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ドラマ『マインドハンター』感想(ネタバレ)…デヴィッド・フィンチャーの悪趣味

マインドハンター

デヴィッド・フィンチャーの悪趣味…ドラマシリーズ『マインドハンター』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Mindhunter
製作国:アメリカ(2017年・2019年)
シーズン1:2017年にNetflixで配信
シーズン2:2019年にNetflixで配信
製作総指揮:デヴィッド・フィンチャー、シャーリーズ・セロン ほか
性暴力描写

マインドハンター

まいんどはんたー
マインドハンター

『マインドハンター』あらすじ

FBIの若き捜査官フォードは連続して犯罪を起こしていく人間に興味があった。そして、運命的にも行動分析課のベテラン捜査官テンチと組む機会を得る。刑務所に収監されているさまざまな凶悪犯罪者に話を聞きながら、現在進行形で発生している未解決事件を捜査しつつ、プロファイリングの手法を犯罪学として確立させていく。

『マインドハンター』感想(ネタバレなし)

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こんな犯罪“心理”ドラマは観たことがない

悲しいかな、日本でも毎日のように犯罪は各地で起こっていますが、連続殺人や大量殺人といった凶悪犯罪、はたまた児童行方不明など一際インパクトの強い事件が起こるたびに毎度付随して起こる現象があります。

それは「犯人当て」

テレビ・新聞・ネットメディア…それらの媒体で事件の情報を聞きかじった人たちは「このカメラの前で話しているコイツが怪しいよね」「きっとこんな性格の奴が起こしたんだろ」といった具合に実に好き勝手に“探偵ごっこ”に夢中になります。それが家庭内や友人同士のトークで終わればまだマシですが、挙句の果てに犯人特定運動にまで発展し、ネット上に個人情報を晒していくこともノリノリな人すらいます。最悪、全くの無関係の人間を犯人扱いしてしまい、逆にそれが名誉毀損などの犯罪になってしまうケースも…。

こうした現象はSNSの普及によってより苛烈さと悪ノリを増している気がしますが、おそらく人間本来が持つ“犯罪への恐怖感”“怖いものみたさな野次馬根性”といった相反する感情がごちゃ混ぜになって生じるものなのかもしれません。

しかし、冤罪は論外としても、犯人は誰か、ましてや「なぜ犯人は事件を起こしたのか」という動機や原因を突き止めるのは非常に難易度の高いことです。それこそプロフェッショナルなはずの警察も相当な苦労をしており、それでも答えがでないこともありえます。「異常者が凶悪な犯罪を起こすんだ」という主張があれば「じゃあ何をもって“異常”と呼ぶの?」となるし、「いや私利私欲が全ての犯罪の主因だ」という意見があれば「誰でも利益や欲を求める感情を持っているのでは?」となる…。犯罪者の心は闇の中。どこぞの“名探偵”のように「真実はひとつ!」なんて断言できないのです。

その犯罪という存在の“捉えどころのなさ”に対して、ありのままに生々しく向き合った犯罪ドラマシリーズが本作『マインドハンター』です。なお、同名の映画がありますが、関係ありません。

本作は、発生した犯罪事件をめぐるFBIや警察を主体にした物語なのですが、普通のサスペンスやミステリーとはかなり毛色が違います。「犯罪者プロファイリング」をベースとした“科学”を描く作品なのです。

原作は「Mindhunter: Inside the FBI’s Elite Serial Crime Unit」で、著者は「ジョン・ダグラス」「マーク・オルシェイカー」。この二人は元FBI行動科学課の捜査官であり、自分たちが「犯罪者プロファイリング」を確立させていった経験をもとに書いたノンフィクション。作中の主人公も「ジョン・ダグラス」と、あともうひとり、行動科学課初期の主要メンバーである「ロバート・K・レスラー」がモデルになっています。

「犯罪者プロファイリング」を主題にした作品というのはこれまでもあって、それこそ1991年の『羊たちの沈黙』なんかが有名。しかし、『マインドハンター』はそれらとは異なる明確な特徴があります。それは非常に“現実”に則していること。具体的な実在の事件や犯罪者がバンバン作中に登場するのです。

普通は関係者への配慮もあってか、実話ベースでも多少ぼやかしたりするのがセオリーですが、この『マインドハンター』は一切の手加減なしに本当にそっくりそのまま事件を描き切ります。しかも、その事件全てが目を覆いたくなるような猟奇的なものばかり。それを実名の犯罪者(もちろん役者の演技ですが)が喜々として語るというシーンも多々あり、唖然。加えて、白黒つけられない領域に踏み込むのも躊躇わず、観客の倫理観を揺さぶられます。

よくこんな作品を作れたな…と思うばかりですが、この人ならできるのです。そう、その名は“デヴィッド・フィンチャー”。彼と言えば監督作『セブン』(1995年)で猟奇的な殺人事件を描いたことでその手腕が高く評価され、そして『ゾディアック』(2007年)では実際に起きた連続殺人事件(ゾディアック事件)を精密に再現するなど、犯罪に対する異常なまでの執念がある映画人。映画ファンからの支持もアツい“デヴィッド・フィンチャー”監督ですが、2014年の『ゴーン・ガール』以降、映画を監督しておらず、寂しいなと思っていた方。彼、『マインドハンター』という新しいオモチャにハマっていたのです。

思えば“デヴィッド・フィンチャー”自身もきっと「犯罪者プロファイリング」が大好きなのでしょう。そう考えればこの『マインドハンター』なんて彼のためにあるようなものです。悪趣味性を全開にできます。事実、“デヴィッド・フィンチャー”は製作および複数のエピソードの監督もつとめ、ガッツリ関わっています。楽しいんだろうなぁ…。

主演は“ジョナサン・グロフ”。この人、『アナと雪の女王』でクリストフ役の声を担当しており、あまりの作品のギャップになんかおかしいです。また、その相棒役に“デヴィッド・フィンチャー”監督作の『ファイト・クラブ』でおなじみの“ホルト・マッキャラニー”も出演。ファンには嬉しい大抜擢。そして、『FRINGE / フリンジ』などドラマメインで活躍する“アナ・トーヴ”が、心理学者役でとてもかっこいい姿を見せてくれます。他にも名演を披露する役者多数揃い踏みです。

また日本人的には『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』でアカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した“辻一弘”が、『マインドハンター』でも一部の実在犯罪者キャラクターのメイクを担当しているので注目です。

一味も二味も違う、リアルな犯罪心理に迫るセンセーショナルなドラマシリーズ。2017年のシーズン1は全10話、2019年のシーズン2は全9話…かなりボリュームがありますが、Netflixでいつでも見られるので、1日1話のペースでもいいので鑑賞してみるといいのではないでしょうか。

オススメ度のチェック

ひとり ◎(犯罪ドラマ好きは必見)
友人 ◯(展開を語り合える)
恋人 ◯(話題性はじゅうぶん)
キッズ △(残酷な事件の連続です)
↓ここからネタバレが含まれます↓

『マインドハンター』感想(ネタバレあり)

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主人公は犯罪者オタク?

『マインドハンター』は多くの犯罪事件が立て続けに、しかもときに重複するようなかたちで進行し、あれこれと複雑に入り組んだ展開を見せます。一般的な犯罪ドラマのように「事件発生→捜査→急展開→解決」というベタな流れを踏襲しないこともあり、情報量が膨大なので頭を使います(たぶん全エピソードを一気に観た人は相当に脳内疲労が生じると思う…)。

でも、主人公側にあたるキャラクター勢は少数精鋭であり、明快な性格・職歴による役割分担があるので、とてもわかりやすいです。このへんは工夫がなされていますね。

メイン主人公となるのはFBI捜査官の「ホールデン・フォード」。シーズン1の第1話で、ペンシルベニア州ブラドックにて人質事件の交渉人として現場に向かい、冷静に犯人に語りかけるも、犯人は自らで銃でヘッドショット。その一件もあって、バージニア州クワンティコの本部で、新米FBIを相手に講師の仕事を任せられますが、「お前は間違っている」と追い詰めるのではなく犯罪者とコミュニケーションをとろう…というホールデンの“なんか良い親になるレッスン”みたいな理論に耳を傾ける人はあまりおらず、不完全燃焼。しかし、同じ職場の講師ピーターや、犯罪心理学教授レオ・ブキャナン、そして大学院で社会学を専行する女性デビーとの出会いを通じて、しだいに自分の考えを体系的に整理し始めるホールデン。その最中、出会った運命の人がFBI行動科学課のベテラン「ビル・テンチ」でした。

ホールデンは、科学者の卵みたいな存在で、若手らしく勢い重視で、未熟なところも多いですが、その無鉄砲さがときに突破口になっていきます。組織やキャリア、科学よりも、自分個人の犯罪者プロファイリングに対する情熱を先行させがち。それは情熱というラインを飛び越えて、やや狂信的とも言える犯罪者への好奇心すらも感じる一面もあります。「チャールズ・マンソンに会いたい…」と呟く彼の姿なんて、まるで憧れのアイドルに会いたいと熱望するオタクそのもの。犯罪者との面談では明らかに一線を越えた言動で、同僚はおろか犯罪者さえもドン引きさせる一幕も。

ホールデン自身、犯罪はしないが“犯罪的思考”に限りなく寄り添える人物ともいえ、これはこれで非常に興味深い心理性を持っているのですが、自分自身は分析できないのがまたね…(恋人のデビーに逆分析されるあたりが皮肉)。そんな犯罪者に近づきすぎるホールデンは、シーズン1のラストで自業自得的とも言えなくもない、手痛い最悪な体験をすることに…。

一方のビル・テンチはそのホールデンとは対極的。仕事経験も人生も先輩でありながら、現場主義的なビルはあまり科学を重視していません。FBIという組織の“頭の固さ”もよく熟知しており、それゆえに板挟みになりながら、ときに若い部下の暴走を止め、ときに上司の機嫌をとり、なかなかの苦労人。

そんなビルに衝撃的すぎる追い打ちをかける事件がシーズン2で勃発。近所で幼い子どもが殺され、十字架にかけられるというショッキングな事件が発生し、その現場の建物が妻ナタリーが管理する物件だったため動揺。しかし、これだけではありませんでした。ビル夫婦が育てている養子のブライアンが実は殺害時にそばで見ていて、十字架にかけようと提案したのはブライアンだったことが判明。罪にはならなかったものの、社会福祉士と精神科医の定期面談を受けることになります。ここで面白いのは、今まであんなに仕事では犯罪者を分析してきた彼が、この自分の子ひとり相手には何も心を理解できないということ。そして、逆に自分たちが分析される側になったせいで、ホールデンが進めるプロファイリングにも若干の抵抗感が生まれてしまうこと。

科学と親心、現場と組織、家庭と職場…あらゆる意味でどっちつかずとなったビルに待っていたもの。シーズン2のラストでは、一番に大切にしていたはずのものを一気に失い…。

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「女性」で「科学者」…だからこそ

そんな男二人のバディに仲間入りするのは、優秀な心理学者の「ウェンディ・カー」。彼女は場当たり的な犯罪者面談を改善すべくフォーマットに則ったデータシートを作成したり、指標を基に犯罪者を「秩序型」などにカテゴライズしたり、まさに科学の手本を導入してくれる存在。

一方、ウェンディ博士にも諸々の壁が邪魔をします。

ひとつは“科学”を理解してくれない人たち。ビル、所長、警察、検事など、科学的なプロファイリングの価値を全く理解してくれず、ホールデンとともにイライラ。

2つ目は“女性”を対等に扱ってくれない男たち。彼女の学歴は高く評価するものの、例えば新しい所長のテッド・ガンでさえも「君は優秀だ」とか言いつつ「データ分析だけしていればいい」と他の男性と等しく扱いません(こういう表面では評価している風に見せつつ、内心では女性差別丸出しな男はよくいる)。ウェンディはクワンティコに移ってきますが、オフィス内では個別部屋で仕事しており、それがまさにFBIという「官僚主義で男社会」な世界で生きる女性の孤独を体現するようです。

3つ目は“同性愛”をわかってもらえない社会そのもの。ウェンディはレズビアンで、クワンティコに移る前にもアナリースという恋人がいたのですが、FBIに引っ越してからは全然自分の真実を周りには言えないクローゼット状態。しかも、その同性愛がまたプロファイリングにも関わってくる犯罪者もあって、余計に複雑な気分に(自身が赴いた面談でレズビアンだとカミングアウトした風なパフォーマンスするあたりが切実)。ちなみにウェンディを演じた“アナ・トーヴ”は同性愛者ではないのですけど、ホールデンを演じた“ジョナサン・グロフ”はゲイなんですよね(あべこべでシュール)。

他にも科学者らしい葛藤も。シーズン1では、キャリアアップか科学的探究心か、どちらをとるかという進路選択に苦悩したり。データドリブンな彼女ですが、シーズン2では犯罪者聞き取りにも自ら出て、その頭の中の理論と予測困難な現場の空気感の違いに戸惑ったり。ケイという新しい恋人との、経済状況などの違いから生まれる価値観の違いにモヤモヤしたり。

リアルで“女性科学者”として社会で働いている人なら、『マインドハンター』のウェンディは“あ~、わかるわかる”と共感の嵐なのではないでしょうか。

そしてもうひとりのメンバー、忘れられがちなコイツ、「グレッグ・スミス」。人材不足を補うためにリクルートされてきたこの男ですが、ハッキリ言って空気。プロファイリングにノリノリの新しい所長にもメインメンバー扱いされておらず、パーティにも呼ばれない。犯罪者との面談でも手も足も口も出ず、良いところなし。彼は宗教的バックグラウンドがあるようで、信仰における倫理や道徳を重視します(だからテープ事件を起こす)。もしかしたら今後のシーズンでキーパーソンになるのかも。

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犯罪者のオンパレード

『マインドハンター』は魅力的な主人公勢がいるなら、影の主役たちもいます。それこそ犯罪者たちです。ざっくり解説とまではいかない、簡単な紹介をしましょう。なお、実在の犯罪者なのでその後の詳細を含めて色々と語れるのですが、それは作品の今後の展開に触れかねないので、とりあえず作中でわかる範囲の情報にとどめます(詳しく知りたい方はネット検索すればすぐにわかります)。

作中の犯罪者との面談のやりとりはほぼ全部実際のインタビューを基にしています。そこまで再現してしまう、本作が怖い…。

まずは何よりもコイツ、「エドモンド・ケンパー」。『マインドハンター』においても重要な犯罪者であり、ある意味、プロファイリングの確立の立役者のひとり。彼は1973年に第1級謀殺で有罪となった連続殺人犯。作中のとおり巨体とIQの高さが特徴です。とにかくおしゃべりで、自分の犯罪はもちろん、他の犯罪者に対する自己流分析を流暢に披露します。「犯罪者は根暗」という世間のイメージを覆す、陽気で明るいトークスキルのある奴です。ちなみにシーズン1の最終話結末でホールデンを襲うあの「今なら君を簡単に殺せる」ハグ事件は、本当にFBI捜査官が経験したことのようです。

シーズン1で他に登場するのは、連続殺人犯で屍体性愛者の「ジェリー・ブルードス」。靴フェティシズムであることが作中では議論されていました。また8人の殺害で刑事告発された「リチャード・スペック」。ホールデンがマンソン級の犯罪者だと興奮していましたが、「Birdman」のニックネームがあり、作中で小鳥を換気扇に投げ入れたのも実話だそうで…。

シーズン2になると行動科学課の拡充にともない、登場犯罪者の数も増えます。

ニューヨークを恐怖に陥れた銃撃殺人犯で「サムの息子」と名乗る「デヴィッド・バーコウィッツ」。ちなみに彼はスパイク・リー監督が『サマー・オブ・サム』という映画で題材にしています。

自称“7か国語話せる”という「ウィリアム・ピアース」。“他人種殺害をしない”という従来のセオリーに反する白人女性殺害の黒人「ウィリアム・H・ハンス」。殺意をなぜ仲間に向けたのか謎で“俺はホモじゃない”と主張する「エルマー・ウェイン・ヘンリー」。他にも何人か。

そしてついにあのホールデン念願の「チャールズ・マンソン」にもご対面。加えてマンソン・ファミリーの一員だった「テックス・ワトソン」とも面会。同じコミュニティのはずなのに互いに言っていることがバラバラなのが興味深いです。

シーズン2の後半で大舞台となるのは1979年から1981年にかけてアトランタ州で起きた子どもを主とした28人以上の大量失踪殺人事件。最終的に逮捕された「ウェイン・ウィリアムズ」は作中のとおり、2人の殺害容疑で実刑を受けただけ。2019年現在でもこの事件は再捜査の動きもありますが、いろいろ厳しいようです。

あと忘れてはならないのが、エピソード冒頭などで少し登場する「謎のメガネで口髭の男」。カンザス州を主に動き回り、女装癖があり、いかにも怪しいこの男はなんなのか。彼は名前こそ名言されませんが、その正体は「BTK」と名乗って人を殺しまくり地元を恐怖のどん底に叩き落した「デニス・レイダー」です。

『マインドハンター』は常にホールデンたち目線で物語が進行し、回想で事件時の様子が映像化されることはなく、事件を想像できるのは生々しい被害写真と証拠品や証言のみ。観客にだけわかる情報は与えられません。しかし、この「デニス・レイダー」だけは例外で、違うアプローチをしてきます。犯罪者の視点で彼の日常を描く…非常に不安にさせる演出。シーズン2のラスト、「ナンシー・フォックス」と「シャーリー・ヴィアン」の被害者との関係を示す映像が流れることでついに正体に確信がもたらされます。

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科学を批判することの重要性

『マインドハンター』は私も鑑賞前はてっきり「犯罪心理学、万歳!」「プロファイリングで華麗に解決!」という感じのお話なのかなと浅はかに思っていたのですが、本当に軽率だった…。

シーズン1の前半はあの凶悪犯罪者をプロファイリングなんて正気の沙汰じゃない!ってところを散々見せられ、いざビバリーという女性の惨殺事件に介入して実践投入することになるも、犯人は特定できたが、イマイチその心理は釈然とせず…。このエピソードでプロファイリングは犯人特定の万能道具ではないことを明示するんですね。続いてシ

ーズン1の後半ではロジャーという校長が子どもをくすぐるのが好きで奇妙だから“犯罪性に発展する疑いがあるか”調べてほしいと依頼されるホールデン。ここではいわゆる犯罪者予備軍的な、犯罪防止の観点にプロファイリングは使えるのか、そしてそれは犯罪を起こしてもいない人の人生をあまりにも左右してしまう怖さがあることをまざまざと見せつける…。非常に歯切れの悪い結末をあえて提示します。

シーズン2はもっと踏み込みます。プロファイリングに使用されるデータとして“フェティシズム”“同性愛”、そして“人種”が抽出されるわけですが、それは差別や偏見を誘発しないのか。いや、そもそもプロファイリングと差別的決めつけの違いは何なのか。アトランタの事件と向き合う中で、人種に対して興味もなかったホールデンは「犯人は黒人」と分析。ホールデン本人は自信たっぷり。けれども当然の自明としてKKK(白人)が有力な犯人候補と考える地元警察や地元民と対立。結局、プロファイリングと差別的決めつけの違いに明確な線引きをできずに虚しく捜査は終了宣言を迎え…。遺族の言葉が突き刺さります。

他にもブライアンの一件から、分析される側の苦悩も見えてきますし…。

なんでしょう、この『マインドハンター』、観客はプロファイリングに対してどんどん理想を抱けなくなっていってもおかしくないのですが、ここまで題材に対して自己批判できるのも凄いです。

でも、これは私の持論ですが、科学というのは便利で真実を把握するためにも大切ですが、ときに力を持ち過ぎれば裏目に出て甚大な被害を与えるものでもあります。「科学の推進」と「科学への批判」…これらはコインの表裏のように併存すべきであり、その点、この『マインドハンター』の姿勢は素晴らしいと思います。

犯罪科学に勝利宣言などない…科学とは永遠に闇の中を探求し続けることにある。そんな根本的な真理を啓示するような、業の深いドラマシリーズです。

『マインドハンター』
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer 97% Audience 95%
S2: Tomatometer 98% Audience 95%
IMDb
8.6 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 8/10 ★★★★★★★★

作品ポスター・画像 (C)Denver and Delilah Productions, Netflix

以上、『マインドハンター』の感想でした。

Mindhunter (2017) [Japanese Review] 『マインドハンター』考察・評価レビュー