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ドラマ『スター・ウォーズ アコライト』感想(ネタバレ)…有害なファンボーイとジェダイ

3.0
スター・ウォーズ アコライト

有害なファンボーイと有害なジェダイ…「Disney+」ドラマシリーズ『スター・ウォーズ:アコライト』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Star Wars: The Acolyte
製作国:アメリカ(2024年)
シーズン1:2024年にDisney+で配信
製作総指揮:レスリー・ヘッドランド
スター・ウォーズ アコライト

すたーうぉーず あこらいと
『スター・ウォーズ アコライト』のポスター。主人公の顔とジェダイがライトセーバーを構える構図のデザイン。

『スター・ウォーズ アコライト』物語 簡単紹介

銀河帝国が建国される約100年前。フォースを使いこなすジェダイ・オーダーと共和国は何世紀も宇宙の平和を維持していた。ジェダイたちは規律の中で調和を保ち、弟子を鍛え、世に送り出している。そんな安定していたはずの銀河で、ある日、突然、ひとりの優秀なジェダイが殺害されるという事件が起きる。それは秘めていた闇を浮き上がらせることになり…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『スター・ウォーズ アコライト』の感想です。

『スター・ウォーズ アコライト』感想(ネタバレなし)

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有害なファンは「Dank Farrik!」

『スター・ウォーズ』フランチャイズは新作がでるたびにすっかりトキシック・ファンダムの害虫が湧くのが日常風景になってしまいました。駆除剤で退治できるといいんですけど、どこからともなく発生するからな…。

2024年の新作ドラマシリーズである『スター・ウォーズ アコライト』も、そのターゲットにされたのは大方の予想どおりでした。

配信前のキャスティング発表時からすでに一部の有害なファンボーイたちに批判されていた本作。その理由は「”Woke” Star Wars」だという決めつけですThe Mary Sue

本作の主要キャラクターを演じる俳優の人種は確かに多様です。例えば、重要なメイン・キャラクターであるジェダイマスターを演じるのは、ドラマ『イカ・ゲーム』で世界がやっとその魅力に気づいた“イ・ジョンジェ”。“イ・ジョンジェ”が『スター・ウォーズ』の世界でライトセーバーを振り回す姿を拝める時代が来るとは思わなかった…。

『アソーカ』に続いて、アジア系が『スター・ウォーズ』の世界で飛躍しています。

どうやら「アンチWoke」な人たちはそれが気に入らない様子。そもそも『スター・ウォーズ』は”黒澤明”監督作のような日本作品の多大な影響を受けていて、生みの親である”ジョージ・ルーカス”も当初はオビ=ワン・ケノービ役に”三船敏郎”を出演オファーしていたなんて話もあるくらいですからね。アジア系で「”スター・ウォーズ”が台無しになった」と騒ぐ連中は『スター・ウォーズ』を白人文化の世界だと思っていたのだろうか…。

また、ショーランナーであるドラマ『ロシアン・ドール: 謎のタイムループ』でおなじみの”レスリー・ヘッドランド”がレズビアンで、LGBTQがチラついたからというのも「アンチWoke」な人たちは虫唾が走るようです。

主人公を演じるのも、『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』“アマンドラ・ステンバーグ”で、フェミニンなノンバイナリー当事者で、人種正義を掲げるフェミニストとして精力的に活動もしています。つまり、「アンチWoke」な人たちにとっての「癪に障る”女”」の典型例。

でもどんなに御託を並べようとも、レビュー爆撃で鬱憤を晴らそうとしても、『スター・ウォーズ』はもともと銀河級にダイバーシティなのです。こんなに異種族がごちゃごちゃ存在している世界観に今さら何を言っているんですかという話。

ということでこの話題はおしまい。『スター・ウォーズ アコライト』の本題の紹介といきましょう。

今回の作品はこれまでの『スター・ウォーズ』作品群と明らかに佇まいが違います。今までのドラマシリーズは、スピンオフ映画を拡張する『キャシアン・アンドー』であったり、“デイブ・フィローニ”の作品を拡張する『マンダロリアン』だったり、サーガの間を埋める人気キャラ物語譚の『オビ=ワン・ケノービ』だったり、どれも既存シリーズに結びついていました。

しかし、この『スター・ウォーズ アコライト』は既存作との明確な繋がりがほぼなく、完全に独立して浮いていました。そのため、多くのファンも本作が何を描くのか予想できず、これまでにない面持ちで待機することに。

時代は、『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』100年前とされており、これは現時点で映像化された中でも最も古いものとなります。この時代は「ハイ・リパブリック」と呼ばれていて、戦争のない平和を共和国は謳歌し、ジェダイも栄えていたとされています。ジェダイの黄金期「ハイ・リパブリック」を描いた小説はありましたが、『スター・ウォーズ アコライト』はその時代の初の実写化です。

何のキャラが描かれるか、何が起きるか、どんなオチが待つかもわからない。こんな体験は『スター・ウォーズ』にそうそうなかったものなので、ぜひネタバレなしでまずは思い切って鑑賞してみてください。

『スター・ウォーズ』作品を一切見たことがない人でも大丈夫。とりあえず光る剣を振り回すのが「ジェダイ」という集団だとわかっていればそれでいいです。

『スター・ウォーズ アコライト』は「Disney+(ディズニープラス)」で独占配信中。シーズン1は全8話(1話あたり約30~50分)です。

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『スター・ウォーズ アコライト』を観る前のQ&A

Q:『スター・ウォーズ アコライト』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:とくにありません。
✔『スター・ウォーズ アコライト』の見どころ
★先の展開が全く読めないストーリー。
★新しいキャラクターのアンサンブル。
✔『スター・ウォーズ アコライト』の欠点
☆展開のテンポが速いのでやや落ち着かない。

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:シリーズ初心者でも
友人 3.5:ファン同士で語り合う
恋人 3.5:気軽に楽しめる
キッズ 3.5:シリーズ好きな子に
↓ここからネタバレが含まれます↓

『スター・ウォーズ アコライト』感想/考察(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤)

帝国が産声を上げ始める100年前。ジェダイ・オーダーと共和国は何世紀も戦争のない平和を謳歌していました。

ウエダという地で、紫がかったローブ姿の若者が村の入り口でジェダイの居場所をカネで情報を入手。酒場へ向かいます。そこに静かに佇んでいたのはマスター・インダーラというジェダイ。

謎の人物は淡々と呼びかけ、「決着をつける」と言って戦闘態勢で構えます。唐突な行為に周囲は笑い飛ばし、インダーラも「戦う理由がない」と無関心に告げます。

しかし、謎の人物は周りの者たちを素早い格闘でぶちのめしていき、インダーラは無駄のない動きで応戦するしかなくなり、フォースで刃を止めます。ところが、謎の人物もフォース使いのようで、インダーラは未知のフォース使いの存在を通信で報告。

謎の人物を取り押さえ、顔を暴くと、少し驚いた様子で「こんな道を歩んではいけない」と忠告してきます。けれどもその謎の人物は「武器を手にしたジェダイは人殺し」と言い放ちます。

インダーラはライトセーバーを突きつけ、ゆっくりと迫りますが、少しライトセーバーを下げます。その瞬間、謎の人物は酒場の一般人にクナイを投げ、インダーラはそれをフォースで止めて助けました。

その間髪で別のクナイがインダーラの胸に突き刺さります。インダーラは膝をつき、倒れます。謎の人物は感情の読めない顔つきでその場を去るのでした。

ところかわって、宇宙船の中で目を覚ます人物。オーシャと呼ばれ、同僚のフィリックと愛想よく会話しながら、宇宙服を装着し、船外へ。シールドの修理作業に取り掛かります。

そのとき、ジェダイが船にやってきました。通商連合の人々と会話するのは、ジェダイのヨード・ファンダーとパダワンのタシ・ロワ。オーシャ・アニセヤという名の元ジェダイを捜索していると丁寧に説明してきます。

ヨードと対面したオーシャは気さくに会話。「何をしに来たの? 古い友人を訪ねただけ?」…しかし、ヨードは険しい顔で緊張感があります。オーシャが仕事道具を置こうとすると、ヨードは腰のセイバーに手を伸ばし警戒。

ジェダイ・オーダーを去って6年となるオーシャは個人契約のメクネックになった経緯を語ります。「君は家族全員を失い、8歳で拾われてマスター・ソルが訓練を施したが、上手くいかなかった」とヨードは続けます。

タシ・ロワは「ウエダでジェダイが殺された。あなたに似た人物にね」と事情を説明。オーシャは昨夜もこの部屋にいたと弁明しますが、護送されるしかありません。

共和国の首都であるコルサントでは、マスター・ソルはパダワンになる前にヤングリングたちに教えを与えていました。そこに入ってきたのは同じくマスターのヴァーネストラ・ロウです。容疑者を捉えた…と。

この『スター・ウォーズ アコライト』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2024/07/19に更新されています。
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有害なジェダイボーイ

ここから『スター・ウォーズ アコライト』のネタバレありの感想本文です。

『スター・ウォーズ アコライト』(以下、『アコライト』)は初の本格的映像化となる時代を描きますが、「これまでのスター・ウォーズの常識を覆す!」というよりは、むしろ既知の作品性をより濃く煮詰めて味を強めたような作品で、言ってみればものすっごくファンメイドだったと思います。ショーランナーの”レスリー・ヘッドランド”は、インタビュー中にいきなりゲームの『エルデンリング』の話題に熱量たっぷり止まらなくなったり、相当なオタク気質があると見受けられますが、『アコライト』も「オタクが作りました!」って感じが全開でした。

既存作との明確な繋がりがほぼないと言いましたけど、確かにそうなんですが、でも作品性は繋がってくる。とくにプリクエル3部作との接続ですね。ルーク・スカイウォーカーを主役とする初期3部作は王道なヒーローものでしたが、プリクエル3部作は打って変わって後の悪役(ダースベイダー)となるアナキン・スカイウォーカーを主役とするヴィラン誕生譚。

そのプリクエル3部作ではジェダイ・オーダーが本格的に描かれましたが、政治腐敗を見過ごし、人材マネジメントがろくにできず、内部崩壊していくという、結構散々な”残念”な組織体質であることが露呈していました。

今回の『アコライト』はそのジェダイ・オーダーの組織体質の欠陥がより明確に、そして劣悪に映し出されます。今作の物語の発端はジェダイの不祥事です。その不祥事の隠蔽が事態を悪化させます。

ソル、インダーラ、トービン、ケルナッカという4人のジェダイがブレンドクという地で「魔女」のコミュニティに対して起こした「介入」が引き金です。

とくにキーパーソンとなるのがソルで、その言動が物議を醸します。ソルはいかにも聡明に見えますが、ブレンドクでの振る舞いは、いわゆる「メサイアコンプレックス」です。自分たちなら助けてあげられるという救世主としての過信。ことさらオーシャに対する執着は、それはもうグルーミングだと言われてもしかたないですし、幼い子どもにジェダイ観を教えることこそ崇高なのだという発想で運営されるジェダイ・オーダーは、私は転向療法団体みたいだと思いましたよ。

これまでジェダイ・オーダーのやっていることは「児童誘拐」と変わらないのでは?という批評の指摘はありましたが、植民地主義的な横暴がより際立つストーリーでした。

ソルは、有害なファンボーイならぬ有害なジェダイボーイだったな…。

もちろんソルだけでなく、ジェダイ・オーダー全体が倫理的に捻じ曲がっているのは随所で示されており、最終話でもヴァーネストラ・ロウはソル個人に責任をなすりつけ、組織保身で不祥事を片付けます。さらにその報告の場であの「魔女」を「フォース・カルト」と表現。少し前にジェダイ懐疑派の議員から「ジェダイ・オーダーこそカルトだ」と名指しされていたことを踏まえると、なんとも「お前が言うな」状態です。

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セクシーなヴィランと反逆

『アコライト』にてそんな人権無視の不正義極まりないジェダイ・オーダーに嫌気がさして反逆を仕掛けるのが、当初はカイミールと名乗っていた男。クレジットに従ってとりあえず「ザ・ストレンジャー」と呼ぶことにしましょうか。

これまでの『スター・ウォーズ』のヴィランはどっちかというと”不気味でおどろおどろしい”奴が大半でしたが、本作はセクシーなヴィランを打ち出してきましたね。カイロ・レンは野暮ったい感じだったけど、今回の”マニー・ジャシント”演じるザ・ストレンジャーは色気のフォースを使いこなしていた…。今作はヨードもそうなんですけど、セクシー男性の上半身半裸サービスシーンが定期的にある…Pride

これだけセクシーだと、ザ・ストレンジャーに最初はメイが付き従い、後に最後はオーシャが付いていくわけですけども、こっちはこっちで不適切な関係に見えやしないかと不安になりますが、ザ・ストレンジャーはわりと人付き合いが丁寧なので、あんまりその部分は気にならなかったかな。

終盤は真実を知ったオーシャによる反逆。あの何かと既存作では上司から部下へのパワハラ手段として乱用されてきたフォース・チョークが、支配者への反抗の第一歩として用いられる…『スター・ウォーズ』史の中で最もカタルシスのあるフォース・チョークでした。

ザ・ストレンジャーはオーシャという「アコライト(従者)」を手に入れ、シスの覚醒が成就しました。この2人が後の『スター・ウォーズ』史にどう接続するのかは今は謎。オーシャとメイの出自はアナキンと重なりますし、ザ・ストレンジャーとヴァーネストラ・ロウの因縁もあります。最後にチラっとでてきたヨーダはどう関わるのかもわかりません。順当に考えると、ジェダイ・オーダーとシスの対立が表面化するのでしょうけど、空白の100年はまだまだ果てしなく描けそうです。

シリーズが続くかどうかにせよ、レイを主役にした新作映画でジェダイ・オーダーの再建を描くらしいので、そのハードルが上がっていきますね。ジェダイ批評家たちを満足させるジェダイ・オーダーの姿はあるのかな?

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クィア表象の行方

オマケで『アコライト』のクィア表象についても語っておきます。

LGBTQに過剰敏感な「アンチWoke」な人たちの懸念に反して、本作『アコライト』はそんなにクィアな表象はありません。匂わせというよりも、ほぼ目視できるものはない…というレベルです。

あえて挙げるなら、ブレンドクの「魔女」のコミュニティを仕切るマザー・アニセヤマザー・コリルの関係はサフィックな感じも漂っていましたし、「規範権力に迫害される魔女」というコード自体がいかにもクィアですからね。なお、この魔女集団の中には、トランス女優の“アビゲイル・ソーン”も出演していました。

他には、元はひとつの生命体を示唆するオーシャとメイのアイデンティティは、演じる“アマンドラ・ステンバーグ”の性同一性もあってか、ノンバイナリーっぽい仕掛けに思えます。そう言えば、オーシャはバジルに三人称単数の「they」を使ってましたね(あれは性別がわからなかったのでそうしたのでしょうけど)。

ジェキを演じた“ダフネ・キーン”は「ジェキはオーシャに恋愛的好意があった」という個人的解釈を語っていましたけどThe Mary Sue、まあ、ジェキ、残酷に死ぬからなぁ…。あれだけジェキやヨードを殺めたザ・ストレンジャーとオーシャはどう折り合いつける気なのだろうか…。

『アコライト』で明確にクィアなのは、”レベッカ・ヘンダーソン”演じるヴァーネストラ・ロウです。ヴァーネストラ・ロウは『アコライト』で新登場ではなく、既に小説版で若かりし頃が描かれているのですが、アセクシュアル・アロマンティックのアイデンティティがあることが作り手によって明示され、それを示唆するセリフもありますThe Geeky Waffle。『アコライト』では一切それを示す要素もないですが…。そもそもミリアラン人なので長命で、『アコライト』時代は100歳越えの大ベテランに成長しています。

『アコライト』のシーズン2があるなら、もう少し明示的なクィア表象があるといいんですけど…。

『スター・ウォーズ アコライト』
シネマンドレイクの個人的評価
6.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)
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作品ポスター・画像 (C)Disney, Lucasfilm

以上、『スター・ウォーズ アコライト』の感想でした。

Star Wars: The Acolyte (2024) [Japanese Review] 『スター・ウォーズ アコライト』考察・評価レビュー
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