続編はネタと暴走が爆増…映画『神と共に 第二章 因と縁』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。
製作国:韓国(2018年)
日本公開日:2019年6月28日
監督:キム・ヨンファ
神と共に 第二章 因と縁
かみとともに だいにしょう いんとねん
『神と共に 第二章 因と縁』あらすじ
1000年間で48人の死者を転生させた冥界の使者ヘウォンメク、ドクチュン、カンニムは、あと1人を転生させれば自分たちも新しい生を得ることができる。カンニムは怨霊だったジャホンの弟スホンを、最後の裁判を受ける貴人に決める。本来なら怨霊は消滅させなければならないが、閻魔大王はある条件と引き換えにカンニムの提案を受け入れる。
『神と共に 第二章 因と縁』感想(ネタバレなし)
さあ、地獄巡りも2週目だ!
最近ふと思うことがひとつあります。あの世でも…映画は観れるのでしょうか(映画中毒患者)。
いや、過去作品は生前のうちにたっぷり観ておけばいいんです。問題は、新作映画が観れないのはツラいです。ほら、新しくあの世に来た人に「あ、あの作品の続編はこんな感じの内容だったよ」とネタバレを喰らうんですよ。で、私は観れないんですよ。地獄だ。まごうことなき苦痛の地獄だ。『スター・ウォーズ』エピソード90とか、どんな話なのか気になるもん…。
まあ、転生できるならさっさと現世に戻って真っ当に生きて映画を鑑賞しなさいという話なのですけど。ほんと、あの世の娯楽事情はどうなっているのだろう…。それによっては絶対に死にたくないという人と、だったら死んでもいい人が、大量発生する可能性もある…。
でも『神と共に』シリーズを観ているかぎり、どうやらあの世は相当なハードステージらしく、そう簡単に転生すらできないようです。
そんなことを教えてくれるために作られたかどうか知りませんが(たぶん違う)、韓国映画『神と共に 第一章 罪と罰』は鑑賞者の口をあんぐりさせる、とんでもない地獄観光ツアーを見せてくれました。
『神と共に 第一章 罪と罰』がどれほどの“ぶっとんでオカシイ”映画で、韓国映画界でも異色だったのかは、前作の感想で書いているので、そっちを読んでもらうとしましょう。
あのいろいろな意味でぶっとびすぎていて気になる1作目のラストで、もう早く次が見たいと思っていた人もいるでしょうが、ついに2作目となる『神と共に 第二章 因と縁』が日本で公開です。
当然、前作はもう鑑賞したという前提で私も今後は感想を語りますし、そもそも前作を観ていないのに、今、この記事にたどり着いた人もあまりいないと思いますから、気にせずいきますね。
ざっくりと前作のあらすじをネタバレありでおさらいすると、こんな感じ。
消防士ジャホンが“キャプテン・アメリカ”ばりの人命救出によってダイナミック落下死。目の前に現れたのは、弁護士のカンニム、護衛のヘウォンメク、補助弁護士のドクチュンという、もうユニットを組んでアイドルでもやれよと思うような謎の3人組。ここからジャホンは地獄の7大裁判巡りを敢行。裁判という名目で行われる、とんだ黒歴史暴露大会。一方、現世ではジャホンの弟スホンがなんだかんだあって“生き埋め死”という凄惨な最期を遂げてしまい、そのまま怨霊化。“ゴーストバスターズ”でも手を焼きそうな暴れっぷりで、終盤なんてアメコミのヴィラン並みに強くなりますが、スタイリッシュアクションを得意とするカンニムとヘウォンメクの連携で一件落着。ジャホンの家族の切ない裏話が明らかになり、“全地獄が泣いた”空気に包まれ、物語は幕を閉じる…かと思いきや、今度はスホンが地獄裁判へウェルカム。自らの願いの叶う49人目の死者転生にリーチのかかった弁護団一同は、俄然テンションMAXで裁判へ殴りこむ。さあ、とりあえず君たち、“裁判”ってどういう意味なのか辞書で調べようか。
まあ、こんな物語でした。たぶんおおむね間違っていないはず。あらためて短くまとめて振り返ると意味不明ですね。でもなんかクセになってくる勢い任せが良いのです。この感じ、B級サメ映画で感じるやつと同じだ…!
その続編となる『神と共に 第二章 因と縁』ではもちろん前作のラスト直後からそのまま続くかたちで物語が始まります。そして、前作のオマケでチラっと顔出しした、あのみんな大好き(断言)“マ・ドンソク”が満を持しての登場で、このコッテリしすぎている映画にさらにカロリーを投下します。どれだけ味付けするんだ、と。観客の胃を壊す気なのか、と。食べますけどね…。
そんな“マ・ドンソク”の登場もさらに映画をパワーアップさせるわけですが、“ハ・ジョンウ”、“チュ・ジフン”、“キム・ヒャンギ”など演じる既存のキャラクターたちも掘り下げられて魅力がアップ(もとい味付けを濃く)しているので期待してください。
全体的にネタ方向で暴走が前作以上に過激になっています。くれぐれも脳みそを小学生くらいのレベルに退化させて鑑賞しておくと、無駄なリソースを消費せずにすみます。
オススメ度のチェック
ひとり | ◯(頭を空っぽにしたいなら) |
友人 | ◯(ネタ話に盛り上がる) |
恋人 | ◯(感動的な物語も今回もあり) |
キッズ | ◯(子どもでもアホだと思うレベル) |
『神と共に 第二章 因と縁』感想(ネタバレあり)
裁判する気、あるんですか?
「冥界のスーパー弁護士」と日本の公式で表現されているカンニム率いるトリオ弁護団。本当にスーパーなのかは甚だ疑わしいですけど、新たに弁護を務めるのは、以前に無事蘇りを果たした消防士ジャホンの弟スホン。兵役中の仲間の誤射で命を落とし、生き埋めになったことで怨霊となって荒れ狂ってしまったスホンは貴人として裁判を受けます。カンニム弁護団にとってこれは49人目となる存在。つまりこれが成功すれば自分たちの願いが叶うという大事なラストミッション。
スホンの“無念の死”を証明すればよいとのことで臨みますが、しかし、閻魔大王からは前回のカンニムは独断専行でいろいろやりすぎたと、至極真っ当なお叱りを受けてしまいます。そこで出された条件は、“現世にいるチュンサムという老人の魂を連れてこい”というもの。
あの…前作から思ってましたけど、やっぱりコレ、裁判じゃないよね。一体どういう法律に基づいているのかも不明だし、コンプライアンスすらも何もない感じなので今さらツッコんでもあれだけど、“条件”を達成すればOKみたいなノリだったのか。まあ、でもしょせんは地獄だし、閻魔大王のさじ加減なのかな…。
とにかく逆らうこともできないので、カンニムはスホンと地獄裁判巡りをし、ヘウォンメクとドクチュンは現世で例のチュンサムという老人を探しに行きます。この地獄と現世で二手に分かれるのが、前作とは逆のメンバーになっており、ちゃんと趣を変えているのは丁寧。
で、カンニム&スホンと地獄裁判巡りですが、これがまた前作以上に雑。明らかに省略化されており、ますます裁判を受ける意味に疑問を持ちたくなるけど、でもお構いなし。このパートで裁判要素を粗雑にしたら、いよいよ何をしているのかわからなくなると思うのですけど、知る気はない。
ヘウォンメク&ドクチュンの方は、現世ですぐにチュンサムを発見しますが、そこには老人と孫ヒョンドンを守る神のソンジュが立ちはだかっていました。そして「あの子が小学校に入るまで待ってくれ」というソンジュの願いもあって、この子育て問題に奮闘することに。え…地味だ…。
さすがにこの2つのお話を軸にするのはキツイだろうと思っていたら、ちゃんと用意されていました。メインディッシュが。
カンニム、ヘウォンメク、ドクチュン…この3人が人間だった高麗時代が語られていき、記憶のなかった面々の知らない真実が明らかにされていく…さながら歴史ミステリーのようなスタイルにフォームチェンジ。今作はスホンの裁判が主と思わせて、実際はこっちの高麗時代ドラマが主軸です。そうだよね、スホンの話は前作でだいたい見ましたしね。
なんかこう、あっちこっちと忙しいストーリーですよね。
全力でふざけるスタイル
『神と共に 第二章 因と縁』でやはり印象に強烈に残るのはキャラクターの著しいネタ化です。
正直、これはある程度、韓国映画界の俳優リテラシーを問われる部分もありますが、“この俳優にこんなことさせてみました!”的な身内が笑えるギャグなどが、この2作目ではてんこ盛りなんですね。1作目のときは、きっちりキャラ紹介をしたぶん、今回はふざけるよ!っていうことなのかな。
カンニムを演じる“ハ・ジョンウ”は今作でもそこまでキャラの極端なネタ化は起こっていない唯一の不動の存在と言ってもいいかもしれません。ただ、今回はスホンとの凸凹感のある漫才芸みたいになっている部分も若干否めず、もっぱら“冷酷ドS男”だと見なすべきなのかも。一応、高麗時代パートでのあのキャラの正体ともリンクすると無理やり考えるなら、根っからの“ドS”体質なのかもしれないですけど。
ヘウォンメクを演じる“チュ・ジフン”ですが、今作は“チュ・ジフン”のファンが一番歓喜するんじゃないのだろうか。それくらいのサービスショットの連続。現世パートでのあの愛され“カッコつけ”キャラからの、高麗時代パートでの最強の戦士の徹底したシリアス演技まで。余すところなく“チュ・ジフン”の魅力を堪能できるという一挙両得な映画です。ウィンクはちょっとサービスしすぎだったと思うけど…まあ、あれで天に召された人もいるかもだしね…。
ドクチュンを演じる“キム・ヒャンギ”は、前作からすでに“天真爛漫な女の子”というポジションを確立させており、今回はすっかりお調子者キャラになったヘウォンメクのひたすらフォローに回るのかと思いきや、高麗時代パートでの“孤児をまとめる女真族の少女”という健気な役回りで、さらに演技の深みを増してくるあたり、さすがタダモノじゃないな、と。あれですね、“キム・ヒャンギ”は“チュ・ジフン”のお母さんみたいなものですね(ちょっと違う)。
そして、はい、私も大好きな“マ・ドンソク”。こんな座敷童的な神様がいてたまるかという、ミスマッチ。いつもはビンタする側なのに、今回はビンタされる側という、肉体的な弱さ。それでいて、おカネのことは絶対に詳しくない風貌なのに(失礼)、なぜか投資に手を出す典型的なバカさ。そうですかそうですか、そう来ましたか。…うん、100点(単純な観客)。いや、本音を言えば、最後はソンジュが覚醒して、閻魔大王との白熱の超絶バトルを見せてほしかったですけど。
今作では邦題のとおり「因縁」が描かれ、メイン3キャラの繋がりがクローズアップされるので、いわゆる「キャラ映画」的な見せポイントが多い作品です。ここまでファン向け特化するとは思いもしませんでしたが、ある意味、続編ならばこれが定石。
韓国映画の俳優好きにはたまらないご褒美作品になったのではないかなと思います。
君、閻魔大王やらない?
一方、前作で観客の度肝を抜いたビジュアル面ですけど、もう恐ろしいことに2作目ともなると、慣れるんですね…。“あー、今日も地獄では大勢が酷い目にあっているな~”くらいの、朝のジョギングを見る程度の感覚になってきている自分。これが慣れの恐怖。
いや、冷静になれば相変わらずぶっとんでいるところだらけですよ。天倫の地獄とか、別にイチイチ地中から這い出てくる必要ないだろうとか。カンニムが口うるさいスホンを黙らすためにやる“ダイナミック水拷問”の絵的なバカっぽさとか(韓国映画はファンタジーな世界でも拷問は凝るんだなぁ)。
しまいには例の『ジュラシック・ワールド』ですよ。あれはもう完全に脈絡もなく、強引そのものですよね。モササウルスがまさか移動手段と化すとは思いませんでしたけど。このシークエンスだけ見たら、『シャークネード』と大差ないもんなぁ。
ただ、時々こういう極端にアホさ丸出しのディザスターパニックな映像を今回もいきなり何の予告もなしにドカンと見せてくれますが、前作ほどではなく、やはりメインとなる高麗時代パートでのリアルな歴史モノ大作の風貌が今回は見どころです。朝鮮半島の歴史時代劇は、日本とはまた違った美術や衣装が見られるので良いですね。なので、前作的なノリを映像面で期待すると肩透かしかもしれません。そのぶんはほら、“マ・ドンソク”がいるし…(釣り合ってしまう存在感)。
ちなみに公式サイトによれば、高麗時代パートでの舞台となる北方雪原はノルウェーの雪原を参考にしたそうです。なんでノルウェーなのだろうか…。だいぶ環境が違うような気もするけど…。でもそれらのシーンも室内セットで撮っているそうで、ディズニー実写映画並みにかなり手がこんでおり、韓国映画も本気だしすぎだなと思ったしだい。
肝心のドラマ面は前作を超える“推し切った”感じだったな、と。今作はあの3人の因縁を明かし、それがスホンの境遇とも若干のシンクロをしながら、いろいろあったけど今は友達だよという、“フレンド・ライク・ミー”な着地。前作ほどの心に迫るものはないにせよ、でも順当というべきでしょうか。
それよりも私は閻魔大王さえもリクルート制だったことに驚きを隠せないのですが。なんか、バイトたちの慕う店長が実は大企業では底辺社員にすぎない…みたいな現実を見せつけられた感じ。閻魔大王の職も大変そうだなぁ…。
2作合わせて相当なボリュームになりましたが、韓国映画界の“真剣にトンデモないことをやる”という精神がたっぷり詰まったシリーズだったので、見て損はありませんでした。
感想を締めくくる私から言える結論はひとつ。
この世もあの世も大変だからとりあえず頑張ろう…以上です。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 44% Audience 80%
IMDb
7.1 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 5/10 ★★★★★
作品ポスター・画像 (C)2019 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS All Rights Reserved.
以上、『神と共に 第二章 因と縁』の感想でした。
Along with the Gods: The Last 49 Days (2018) [Japanese Review] 『神と共に 第二章 因と縁』考察・評価レビュー