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『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』感想(ネタバレ)…5作目まで長かった

インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

企画製作期間という意味で…映画『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Indiana Jones and the Dial of Destiny
製作国:アメリカ(2023年)
日本公開日:2023年6月30日
監督:ジェームズ・マンゴールド

インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

いんでぃじょーんずとうんめいのだいやる
インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』あらすじ

考古学者で冒険家のインディ・ジョーンズもすでに老体。大学教授の仕事さえもお役御免となる日を迎えた。寂しい気持ちをしみじみと独りで感じていると、彼の前にヘレナという女性が現れ、インディが若き日に発見した伝説の秘宝「運命のダイヤル」の話を持ち掛ける。それは人類の歴史を変える力を持つとされる究極の秘宝であり、その「運命のダイヤル」を巡ってインディは、因縁の宿敵を相手にすることに…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』の感想です。

『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』感想(ネタバレなし)

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5作は作ります!(44年かかる)

このシリーズは映画を5作は作ろう…そう取り決めたとします。何年くらいで5作の映画を作り終えると思いますか? まあ、映画製作も大変ですし、短い年数では無理です。大作なら10年以上は絶対にかかるでしょう。

でもまさか44年もかかるとは想像しないのではないでしょうか…。

そんなことになってしまったのが『インディ・ジョーンズ』シリーズです。

このシリーズは1981年に『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』 という1作目が劇場公開されました。 “ジョージ・ルーカス”原案で、“スティーヴン・スピルバーグ”監督による渾身の映画であり、当時は『007』シリーズみたいにしようと考えていたとのこと。

それだけ気合いが入っていたので、配給のパラマウントとの間で、1作目公開前の1979年の時点で「5作は映画を作る」という話でまとまっていたそうです。

2作目の『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』は1984年に公開、3作目の『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』は1989年に公開。ここまでは、まあまあ順調なペース。

しかし、その後、もう3部作でいいかという気分になり、“ジョージ・ルーカス”はテレビシリーズ『インディ・ジョーンズ 若き日の大冒険』で満足。しばらく映画は音沙汰なしとなります。

けれども2000年に入って企画が昔なじみが集まって再始動。4作目の『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』が2008年に公開されるに至りました。

もうこれで最後かなと思いましたが、まだ企画は続行。よくよく考えれば1979年に5作は作ると言ったわけで…。ルーカスフィルムがディズニーに買収され、製作の主導権はディズニーに移りつつ、紆余曲折あってやっと2023年に5作目が登場となりました。1979年から44年後です。

それが本作『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』

なお、邦題は「インディ・ジョーンズ 運命のダイヤル」ではなく「と」が間に入ります。

44年も経過すればいろいろあります。主演の“ハリソン・フォード”だって80歳ですよ。“ハリソン・フォード”は『スター・ウォーズ』『ブレードランナー』といい、自身のキャラを締めくくる作品に近年は出続けており、今回の『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』も「インディ・ジョーンズ」を演じる最後の作品と言っています。

“スティーヴン・スピルバーグ”は今回は身を引き、『LOGAN/ローガン』『フォードvsフェラーリ』“ジェームズ・マンゴールド”にバトンタッチ。

そしてルーカスフィルムをディズニーが買収したことで、今作の『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』はディズニーとパラマウントのロゴが両方でるという珍しい光景になっています。ディズニーとパラマウントのダブルクレジットは1981年の『ドラゴンスレイヤー』以来らしい…。

物語はいつもどおりです。なんだか凄い秘宝をめぐって、なんだか凄い大冒険を、なんだか凄いノリで突っ切っていきます。約40年、やっていることは変わらない…。

『インディ・ジョーンズ』シリーズと長年共にしてきた人も、新規の初心者も、誰でもウェルカムなアドベンチャーです。インディ・ジョーンズ帽子を被って来てもいいけど、劇場鑑賞時は帽子はとりましょう。

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『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』を観る前のQ&A

Q:『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:過去作を全部観ないと物語がわからないということはありません。小ネタを知りたければ、過去の映画シリーズを予習・復習するといいでしょう。
✔『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』の見どころ
★エンターテインメント満載のおなじみの大冒険。
★ハリソン・フォードの渋み増した演技。
✔『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』の欠点
☆娯楽作として大雑把なところは多少ある。

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:初心者も入りやすい
友人 3.5:気楽に観やすい
恋人 3.5:適度なエンタメ
キッズ 3.5:少し長いけど
↓ここからネタバレが含まれます↓

『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):最後の冒険へ

1944年。第二次世界大戦の真っ只中。袋を被せられたひとりの男がナチスに連行されてきます。袋を外すと、それはインディ・ジョーンズでした。冒険家であり、今は聖槍であるロンギヌスの槍を追っていました。

なんとかその場を逃げ出したインディはナチスの服装で紛れ込み、同行していたオックスフォード大学の同僚のバジル・ショーの救出に向かいます。

バジルはユルゲン・フォラーというナチスの科学者と一緒に、列車に乗せられて尋問を受けていました。車を運転するインディは持ち前の身のこなしでバイクに乗り移り、線路へ。列車に軽々と入り込みます。

屋根を駆け、車内で聖槍を見つけましたがそれはフェイクです。

ユルゲンは古代ギリシャの植民都市シュラクサイの数学者であるアルキメデスによって発明されたとされる「ダイヤル」の半分を発見したことを上司に知らせています。これは歴史的に貴重な代物というだけでなく、時空を超える力を秘めているのだとか…。

潜入に気づき、慌ただしくなる車内。インディは愛用の帽子と鞭を発見、拘束されたバジルも見つけて助け出します。着替えて次の車両へ。ユルゲンがいましたが殴り倒し、鞄からあのダイヤルを手にしたバジルは持っていくことにします。

屋根の上を逃げていると将校と格闘となり、なんとかバジルの発砲で倒しました。連合軍の爆撃機が空におり、ユルゲンが銃を突きつけますが、構造物に激突してユルゲンは吹っ飛んでしまいます。

爆撃機が橋を爆破したので、川に飛び降りるインディとバジル。こうして危険な冒険がまたひとつ積み重なり…。

1969年、老いたインディは部屋で寝ていましたが、隣の爆音で起こされます。うるさいと文句を言いに行きますが、若者たちは気にしません。ベトナム戦争中に息子のマットが亡くなった後、妻マリオンと別居し、大学も今日で退職。気分は晴れません。

最後の講義も、学生たちは退屈そうです。後ろのひとりの女性だけが食いついてきていました。

職場の教員室ではサプライズで退職祝いパーティがあり、複雑な気持ちになり、大学をでます。

バーでしみじみとしていると、あの若い女性に声をかけられます。それはバジルの娘でジョーンズの名付け子であるヘレナ・ショーでした。かつて手に入れたダイヤルの話を持ちかけてきますが、もう冒険心は朽ちかけていたインディは冷めています。

倉庫に連れて行ってあげ、あのダイヤルを見せます。そのとき、何者かが襲ってきます。実はNASAに移って働いていたユルゲンが送り込んだ部隊でした。CIAエージェントのメイソンも同行していますが、ユルゲンの直属の部隊が見境なく一般人を殺害するのに困惑していました。

このダイヤルを売ってしまおうと画策していたヘレナはひとりダイヤルを持って逃げてしまい、取り残されたインディはこの危機を脱するべく、華やかなパレードの中へと飛び込みます。

インディにとっての最後の冒険が始まる…。

この『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2024/01/07に更新されています。
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老体にどこまでやらせるのか

ここから『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』のネタバレありの感想本文です。

前作『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』は1957年が舞台で、冷戦と赤狩りの時代、そこにロズウェル事件を絡めつつ、後半は思い切った宇宙SFなアドベンチャーになっていました。

『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』もリアルな時代背景でエンターテインメントが補強されています。今回の舞台は1969年。7月にアポロ11号が人類初の有人月面着陸を果たし、まだ熱狂で盛り上がっているその直後です。

今作の敵は元ナチスのユルゲン・フォラー。実在の人物ではありませんが、元ナチスが戦後にNASAで働いていたのは実際によくあったことで、とくに“ヴェルナー・フォン・ブラウン”というNASA技術者の大物がいましたので、そこから着想を得ているのだと思われます。ドラマ『フォー・オール・マンカインド』でも同じような着想で人物が造形されていましたね。

ユルゲンを演じたのが“マッツ・ミケルセン”なので、もう“マッツ・ミケルセン”の色気が漂いまくっていましたけど…。

また、インディを追う捜査官のメイソンですが、あのスタイルといい、当時のプラックパンサー党に潜入していたアフリカ系の人物なんだろうなということが想像できます(CIAやFBIは実際に潜入させていた)。

そんな中、大学からさえも追い払われ、すっかり自分がついには遺物になってしまったインディ・ジョーンズ。その彼があれよあれよという間に、スリルとロマンに満ちた冒険に巻き込まれていく。あのパレードから地下鉄へとダイナミックに馬を強奪しての大逃走は、インディ・ジョーンズらしいエモさの復活!という感じでワクワクします。

そしてモロッコのタンジェでヘレナとテディを連れ立っての大逃走の第2幕が開始。こういう映画にでてくる三輪自動車(オート・リクシャー)、いつも滅茶苦茶酷使されて走らされてるな…。

さらにはギリシャのエーゲ海で潜水までします。別にインディまで潜水することもなかったんだけど…。

ずっと観ていると、よわい80近い“ハリソン・フォード”演じるインディという老体がやれる、限界値を優に超えまくっていて心配になってきますよ。

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そして歴史に残る

さすがに全部をこのご老体のインディ・ジョーンズに任せられないので、『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』での体を張った突撃アクション担当として、“フィービー・ウォーラー=ブリッジ”演じるヘレナが全面に出まくります。テディという子をお供にしている姿といい、完全にインディ・ジョーンズの後継です。

今回のヘレナはとにかく根性一発!なアクションで押し切る場面が多く、車に飛び乗るわ、船は爆破するわ、飛行機に飛び移るわ、実に楽しそうです。命がいくつあっても足りそうにないけど…。

こういう、恋愛要員でもなく、母親要員でもない、ひたすらに冒険しまくっている女性キャラクターを自然に盛り込めるあたりは、今の『インディ・ジョーンズ』シリーズらしいですね。

このシリーズと言えば、荒唐無稽な展開で、ヘレナが先陣切ってそれを受け継ぎつつ、今までどおりの気持ち悪くて怖い動物うじゃうじゃもカバーし、遺跡トラップもお約束として用意。シリーズの恒例イベントをどんどんこなしていきます。

しかし、最後の最後にとんでもない荒唐無稽のどでかい花火をセットしていました。はい、タイムトラベルです。あっけなくタイムトラベルしちゃったな…。

しかも、ナチスのあの時代にタイムトラベルすると思ったら、まさかの紀元前212年のシュラクサイ包囲戦の時代へ。シチリア島全体を支配下に置いたローマ軍がシュラクサイに攻め込んだ歴史的な一戦です。あのローマ軍に大健闘を見せるシュラクサイの人たちの姿を生で拝めるとは…。

滑稽なのは、ナチスとして“ある時代”の覇者になろうとした人たちが、結局は別の時代の猛者にあっけなくやられてしまうというオチ。歴史が別の歴史にコテンパンにされるという因果応報を見せてくれます。

そしてずっとマクガフィンだと思わせていたあの「ダイヤル」ですが、このタイムトラベルでピンと来た人もいるとおり、ここで繋がってきます。本作のダイヤルは「アンティキティラ島の機械」と呼ばれる、世界最古の歯車式の機械であり、紀元前3世紀から紀元前1世紀中頃の間に製作されたと考えられていましたが、その過程は謎に包まれていました。

これを本作はユルゲンとインディたちが持ち込んだ腕時計を、あのアルキメデス本人が発見し、おそらく「アンティキティラ島の機械」へのインスピレーションとなったという、とんでもないSF的結末をぶっこんでいます。つまり、オーパーツとしてインディが貢献しましたってことです。

こういう遺跡発掘モノはそれ自体が盗掘では?という問題点も根っこにありましたが、こうやって「時代の整合性」を理屈づけてしまうという、かなりの荒業でしたね。

タイムトラベルして時代に干渉できちゃったら、もう「考古学」の存在意義も変わってしまうのではないかと思わなくもないですが、これによってインディは本人は残れずとも歴史そのものになりました。もちろんインディだって歴史的存在です。老いて終わりではない。それを実感しながらの温かいエンディングで、静かにシリーズは幕を閉じます。

『インディ・ジョーンズ』シリーズとしてこの終わり方でじゅうぶんかなと思います。シリーズとして新起動する日はきっとあるでしょうけど、次は『アンチャーテッド』みたいな若いキャラだろうな…。

『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 67% Audience 89%
IMDb
7.0 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
6.0
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・『シュリンキング 悩めるセラピスト』

作品ポスター・画像 (C)2023 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved. インディジョーンズ5 運命のダイヤル 運命のダイアル

以上、『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』の感想でした。

Indiana Jones and the Dial of Destiny (2023) [Japanese Review] 『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』考察・評価レビュー