下品な剣が初期装備です…アニメシリーズ『ヴォクス・マキナの伝説』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2022年~)
シーズン1:2022年にAmazonで配信
シーズン2:2023年にAmazonで配信
原案:ブランドン・アウマン
ゴア描写 性描写 恋愛描写
ヴォクス・マキナの伝説
ぼくすまきなのでんせつ
『ヴォクス・マキナの伝説』あらすじ
『ヴォクス・マキナの伝説』感想(ネタバレなし)
声優たちの本領発揮
日本でも声優の人たちは今や多方面で仕事をしていますが、海外でもユニークな活動をしている声優たちがいます。
一例を挙げるなら、『Critical Role』というコンテンツがあります。これはプロの声優の人たちがテーブルトークRPGの代名詞で最近も実写映画化された「ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)」をプレイしている様子をウェブシリーズ化したものです。
ゲーム実況みたいなものに思えますが、プレイしているのが「ダンジョンズ&ドラゴンズ」なので自由度高くキャラクターに没入できます。
それでいて何よりもプレイヤーは声優です。つまり、本気でその演技力を発揮しながら、ときに和気あいあいとキャラクターになりきってストーリーを進行していくことになります。
その半分ゲーム実況、半分本気演技…みたいなバランス感覚が面白く、視聴者との間にパラソーシャルな相互作用も生まれやすいので、瞬く間に知る人ぞ知る人気のシリーズとなっていったのがこの「Critical Role」でした。
関わっている主要声優陣は、アニメ『進撃の巨人』でリヴァイ役を務める“マシュー・マーサー”、ゲーム『The Last of Us』のエリー役でおなじみの“アシュリー・ジョンソン”、アニメ『鋼の錬金術師』のロイ・マスタング役の“トラビス・ウィリンガム”、アニメ『フルーツバスケット』の本田透役の“ローラ・ベイリー”、アニメ『NARUTO』の我愛羅役の“リアム・オブライエン”、アニメ『ONE PIECE』のバジル・ホーキンス役の“タリアセン・ジャッフェ”、ゲーム『英雄伝説 閃の軌跡』のラウラ・S・アルゼイド役の“マリーシャ・レイ”、アニメ『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ』のドナテロ役の“サム・リーゲル”。
これら声優陣が「Critical Role Productions」を設立し、今では主体的にこのシリーズを運営しています。
そして新展開が始まりました。
それが本作『ヴォクス・マキナの伝説』です。
本作は「Critical Role」の最初のキャンペーンをアニメシリーズ化したもので、「Kickstarter」で製作費を募って見事に実現しました。
もちろんアニメにするので多少のアレンジは必要ですが、「Critical Role」の声優陣は続投しているので雰囲気は同じ。トリッキーな企画が一周回って王道のアニメシリーズに舞い戻って来た感じですかね。
ちなみにタイトルの「ヴォクス(vox)」はラテン語で「声」を意味し、これは声優が主体となって創作している作品であることに由来します。
そんな背景があるので、『ヴォクス・マキナの伝説』はもろに「ダンジョンズ&ドラゴンズ」スタイルです。ファンタジーの世界で、さまざまな種族のキャラたちが、チームも組んで試練となる運命に挑む…そんな物語。
ただ、この『ヴォクス・マキナの伝説』はアダルト・アニメーションであり、日本ではあまりない立ち位置ですが、完全に大人向けに振り切っています。人体切断などゴア描写はもちろん、直球の性描写もあります。というか全体的に下品なセンスもところどころ目立ちます。
一方、軽いノリに見えつつ、実際の物語はかなり壮絶な苦境に立たされ、「これはクリアできるのか?」という緊迫感があるのも魅力のひとつ。
『ヴォクス・マキナの伝説』は「Amazonプライムビデオ」で独占配信中で、シーズン1・シーズン2ともに全12話。1話あたり約25~30分なので見やすいです。
「ダンジョンズ&ドラゴンズ」や「Critical Role」を知らなくても大丈夫。でも参加できるのは大人だけです。
『ヴォクス・マキナの伝説』を観る前のQ&A
オススメ度のチェック
ひとり | :海外アニメもぜひ |
友人 | :オススメし合って |
恋人 | :雰囲気が好きなら |
キッズ | :大人向けです |
『ヴォクス・マキナの伝説』予告動画
『ヴォクス・マキナの伝説』感想(ネタバレあり)
あらすじ(序盤):強敵エンカウント率は高め
遥か昔、タル・ドレイという美しい王国がありました。かつて神々の戦いが行われた場所であり、今も魔法と神秘が受け継がれている地でもあります。その平和を終焉させる邪悪な者が現れ、勇敢な英雄が集い、その悪に立ち向かいました。
…でも全員グチャグチャに全滅。
エモンのウリエル国王は敵の正体がわからない以上、軍は送れないので傭兵を送り出す作戦を続行すると決めます。最強の傭兵団がどこかにいるはずと…。
そんなことも知らず、エモンの酒場ではヴォクス・マキナという傭兵団が飲んでいました。ヴェクス、ヴァクス、グロッグ、パーシー、ケイレス、パイク、スキャンラン、そして熊のトリンケット。顔触れはいつもこうです。
周囲からは仕事をひとつもとれない負け犬集団だとバカにされ、店内で荒っぽく乱闘に発展。結局、マスターに追い出され、エモンの酒場からはすべて出禁状態に。
借金だらけなので仕事が要ります。そこでスキャンランは掲示板で王国からの依頼の張り紙を見つけてきて、これがいいと乗り込むことにします。
城へ足を踏み入れると、困惑する王とクリーグ将軍を始めとする評議会が真剣に話し合っていました。ヴォクス・マキナの一団を見ても、全く興味が惹かれない様子。
それでも王の気分で、とりあえず依頼してもらえることになります。
そのときヴェクスは謁見室でフィンス卿周辺にただならぬ違和感を感じていました。
評議会メンバーのひとりアルーラに飛行艇で送ってもらい、襲撃地に近い村へ。村人によれば翼のある何かを見たらしいです。
森で人間のような足跡を見つけつつ、ついに遭遇したのは巨大なドラゴン。思わぬ強敵に驚きつつ、流れで戦闘になりますが、あまりに圧倒的で歯が立ちません。岩の下敷きになるも、ケイレスの植物の防御で助かりました。
ヴォクス・マキナの一同は契約を破棄するべきか議論します。自分たちにはとても敵いそうにありません。
しかし、ヴェクスは謁見時の違和感を口にし、評議会の中にもドラゴンと接触した誰かがいるかもと懸念を伝え、これにはもっと裏があると勘繰ります。
一旦帰ると近くの村はドラゴンのせいで全滅しており、残骸から生き残りの子を見つけるも、治癒ができるパイクは回復の力が戻っていないので死んでしまいます。
この罪のない者の死を前にして、ヴォクス・マキナの一同はドラゴンを倒すと決心。
エモンに帰還し、体制を立て直します。なじみのギルモアの店に行くもカネがないのでとくな武器も防具も買えません。
ところが怪しい行動をとるフィンス卿を発見し、追跡。ある屋敷に入っていき、ヴォクス・マキナの一同はフィンス卿を問い詰めます。しかし、そのフィンスは背後からクリーグに殺されてしまい、加えてクリーグはあのドラゴンに変身。こいつが黒幕でした。
ヴォクス・マキナはこのいきなりの大ボス相手にどう戦いを挑むのか…。
シーズン1:復讐の眼鏡に反省を
ここから『ヴォクス・マキナの伝説』のネタバレありの感想本文です。
『ヴォクス・マキナの伝説』は第1話からヴォクス・マキナの面々がズラっと登場して、賑やかさMAXですが、みんな個性的なので、覚えるのにはそんな苦労はしません。
ヴェクスは弓使いのハーフエルフで、双子の兄としてヴァクスがいます(この2人の名前が一番混乱するかも)。双子の母はドラゴンに殺されており、ヴェクスはどうやらドラゴンが接近すると感知できる様子。ヴェクスはこの一団の中ではかなり常識的で冷静。ちょっと他が不安定すぎるんだけども…。ヴェクスのコンパニオンアニマルがクマのトリンケットです。
ヴァクスはナイフ使いのハーフエルフで、気さくではありますが、対抗心は燃やすタイプのようです。ヴェクスを常に一番に考えており、この双子は離れ離れになってしまうのを極度に嫌がります。
ケイレスは風のアシャリという種族で、今はアーメンテという試練をこなす道中にあるらしく、しかしそれをクリアできていないことがわかります。植物と話せたり、元素を操る能力が使えますが、かなり自信の無い性格で、何かと土壇場で緊張して実力を発揮できません。
スキャンランはノームの吟遊詩人。初登場時からわかるように、淫乱で女でも男でもそれ以外でも誰でも体を交えたいようで、娼館が大好き。自称イケメンですが、モテているのかな? リュートを使って音楽を奏で、また巨大な手足の実体化で戦うこともできるなど、案外と器用です。なお、原作では既存の楽曲を卑猥ソングに替え歌遊びしているらしいのですが、さすがに本作ではオリジナル曲になってましたね。
パイクはノームの聖職者。エヴァーライトという女神を信仰する宗教に属しており、聖なる力で傷を癒したり、聖騎士として戦ったりできます。しかし、序盤は信仰に自信喪失しており、あまり上手くいっていません。この一団の中では一番良識に従おうとする人柄です。
グロッグはゴリアテのバーバリアンで、パイクと一緒にずっと過ごしてきたので、かなりこの2人は仲がいいです。なかなかにアホっぽい言動が顕著ですが、パワープレイで事態を突破することに関しては信頼できます。
そんな中、シーズン1はほぼこのキャラクターのバックグラウンドを描いていました。
パーシーです。彼は都市国家ホワイトストーンを統治するデ・ロロ家の人間でしたが、ブライアウッドのデライラとサイラスに家族を殺され、故郷を支配されてしまいます。そして作中では復讐に憑りつかれ、ホワイトストーンに乗り込んでからは、我を忘れて暴走気味に…。
シーズン1の多くはパーシー回で(裏でパイクが聖職者の能力を復活させるイベントも並行)、だいぶやりたい放題だったパーシーでしたけど、これで成長したのかな…。
シーズン2:口以外にも穴はある
シーズン1はパーシー回で染まっていましたが、『ヴォクス・マキナの伝説』のシーズン2はもっといろいろなキャラクターに焦点があたり、楽しさも倍増です。
ヴェクスは一度死を経験するも、フェンスラスの弓と空飛ぶ箒で機動力と瞬殺力がアップ。ヴァクスはデスウォーカーを装着して死の女神(カラスの女王)によって生と死を見守る務めを自覚。
ケイレスは火山の一件で火を習得し、かなり強さが上がりました。グロッグもアースブレイカーのグルーンから強さを教わり、クレイヴン・エッジという呪われた剣を捨てて、叔父ケヴダクを打ち倒して、タイタンストーン・ナックルでさらにパワー激アップ。
スキャンランはケイリーという娘の存在を知りつつ、ミスカーヴァーの剣を手にするにふさわしい成長を遂げた…のか? あの感じだと子どもがもっといっぱいいてもおかしくないけど…。
これだけ強くなってもまだ全然有利に思えないからこの作品は怖いです。立ちはだかる敵が強すぎる…。
シーズン2では、なんとドラゴンも一団を組み、クロマ・コンクラーベと名乗ります。リーダーはパワハラ体質の灰の王ソーダク。苦戦のすえ毒龍アンブラシルは倒しましたが、まだまだドラゴンはいて、ヴァルガルの他にも最後は卵が映って…。
スフィンクス(守護神)のオシーサから「ヴェスティッジ(痕跡)」で戦えと言われましたが、そんな単純な装備見直しで攻略できるのか…。
ホワイトストーンでヤネンに化けていたドラゴンのライシャンからソーダクの目的を聞かされるなど、まだまだ裏がありそうで、これからも世界観は広がっていってくれるでしょう。
結構放置されている謎やキャラもありますよね。閉鎖的な外交政策をとるハイベアラーやエルフの街のシンゴーンなど他地域はどうこの「vsドラゴン」に関与するのかとか。シーズン1でホワイトストーンから逃げ出したリプリーはどうなっているのかとか(またパーシーは復讐の眼鏡になるの?)。
そんな『ヴォクス・マキナの伝説』ですが、メインストーリーとは別に特徴的なのが、かなりクィアなキャラクターが多いこと。ヴォクス・マキナの面々も、普通にパンセクシュアルやバイセクシュアルだったりするし(それ以外だとゲイのギルモアや、評議会のアルーラとキーマもカップルだったり)、基本的にそういうマルチな性的指向を基本にしてくれているので、クィアな面で安心感がありますね。
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer 100% Audience 94%
S2: Tomatometer 100% Audience 97%
IMDb
8.4 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
関連作品紹介
海外のアダルト・アニメーション作品の感想記事です。
・『スタートレック ローワー・デッキ』
・『インビンシブル 無敵のヒーロー』
作品ポスター・画像 (C)Amazon ヴォクスマキナの伝説
以上、『ヴォクス・マキナの伝説』の感想でした。
The Legend of Vox Machina (2022) [Japanese Review] 『ヴォクス・マキナの伝説』考察・評価レビュー