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『ラ・ヨローナ 泣く女』感想(ネタバレ)…涙の数だけ強くなれるよ

ラ・ヨローナ 泣く女

涙の数だけ強くなれるよ…映画『ラ・ヨローナ 泣く女』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Curse of La Llorona
製作国:アメリカ(2019年)
日本公開日:2019年5月10日
監督:マイケル・チャベス

ラ・ヨローナ 泣く女

らよろーな なくおんな
ラ・ヨローナ 泣く女

『ラ・ヨローナ 泣く女』あらすじ

1970年代のロサンゼルス。ソーシャルワーカーのアンナは子どもたちが危険にさらされているという、ある母親からの助けを無視して保護するが、それが最悪の結果を招く。それは泣き声を聞いた子どもが必ず連れ去られてしまうという、中南米に古くから伝わる「ラ・ヨローナ」の呪いだった。

『ラ・ヨローナ 泣く女』感想(ネタバレなし)

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新しい仲間です

映画業界各社がこぞって成功を夢見て挑戦する「ユニバース」。映画史を塗り替える記録を打ち立てたばかりの「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」がその筆頭であるのは言うまでもないですが、他社のユニバースはあまり上手くいっているとは言えません。

その一方でMCUの次に勢いに乗っているユニバースとはいえば、それはきっと「死霊館ユニバース(The Conjuring Universe)」でしょう。え、いつからユニバースになったの?と思っている人もいるかもしれませんが、もう大変なことになっているんですよ。

このシリーズ群は「New Line Cinema」とピーター・サフランの「Safran Company」、 ジェームズ・ワンの「Atomic Monster Productions」の共同で進められているプロジェクトで、原点となる最初の映画はもちろん2013年、ジェームズ・ワン監督の『死霊館』です。

それ以降、『アナベル 死霊館の人形』(2014年)、『死霊館 エンフィールド事件』(2016年)、『アナベル 死霊人形の誕生』(2017年)、『死霊館のシスター』(2018年)とテンポよく作品が続いています。これまでのヒットしたホラー映画にありがちな続編の乱発ではなく、同じ世界観の中で年代を前後させつつ、同一キャラクターを登場させて、緩く各作品をつなげるスタイルは、口承によって語り継がれる怪談っぽくてテーマにマッチしています。それにホラーなので製作予算が少なく比較的リスクもなく作りやすいのも利点。ゆえに他者のユニバースが失敗していく中、この「死霊館ユニバース」はしぶとく生き残っています。

そしてこの「死霊館ユニバース」に新しい仲間が加わりました。それが本作『ラ・ヨローナ 泣く女』です。

というか、このことは事前に言ってもネタバレにならないのかな(もう手遅れですけど)。実は『ラ・ヨローナ 泣く女』は死霊館ユニバースの一作だったのです! なんだってー!…みたいなサプライズ要素だったら申し訳ないですが、でも結構製作陣もがっつり言及しているし…。2019年は『アナベル 死霊博物館』という作品も公開を控えているので、今年は2作も投入されるんですね。いよいよMCUみたいになってきたな…。

一応、時系列的には『死霊館のシスター』→『アナベル 死霊人形の誕生』→『アナベル 死霊館の人形』→『死霊館』→『アナベル 死霊博物館』→『ラ・ヨローナ 泣く女』→『死霊館 エンフィールド事件』…という感じのはず。

「死霊館ユニバース」を一作も見たことがないよという人も安心してください。MCUと違ってどの作品から見ても基本は問題ないという手軽さがこのユニバースの魅力です。前知識がほとんどいらないですから。どの作品にどの登場人物が出てくるのかわからなくなったら、英語版Wikipediaに非常に詳細にまとめられているので参考にするといいです。

毎度のことながらアナベル人形が顔出ししていますが、もうこれなんかMCUで言うところのスタン・リーみたいなものですからね。

いっそのことジェームズ・ワン監督の『アクアマン』も「死霊館ユニバース」に入っちゃえばいいのに…。いや、DCユニバース自体が「死霊館ユニバース」と合体してもこの際良いのでは。『シャザムvsアナベル』とか、ワンダーウーマン・アクアマン・シャザム・アナベル・ヨローナの新『ジャスティス・リーグ』とか、ちょっと見たいかも…うん、自分の脳内だけにしておこう…。

『ラ・ヨローナ 泣く女』に話を戻しますが、今作は宣伝の「ジェームズ・ワンが選んだ新ヒロイン」というパワーワードもインパクト大ですが、雰囲気がこれまでの作品と変わっており、中南米に古くから伝わる怪談がモチーフになっています。

そんなこんなで「死霊館ユニバース」に新しい風を吹き込む一作です。これも多様性ってやつですよ(多様になったのは幽霊側)

恐怖度はたぶんそれほどでもないので、ホラー初心者にも見やすいはず(個人差があります)。ちなみに公式サイトにアクセスすると、いきなり呻き泣きの音声が流れるので“びっくり”注意です。

オススメ度のチェック

ひとり ◯(シリーズ好きは見ておこう)
友人 ◯(適度に盛り上がる)
恋人 ◯(適度に盛り上がる)
キッズ ◯(苦手でないなら問題なし)
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ラ・ヨローナ 泣く女』感想(ネタバレあり)

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幽霊さえもダイバーシティ

とりあえず『ラ・ヨローナ 泣く女』の題材になっている「ラ・ヨローナ」について、たいていの日本人もアメリカ人も知らないので、解説が必要ですよね。

でも作中でペレス神父が説明してくれていたとおりなので、もう鑑賞した皆さんにはとくに語ることもないです。

ざっくりおさらいすると、主にメキシコに古くから伝わる怪談。美しい女性が男性と恋に落ち、二人の子をもうけたものの、夫婦の愛がこじれたことで、子どもに対して逆恨みした女性が自分の子を溺れさせて殺します。自分の犯した過ちに気づき、後悔するも時すでに遅し。絶望した女性は自らも死を選びますが、呪いとなって大地に残り続けることに。それから子どもを見るたびに泣き声とともに連れ去る幽霊となったのです…そんなお話。

子どもを殺すなんて酷いなと思うところですけど、お察しのとおり、この怪談は子どもを怖がらせるためのもの。いつまでも遊びに行って帰ってこない子どもに「ヨローナが来るよ」と言って脅すという定番のやつです。

水・子殺し・泣く・女性というキーワードだけを見ると、同じような怪談は世界各地にあります。ブラッディマリー、ホワイト・レディ、バンシーとか。正直、ベタな感じでそこまで特殊性は感じないです。

でも中南米では非常に有名な怪談であり、すでにメキシコでは映画化が何本もされています。1933年の『La Llorona』、1960年の『La Llorona』、1961年の『The Curse of the Crying Woman』、2007年の『J-ok’el』、2011年のアニメ映画『La leyenda de la Llorona』などなど。

そんな「ラ・ヨローナ」伝説を死霊館ユニバースに組み込むというのは“そうきたか”というアイディアですよね。もちろん、これはすでに今のアメリカの人種構成的にヒスパニック系の伸びが非常に高く、そういう客層に身近な題材を探していれば必然的なこと

これからのハリウッドのホラーは幽霊さえもダイバーシティな時代になってくるということなのか。その新時代を印象づける作品ですし、それを率先して死霊館ユニバースがやっているというのもさすがですね。

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頑張れ、ヨローナさん

1673年のメキシコのシーンが冒頭で流れ、舞台は一気に飛んで、1973年のロサンゼルス。

メキシコ系のアンナはソーシャルワーカーとして働いており、パトリシア一家の訪問調査に向かいます。パトリシアの子どもであるトーマスとカルロスが学校に来ないため、様子を見に来ましたが、ドアをノックすると非常に警戒したパトリシアの姿が。冷静に優しく語りかけるアンナに少し心を許したのか、なんとかドアを開けてくれるパトリシアでしたが、アンナが部屋に入るとそこには異様な光景が。部屋には蝋燭がいっぱいで、すごく室温が高そう…。いや、そんなことはどうでもいいんです。パトリシアの様子が明らかに変で、泣き声だとぶつぶつ言っている状況。厳重にロックされたクローゼットから物音が聞こえ、アンナが探っているとパトリシアに見つかって、なんとハンマーを持って襲われます。間一髪で近くにいた警察に取り押さえられ、アンナは逮捕。子どもたちは保護されました。

で、ここからヨローナさんが本格的にアタック開始してくるのですが(なおこのブログでは新ヒロインとされる彼女に敬意をこめてヨローナ“さん”と呼称しますね)、まずはターゲットになるのは児童保護施設に送られたトーマスとカルロス。夜中に誘い出され、川で水死体で発見される幼い子どもたち。もうこの時点でふと思ったのですけど、ヨローナさんは別に水場じゃなくても出現はできるんですね。あくまで水場で溺死させるというこだわりがあるだけ。意外と行動範囲はアクティブです。

続いて恐怖体験するのは、アンナの息子のクリス。車の外でしくしく泣くヨローナさんを目撃。腕を掴まれ、火傷を負った後、車に戻って立てこもりますが、ここで車の窓を開けるという嫌がらせにでるヨローナさん。頑張って窓を開ける“くるくる”を回しているヨローナさんの姿を想像すると、少し可愛い…気もする。

今度はアンナの娘のサム(サマンサ)の番。プールからのびっくり登場。なぜかサムの場合はやたらと水場で襲ってくるのはなんなのでしょうか。それにしても、あのバスタブのシーンは少し笑ってしまった、あ、いや、怖いシーンですよ(真顔)。ヨローナさんも必死に考えての作戦だったでしょうからね。頭を洗ってあげると見せかけてドボーン!ブクブクブク…完璧じゃない、私…とか満足気に思っていたはず。

恐怖に陥った3人に助っ人となるラファエルが登場。怪しい種を巻いてヨローナさんの侵入をガード。まるで害虫みたい…。というかヨローナさん、その種を吹き飛ばすとかできないんですか。ここでパトリシアも乱入していろいろカオスになっていきますが、最後の決戦は屋根裏へ。ペンダントにうっとりで正気に戻ったヨローナさんでしたが、鏡に映った自分の怖い顔にショック。またも凶悪化しますが、アンナとラファエルの連携プレイによる十字架ぶっさしカウンターで見事に撃退されてしまいます。

めでたし、めでたし…でいいのかな。

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次は幽霊戦争でお願いします

若干のふざけ半分であらすじを書きましたけど、正直、私は『ラ・ヨローナ 泣く女』はあまり演出が嫌になるほど怖いレベルには達していなかったなと。

それは音だけで驚かすから良くないとかそういうのではなく、根本的に恐怖演出の見せ方が上手くいっていないような気もします。

『死霊館』なんてまさにそうだったのですが、ホラー映画に大事なのは恐怖に至るまでの“波”の作り方だと思うのです。徐々に徐々に恐怖の波が大きくなって一気に大波が押し寄せ、もう勘弁してと精神的に辛くなったところで波が止み、また徐々に徐々に恐怖の波が大きくなって…の繰り返し。そこが完璧だと怖がらせ方が定番でも怖いものは怖い。

『ラ・ヨローナ 泣く女』はそのへんが妙に単調で常に波の高さが一定な感じ。例えば、サムがバスタブで襲われるシーンも、あれをするなら事前にサムが母親に頭を洗ってもらい安心しきっている場面を事前に入れておかないと、怖さのタメがないです。普通に考えたらいきなり自分の視覚外から頭に誰かの手が触れてきたら誰であろうと驚いて振り向くものですし。

終盤の家でのアンナ・ファミリー&ラファエルvsヨローナさん組も、シーンがプツンプツンと切れるので、つなぎ目のない一体化した恐怖の連打にならず、イマイチ緊迫感がないのも残念。

それにせっかく水という新要素があるわりにはその使い方もたいして面白くもないのも…。予算が少ないから大掛かりな水シーンは無理でしょうけど、でもこれならまだジャパニーズ・ホラーの水使いの方が上手い気もする…(さすが湿度ジメジメ大国・日本)。

ということでヨローナさんにはもう少し頑張っていただきたいところ。

きっと今後の死霊館ユニバースは世界中の幽霊が勢揃いで集まって“インフィニティ・ウォー”で大バトルするでしょうから(妄想です)、パワーアップして帰ってきてくださいね、ヨローナさん。

『ラ・ヨローナ 泣く女』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 30% Audience 46%
IMDb
5.8 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 4/10 ★★★★

作品ポスター・画像 (C)2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

以上、『ラ・ヨローナ 泣く女』の感想でした。

The Curse of La Llorona (2019) [Japanese Review] 『ラ・ヨローナ 泣く女』考察・評価レビュー