コワイ、エグイ、ツライ。火星からの贈り物…映画『ライフ』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。
製作国:アメリカ(2017年)
日本公開日:2017年7月8日
監督:ダニエル・エスピノーサ
らいふ
『ライフ』物語 簡単紹介
『ライフ』感想(ネタバレなし)
火星さん、今度は何ですか
じゃがいも育てたり(『オデッセイ』)、出産したり(『キミとボクの距離』)、夢を抱かせたり(『マーズ・ジェネレーション』)…何かと映画界にネタを提供してくれる火星ですが、今度は恐怖をお届けしてくれます。
といっても、本作『ライフ』には火星は一度も出てこない、宇宙船での密室スリラーです。
あらすじを見ればわかるとおり、かなり『エイリアン』そのままな感じ。よりによって今年は「エイリアン」シリーズ最新作『エイリアン コヴェナント』が公開されますから、もろ被りじゃないかと思う人もいるでしょう。
でも案外そこは差別化されていて、それはそれ、これはこれで楽しめると思います。繰り返しになりますが、本作は宇宙船だけが舞台の密室劇。予算も割と抑えめななかでも恐怖させるための演出に丁寧な工夫が感じられます。また、『パッセンジャー』のような恋愛要素は全くないので、純粋にスリラーにどっぷり漬かれるのも嬉しいところ。常に持続する恐怖にゾクゾクします。
監督の“ダニエル・エスピノーサ”は『チャイルド44 森に消えた子供たち』を手がけたスウェーデン出身の人。不穏感を醸し出し続ける演出が上手いですよね。
脚本の“レット・リース”と“ポール・ワーニック”は『ゾンビランド』という作品で高く評価されたコンビですが、なんといっても『デッドプール』の脚本での成功が記憶に新しいです。
豪華俳優陣にも注目です。“ジェイク・ギレンホール”、“ライアン・レイノルズ”、“レベッカ・ファーガソン”、そして我らが日本から“真田広之”。あとは“アリヨン・バカレ”と“オルガ・ディホヴィチナヤ”の2人を合わせて計6人の少数精鋭の主役キャストが、しっかり恐怖を引き立ててくれます。
本作のような宇宙を舞台にした作品は巨大なスクリーンでこそ映える魅力があるので、映画館で観ることを推奨します。映像も迫力があって、綺麗ですから。
SFスリラーとして丁寧に作り込まれた良作であり、こういうジャンルが好きな人は観て損はないと思います。あと、アメコミファンは観ておいた方がいいかもしれません。なぜって? なぜでしょう。
『ライフ』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):地球外生命体と初遭遇
国際宇宙ステーション(ISS)では人類の宇宙史における重大なプロジェクトが始まっていました。それは「火星ピルグリム7計画」です。
その初日、検疫官のミランダ・ノースは無人火星探査機のピルグリムが火星の土サンプルを持って帰ってくるこの日のための最終準備に追われていました。ピルグリムは宇宙ゴミと衝突したことで軌道を外れており、ローリー・アダムスが船外でロボット・アームを操縦し、回収するという流れでした。
宇宙服を身に着けたローリーがいよいよ船外へ。医者のデビッド・ジョーダン、システムエンジニアのショウ・ムラカミも慌ただしいです。
司令官のエカテリーナ・“キャット”・ゴロフキナは管制室に連絡。世紀の任務が開始しました。
ローリーはアームでこちらに向かってくるピルグリムを受け止めます。衝撃が走りますが、見事にキャッチしました。ローリーの「インスタにあげろよ!」という歓喜の声が聞こえます。
2日目。カプセルの中にあったサンプルを慎重に生物学者のヒュー・デリーが分析。火星の土に生命体らしき存在が見つかっていました。微生物ながら細胞もあるようで、これは信じられない大発見です。
ブドウ糖を与えてみるとその生物に動きが観察できました。顕微鏡には確かに動く生物の姿が…。人類初の地球外生命体とのコンタクトです。
ステーションのクルーは地球の子どもたちと接続し、質問に答えていました。この地球外生命体の発見のニュースで地球では大騒ぎ。発見された地球外生命体に名前を付けることになり、カルビン・クーリッジ小学校に因んで「カルビン」と名付けられました。
例のカルビンと命名された生命体には変化が見られていました。あらゆる細胞があらゆる機能を持っているようです。そのカルビンはヒューの指に反応するように構造を変化させます。ゆらゆらと人間との交流を楽しんでいるようでした。
その美しさに見惚れるクルーたち。
すっかり明るい気分になり、和やかな雰囲気。ショウは娘が生まれ、その映像を遠隔から見ていました。命の誕生を仲間のクルーも祝ってくれます。
ヒューはカルビンと触れ合うのが日課になりました。指に張り付いてくれるようになり、愛おしさも倍増。
しかし、25日目。ラボから警報が鳴ります。点検ミスです。隔離が損なわれると大事故になります。まだあの生命体の危険性もわかっていません。すっかり愛着が湧いていたヒューは「危険視しすぎだ」と声をあげます。
それ以降、カルビンの動きは停止してしまいました。圧力の変化が原因なのか。クルーたちは冬眠のようなものではないかと仮説を立てます。
ところが状況はさらに想像を超えるもので…。
救いはないんですか!
本作『ライフ』は純粋に恐怖を専売にしたSFスリラーではありますが、ゴア描写のような直接的な残酷シーンはないんですね。それでもちゃんと怖いのは、殺され方がどれもエグイからでしょう。このエグさが本作の魅力です。
まず最初の被害者となるヒュー。火星のサンプルから発見されたカルビン(Calvin)と名付けられた未知の生命体をとても可愛がるヒューに襲う最初のショックシーンがインパクト絶大。手が砕かれる過程が異様にリアルで、そして時間が長い。もう、いや~~となるし、いつ解放されるんだとヒヤヒヤです。
這いまわるヒトデのような見た目になったカルビンの隙をみてラボに突入し、一命だけはとりとめたヒューを外に出したローリーが次の犠牲者。火炎放射による抵抗も虚しく、襲われるローリーですが、ここでカルビンがやるのはローリーの「口」から入って中をグチャグチャにするという、考え得るかぎり最悪の殺し方なのが悲惨極まりない。
お次は通信機を直そうと船外に出た指揮官キャット。耐久性の非常に高い宇宙服相手にどうするのかと思ったら、宇宙服の冷却装置が破壊されて宇宙服内に満たされていく水で溺れていきます。こんなの嫌だ…。
比較的ショウはあっさりと死にますが、ショウが閉じこもったポッドをバキバキバキと圧迫破壊するシーンは恐ろしかった…。ちゃんとホラーの緩急がしっかりしているのも本作の良さです。
そして最終的に生き残ったミランダとデビットの二人は、デビットが犠牲になってカルヴィンごと脱出ポッドで宇宙の彼方へ行き、ミランダは別の脱出ポッドで地球へ戻るという作戦を決行。しかし、どういうわけか、立場は逆転。ミランダの脱出ポッドは宇宙の彼方へ、デビット&カルビンの脱出ポッドは地球へ降り立ってしまったのでした。
これ以上ない見事なバットエンドですよ。久しぶりにこんな綺麗なバットエンドを見たな…。『ノック・ノック』以来かな。
いくらスリラーといっても、たいていは、何かしらの救いや希望を予感させる要素を入れたりするものですが、ヒトカケラもないですからね、本作。そういう意味では、豪華キャストと豪華な映像を使っての非常に挑戦的な映画だったといえるでしょう。
あれの正体はアイツ?
それでです。ここからは信憑性の低い噂レベルの話なので注意。
豪華俳優陣をバットエンドに直行させた魔物カルビン。この生物の正体について、本作『ライフ』が先に公開されたアメリカではネットでこんな憶測が飛び交いました。
それは「カルヴィンは“ヴェノム”なのでは?」というもの。
「ヴェノム」というのは「スパイダーマン」シリーズに登場する敵です。実はスパイダーマンの宿敵『ヴェノム』のスピンオフ映画が2018年10月5日に公開予定で、配給は本作『ライフ』と同じソニー・ピクチャーズ。この『ライフ』は『ヴェノム』のプリクエル(前日譚)なんじゃないかというのです。
確かに変化して大きくなっていくカルビンは最終シーンでは「ヴェノム」に似た顔つきになってました。それだけじゃなく、本作『ライフ』のTVCMの一部で「スパイダーマン3」と同じカットが使われていたそうで、それが憶測に火をつけたようです。また、映画『ヴェノム』の他にもソニー・ピクチャーズは「スパイダーマン」シリーズの敵キャラの作品を「ユニバース」的に公開していくようですから、あながち全くありえないとは言えません(ちなみに『ヴェノム』は「マーベル・シネマティック・ユニバース」とは別)。
でも、そうだとしたら『ヴェノム』に続くことを示す何かを本作のクレジットの終わりに入れないと変ですし、やっぱり、妄想かな…。
まあ、後付けでどうにでもなるしね(台無し)。
こういう妄想が生まれるのもきっと本作がB級SFホラーとして非常に良く出来ている証拠なのでしょう。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 68% Audience 54%
IMDb
6.6 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★
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以上、『ライフ』の感想でした。
Life (2017) [Japanese Review] 『ライフ』考察・評価レビュー