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ドラマ『メア・オブ・イーストタウン』感想(ネタバレ)…ある殺人事件の真実

メア・オブ・イーストタウン

ケイト・ウィンスレットの佇まいに目が離せない…ドラマシリーズ『メア・オブ・イーストタウン ある殺人事件の真実』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Mare of Easttown
製作国:アメリカ(2021年)
シーズン1:2021年にU-NEXTで配信
原案:ブラッド・イングルスビー

児童虐待描写

メア・オブ・イーストタウン

メア・オブ・イーストタウン

『メア・オブ・イーストタウン』あらすじ

ペンシルバニア州郊外の町であるイーストタウン。全員が顔見知りの平穏なこの地で、ある日、突然シングルマザーの少女が惨殺された。常にこの町のいざこざに対処してきた刑事のメア・シーアンは殺人事件の調査に当たるが、誰もが容疑者となりうる状況で捜査は難航。少女を取り巻く住民たちの想いは絡み合い、やがて事件は思いもよらない展開を見せていく。この町にはまだ明かされていない人間模様があった…。

『メア・オブ・イーストタウン』感想(ネタバレなし)

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2021年の賞を席巻したドラマシリーズ

「親しき仲にも礼儀あり」という言葉がありますが、その意味は「どんなに親密な関係であっても、出すぎたマネはせずに礼儀を守るべきである」ということです。

これは別に日本独自の概念ではなく、おそらく世界どこでも一定の不文律として存在しているのだと思います。確かにオープンなコミュニティは大切です。でも個々人の関係で言えば、やはり何でも打ち明ければいい、見せびらかせばいい、知り尽くせばいい…そんなわけにはいきません。詮索をしない、追及をしない、接近しすぎない…そういうこともコミュニケーションには欠かせない様子です。

しかし、そうも言っていられない事態に直面したとき、私たちはどうすればいいのか。相手の“明かしたくない奥底”に踏み込まないといけない…そうなってしまったらあなたは耐えられるでしょうか。そして自分の“明かしたくない奥底”が露呈してしまったら…あなたはその現実に向き合えるでしょうか。

そんなことを考えさせるようなドラマシリーズが今回の紹介する作品。それが本作『メア・オブ・イーストタウン ある殺人事件の真実』です。

本作『メア・オブ・イーストタウン』は非常に高い評価を受けているドラマシリーズであり、2021年の代表作のひとつです。プライムタイム・エミー賞ではリミテッド・シリーズ部門にて作品賞にノミネートされ、“ケイト・ウィンスレット”が主演女優賞に輝きましたし、他にも助演男優賞と助演女優賞も獲得。文句なしの絶賛です。

ジャンルとしてはある街で起こった殺人事件の真相を解き明かすミステリーサスペンスであり、主人公は刑事の女性です。とてもオーソドックスな構成であり、さまざまな登場人物のドラマが折り重なりながら、平凡な街の裏にある闇が浮かび上がり、最後は答えが明かされる…そういう流れ。

ただし、非常にゆったりとしたペースが特徴で、第1話からそうなのですが、展開もスローペースです。次から次へと衝撃が連発して気が休まらないスリルがある!という興奮とは違うタイプ。『TRUE DETECTIVE』のようなドラマは最終的にはサイコパスな犯人との対峙というインパクトがあったりしますが、今作『メア・オブ・イーストタウン』はそれがメインではない。どちらかというとそういういかにもジャンル的なショッキングさよりも、もっと人間味溢れるドラマ面に力が入っており、各登場人物の感情を時間をかけて掘り起こしていくストーリーと言えます。

原案&脚本は“ブラッド・イングルスビー”という人で、最近だと『ザ・ウェイバック』の脚本を手がけており、あちらも苦悩を抱える人間の内面を描くのが上手かったですね。

監督は『コンプライアンス 服従の心理』『ザ・ハント』“クレイグ・ゾベル”が担当しており、人間の倫理観を揺さぶるのが巧みなクリエイターです。

主人公を演じるのは先ほども言及したように“ケイト・ウィンスレット”です。『タイタニック』で大スターになり、『レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで』『愛を読むひと』などで繊細な演技を披露し、最近は『アンモナイトの目覚め』でも熱演を見せていました。

今作『メア・オブ・イーストタウン』では舞台がフィラデルフィアでこの地域特有のアクセントを完璧に披露してみせているそうで、そこも本国批評家を関心させているとか(“ケイト・ウィンスレット”はイギリス人)。

共演は、主人公の親友役で『8月の家族たち』の“ジュリアンヌ・ニコルソン”、主人公の母親役で『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』の“ジーン・スマート”、主人公の元夫役で『アグネスと幸せのパズル』の“デヴィッド・デンマン”、主人公の刑事相棒役で『X-MEN』シリーズのクイックシルバー役でおなじみの“エヴァン・ピーターズ”が登場。

若手勢としては主人公の娘役を『ナイスガイズ!』の“アンガーリー・ライス”、殺害される10代のシングルマザー役を『パシフィック・リム: アップライジング』や『ザ・クラフト: レガシー』で最近活躍中の“ケイリー・スピーニー”が演じています。

他にも『スレイヤー 7日目の煉獄』の“ガイ・ピアース”、ドラマ『ザ・モーニングショー』の“ジョー・ティペット”、演劇の世界で高い評価を受けている“ジョン・ダグラス・トンプソン”など。

とにかくこの『メア・オブ・イーストタウン』は登場人物が多いのです(40人以上はいる)。最初は人間関係の把握に苦労するかもしれませんが、こちらの後半の感想でキャラクターの相関図を掲載しているので参考にしてください。

『メア・オブ・イーストタウン』はHBO作品なので、日本では「U-NEXT」で配信中です。なお、たまに「Netflixにはないんですか?」と質問してくる人がいますが、説明したように日本では現時点でHBOはU-NEXTと提携しているのでNetflix配信はさすがにないと思います。

リミテッドシリーズとして全7話で各話約60分。じっくり演技を堪能して鑑賞するのがよいでしょう。

オススメ度のチェック

ひとり4.5:2021年必見のドラマ
友人4.0:俳優ファン同士でも
恋人3.5:同性愛ロマンスもある
キッズ3.0:大人のドラマです
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『メア・オブ・イーストタウン』予告動画

ケイト・ウィンスレット主演『メア・オブ・イーストタウン / ある殺人事件の真実』ティザー予告
↓ここからネタバレが含まれます↓

『メア・オブ・イーストタウン』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤):少女は殺された

フィラデルフィア郊外の街。住宅地が立ち並ぶこの地域は顔なじみも多く、普段は平穏です。

この地域の警察署で勤務するメア・シーアン刑事は、今日も夜中に叫び声を聞いたというキャロル夫婦を訪れ、街の小さないざこざや不安に対処していました。

上司のカーター署長に呼ばれると、ケイティ・ベイリーという少女の失踪に関する1年前の調査を再開するように命じられます。その失踪少女の母親のドーンはメディアの前で警察を批判しており、署としても何かの動きを見せないといけないようです。けれども有力な手がかりはいまだにありません。

メアは帰宅します。家では高齢の母親のヘレン、そしてメアの娘のシボーン、孫の4歳のドリューと暮らしており、いとこで神父をしているダン・ヘイスティングスもよく来ます。メアの元夫のフランクとは別れてはいるのですが、すぐ近所に住んでいるので顔を出すことも多いです。複雑な家庭にやや滅入るメア。

メアにとって気が休まるのは親友のロリー・ロスと団欒。また、ある日、バーで最近この地域に引っ越してきた作家のリチャードと出会い、良い関係になります。

一方、シングルマザーでDJという幼い子を育てている10代のエリン・マクメナミンの家庭は別の意味で過酷でした。元恋人のディラン・ヒンチーとは口論が絶えず、ディランの新しいガールフレンドのブリアナは高圧的な口調でエリンを嘲ります。父のケリーも娘のエリンに怒鳴り散らして威圧的な態度をとる始末。エリンにとっての唯一の拠り所は同年代の仲良しのジェス・ライリーだけ。

ある夜、パーティの集まりで森の中の野外にてエリンはブリアナの仲間グループに囲まれ、ブリアナに暴力を振るわれます。たまたま駆け付けたシボーンが助けに入りましたが、エリンはひとりトボトボと森へ消えてしまいました。

翌朝。メアのもとに一本の電話が入ってきます。近所で遺体が発見されたというのです。すぐさま現場に到着すると、小川に下着1枚で投げ出されている少女の無残な亡骸が…。それはエリンの遺体でした。

至近距離で撃たれたとみられ、性的暴行の痕跡はありません。すぐにメディアに発表することになり、マスコミの関心はケイティ失踪との関連に注がれます。

状況は緊迫し、郡警察から過去に殺人事件を解決した実績があるというコリン・ゼイベルが派遣されてきて、メアと組むことになりました。

怪しい人物はいます。でも証拠はありません。犯人は身近にいるのか、それとも…。

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シーズン1:登場人物の相関図

『メア・オブ・イーストタウン』は登場人物がたくさんいて複雑に絡み合うので整理するのが大変です。「U-NEXT」の作品ページでは相関図も載っているのですが、なぜか妙に不十分で中途半端な相関図なので役に立ちません。そこでこちらでもっと網羅的なキャラクター相関図を用意しておきました。

メア・オブ・イーストタウン_キャラクター相関図1

メア・オブ・イーストタウン_キャラクター相関図2

上記のキャラクター相関図に掲載していない登場人物も他にもいますが、物語にメインで関与するのは大まかに言って3つの家族です。

まずは主人公のメアのシーハン家族。この家族は少しわかりづらいのですが、4世代同居家庭になっています。しかし、メアの夫は別れており、違う女性と婚約(でも近所というややこしさ)。ちなみにメアの母もシーハンなので妻の姓をとっているんでしょうね。そしてここが大事ですが、メアの長男であるケビンは作中始まりの時点で亡くなっており、その息子(メアにとっては孫)のドリューだけがいます。

メアの娘のシボーンはレズビアンで、作中ではアンという女子とラブラブに。なお、シボーンがやっているバンドの名は「Androgynous」で、このアンドロジナスというのは「男らしさと女らしさの特徴を併せ持つこと、そのどちらでもない特徴を持つこと、そのあいだの特徴を持つこと」という意味でジェンダー関連で使われる用語です(用語解説は下記サイト参照)。

もうひとつの重要な家族はマクメナミン家族。犠牲者となるエリンの家族です。エリンにはDJという幼い子がおり、この子の父親が誰なのかというのが物語の最大の謎のひとつになってくるのですが…。

エリンの父であるケニーのいとこであるジョン&ビリーの家族が、3つ目に大きく欠かせないことになるロス家族。ジョンはロリーという妻がいて、ロリーはメアとも仲良し。ジョン&ロリーの夫妻にはモイラとライアンという2人の子がいます(ちなみにモイラを演じているのはダウン症俳優の“カシー・ムンデンク”)。

あからさまに面倒事を抱えているシーハン家よりもはるかに落ち着いている気がするロス家でしたが実は…というオチでした。

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シーズン1:誰の心にも屋根裏がある

はい、では『メア・オブ・イーストタウン』のオチをネタバレします。未見の人は今すぐこんなサイトなんか閉じて鑑賞してください!

まずエリン殺害事件とケイティ失踪事件(後にミッシーという子も失踪)。これは直接的な関連はなく、ケイティ&ミッシーを誘拐したのはウェイン・ポッツというイーストタウン住人でした。ここの犯人宅訪問シーンの緊迫感は西部劇さながらでした。コリン・ゼイベル、無念にも銃殺されてしまい…。

ではエリンを殺したのは誰なのか。捜査ではDJの父親が鍵を握るのではと注視されますが、てっきり元カレのディランが父親かと思ったら親友ジェスの口から「フランクが父親だ」という衝撃の発言が。しかしDNA検査では父親はディランでもフランクでもないという結果に。もう手当たりしだいに近所の男のDNAを採取して照合してもいいんじゃないかと思わなくもないですが…。

そして第6話で浮かび上がるのはロス家の関与。血まみれで帰ってきたというビリーじゃないのか。しかしジェスはエリンとジョンがベッドを共にしたとおぼしき写真を保有し、それを署長に見せます。DJの父親はジョンでした。ところがここでさらに急転直下。エリンを殺害したのは実はビリーでもジョンでもなく、ジョン&ロリーの息子のライアンでした。不都合な真実を暴かれそうになったからこその親を想う子の暴走…。まあ、完全に父親が悪いですけどね…。とにかくライアンをかばうべくロス家は大きな一芝居をうつことにしたのでした。非道な行為を別の非道な行為でうやむやにする手段に…。

この「子どもが犯人」というタイプのミステリーは他にもありますけど(作品名はネタバレになるので当然言えないけど)、たいていは大人側がかばうという行動をとり、真相がわかりづらくなるというのが構造の定番です。

『メア・オブ・イーストタウン』はそんな王道のミステリーの構図を持ちつつも、物語全体はアメリカの古きサブアーバンの白人コミュニティのドラマです。しかし、そこにシーハン家のようなやや進歩的な現代の白人家庭の姿があってそれでも苦悩を抱えつつ(メアの電子タバコが象徴的)、片やロス家のような旧態依然な白人家庭もやっぱり苦悩を隠している。そして最後はやはり信仰ベースの慈愛と鎮魂による救済を感じさせつつ、メアとロリーの中年女性同士の寄り添いで終わるという新しさもある。

これらバランス感覚が絶妙で、これは確かに今のアメリカでウケやすいドラマだなと思います。詮索しないで調和のもと一定の距離で保ってきた白人コミュニティが綻びる瞬間を描くという感じですね。

ラストはメアはケビンが自殺した屋根裏へと足を運びます。誰しも“封じておきたいこと”がある。そんな誰の心にもある屋根裏へと導く、静かなドラマでした。

『メア・オブ・イーストタウン』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 94% Audience 93%
IMDb
8.5 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
7.0

作品ポスター・画像 (C)HBO メアオブイーストタウン

以上、『メア・オブ・イーストタウン』の感想でした。