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『アクアマン』感想(ネタバレ)…海だ! サメだ! アクアマンだ!

アクアマン

海だ! サメだ! アクアマンだ!…映画『アクアマン』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Aquaman
製作国:アメリカ(2018年)
日本公開日:2019年2月8日
監督:ジェームズ・ワン
自然災害描写(津波)

アクアマン

あくあまん
アクアマン

『アクアマン』あらすじ

海底に広がる巨大な帝国アトランティスを築いた海底人たちの王女を母に持ち、人間の血も引くアクアマンは、アーサー・カリーという名の人間として地上で育てられた。やがて、アトランティスが人類を征服しようと地上に攻め入り、アクアマンは、アトランティスとの戦いに身を投じていく。

『アクアマン』感想(ネタバレなし)

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DC映画はお前に任せた

世界に蔓延る悪(海に関するものに限る)に正義の鉄槌を下す男。その名は「アクアマン」

魚を大事にせずゴミ箱に捨てるような某回転寿司チェーンのアルバイトは、アクアマンに説教でも食らうがいい! 浜辺にゴミを大量に捨てる海水浴客は、アクアマンに家を荒らされるぞ! 癒着して利権をガッポリ懐に入れている大手水産企業と水産庁は、アクアマンに腹パンでもされればいい! 領海をめぐって火花を散らす国々は、とりあえずアクアマンに頭を下げろ!

いや~、アクアマン、大活躍ですね。悪い奴が多すぎるんだもん。

そのアクアマン単独主演作となる、本作『アクアマン』がいよいよ日本で公開です。なんでアメリカと同じ2018年12月公開にしなかったのか…中国なんてアメリカより2週間も公開が早かったのに…。そんな不満も最初はウジウジと思っていたけど、忘れましょう。

なんて言ったってDC映画史上最大のヒット作になったのですから。

DC映画の哀れなほどの没落っぷりは語ってやるのも傷に触りそうでやめておきたい気分なのですが、まあ、隣にいるマーベルくんが優等生だったから…。常に隣の座席にいるのが学校一番の文武両道の秀才だったら、そりゃあ、辛いですよ。参観日には保護者(またの名を観客)が「大丈夫かな、DCくん」と心配そうに見つめてしまうのも無理はない話。もはや批判するのもイジメになってしまって不登校になられても困りますからね…。

そんなDCくんもついに今回『アクアマン』で名誉挽回を果たしたと言っていいんじゃないでしょうか。『ワンダーウーマン』のときも大ヒットして歴史を作りましたが、あれは「フェミニズムの潮流に乗っただけだよ」みたいな冷めた視線も向けられたりしました(それでも何も恥じることはない凄さですけどね)。

でも今度はどうですか。『アクアマン』は小細工なしの真っ向勝負で超王道ヒーローファンタジー映画として見事な出来栄えです。間違いなくDC映画の看板をこれから先頭で背負うのは「ワンダーウーマン」と「アクアマン」ですよ。えっ? バットマンとスーパーマン? あの二人はしばらく休暇を与えてもいんじゃないかな。個人的にはバットとスーパーな男コンビについては10年くらい映画を作らなくてもよい気がしているけど…(レゴのバットマンもいるし…)。

この『アクアマン』の立役者にして、DC映画を救ったリアルな男なのが、監督の“ジェームズ・ワン”。『ソウ』『インシディアス』『死霊館』とホラー映画で立て続けにキャリアを上り詰めていった、今ハリウッドで最も勢いに乗っているアジア系監督のトップランナーなのは間違いありません。そんな“ジェームズ・ワン”監督が、『アクアマン』を自らの原案で引っ張ってDC映画の大黒柱になってくれたのは、これまたテンション上がるじゃないですか。

あとは細かいことはどうでもいいのです。前作の『ジャスティス・リーグ』? そんなものは観る必要ありません(断言)。DC映画を知らない人でも満足できる、海で大暴れするだけの単純明快な『アクアマン』をどうぞお楽しみください。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『アクアマン』感想(ネタバレあり)

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こういうのが観たかった

楽しかった…(呟き)。

もうその一言で感想を終えたいくらい、この『アクアマン』の世界に陶酔しました。こんなにも世界観に夢中になったのは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』以来ですかね。

個人的には今まで無数のアメコミ映画を見てきましたけど、世界観で言えばダントツで大好きです。アトランティスの世界がこれほど魅力に満ちているとは、『ジャスティス・リーグ』を観たときは想像もつかなかったですよ。

何が良いかって繰り返しになりますけど世界観の単純明快さです。昨今のアメコミ映画は、とくにマーベルを中心にして、社会問題を内包したテイストにすることで批評的な視点にも耐えうる上質さに仕上げるのが主流になっていました。確かに『ブラックパンサー』は傑作だったと思いますし、その方向性は良いことです。でも心の奥底では「もっとシンプルでバカみたいな王道ヒーローが観たい…」と小学生気分なもうひとりの自分がお腹を空かせていたのも事実。そこにこの『アクアマン』はドンピシャだったわけです。

本作にも社会問題風刺がないわけではありません。一応、アトランティスの者たちが陸の人間世界に怒っている理由として環境問題がピックアップされていました。でもそこは割と最終的にスルーなんですよね。そこをもってツッコむ人もいるでしょうけど、それはあえて物語の論点にしないという思い切りの良さはナイスな判断だと私は思います。だって説教臭くなるだけですから。なので、イルカやクジラを漁する行為が人間の悪として描かれる場面に対して、「これは反日映画だ!」と掴みかかるような反応をしても、それは怒りの沸点が低いことを証明しているだけ。在庫の余っている鯨肉でも食べててください。

本作を子どもの頃に見ていたら確実に「将来の夢は?」と聞かれたら「アクアマン」って答えただろうな…。

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「甲殻王国」推しです

本作の世界観の好きなところを挙げだすとキリがないのですけど…そうですね、まずは「海の生き物を従えることができる」って良いよね…(幼稚園児の感想かな?)。

序盤、あのアクアマンことアーサーの子ども時代の水族館シーンでの、イジメっ子“撃退”の気持ちよさと威厳溢れる未来の王の貫禄を暗示させる演出。サメが良い感じでホラー感たっぷりにびびらせてくれるのが、さすが“ジェームズ・ワン”監督。そして、これはちゃんと最後の山場である大戦争シーンの伏線になっているのが最高です。本作はとにかくコミック的なカタルシスある伏線回収がたまらないですね。

終盤。正統な継承者の手に渡るために古のアトラン王のトライデントを長年守っていた最強の怪物リヴァイアサンの「カラサン」に認められ、トライデントを手にして覚醒したアクアマン。彼は、異父兄弟で「オーシャンマスター」を名乗るオーム率いる軍勢と、甲殻王国の軍勢との一大決戦の場に乱入。あらゆる海の生き物を大量に従え、さらにカラサンまでもを操り、戦場を一変させます。まさかの怪獣映画要素までぶっこんでくるサービス精神に、私はドックフード1年分を1度に貰った犬のように尻尾を振るしかない…。

ここの乱戦シーンはとにかくマニア魂をくすぐるものばかりで、サメやモササウルスに騎乗する戦闘スタイルも机をバンバン叩きたくなるほどたまらないです。でもそれ以上に、そんな軍勢と真っ向勝負で向かい合う「甲殻王国」が個人的にはお気に入り。もろに甲殻類なんですもの。世俗的には甲殻類は弱い存在で、生態系ピラミッドの下の方にいる奴らです。そんな甲殻類があそこまでファイトを見せてくれるなんて…私はこれだけで涙もの(これで泣く人も珍しいでしょうけど)。『スター・ウォーズ エピソード6 ジェダイの帰還』のイウォーク族を思わせる、こういう“頑張る系”に弱いんですよね、私。甲殻類が生態系上位にいるサメと戦うんですよ。これに燃えずして何に燃えるのか。本作のMVPは「甲殻王国」の軍勢です。「甲殻王国」という和訳センスも良いですよね(英語では「Kingdom of the Brine」)。私みたいに甲殻類にシンパシーを感じている観客もきっとどこかにいると信じています。

他にも「海溝王国」のバケモノ(トレンチ)の完全ホラー演出も素晴らしく、あのアクアマンとメラが水中に逃げて潜ると、発炎筒に照らされておびただしい数のバケモノが群れをなして水中にいることがわかるシーンの、王道パニックスリラー要素もたまらない。

“たまらない”という感情しか湧いてこないな…。

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続編を早く見せてください

甲殻類だけで感想を語ることもできますけど(えっ)、さすがにそれはマニアックすぎて大半の読者を置いてけぼりにするので、主要キャラクターの話もしましょうか。

メインに立つアクアマン。以前の『ジャスティス・リーグ』での顔見せ時から「良いキャラだな」と思ってましたが、本作で確信しました。私はDC映画で一番好きなヒーローですね。“ジェイソン・モモア”もワイルドかつキュートで、ずっと見ていたい。

ヒロイン・ポジションとなる“アンバー・ハード”演じるメラは、ワンダーウーマンと互角に並べそうな戦う女性キャラとして魅力的。まあ、この海世界の人たちはデフォルトでチート級に強いのか、それとも一部が特別に秀でているのか、よくわからないですけど…。

アクアマンの母であるアトランナは存在感を放っていました。“ニコール・キッドマン”ですからね、貫禄があります。それにしても、あの父と母から“ジェイソン・モモア”は生まれないだろ…。絶対にトドかシロクマの遺伝子が混ざっているよ…。

アトランティス帝国&海底国ゼベルの男たちも良かったです。オームやバルコの立ち位置も意外に画一的ではなかったし。ただ、ネレウスを演じた“ドルフ・ラングレン”はもっと肉弾戦で戦ってほしかったというのと、ネレウスは心変わり早すぎるよとは思ったけれど。

そして中盤退場になるもインパクト大で記憶に残るブラックマンタ。あのビジュアル・デザインといい、シリアスな背景を背負いつつもでもコミカルになっているバランスといい、ここで終わりなのはもったいない…と思ったら続編で出てきそうなので良かった。次はブラックマンタも怪物を従えて、怪獣大バトルをしてほしい…

このブラックマンタとの決戦が繰り広げられるシチリアでの市街戦も見ごたえありました。海中バトルが素晴らしい本作ですが、地上バトルも良いんですよね。あのアクアマンとメラが別の場所で戦闘&逃走しているシーンがシームレスにつながり、高低差を意識したアクションが繰り広げられる…まるで地上でさえも海中のように重力を感じさせないカメラワーク。どうしても各人がチート級に強いので派手なだけのバトルになりがちだったこれまでのDC映画とは全く異なる見せ方で、興奮しました。

こんな感じでまだまだ語り尽くせない本作。要望としては『ワンダーウーマン』のようなキャッチーなヒーローテーマBGMが欲しいところ。それさえあればさらに完璧の完璧。

ともかく本来であれば、これだけ壮大な世界観ならもっと小出しにするところを一作に全部凝縮してくれた製作陣に感謝。「海のスター・ウォーズ」なんて言われ方もしていますけど、だったら『アクアマン』もエピソード9くらいまで作ってください。

『アクアマン』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 65% Audience 78%
IMDb
7.4 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 8/10 ★★★★★★★★

(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & © DC Comics

以上、『アクアマン』の感想でした。

Aquaman (2018) [Japanese Review] 『アクアマン』考察・評価レビュー