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映画『サンクスギビング』感想(ネタバレ)…ブラックフライデーは惨劇の大安売り

サンクスギビング

買いますか?…映画『サンクスギビング』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Thanksgiving
製作国:アメリカ(2023年)
日本公開日:2023年12月29日
監督:イーライ・ロス
ゴア描写

サンクスギビング

さんくすぎびんぐ
サンクスギビング

『サンクスギビング』物語 簡単紹介

感謝祭発祥の地とされるマサチューセッツ州プリマス。年に1度の祝祭に地元の人々が盛り上がってくる中、ダイナーで働く女性が何者かに惨殺される事件が起こる。その後も相次いで住民たちが姿を消し、感謝祭の食卓に並ぶご馳走に模した残酷な方法で殺されていく。その一方で、地元の高校生ジェシカたちは、ジョン・カーヴァーを名乗る謎の人物のインスタグラム投稿に自分たちがタグ付けされたことに気づく。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『サンクスギビング』の感想です。

『サンクスギビング』感想(ネタバレなし)

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感謝してる場合じゃない

日本人にとって「感謝祭」…またの名を「サンクスギビング・デー(Thanksgiving Day)」はあまり馴染みがあるとは言えません。

しかし、北米を中心にこの文化は今も根付いており、アメリカでは毎年11月の第4木曜日、カナダでは毎年10月の第2月曜日が一般的には感謝祭の日です。七面鳥の丸焼きなどの豪華な食事がをみんなで囲むという風習は愛され続けています。

一方で、この感謝祭から副次的に発生した別のイベントはこの日本でもすっかり定着した感じはあります。それが「ブラックフライデー」です。もともとは感謝祭の翌日の金曜日に設定され、小売店などで大規模な安売りが実施されるのですが、日本でもAmazonを含め、今やいろいろな企業がブラックフライデーに便乗したセールを大規模展開するようになりました。

なので感謝祭文化が浸透していない日本人にとってはこの時期は「とりあえずお得に買える日」くらいの認識ですよね。この普及には日本の経済界の後押しがあったからなわけですが…。

2023年のブラックフライデーは何か買いましたか? 私は何も買ってません。そんなタイミングよく買いたいものはないんですよ…(その時期よりもっと前に家電が壊れたりしたりする…)。

ちなみになぜ「ブラック」なのか。今では「儲かって黒字になるから」が定説として公然と語られていますが、もともとは経済や金融の世界では「ブラック」は悪い意味で用いており、当初は労働者が過酷な目に遭うのでやっぱりネガティブな意味合いで使っていたらしいのですけど、それだと商売的に印象が良くないので、都合のいい由来に置き換えたそうです。

ただ、そうやって表向きで取り繕っても中身は案の定…。実際、日本でもブラックフライデー・セール中にオンラインショッピングの注文が激増して配達業務がオーバーワークとなるため、配達業者の間で不満が溜まり、非難の声も上がっています。

こうなってくると感謝も何もない、ギスギスした日ですよ。誰かが良い気分に浸るため、誰かを踏みつけにする…そんな搾取構造を象徴するような…。

今回紹介するホラー映画は、そんなブラックフライデー含めた感謝祭に対しての愛憎が渦巻く強烈に皮肉満載な作品です。

それが本作『サンクスギビング』

この映画、製作のきっかけが少々変わっています。『グリーン・インフェルノ』『デス・ウィッシュ』など残酷系の作品でおなじみの“イーライ・ロス”監督が、2007年の『グラインドハウス』というアンソロジー映画の中で、存在しない架空の映画の予告編を挿入していたのですが、そのひとつが『Thanksgiving』というものでした。それを「じゃあ本当に映画にしちゃおう」ということで“イーライ・ロス”監督自身の手で製作されたのが本作『サンクスギビング』です。

ただし、『グラインドハウス』の予告と内容はかなり変わっており、物語も映画化の際にオリジナルで組み立て直されています。感謝祭がテーマになるくらいしか一致していません。部分的なシーンのアイディアは盛り込まれているけど…。

舞台は感謝祭で賑わうとある町。そこに異様な連続殺人を行う謎の存在が出現し、人々を恐怖に陥れていく…スラッシャー映画の王道と言えばそのとおり。

それでもスプラッタなゴア描写はたっぷり。レーティングも「R18+」ですが、これはたぶんあの要素があるからなんだろうな…(一応伏せておきますが、宣伝では結構ネタバレしてる…)。

“イーライ・ロス”監督も『ノック・ノック』(2015年)並みの低予算規模に戻ってきて、しかもお得意の残酷描写フル稼働ですから、久しぶりにこの“イーライ・ロス”が目の前に現れたなっていう感じです。

ブラックフライデーに浮かれて買い物三昧をした人には非常に居心地の悪い映画ですが、“イーライ・ロス”はそういうことをする人です。気分を悪くさせるのが仕事みたいな監督ですよ。

でも本作の日本の公開日、12月の終わりという…。いや、日本の映画界はこういうところあったけども…。『ハロウィン』を4月に公開したり、『バイオレント・ナイト』を2月に公開したりしたけども…。

ここまで清々しく時期を合わせる気配もないとなると逆にもう文句を言うのもバカバカしくなってくるけど、いいのかな、これで…。

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『サンクスギビング』を観る前のQ&A

✔『サンクスギビング』の見どころ
★盛大に残酷描写が大セール中。
✔『サンクスギビング』の欠点
☆食欲は下がる。
☆買い物意欲は下がる?

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:残酷映画好きなら
友人 3.5:監督ファン同士で
恋人 3.0:ジャンルの趣味が合えば
キッズ 1.0:R18+です
↓ここからネタバレが含まれます↓

『サンクスギビング』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):ハッピー・サンクスギビング!

マサチューセッツ州のプリマス。感謝祭の日。多くの家庭がみんなで集まり、団欒を過ごしています。食滞に豪華な食事が並び、もちろんメインディッシュは七面鳥の丸焼き。

しかし、そんな夜中、穏やかではない光景がそう離れていない外で巻き起こっていました。あるスーパーマーケットではブラックフライデーのセールを目前に控え、開店直後に店に入ろうと、店の前に大勢が待っていました。道路まで車で埋め尽くされ、ほぼ騒動になりかけています。

スーパーの店長のミッチは対応に困り果て、オーナーのトーマス・ライトにここを任せられているとは言え、かなりギリギリの状態です。

そこにトーマスの娘のジェシカと恋人ボビー、さらにその友人たちが車で駐車場に入ってきます。そして浮かれながらこっそり店内へ入れてもらっていました。

ところがそれは群衆に見つかってしまい、文句を言われます。それに対して煽り返し、中で呑気に買い物をしてみせて、待ちくたびれた群衆は激怒。

たちまち暴徒化し、バリケードを破ってなだれ込んできます。こうなるとコントロールは不可能です。もたもたしている間にドアのガラスは割れ、群衆は店内へと侵入。商品の争奪戦が始まります。それぞれ自分の欲しい商品を手に入れることしか考えていません。

店員は押しつぶされ、ガラスで怪我する者もいます。ボビーは手を痛々しく踏みつけられました。

そしてミッチの妻アマンダも巻き込まれて亡くなります。

さすがに収拾がつかなくなり、ニューロン保安官が銃を上に発砲して鎮めようとし…。

この事件はすぐにトップニュースとなりました。感謝祭の悲劇はさまざまな反響を呼び、過剰な感謝祭のビジネスに反対の声も上がりました。しかし、この事件で死者がでたにもかかわらず、逮捕者はなく、時は過ぎていきます。

1年後、また感謝祭の日が近づいてきました。

ジェシカとその友人であるギャビー、スキューバ、ジュリア、エヴァンは、SNSでジョン・カーヴァーと名乗る人物が謎めいた意味深な食卓の写真をアップし、ジェシカたちをタグ付けしていることに気づきます。

さらにあるウェイトレス女性の真っ二つになった下半身が、あの騒動の店の看板に突き刺さった状態で発見されました。この女性はあのブラックフライデーのパニック事件の現場にいたことがわかり、加えてさらに不審な犠牲者が続発。

これはもしかするとあの事件に恨みを持つ者による復讐なのか。だとすれば間違いなくジェシカたちもターゲットになっているはず。

怖くなってきたジェシカたちはニューロン保安官に相談し、警察も捜査を急ぎます。

しかし、状況は日に日に悪化していき…。

この『サンクスギビング』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2023/12/29に更新されています。
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誰が一番悪いのか考えたくなる心理

ここから『サンクスギビング』のネタバレありの感想本文です。

オーソドックスなスラッシャー映画ではあるのですが、『サンクスギビング』の序盤はかなり見ごたえのある群衆パニックの恐怖映像となっています。初っ端から“イーライ・ロス”節が発揮です。

入り口ドアのガラスで首を引き裂かれたり、買い物カートで髪を巻き込んで頭皮が剥がれたり、わざと露悪にやりまくってます。

群衆パニックのホラー要素は『ハロウィン KILLS』にもあったけど、『サンクスギビング』は露悪性では上回っているかな。

いわゆる群集事故に該当するものですけども、世界各地どこでも起きうるタイプのものです。日本だって、2001年7月21日に兵庫県明石市で夏まつり花火大会の現場の歩道橋で発生した群衆事故が有名で、そちらでは11名が死亡し、183名が負傷する被害となりました。

だからこれを「愚かな人たちだ」と上から目線でバカにするわけにもいきません。こういうパニックはモラルとかで片付けられない問題で、心理的&物理的なメカニズムとして生じてしまうものですから。

ただ、本作の場合、これの原因の大本はブラックフライデーなんですよね。当然、映画の作り手も買い占めによる殺到を煽ってそれで儲けるような資本主義のあくどいやり方を批判する意図をこの展開に込めているんだろうなと思います。

実際、これ以降は『スクリーム』などでもおなじみの「殺人鬼の正体は誰か?」という犯人当てのミステリーに突入しながら惨劇が描かれるわけですが、この犯人探しはそのまま「ああいう群衆事故の責任は誰にあるのか」という私たちが考えずにはいられない議論と重複します。

客を煽った若者にあるのか、あの場にいた全ての客か、現場の最前線にいた店員なのか、その場を指揮していた店長なのか、その店を所有するオーナーなのか…。

法的な答えはあるのかもしれませんが、「誰が一番悪いのか」という論争にはそれぞれの感情がぶつかるのは当然。

そうした背景があるので、本作の「ジョン・カーヴァー」を名乗る犯人は観客側にしてみれば同情しやすい立ち位置にあり、しばし続く残酷な殺害描写もわりと冷静に見ていられる感じもあったかもしれません。

ちなみにあの「ジョン・カーヴァー」というのは、メイフラワー号に乗ってアメリカに渡ったピルグリムと呼ばれるピューリタン(清教徒)たちのひとりです。感謝祭の歴史の由来つながりですね。

しかし、これは“イーライ・ロス”監督作。そんな復讐心を満たしてあげる接待で終了するはずもなく、後半はカニバリズムの要素が盛大に蓋を開けます。襲って拉致した関係者たちを、丸焼きにするわ、血をワインにするわ、残虐非道の感謝祭ディナーの完成です。

普通にドン引きな気持ち悪い倫理観ゼロの犯人としての本性が露呈し、もうコイツ殺さないといけないな…と観客も感じ始めたところで、しっかりファイナル・ガールであるジェシカが一発を決める。やっぱり一撃はシンプルじゃないとね。今回は感謝祭なので七面鳥バルーンでいくというサービス精神も忘れていません。

終わり方は案外と潔く、“イーライ・ロス”監督の「観客が食べたいと思っているものを綺麗に盛り付けして、食べ散らかさないうちに片付ける」という、フィルモグラフィーで鍛え抜かれた職人センスの技が光っている映画でした。

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残酷だけど真面目に

『サンクスギビング』は“イーライ・ロス”という職人芸を磨いた監督の手によって作られているので、とても手堅くベタな面白さを詰め込んだ七面鳥スラッシャー映画だったのは確かです。

“イーライ・ロス”監督はリメイクとか続編じゃなくて、こういうオリジナルで今後も攻めていってほしいなと思いました。

ただ、やはり昨今の突出したキャッチーさでバズっていくイキのいい新進気鋭のホラー映画と比べると、少しクラシックなところはあります。“イーライ・ロス”監督もちょっと前まではホラー映画界の若手の枠だったのに、もう古株になってきているんだな…。

例えば、今作の若者キャラクターたちはそんな今っぽさは感じられず、どこか80年代~90年代のノリそのままな人物像だったりしますし…。

『TALK TO ME トーク・トゥ・ミー』の若者キャラクターの比較したらわかりやすいですよ。もしあちらの映画の若者たちだったら、インスタグラムのタグ付け程度ではビビらないのではないかとさえ思う…。

『サンクスギビング』はアプリなどIT系の使い方はあまり上手くはなかったかな…。難しいところなのですけど、今はもうネット上の画像はいくらでも加工できるし、AI生成で大量に作れてしまう時代に突入し、画像だけでホラー表現を演出するのが厳しくなってきていますよね

SNSに残酷な画像が出回ったとしても、今の若い世代にとってどれくらいのリアルな恐怖なのかというと、ちょっとあやふやな面はあるんじゃないか、と。

そんな不満もありつつ、私は軽く楽しめるスラッシャー映画だったので、スナック感覚で小腹を満たせました。“イーライ・ロス”監督の真面目な残酷さが堪能できましたね。

そう、“イーライ・ロス”監督って意外と真面目なんですよ。低俗で血生臭い映像ばかり繰り出してくるので誤解しがちですけど、本人は結構社会問題の意識が強くて…。とくに環境保護のあたりね。

つい最近も“イーライ・ロス”監督は『Fin』(2021年)というサメ保護のドキュメンタリー映画を“レオナルド・ディカプリオ”製作総指揮のもとで作っているんですよね。クジラ、イルカ、シャチときて次はサメの保護に力を入れないとダメだと訴えて…。人間はスラッシャー映画のようにサメに対して残酷なことをしているとそのドキュメンタリーでは伝えています。

“イーライ・ロス”監督が過去作から一貫してカニバリズムにこだわるのは、そういう大量消費な食肉産業への批判もあるんでしょう。そういう意味では今作もヴィーガニズム映画と言えるのかも…しれない。

日本もこの“イーライ・ロス”の精神をリスペクトして、正月を題材にスラッシャー映画を作ったらいいんですよ。神社や寺にだけ出没する連続殺人鬼とかね。おみくじで大凶を引いた人間だけを殺していくとかね。伝統文化だろうが遠慮なく鋭い批評の刃を向けるのが映画というものです。

『サンクスギビング』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 84% Audience 79%
IMDb
6.9 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
6.0
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関連作品紹介

スラッシャー映画の感想記事です。

・『Pearl パール』

・『テリファー 終わらない惨劇』

・『スクリーム6』

作品ポスター・画像 (C)Sony サンクスギビンク

以上、『サンクスギビング』の感想でした。

Thanksgiving (2023) [Japanese Review] 『サンクスギビング』考察・評価レビュー