話も明かされましたが、他人を見殺しにしてしまったなんてみんなやってることですよ(極論)。
そして忘れてはならない第6話のチャーリーとヴァギーのセクシーなレズビアン・デュエット曲「Easy」。2人の曲は前回もあったのですが、一気にセクシャルにヒートアップし、これぞクィアな観客が欲していた大興奮のベッドイン。
同じ第6話のエンジェル・ダストがドラァグクイーン姿でこちらもエロティックに歌い上げる「Losin’ Streak」も良かったですけどね。第6話はシーズン2の中では屈指にクィア・パワーがぶち上がっていたエピソードでしたよ。
『ハズビン・ホテルへようこそ』含むフランチャイズのミュージカル楽曲はどれも歌詞もトーンもゲイネスに溢れており、LGBTQコミュニティにウケるツボを押さえてくれているのが最高ですね。ここまで振り切ってやってくれる作品はなかなかないですから。
オールドメディアを憎む奴の末路
前回はアダムがヴィランであり、わりと誰から見ても差別主義者な最低な悪役だったのですが、『ハズビン・ホテルへようこそ』シーズン2ではヴィランがヴォックスとなり、悪役の深みが増したように思います。
ヴォックスはわかりやすくメディアを駆使して権力を手にしようとしています。シーズン2は事実上のメディア戦争です。デマを流し、相手をバッシングし、レトリックで印象操作する…昨今も大問題になっている暴走するメディアの現状がこの地獄でも繰り広げられています。
ヴォックスは第5話の楽曲「VOX POPULI」でも歌われているとおり、「声」で大衆を虜にしようとしており、これはまさに宗教です。このシリーズは宗教を風刺する要素が濃いですが、今回はヴォックスがメディアという宗教を展開し、真の神になるという野望を果たそうとします。
そんなヴォックスのライバルがラジオ・デーモンのアラスターで、日本のどこぞの誰かがしきりにオールドメディアなどという陳腐な言葉でレッテルを貼って攻撃するかのように、エンタメ動画至上主義のヴォックスも古きラジオのアラスターをこき下ろします。
今回はそんなヴォックスとアラスターの因縁の過去も明らかになりました。2人が火花を散らす楽曲「Don’t You Forget (Reprise)」は見ようによっては束縛プレイなのですが、拘束されっぱなしのアラスターはアセクシュアル&アロマンティックなので全くの無反応なのがまたシュールで愉快なところです。
天国の虐殺も当然批判すべき加害なので、ヴォックスの抵抗の野心もわからなくはないのですが、自分の私利私欲を混ぜ込ませるのは論外ですからね。連帯をぶち壊すなら、ミュートにさせるしかありません。
とにかくシーズン2はヴォックスが目立ちまくりで、たっぷりその魅力を堪能できました。あのテレビ頭、悔しいけど面白い奴ではある…。
ステキなゲイシップで一致団結解決し、ヴォックスにもお灸がすえられましたが、次はたぶん新たに企業のトップにのし上がったヴァレンティーノと、そのスパイ利用もあって呪縛から脱せていないエンジェル・ダストとの物語に移るのかな。さすがにエンジェル・ダストは救ってあげないとね…現状があまりにも不憫…。
そしてアラスターとロージーのこちらも歪んだ関係性の行方も気になる部分です。
そのうえ、チャーリーの母リリスというおそらくこのシリーズの最後の大ボスが待っていますからね。チャーリーの父ルシファーも良い親という定型では全くなく、確実にリリス絡みで何かを隠しているので(なぜルシファーは圧倒的な力を持っているのに地獄の統治に無関心で、能力を行使しないのか)、世界観がひっくり返る展開が待っていそうです。
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
◎(充実/独創的)
以上、『ハズビン・ホテルへようこそ』(シーズン2)の感想でした。
作品ポスター・画像 (C)SpindleHorse, Bento Box Entertainment, A24, Amazon MGM Studios ハズビンホテルへようこそ
Hazbin Hotel (2025) [Japanese Review] 『ハズビン・ホテルへようこそ』考察・評価レビュー
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