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『神様メール』感想(ネタバレ)…やっぱり再起動するのが一番だね

神様メール

やっぱり再起動するのが一番だね…映画『神様メール』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Le tout nouveau testament
製作国:ベルギー・フランス・ルクセンブルク(2015年)
日本公開日:2016年5月27日
監督:ジャコ・バン・ドルマル
児童虐待描写

神様メール

かみさまめーる
神様メール

『神様メール』あらすじ

ブリュッセルの街に家族と一緒に暮らしている「神様」は、自分の部屋のパソコンで世界や人間を管理していた。そんな父に憤慨した10歳の娘エアは、父のパソコンを使って世界中の人々に死期を知らせるメールを送信し、家を出てしまう。当然、世界は大パニック。人類はかつてない事態に直面し、さまざまな反応を見せ、人生を思い直す者まで現れていくが…。

『神様メール』感想(ネタバレなし)

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神はダメ親父だった

無宗教だと言われがちな日本人。ですが、それでも受験に合格するためにお守りを手に入れたり、安全祈願をしたり、選択に迷ったら「どちらにしようかな神様のいうとおり」と唱えてみたり、何かと神様に頼る機会は多いのではないでしょうか。絶対に無宗教って言っている人もこれらのことをしているよね…。

でも神様って一体なにもの?

そんな疑問にブラックユーモアで答えてくれるのがこの映画『神様メール』です。

映画の冒頭、こんな言葉から始まります。

「神は存在する。ブリュッセルに住んでいる」

そう、この映画では神様はなぜかブリュッセルの街に家族で暮らしています。家を出ることはありません。パソコンのキーボードをカタカタうって、世界を創っています。まるで街や世界を創るゲームの「マインクラフト」や「シムシティ」みたいです。当然というか、聖書にあるとおり最初に世界(街)を創ります。次に動物を放ちます。でも、しっくりきません。そこで人間を創り出します。

そして特筆すべきは、本作の超重要人物であるこの世界を支配する神様がとにかく強烈なキャラクターであること。ただのダメ親父なのです。タバコをふかし、酒を飲み、娘を虐待する…家にこもって憂さ晴らしで人間を苦しめるために、事故や災害を起こしたり、困らせる法則をつくりまくります。もう良いところがひとつもありません。

そんな神(おやじ)に嫌気をさした娘エアが行動を起こしたことで世界が大変なことになるというのが本作の始まりとなります。

ダメ親父な神以外にも、登場人物はみな個性が豊かで、印象に強烈に残る人ばかり。映像も奇想天外です。例えば、熟女がゴリラと寝ます。マジです。本当にあのリアルなゴリラが出てきます。凄いシュールな絵面です。

この突拍子もない世界観を創り出したのはジャコ・バン・ドルマル監督。ひさびさの長編映画です。本作にもカメオ出演していますが、一瞬で退場するのでわからないかも…。

内容が内容だけに熱心なキリスト教に怒られるんじゃないかとも思いますが、そこは上手くできており、不快な感じはしません。決して宗教を見下しているわけではないのがポイント。ちょっと視点を変えれば宗教も面白くなるという発想の転換。お見事です。

別に宗教に関心がなくとも笑えるユーモアと、そうくるかと驚くような映像は見ていて飽きることなく、絵も可愛らしいので、万人におすすめできる作品です。

人生に迷っている人は、何か元気をもらえると思います。

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『神様メール』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『神様メール』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):始まりはいつかはわからない

ベルギーのブリュッセル。エアという少女はここで暮らしていました。その父親は神様です。

父は天地創造前から飽きていました。初めにブリュッセルを作り、種をいくつか誕生させましたが、失敗しました。

そこで自分に似せて人間を作りました。マシになりました。

人間はイヴに出会います。なんかベッドでいろいろ試してみます。子どもができました。

エノク、イラド、メフヤエル、メトシャエル、レメク…どんどん増えます。

父は彼らを戦わせることにしました。みんな言われるがままに戦いました。

エアは家に10年も閉じ込められて不満でした。テレビはスポーツ以外見てはいけないことになっており、母は刺繍と野球カードしか興味ありません。エアは退屈で、食卓のコップを動かすくらいです。父は仕事でこもりっきり、家事を母に任せてばかり。

人類を創ったのは父の趣味です。苦しんでいる姿が見たいのでいろいろな悲劇や不幸を起こしまくります。変な法則もいっぱい作りました。

ジャムつきのパンはジャムの側から落ちる。食器は洗った後に割れる。隣の列の方が早く進む。嫌な出来事は同時に起こる。

ひねくれた最低のクソ親父です。

ある日、エアは父の書斎に忍び込み、パソコンを勝手に操作します。父のやっている酷いことを理解し、その最低さを実感。そんな生意気な態度をとった娘に父は暴力を振るいます。パソコンが無ければ無能なくせに…。

そして覚悟を決めました。この父に反逆しよう…と。これは「怒り」です。

そこでこの家を去ることにしました。使途を見つけてこの世を正そう。まずは兄に相談し、使途を見つけるコツを教えてもらいます。「新・新約聖書」を創ればいいんだ…。

エアはまたも書斎に侵入し、テキトーに使途候補の人間を選びます。パソコンをいじり、余命データを開いて、送信。それはあらゆる人間に送られることに…。用済みのパソコンは破壊します。

人間たちはパニックです。急に自分の余命がメールで送られてきたのですから。数秒の人もいれば、数十日の人もいて、十数年の人もいるし、もっと先の人もいます。余命宣告はイタズラか…理解に苦しむ人間社会はパニックに陥ります。戦争している場合ではありません。

エアの作戦はここからです。次はこの家から脱出するとき…。

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聖書よりもキャラが面白い

『神様メール』の登場人物はみなユニークで愛嬌があり飽きません。

家出した神の娘エアは、使途として目を付けた人間を導いているように見えますが、けっこうテキトー。人間界の常識がわからないゆえに、会話もほとんど噛み合ってません。まあ、でもなんか可愛いのでそれでいいのでしょう。

文字も書けず読めもしないエアに代わって新しい聖書を書き綴る大役を任されたのがたまたま出くわしたホームレスのヴィクトール。なんだかんだで頑張って仕事をこなそうとしているのが、これまた可愛い。新しい新約聖書は売れたみたいですが、中身は文字も無く絵のみで、結局文章は書けなかったというオチも和みます。個人的に嬉しかったのは、なぜかヴィクトールは、エアの兄はJC(イエス・キリスト)だと聞くと「ジャン=クロード・ヴァン・ダム」かと答えたり、神(おやじ)に対してブルース・リーのマネで対抗しようとしたり、映画ネタをはさめてくるところ。

そして、世界の中心にたつ存在であり、本作では完全にギャグキャラ扱いの神(おやじ)。序盤はエアに暴力を振るうなど胸糞悪い奴でしたが、家出したエアを追いかけて以降は、踏んだり蹴ったりのひどい目に遭うので、観ているこちらはスッキリします。このへんのギャグのノリはスラップスティックコメディ的であり、ドリフっぽくありました。神(おやじ)が登場する場面では、必ずマヌケな音楽が流れ、これだけで笑いをさそいます。

忘れてはいけないのが、エアの母。彼女が新たな神になるとは予想外でした。女神になる過程も、相変わらずユーモアたっぷりですが、ちゃんとロジックがあるのが素晴らしい。エアの母にちなんでエンドクレジットが刺繍なのもよいです。

使徒たちはみな個性豊かで、とくに使徒たちそれぞれの映像の見せ方が面白いです。手ダンスとか、鳥とか、ゴリラとか、必ず何かしらユニークな映像を見せてくれ、次は何が来るのかと楽しみになります。ちなみに撮影時、ゴリラは等身大の着ぐるみで再現されており、マルティーヌを演じたカトリーヌ・ドヌーヴは本当にゴリラとベットインした光景を作ったわけで、長年の女優人生でもなかなかない経験だったでしょう。

ただの一般人もとても魅力的に描かれています。エアが神(おやじ)のパソコンをいじったことで、世界中の人間に自分が死ぬまであとどれくらい時間があるかを通知してしまった事件は「デス・リーク」と呼ばれ、人間界で大騒動を起こしました。この「デス・リーク」に対する人々の反応が面白いです。今までどおり生きる人、最期までにやりたいことを始める人、死から逃れようとするもやっぱり死ぬ人、不平等に嘆く人、寿命世界記録だと喜ぶ奴、寿命があるので確かめるためにわざと死のうとする奴(このケビンは劇中たびたび登場し笑わせてくれます。エンドクレジットの最後にも登場するので見逃さないように)。自分だったらどうするか考えさせられますが、私は仕事を辞めて好きなことをするかな…。

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神がいなくとも「隣人を愛しなさい」

『神様メール』はひたすら神(おやじ)の残念な姿が描かれます。そもそも神すらも結局はドメスティックバイオレンス傾向のダメダメな男そのものであるとして描いているのが痛快です。

聖書は実際矛盾も多く、ツッコもうと思えばいくらでもツッコめる内容です。そこをあえてブラックユーモアを交えて描くアイディアは他にないものです。本作は冒頭から「これはコメディです!」という雰囲気を全面に出しているので、観ている側も見やすく、怒るのもバカバカしいだけです。

それに本作は神を否定しているわけでもないと思います。というよりはそんな男性中心的な宗教のダメさを見つめ直し、しっかりリニューアルしていきましょうねという話なんじゃないでしょうか。

「デス・リーク」以降、世界には神が存在しなくなります。そのとき、人間を救っているのは人間でした。使徒たちは他者によって救われます。最後にウィリーを海に連れていってあげるために奮闘する使徒たちといい、劇中では他者のための行動する人々が描かれています。キリストの言葉「隣人を愛しなさい」はあいつが勝手に考えたデマカセだと言っていた神(おやじ)ですが、人間はしっかりその考えを実行していたわけです。

そんな人間にご褒美を与えるかのような女神の粋な計らいによって生まれた新しい世界でも、愛が溢れていました。こういう神様なら嬉しいよねと誰もが思える展開だからこそ、シニカルな作品で終わらない本作の魅力が光ります。

皆さんもパソコンの調子が悪いとき、そして人生に困ったときは、落ち着いて電源を入れ直してみましょう。でも、コンセントをいきなり抜くのは危ないですよ。

『神様メール』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 81% Audience 68%
IMDb
7.1 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 8/10 ★★★★★★★★

作品ポスター・画像 (C)2015 – Terra Incognita Films/Climax ilms/Apres le deluge/Juliette Films Caviar/ORANGE STUDIO/VOO et Be tv/RTBF/Wallimage

以上、『神様メール』の感想でした。

Le tout nouveau testament (2015) [Japanese Review] 『神様メール』考察・評価レビュー