そして犯人は…ドラマシリーズ『ハンティング・ワイブス』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2025年)
シーズン1:2025年にNetflixなどで配信
ショーランナー:レベッカ・カッター
自死・自傷描写 DV-家庭内暴力-描写 性描写 恋愛描写
はんてぃんぐわいぶす

『ハンティング・ワイブス』物語 簡単紹介
『ハンティング・ワイブス』感想(ネタバレなし)
ようこそ、ハンティング・ワイブスの世界へ
2025年に英語圏で話題になった新顔のドラマシリーズの中には、クィア作品もひときわ目立っていました。そのひとつが『ヒーテッド・ライバルリー』で、もうひとつが今回紹介する作品です。
それが本作『ハンティング・ワイブス』。
「Lionsgate Television」制作の本作の舞台は、アメリカのテキサス州の典型的な保守的な町。そこで暮らす、比較的裕福もしくは中産階級の女性たちを主役にしています。彼女たちは「妻」と「母」という役割を当たり前のように受け入れ、男を支えながら過ごしています。
さながらリアリティー番組の『The Real Housewives』のコンセプトがテキサス版で繰り広げられるような…。劇映画で言うところの『デスパレートな妻たち』というべきか…。
しかし、『セックス・アンド・ザ・シティ』の猥雑な大人の女性の戯れをただテキサスに持ち込んだわけではありません。
『ハンティング・ワイブス』では、ある殺人事件が起き、それが物語の中心となっていく、ミステリーサスペンスの様相を深めていきます。
じゃあ、クィアな要素はどこにあるのかと言えば、この主役の女性たちの間で、女同士の恋愛や性的関係の駆け引きが勃発もしていくからで…。結構、露骨にエロティック・スリラーのジャンルにも突っ込んでいく作品です。
『ハンティング・ワイブス』は原作があって、“メイ・コブ”による2021年の小説であり、“メイ・コブ”自身もテキサス出身だそうです。原作の本自体は出版当時はベストセラーのリストに連ねるほどの話題性はなかったらしいですが、今回のドラマ化によって状況は一変。経済的にかなり苦しかったという“メイ・コブ”の人生も大きく方向性を変えたとのこと。
ドラマ化でショーランナーを務めたのは、“レベッカ・カッター”で、2020年にドラマ『ハイタウン』を手がけ、こちらもレズビアンを主役にしたクィア作品でした。
俳優陣は、ドラマ『華麗なるマードー家』の“ブリタニー・スノウ”、ドラマ『ビリオンズ』の“マリン・アッカーマン”、ドラマ『令嬢アンナの真実』の“ケイティ・ロウズ”、ドラマ『リトル・ファイアー〜彼女たちの秘密』の“ジェイミー・レイ・ニューマン”、ドラマ『アカプルコ』の“カレン・ロドリゲス”、ドラマ『アーカイブ81』の“エヴァン・ジョニカイト”、ドラマ『シカゴ・ファイア』の“ダーモット・マローニー”など。
『ハンティング・ワイブス』のシーズン1は全8話で、1話あたり約45~55分です。
謎解きが軸になるので、ネタバレを見る前に、本作を観てしまってください。
『ハンティング・ワイブス』を観る前のQ&A
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Q『ハンティング・ワイブス』は日本ではいつどこで配信されていますか?
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A
「Netflix」で2025年12月31日から配信中ですが、オリジナル作品ではないので配信が終了する可能性もあります。
鑑賞の案内チェック
| 基本 | 自殺や家庭内暴力を描くシーンが一部にあります。 |
| キッズ | ヌードや性行為の直接的な描写があります。 |
『ハンティング・ワイブス』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(序盤)
暗闇の森、ひとりの若い女性がボロボロのまま逃げ惑っていましたが、どこからともなく銃声が響き、弾丸が狙う獲物は他ならぬこの女性でした…。
3週間前。後部座席にどこか落ち着かなく座って窓からの景色を見つめているソフィー。運転はしていません。閑静な住宅街にある家に帰って来て、夫のグラハムと幼い息子のジャックに迎えられます。そして、バスルームにひとりで入り、ふと自分のお腹の傷を確かめます。
ソフィーたちは、マサチューセッツ州ボストンからテキサス州東部のメープルブルックに引っ越したばかりです。夫グラハムの仕事のためでした。今日は家族でグラハムの上司のジェド・バンクスの資金集めパーティーに参加することになっていました。
移動中の車内で、ソフィーは「テキサスは嫌いだ」と不快感を露わに呟きます。
着くとさっそくテキサスの田舎らしい風景に圧倒されます。パーティーはお祭り騒ぎですが、支援先ということもあって全米ライフル協会(NRA)のイベントのような雰囲気です。みんな踊ったりと楽しそうではありますが、男の腰には当たり前のように銃がぶら下がっています。
全くゆっくりできず、そのバンクス家のバスルームで落ち着こうとしますが、そこにはひとりの女性がいました。親し気なその女性は何も気にせずパンツ下着1枚の姿になり、「ナプキンはないか」と聞いてきます。ソフィーはタンポンしか持っていません。その女性はタンポンは自分は使えないと言います。やや困惑しながらソフィーは目を逸らすも、彼女の緑のドレスの後ろをあげてあげます。なんとも余裕と自信に溢れた女性でした。
外ではカウボーイハットをかぶったジェドは知事選に出馬を考えていることもあり、大衆にアピール。最近この地域で起きた未成年誘拐事件を取り上げ、この地を脅かす犯罪者とそれから守るための銃の重要性を力説し、聴衆は盛り上がります。
そして妻のマーゴが紹介され、2人は仲睦まじくキス。マーゴはあのソフィーがバスルームで出会った女性でした。ソフィーの目はマーゴを追います。
バンクス夫妻にあらためて対面し、ソフィーは感想を聞かれ、言葉を迷っているうちに先ほどのスピーチについてうっかり「レイシスト」と表現してしまいます。ジェドは気にしてなさそうです。
マーゴから、牧師クリントの妻ジルと保安官ジョニーの妻キャリーという女性たちも紹介されます。みんな地域の有力者の妻のようです。ここの女性たちの交流の輪に素直に加われず、「ニュー・ガール」のソフィーは空気に流されるだけ。
その頃、家の一室ではクリント牧師の息子ブラッドはガールフレンドのアビーとベッドで交わろうとしますが、敬虔なアビーは婚姻前のこうした行為に躊躇。祈るアビーの前でブラッドは自分で欲求を解消します。その姿をマーゴはドアの隙間から見つめ、ブラッドも見られいるのに気づくもむしろそれを興奮とします。
ソフィーの去り際、マーゴに連絡先を教えてと言われ、女性たちの集まりに誘われます。
湖畔の豪華なウッドハウスを訪れると、ジルとキャリーの他に、モネイとテイラーという女性も揃っていました。「どんな仕事をしているの?」と話を振るも、「私たちは妻よ」と言われる始末。
そして、この地では女でも知っている銃の使いかたを教わることになり…。

ここから『ハンティング・ワイブス』のネタバレありの感想本文です。
シーズン1:保守的な地は女性にとって…
ドラマ『ハンティング・ワイブス』は最初に紹介したとおり、テキサスが舞台であるということが最大の特性になっていました。とくにそこで主人公は個人レベルの地政学的な緊張感に直面するんですね。
テキサスは一般的にアメリカにおいて保守的な州とされています。もちろんテキサス内でも場所が違えばいろいろ政治的な傾向も変わるのですけども(ドキュメンタリー『ゴッド・セーブ・テキサス』を観よう)。

そのテキサスにやってくる主人公のソフィーは、物語の始まる前はリベラルなマサチューセッツ州のボストンで過ごしていたからこそ、自身もリベラルな価値観が窺え、しかも地方政治の広報の仕事をしていたこともあって、政治的な事柄に敏感です。優勢な政治勢力がガラっと変わった地域に移り住み、冒頭は完全にアウェイな気分になっています。
ソフィーがマーゴたち…この地の同年代の女性たちに出会ったときのあの反応が象徴的ですよね。いわゆる「典型的なトラッド・ワイフだ…」と“ほら見たことか”状態。第一印象として「マージョリー・テイラー・グリーン」と感想をこぼすのも笑えます(ちなみにマージョリー・テイラー・グリーンはジョージア州出身ですが、熱烈なドナルド・トランプ支持者で、保守派の金髪白人女性のアイコン。ただし、2026年はトランプと縁を切ってしまい、立ち位置は変わりつつありますが…)。
しかし、本作は「リベラルな女性が保守的な地で嫌な思いをする」ような単純な話になりません。それどころか、保守的な地で暮らす女性たちへの自身の偏見が浮かび上がり、ちょっと考えを改め直す展開が序盤にあります。
何よりもイメージを覆してくるのがマーゴで、初対面から堅苦しさを感じさせません。そして、第1話から女と女のエロティックな眼差しと触れ合いが漂うわけで…。
ここでもう1度ソフィーの身の上を振り返りますが、ソフィーはリベラルな地で生活していましたが、実際はかなり抑圧的な人生に沈んでいたことが察せます。出産の失敗によるトラウマを抱え込み、一見良識人に思える夫のグラハムはソフィーに寄り添うことはなく、冒頭のソフィーは主体性を失っています。さらにクィアネスも押し殺している…。
一方、テキサスの女性たちは確かに「妻」と「母」の役目を掲げるも、なんだかんだで女同士で集まって銃をバンバン撃って発散し、楽しそうにしているじゃないですか。これが保守的な世界での女性たちのサバイブというか、息抜きであり、案外と一面的ではないことを実感します。ソフィーにとってはああいうシスターフッドこそ欠けていたものでしょうし…。
そういう意味では『ハンティング・ワイブス』は、『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』のような物語へのカウンターです。女性が保守的な世界で解放を得ることだってあるんだよ、と。
『ハンティング・ワイブス』で描かれるテキサスは、ステレオタイプ的のようにみせかけ、女性たちの姿はとても多彩で生っぽさがありました。
シーズン1:ソフィーとマーゴは似た者同士
じゃあ、ソフィーはテキサスで「女の友(そしてガールフレンド)」を得て、めでたしめでたし…とはならないのが、ドラマ『ハンティング・ワイブス』。
地元の若いアビーが無残な死体で発見され、その殺人事件の第一容疑者としてソフィーが浮上したことで、別方向に緊迫してきます。明らかにハメられた…でも誰が…。
ミスリードとして、若い牧師ピートがニーナやケイシー・クルメルを誘拐していたことが判明しますが、こちらはアビー殺害と無関係でした。ピートの事件は、典型的なサイコパスのフェミサイドという感じですね(ちなみにピートを演じた“ポール・ティール”は2024年11月に亡くなりました)。
はい、ここから真相のネタバレ。
その前に総括すると、本作『ハンティング・ワイブス』は作中でも触れられた『ゴーン・ガール』を、2つの夫婦を土台に女同士の不倫も交えて展開するような物語構造でした。アプローチとしてはバイセクシュアル・テンションも活用されています。
ソフィーとマーゴは似た者同士でもありました。
ソフィーは夫グラハムとの関係は抑圧下にあり、クィアネスを封じ込めています。そして死者をだした交通事故をうやむやにしたという罪を背負ってもいます。
マーゴも夫ジェドには逆らえず、クィアネスは夫を楽しませる快楽の中にそっと添えるか、キャリーやソフィーへの愛欲のように、やや支配的な関係性で満足を得ようとするくらいしかできません。そんなマーゴはブラッドとの不倫のすえ、中絶を経験し、さらにはそれを知られたことでアビーを殺すという凶行まで重ねる…。
リベラルだろうが、保守的だろうが、どんな地でも、追い詰められた女性が切羽詰まったすえに一線を越えてしまう…そういう境遇が本作の根底にあります。
まあ、それにしたってメープルブルックの妻たちは、タイトル回収するように、みんな人を撃ち殺していくのはちょっと笑ってしまいますが…。ジルはスターを殺し、キャリーはジルを殺し…。やっぱり銃を常時携帯していると躊躇いなく殺しやすいんだな…。
終始翻弄されるソフィーでしたが、パニックの結果とは言え、最後の最後でマーゴと立場が逆転します。マーゴの弟のカイルを轢き殺し、遺体を捨てて隠したソフィー。そして惨劇に終わりがないことを悟るマーゴ。家父長的権力欲に夢中な男たちは身近な女たちが瀬戸際にいることになおも気づいていません。サラザールとフリンの保安官組だけはなんとか頑張っていますが、どうなることやら…。
シーズン1から急所を狙う面白さをみせてくれた『ハンティング・ワイブス』。次にも期待です。
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
○(良い)
以上、『ハンティング・ワイブス』の感想でした。
作品ポスター・画像 (C)Lionsgate Television ハンティングワイブス
The Hunting Wives (2025) [Japanese Review] 『ハンティング・ワイブス』考察・評価レビュー
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