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『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』感想(ネタバレ)…このカメは飼えません!

ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!

このカメは飼えません!…映画『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Teenage Mutant Ninja Turtles: Mutant Mayhem
製作国:アメリカ(2023年)
日本公開日:2023年9月22日
監督:ジェフ・ロウ

ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!

みゅーたんとたーとるず みゅーたんとぱにっく
ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!

『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』あらすじ

不思議な液体「ミュータンジェン」に触れたことで高い知能と運動能力を獲得した4匹のカメは、ミケランジェロ、ドナテロ、ラファエロ、レオナルドと名乗り、ニューヨークの地下で密かに暮らしていた。時々地上に現れては人間の生活に憧れるが、こんな見た目では気味悪がられるのはわかっていた。しかし、謎のミュータント生物の集団が街を脅かしていると知り、このタートルズは平和のために立ち上がることに決める。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』の感想です。

『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』感想(ネタバレなし)

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カメの飼育ではなくてこれを観て

日本ではペットになるカメと言えば「ミドリガメ(アカミミガメ)」でした。しかし、これはもともと日本在来のカメではなく、アメリカ東南部からメキシコ原産で、遺棄されたことで日本の自然に棲みついて増殖しています。日本在来のカメにとっては生息地や餌資源を奪われてしまい、生存を脅かすような事態です。

そこで2023年6月からこの「ミドリガメ(アカミミガメ)」は「条件付特定外来生物」に指定され、「放出」「販売・頒布・購入」が禁止されるようになりました。現時点では「一般家庭等での飼育」は規制されていませんが、飼えなくなったからといって自然に逃がすことは絶対にしてはいけません環境省

この「ミドリガメ(アカミミガメ)」の遺棄は日本のみならず世界中で問題化してきた歴史があるのですが、それを助長してしまった”あるキャラクター”がいました。

それが「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ(TMNT)」です。

始まりは、1984年にミラージュ・スタジオから出版されたアメコミ。ニューヨークの下水道で暮らしていたものの特殊な液体でミュータント化して歩き回ったりお喋りできるようになったカメたちが主人公。その愉快な愛嬌は子どもたちの心を掴みます。80年代後半から90年代にかけてアニメ化&実写化されて大人気となりました。

このTMNT現象は熱狂的なカメ飼育ブームを生み出し、当時はわずか1.69ドルで子亀を購入でき、輸出量も倍増Inverse。当然遺棄されるカメも増大しました。

別に「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」が全て悪いわけではなく、カメの飼育責任を全うしない人間のせいなのですが、作品の過熱する人気が自然破壊に繋がってしまう悲しい過去があったのです。

それはさておき「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」の人気は今も衰えていません。

2023年の最新作アニメーション映画『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』もアメリカでは大ヒットです。

「TMNT」の映像化と言えば、『ミュータント・ニンジャ・タートルズ 影』(2016年)のような実写映画はもちろん、2018年から2020年には『Rise of the Teenage Mutant Ninja Turtles』といったアニメシリーズもありました。

今回の『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』はそれらの続編ではなく、新たな仕切り直しの出発点であり、初の全編3DCGアニメーションです

この3DCGですが、表現的にはコミックの風味を最大限にビジュアル化しており、『スパイダーバース』の成功を発端にして本格化したアメコミ・アニメーションの仲間入りです。もうこれが完全に主流なんでしょうね。

監督は『怪奇ゾーン グラビティフォールズ』のエピソード・ライターを務め、2021年に『ミッチェル家とマシンの反乱』を手がけた“ジェフ・ロウ”

映画自体は“セス・ローゲン”がプロデュースしているのですが、お下品さはしっかり抑えられており、子ども向けに作り込まれています。ただ、大人も笑えるギャグもいくつかあり、そこは“セス・ローゲン”っぽいですけどね。

『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』は「TMNT」初心者にも太鼓判を押せる一作です。ぜひカメたちに挨拶してあげてください。

あ、でもミドリガメはもう飼育しようと思わないでね…。

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『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』を観る前のQ&A

✔『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』の見どころ
★コミックっぽさたっぷりの映像表現。
✔『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』の欠点
☆ストーリー自体は定番で新しさは薄い。

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:初心者でも
友人 3.5:気楽に鑑賞
恋人 3.5:作品好きなら
キッズ 3.5:子どもも安心
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):今日もピザ片手に

「TCRI」というテクノロジー組織の武装部隊がある場所に向かっていました。これは主任のシンシア・ユートロムの直々の命令であり、重大な任務です。

ターゲットはバクスター・ストックマンという科学者。この人物はミュータントを生み出す物質「ミュータンジェン」を独自に開発しており、今では地下に潜伏し、単独で実験を続けていました。

部隊が地下に突入し、バクスターを包囲するも、ミュータント化したハエが部隊を倒していきます。部隊のリーダーの顔に飛びつき、怒ったリーダーはがむしゃらに発砲。結果、爆発が起き、博士は死亡してしまいます。そして「ミュータンジェン」の瓶がひとつ転げ落ちて、さらに地下へ…。

15年後、ミュータント化した4人のカメがニューヨークの夜の街を影に隠れて駆け抜けていました。

レオナルドは青いアイマスクで、リーダー気質。真面目で、2本の刀で戦います。

ラファエロは赤いアイマスクで、感情的ですが仲間想い。サイを駆使する技が武器です。

ミケランジェロはオレンジのアイマスクで、陽気な性格。ヌンチャクを振り回します。

ドナテロは紫のアイマスクで、頭脳派。棒で戦いますが、分析も得意です。

4人のタートルズはコンビニやコンテナなどで食糧や雑貨を盗み、走行中のトラックからでも楽勝です。そして帰りには野外映画上映を遠くから見つめます。『フェリスはある朝突然に』が映されつつ、人間たちは友達とふざけ合ったり、恋人と寄り添ったり、自由気ままでした。そんなことをタートルズはできません。羨ましそうに去り、家に帰ります。家は下水道の奥深く…。

そこに待っていたのは、マスター・スプリンターというネズミのミュータント。タートルズにとっては師匠であり、父親です。スプリンターは帰りが遅いタートルズを心配し、人間の世界は酷いところだといつものように説教して、昔を語ります。

スプリンターがまだ普通のネズミだった頃。ゴミ漁りをし、アライグマ、犬、人間に怯えながらの生活でした。そのとき、4匹の赤ん坊のカメを地下で見つけます。怪しげな緑の液体に覆われており、スプリンターもそれに触れると、体は変異。二足歩行できるようになり、知能も発達しました。

こうしてスプリンターは地下でカメを子育てすることにします。思い切ってニューヨークの夜の街を探索してみたこともありましたが、人間はその容姿を見た途端、気持ち悪いと敵意を向けてきました。

これでは身の危険は避けられない。そこでスプリンターは外部との接触を禁止し、カメたちに空手やカンフーを教え込むことにしたのです。

年月は経過し、タートルズはこの生活に不満を抱えていました。誰にも見られない屋上で手裏剣を投げて遊んでいると、スクーターに乗っていたエイプリルのヘルメットに命中。口論になっているとスクーターが盗まれてしまいます。そこで先回りしてチンピラを倒し、スクーターを取り返してあげました。

思い切ってエイプリルの前に姿を現すと、最初はコスチュームだと思ったようですが、タートルズの存在をなんとか理解してくれます。エイプリルは高校生でジャーナリストを目指しているようです。

そこでタートルズは思いつきます。最近、ニュースでも話題のスーパーフライとかいう悪党を捕まえたらニューヨークで愛され、学校にも通えるのではないか…と。

こうなったら実行あるのみです。これは上手くいくのか…。

この『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2024/02/04に更新されています。
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等身大の10代の青春ドラマ

ここから『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』のネタバレありの感想本文です。

これまで何度も映像化されてきたこのフランチャイズ。今さら新しさをだそうとしても難しいです。けれども本作『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』には最大にして最高の変更点があります。それは今までありそうでなかったポイントでした。

つまり、ティーンエイジャーの青春ドラマにしているということです。

「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」っていう作品名なのに「ティーンエイジ」の部分をあまり重視してこなかったのもなんだか変ですが、今作はそこをピックアップ。

そのための大きな試みとして、あのレオナルド、ラファエロ、ミケランジェロ、ドナテロの4人のタートルズの声を、実際に10代の声優にあててもらっています。やっぱりどうしても有名俳優に声を担当してもらって、作品を宣伝しやすくしたくなるものですが、今作はあえてそれをしないで「10代の等身大」を最優先にする。この姿勢が抜群に効果を発揮しましたね。

作中ではタートルズがわちゃわちゃとくだらない会話をしながら、ふざけあっている姿が本当に10代のそのまんまです。収録も4人揃ってアドリブありでやったそうなので、空気感が直に作品で表現されています。

そしてその4人のタートルズが「学校に行って10代らしいことをしてみたい」と思い描く。理想の自分と現実の自分の間で葛藤するという、この10代ヒーロー的なテーマは近年は“トム・ホランド”版『スパイダーマン』でも親しみたっぷりに描かれましたが、『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』もそのスタンダードに素直に乗っかっていました。

「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」自体がもともとオタクっぽいノリの作品でしたが、本作はわりと範囲の広い万人向けに少しばかり修正されており、これも結果的にこのフランチャイズの新しいビギナー映画としての完成度を高めたのではないかなと思います。

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これが見たかった、ミュータント軍団

もちろん映像表現も親しみやすさの底上げに役割を果たしました。実写だとどんなに頑張ってもリアルにあんなミュータントなカメを描かれると「異質っぽさ」が際立ってしまうのですが、『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』のコミック調のキャラクターデザインは本当に絶妙なバランスで良かったです。

そしてここは本作がアニメだからこその長所が炸裂したかたちだと思いますが、ミュータント生物の多彩さが印象的でしたね。

イノシシのビーパッブ(声は“セス・ローゲン”)とサイのロックステディ(声は“ジョン・シナ”)はこれまでも映像で見ましたけど、マンタのレイ・フィレット、ワニのレザーヘッド、ヤモリのモンド・ゲッコー、コウモリのウィングナット、カエルのジンギス・フロッグ、害虫のスカムバグなど、めちゃくちゃわんさかでてくるじゃないですか。

そう言えば、スプリンターの声は今回はついに“ジャッキー・チェン”で、そのせいかアクションに気合いが入っていた気がする…。

実写だったらVFXの物量的にちょっと無理な顔触れなのですが、アニメならOKということで、このミュータント軍団が揃っているだけでもう楽しいという反則技です。

このミュータントたちが存在否定されずに街で共存できるというオチがまた良いじゃないですか。

今作のヴィランであるスーパーフライ(声は“アイスキューブ”)の巨大化にともなうグロテスクすぎる見た目の過剰さも、非常にエンターテインメント盛り盛りで最高ですけど、それに立ち向かうミュータントと人間の協力プレイが熱いです。

そしてこれは「人種のるつぼ」を象徴するニューヨークらしい光景でもあって、現代の子どもたちにコミュニティとはこういう多様性を受け止めてこそ強くなるんだと教えてくれます。ものすっごくシンプルなメッセージですけど、「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」が描く題材としてはまずはこうでなくっちゃねという王道を素直に貫いていました。

これだけストレートなメッセージがあるんですから、さすがに「エイプリルが黒人なのはおかしい」とかほざくような大人はいないよね…(カメでも子どもでもわかるのですから、大人になりましょう。人間の皆さん)。

『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』はアメリカ国内では『バービー』と『オッペンハイマー』の激戦の時期に公開されて大変だったと思いますが、そのわりにはかなりヒットしたので続編は作られるのではないかな。2作目だけでなく、3作目とどんどん発展しやすい土台はできたでしょう。

エンドクレジットでチラ見せしたシュレッダーを含めて、あの「TMNT」の世界が拡大していくのであればワクワクです。甲羅にこもっている場合じゃありません。

『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 97% Audience 90%
IMDb
7.4 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
7.0

作品ポスター・画像 (C)2023 PARAMOUNT PICTURES.TEENAGE MUTANT NINJA TURTLES IS A TRADEMARK OF VIACOM INTERNATIONAL INC. ミュータントタートルズ ミュータントパニック

以上、『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』の感想でした。

Teenage Mutant Ninja Turtles: Mutant Mayhem (2023) [Japanese Review] 『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』考察・評価レビュー