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『ルシッドドリーム 明晰夢』感想(ネタバレ)…夢に侵入して息子を探す、韓国版「インセプション」

ルシッドドリーム 明晰夢

夢に侵入して息子を探す、韓国版「インセプション」…Netflix映画『ルシッドドリーム 明晰夢』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Lucid Dream
製作国:韓国(2017年)
日本では劇場未公開:2017年にNetflixで配信
監督:キム・ジュンソン
ルシッドドリーム 明晰夢

るしっどどりーむ めいせきむ
ルシッドドリーム 明晰夢

『ルシッドドリーム 明晰夢』物語 簡単紹介

大企業の不正の告発を専門とする記者テホの息子ミヌは、来園者でにぎわう遊園地で忽然と姿を消してしまう。何か手がかりがあるわけでもなく、行方不明の一件以来、何も進展はないまま時間が過ぎていく。3年後、いまだに情報は一切つかめないことに焦るテホは、夢を自覚しながらに見ることができる「明晰夢」という技術の存在を知る。失踪事件担当の刑事ソンと協力し、明晰夢を利用して真相に迫ろうとするが…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『ルシッドドリーム 明晰夢』の感想です。

『ルシッドドリーム 明晰夢』感想(ネタバレなし)

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Lucid Dreaming Movie

寝ている間に見るあの“夢”。たいてい夢を見ているときはそれが夢だとは気づかず、起きて初めて「ああ、夢か…」となるわけですが、なんでも“夢であると自覚しながら”夢を見られる人がいるらしい。しかも、その場合、夢の内容を自由に操れるとか。もしそんなことができるなら、ぜひとも試したいですよ。誰かやり方を教えてください。

こういう夢であると自覚しながら見ている夢のことを「明晰夢(めいせきむ)」、英語で「Lucid dreaming」と呼ぶそうです。

この明晰夢は映画でもよく題材になります。夢(もしくはそれに類似した頭の中で作られた仮想世界)を舞台にした一連の映画を「Lucid Dreaming Movie」と表現したりします。具体的には『マトリックス』(1999年)、『バニラ・スカイ』(2001年)、『エターナル・サンシャイン』(2004年)、『インセプション』(2010年)、『ミッション:8ミニッツ』(2011年)、『トータル・リコール』(2012年)などですね。日本だと今敏監督の『パプリカ』というアニメ映画がありました。

そして本作『ルシッドドリーム 明晰夢』は、そのズバリなタイトルのとおり、韓国の「Lucid Dreaming Movie」です。

主演するいずれもファンの多い、ビューティな俳優ばかり。こういうイケメン俳優たちが出演していると聞くと、ファン受けを狙っただけの映画に思ってしまいますが、韓国映画はそれでいてかつクオリティが異常に高い作品を生み出すので油断なりません。本作に出演する俳優もなかなかのツワモノぞろいです。たとえば、人気俳優“コ・ス”は激動の朝鮮戦争の一幕を描き、韓国はもちろん世界でも高く評価された『高地戦』にメインで登場。緊迫した戦況での切ない演技で観客を魅了しました。また、『ルシッドドリーム 明晰夢』には男性アイドルグループJYJの“パク・ユチョン”も出演していますが、こちらも『海にかかる霧』というこれまた韓国映画の傑作のひとつとして数えられる作品で熱演を披露し、賞を総なめにしました。この二人が一堂に揃うのですから、とんでもない映画です。

そのはず…だったのですが、本作は韓国で公開されると、それはもう見事に大コケ。客寄せになるうる俳優を揃えたはずだったのに、なんとまあ無様な姿をさらけ出してしまいました。これが夢なら早く冷めてくれ状態ですが、なぜこんなことになったのかというと、色々な理由があるのでしょう。なによりメインキャストで作品の顔となる“パク・ユチョン”に性的暴行疑惑が報じられ、その後嫌疑が晴れたものの、イメージは失墜…ファンが離れてしまったのも一因かもしれません。実際にこの騒動は映画の製作にも影響を与えたとか与えていないとかでゴチャゴチャしているありさま。スッキリしません。

また、単純に物語としてそこまで大きな驚きもなかった…というのもあるのでしょう。確かに本作はそこまで新しい要素はなく、これまでいろいろな意味でパイオニアとして新鮮な映画性を見せてきた韓国作品と比べると、今作は既存の「Lucid Dreaming Movie」を後追いしているだけのようにも感じます。

一方で「Lucid Dreaming Movie」は難解になりがちですが、本作の内容は割とシンプルなので、気軽に観れると思います。決して物語自体が極端に破綻していたり、絶望的なヘマをしているような作品ではないので、そこまで気にすることもないです。要するにあまりハードルを上げずに、気軽に観てねという話です。

気が向いたときにぜひどうぞ。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『ルシッドドリーム 明晰夢』感想(ネタバレあり)

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入門におすすめ

先にも書きましたが、本作『ルシッドドリーム 明晰夢』は「Lucid Dreaming Movie」の王道のような作品であり、シンプルなストーリーでした。人生で一度も明晰夢関連の映画を観たことがない人なら、相当に新鮮に感じたかもしれませんが、基本的には想定の範囲内だったはずです。

記者として活躍していたテホが、休みの日に息子ミヌと遊園地で楽しいひとときを過ごしていると、突然ミヌが消えてしまいます。そして、数年後、FBIの捜査でも活用されているルシッドドリームの存在を知ったテホは、知人の医師ソヒョンの力を借りて、夢であの遊園地に戻ります。

ここからしばらくはテホが遊園地(夢)を繰り返し、少しずつ手がかりを探していく展開が続きます。このパートでは、最初の現実の遊園地シーンで強調されていた人物をひとりずつ確認していく、丁寧な進め方でした

売店の人物にもルシッドドリームを試したりと、なんだかんだで犯人のタトゥー男を突き止めたはいいものの、容疑者のチェは昏睡状態。捜査は行き詰ります。

ここで新しい要素が登場。共有夢という方法で昏睡状態のチェの夢に侵入する展開へ。もし途中で侵入先の人物が死ねば夢の中から出られなくなるという「Lucid Dreaming Movie」に最もありがちなサスペンスもしっかり用意されてます。もうこのあたりから明晰夢セオリーまっしぐらすぎて、観ているこっちとしても開き直ってました。

これと並行して、チョというルシッドドリーム研究の後援者の、交通事故で失くした息子がMkMk型という珍しい血液らしいこともわかり、実はミヌも同じだったことが発覚。チョを問い詰めます。

やがて全てのピースが揃って浮かび上がった黒幕は、テホの隣にいたソン刑事でした。正直、この犯人、バレバレだった気がする…。最初から何かありそうな雰囲気を出しすぎでしたね。前半の丁寧な展開に対して、後半の勢いまかせな展開はやや残念。最後のビル崩壊世界での駆け引きも、ものすごい投げっぱなしです。そもそもルシッドドリームを使わなくても人海戦術でミヌを探せるのでは…というツッコミはダメか…。ただ、この終盤の見せ場となる夢世界の現実離れした映像は、韓国映画ではなかなかないタイプのSFでここだけわずかに本作のフレッシュさが若干ですが上乗せしました。ちょっとですけど。

本当はここで脅威の映像を見せて観客のハートをつかむべきなのでしょうけど、さすがに『インセプション』以降の後発として、そこまで膨大ではない予算でできることは限られているわけで…。苦しい立場でしたね。

「Lucid Dreaming Movie」としては新鮮さのない平凡な一作。もっと冒険してほしかったところです。ただ、繰り返しますけど「Lucid Dreaming Movie」入門としてはぴったりではないでしょうか。

韓国映画でこういうタイプのSFは珍しいので、今後いろいろ工夫をめぐらした変化球な作品が生まれてくるかもしれません。本作は最初の一歩。今後が楽しみです。

ちなみにこの感想記事の冒頭の話に戻りますが、明晰夢をなんとか見れないものかと現代人の最良の友インターネットさんにお尋ねしたところ、「明晰夢を見る方法」と検索しても、なんだか意味不明な抽象的な方法しかでてきませんでした。まあ、そんなものですよね…。皆さん、いくら明晰夢を体験したいからといって、怪しい情報に連れられて知らない人とSNSで交流していたら「会わない?」と言われいざ会ってみたらなんだかよくわからない商品を買っていた…みたいなことにならないようにしてくださいね。

明晰夢が見たいのをぐっとこらえて、ここは「映画を観る」で妥協しておきましょう。

『ルシッドドリーム 明晰夢』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer –% Audience 36%
IMDb
6.1 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 4/10 ★★★★
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関連作品紹介

明晰夢を題材にした作品

・『インセプション』(2010年)
…これはもう超有名。クリストファー・ノーラン監督によるSF大作。ぐわんぐわんとありえない変化を起こしていく映像も話題でしたが、「夢の中でさらに夢を見る」などストーリー展開の奇抜さも相変わらずのノーラン節。

・『パプリカ』(2006年)
…今敏監督によるアニメーション映画で、こちらはアニメという特性を最大限に活かしたありえない映像のオンパレードがとても気持ちいい一作。

作品ポスター・画像 (C)Netflix

以上、『ルシッドドリーム 明晰夢』の感想でした。

Lucid Dream (2017) [Japanese Review] 『ルシッドドリーム 明晰夢』考察・評価レビュー