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アニメ『ヘルヴァ・ボス(Helluva Boss)』感想(ネタバレ)…地獄でも企業は社員を大切に!

ヘルヴァボス

さもなくば!…アニメシリーズ『ヘルヴァ・ボス(Helluva Boss)』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Helluva Boss
製作国:アメリカ(2020年~)
シーズン1:2025年にAmazonで配信
シーズン2:2025年にAmazonで配信
原案:ヴィヴィアン・メドラーノ
セクハラ描写 自死・自傷描写 児童虐待描写 ゴア描写 性描写 恋愛描写
ヘルヴァ・ボス

へるばぼす
『ヘルヴァボス』のポスター

『ヘルヴァ・ボス』物語 簡単紹介

地獄の世界でも下級の悪魔であるインプたちが立ち上げた小さな企業「I.M.P」は、恨みを持ったまま地獄へやってきた人たちの復讐を代行する事業を展開していた。人間界の地上へと移動できる秘密の魔導書があれば、どこへでも一瞬で現れ、殺しを遂行できる。この会社のボスであるブリッツは部下たちと一緒に今日もあちこちで血みどろの惨殺に大忙し。でも働いても埋められない寂しさもある…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『ヘルヴァ・ボス』の感想です。

『ヘルヴァ・ボス』感想(ネタバレなし)

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スピンオフも悪魔的に楽しい

映画やドラマの話題でもよくでてくる言葉…「スピンオフ」。メインとなる作品に対して、それから派生した作品のことを指しますが、ビジネス用語でも使います。特定の部門などを独立させて作った新しい会社を「スピンオフ」と言ったりするのです。

今回紹介する作品もスピンオフなのですが、その他の意味も知っておくとちょっとニヤリとできます。

それが本作『Helluva Boss』

2024年1月にやっと本格的なシリーズの配信を開始して、ずっと待っていたファンが大歓喜することになった話題作『ハズビン・ホテルへようこそ(Hazbin Hotel)』。個性的すぎる悪魔たちが彩り歌い上げる物語…私の中ではすでに2024年のベストアニメシリーズです。

その『ハズビン・ホテルへようこそ』のスピンオフがこの『Helluva Boss』というアニメシリーズです。

「もうスピンオフがあるの?」と思ったかもしれませんが、やや事情が立て込んでます。

『ハズビン・ホテルへようこそ』は“ヴィヴィアン・メドラーノ”が自主制作で生み出したもので、そのパイロット版が2019年にYouTubeで公開されました。ファンダムを瞬く間に成長させ、そこから資金集めと協力企業を募っていったわけですが、その間に“ヴィヴィアン・メドラーノ”のクリエイター・チームは、この『Helluva Boss』というスピンオフ作品をコツコツと制作し、YouTubeで公開していったのです。

『Helluva Boss』のパイロット版は2019年11月YouTubeで公開され、シーズン1の第1話は2020年10月31日にYouTubeでお披露目となりました。それから不定期で、新しいエピソードがYouTube上で公開され続けています。

なのでメインシリーズの『ハズビン・ホテルへようこそ』よりもスピンオフである『Helluva Boss』のほうが先行して話数を重ねているんですね。

この『Helluva Boss』、どういう物語なのかというと、インプというあの世界観の地獄では下級とされる小悪魔たちが会社を立ち上げ、その事業とキャラクターが織りなすドラマを描くという感じ。「スピンオフ」だけに、会社の話になっています。『ハズビン・ホテルへようこそ』に登場したメインキャラクターは基本的に『Helluva Boss』には登場しません。

『ハズビン・ホテルへようこそ』と同じスタイルのデザインですし、ミュージカル要素も豊富で、同様の感覚で楽しめます。ただ、さらに口汚く、残酷描写も多めで、よりやりたい放題にやっているノリがあります。

キャラクター数もとても多く、あの世界観を横にどんどん拡張しているので、「もっとあの世界が見たい!」と思っていた人には最高です。無論、LGBTQ表象もたっぷり。

相変わらず大人向けのアニメーションなので、小さい子は見れませんけどね。

残念ながら公式の日本語訳はないので、YouTubeの公式チャンネルでオリジナルの英語版を観るしかないのですが(無料で見れます)、2025年9月10日から「Amazonプライムビデオ」で独占配信されました! 絵を眺めているだけでも楽しいですから。

魅力的なグッズも以下の公式ストアで買えます。

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『ヘルヴァ・ボス』を観る前のQ&A

✔『ヘルヴァ・ボス』の見どころ
★癖になる世界観とキャラクター。
★魅力的なカップリングが多数。
✔『ヘルヴァ・ボス』の欠点
☆—

鑑賞の案内チェック

基本 デフォルメされてはいますが、虐待的な関係を描くシーンもあります。
キッズ 1.0
残酷描写や性描写が多いので、子どもには不向きです。
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ヘルヴァ・ボス』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤)

罪人たちがひしめき合う地獄にあるインプシティ。ここのとある場所の建物の一室で、平凡な部屋ではありますが、熱心に会議をしている者たちがいます。「I.M.P」(Immediate Murder Professionals)という会社です。

そうは言っても、張り切っているのはこの会社のボスであるインプのブリッツだけ。目の前に座っているモクシー、ミリー、ルーナの3人はもっぱら聞き役です。

モクシーとミリーは新婚夫婦のインプで、いつも仲睦まじいです。モクシーは武器のスペシャリストですが、それを人に向けるのは苦手な様子。ミリーは意気地なしのモクシーと比べると肝っ玉が備わっています。

ルーナはヘルバウンドですが、ブリッツの養子となっており、ブリッツからは溺愛されています。ただ、ルーナ自身はそんな過保護がウザいようで、受付の仕事もテキトーにこなしています。仕事に集中する気はゼロです。

今日の議題はこの会社の業績です。低調でした。CMに予算を使い果たしたので、打開策が必要です。有名な会社でもないので、無理もありません。

「I.M.P」の業務内容は、地獄で心残りのある悪魔を生前陥れた者をここに連れてくるという復讐代行。普通は簡単には地獄から人間のいる地上へは行けないのですが、この「I.M.P」には問題ありません。

なぜなら、ストラスという王族ゴエティア家で優雅な生活を送る上級悪魔の王子とブリッツは親しく、その間柄を活かして、特別な魔術書(グリモワール)を借りているのです。これを使えば、地上へ行ける次元の穴を容易く生成できます。行き来はラクラクです。

その代わり、ブリッツはこのストラスと肉体関係を持ってあげることになっており、定期的に会っています。ストラスにはステラという高慢な妻がいて、たくさんの子を作ることをプレッシャーに感じており、夫婦仲は険悪になっていました。

そんなストラスとステラの間に生まれたオクタヴィアは今や年頃の娘となり、両親には呆れて距離をとりたがっています。ストラスは娘を愛していますが、関係を深めるような器用なことはできません。

「I.M.P」の復讐代行の事業は予想外のトラブルも連発します。相手を殺そうと思ったら思わぬ反撃を受けたり…。「CHERUB」という天国で事業している昇天サービスと競合関係が勃発したり…。「D.H.O.R.K.S.」という人間界に密かに存在する超常現象専門エージェント組織に狙われたり…。

そしてストライカーという謎の暗殺者が殺意を向けてくることも…。

こっちが殺す側だったはずなのに、殺される側? 一体どうなっているのか…。

この『ヘルヴァ・ボス』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2025/09/11に更新されています。
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シーズン1:孤独でも、ヘンタイでも…

ここから『ヘルヴァ・ボス』のネタバレありの感想本文です。

『ヘルヴァ・ボス』は一応はビジネスものということで、企業文化を風刺するスタンスで土台を固めていますが、なんだかんだであの会社「I.M.P」は(殺しが事業内容であるにせよ)コンプライアンスをそれなりに守ろうとしますし、何よりも社員を第一に考えてくれています。日本よりこの地獄の会社のほうがよっぽどマシかもしれない…。

ジャンル的には“あの世”の管理を事務的に描いたコメディのドラマ『グッド・プレイス』『アップロード デジタルなあの世へようこそ』に近いものがありますが、『ヘルヴァ・ボス』は完全に地獄目線。

私は『ヘルヴァ・ボス』…というか、『ハズビン・ホテルへようこそ』を含めた“ヴィヴィアン・メドラーノ”作品全般に言えることですけど、このクリエイターの生み出す世界の中毒性のある魅力は「キャラクター同士の関係性」にあると思います、早い話が「シップ(ship)」…カップリングですね。

例えば、本作ではモクシーとミリーという開幕当初から順風満帆なペアもいます。モクシーの愛されいじられキャラっぷりが可愛すぎますね。

ちなみに第5話でミリーが実家に帰り、そこで妹のサリー・メイが登場しますが、あのキャラはトランスジェンダー女性とのこと(この世界のインプは、男性は角が黒と白の縞模様で、女性は白の部分が細いという身体的な性的特徴があるようで、それによってトランスかどうかの判断がつきやすくなっている)。

一方で、ルーナのように、同じ獣の種族と群れることもできず、孤独になりがちなキャラもいます。ポップスターのヴェロシカの護衛のヴォルテックスに一目惚れしても片想いで終わる。寂しい一匹狼です。

そんなモクシーにとっては上司、ルーナにとっては養父であり、本作の中心に立つのがブリッツ。本名は「ブリッツォ(Blitzo)」ですが、本人は「oは発音しないでほしい」というこだわりがあり、それをわかってくれている人はブリッツと呼んでいます。このブリッツがいかにボスになれるのか…というあたりが本作のメインプロットなんでしょうか。

そのブリッツと本作最大のカップリングを成立させるのが準レギュラーのストラスです。最初、ただの変態キャラ枠なのかと思ったら、ブリッツとの身分格差の恋模様が切なく描かれ、第7話のデートなんてもう心苦しい…。

私は本作で一番の好きなキャラはやっぱりストラスかな。ストラスの種族のあのフクロウを基にしたビジュアル・デザインもまたいいですよね。

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シーズン2:虐待と支配から解放されたい

『ヘルヴァ・ボス』のシーズン2では、あのブリッツとストラスの馴れ初めが明らかになります。幼いストラスは厳格な父パイモンからの愛情に飢えていましたが、そこで出会ったのがサーカスでパフォーマンスしていたブリッツ。そんな彼をカネで買うように友人としてプレゼントされたストラスは、それでもブリッツと親しくなり、起業の夢を分かち合う…。痛々しくロマンチックじゃないか…(ストラスの性を開発したのブリッツなのかよ…)。

結局、ステラが差し向けたストライカーに命を狙われ、ストラスは重傷を負ったりしつつ、このブリッツとの関係性の修復と円満はまだ道筋が見えていません。ちゃんとストラスが契約ではないかたちでの付き合いを求めて本気でプロポーズしたのに…。

一方、ブリッツも、双子の妹バービーだったり、家族の軋轢を抱えています。彼があの「I.M.P」を始めたのも「家族」が欲しかったからなんでしょうね。モクシーとも牢屋で初対面だったみたいだし…。

そのモクシーですが、このシーズン2でもいじられ愛されキャラっぷりは健在で(やたら女装しがちなのがいい)、しかし、そんなモクシーにも負の過去が…。マフィアである父クリムゾンからの完全な虐待的教育(チャズとの結婚強要&性的指向の否定を含む)。“ヴィヴィアン・メドラーノ”作品、虐待服従関係についての解像度がゾワっとするほど深くて怖い時がある…。

また、シーズン2では意外なキャラにもスポットがあたり、それはシーズン1でルールーランドというパクリ遊園地でピエロロボが登場していましたが、そのオリジナルであるフィッツァローリ(フィズもしくはフィジー)。実はブリッツとはサーカス時代の同期で、因縁もあります。

シーズン1ではフィッツァローリは隠れ恋人のアスモディアス(オジー)と共に、ブリッツ&ストラスのカップルにかなり酷いことを言っていて、ヒールだったわけですが、今回はそのフィッツァローリ&アスモディアスの恋模様が甘く切なく描かれ…。どんどん良いカップリングを量産してくるじゃないか…。

フィッツァローリは手話でファンの子とやりとりしたり、トキシック・ファンダムにめげずに頑張っていたり、やっぱり有害な業界構造があったり、ほんと、いろいろ大変そうだけど、これなら応援したくなる…。

シーズン2の第2話で描かれる、面倒な父を持つ同士のオクタヴィアとルーナのコミュニケーションも良かったです。ちなみにルーナはバイセクシュアルですが、オクタヴィアはアセクシュアルだそうです。やっぱり私は鳥キャラのデザインが好きだな…。

サタンの裁判でストラスは追放の刑で地位と能力を剥奪され、庶民に。ブリッツとの素朴なゲイ・カップル生活の始まり…は喪失のゆっくりとした癒しからです。ストラスとオクタヴィアの亀裂、いまだ実家と疎遠のミリーの妊娠(悪魔も普通に妊娠するのかよ…)と、いろいろ問題山積み。

みんな地獄で幸せになってほしいですね。

『ヘルヴァ・ボス』
シネマンドレイクの個人的評価
9.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
◎(充実/独創的)

作品ポスター・画像 (C)SpindleHorse Toons ヘルヴァボス ヘルバボス

以上、『ヘルヴァ・ボス』の感想でした。

Helluva Boss (2020) [Japanese Review] 『ヘルヴァ・ボス』考察・評価レビュー
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