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子どもに見せたい「海外のクィア・アニメーション作品」を紹介【LGBTQ+】

LGBTQアニメーション

日本でも日に日に「LGBTQ+」に象徴されるセクシュアル・マイノリティの認知は広まっています(差別も本当に根強いですが)。

そんな中、日夜育児で忙殺される親たちにはこんな悩みも持ち上がるようになります。

「子どもが多様性の意識を育むためにはどんなことをすればいいのかな?」

「うちの子は性的少数者なのかもしれない…。そういうとき、どうしよう?」

確かに子どもの周りにはまだまだ偏見を前提にした品々が無数にあり、知らず知らずのうちに差別意識を助長していたり、心を傷つけたりしていることがあります。子どもに影響を与える以上、触れさせるものは慎重になるのは当然の親心。

そこで今回は子どもも大好きなアニメを題材にプレゼンテーションをしようと思います。題して「子どもに見せたい海外のクィア・アニメーション作品」です。クィア、つまりLGBTQを扱った海外の作品をピックアップ。日本では子ども向けのアニメがLGBTQを取り扱う(インクルージョン)することはまだまだ滅多にないのですが、海外ではチラホラと登場しています。この紹介記事が参考になれば幸いです。

ここで紹介する子ども向けアニメというのは、キッズ(主に幼稚園~小学校低学年程度)に見せても“理解”という意味で問題ない作品のことです。レーティング的に大人向けの作品は取り扱っていません。当然、子どもによって反応には個人差があります(気に入らない子もいるでしょう)。また、それ以上の年齢の子やティーンが見ても全然OKですし、大人が楽しんでも何も変ではありません。
どのセクシュアル・マイノリティを主に扱っているのかをピックアップしていますが、どの性的指向・ジェンダー・アイデンティティ(性自認・性同一性)か明確に作中で言及しているとは限りません。また、全てをピックアップしてもいません(主なものだけです)。場合によっては解釈の余地があるものもあります。ここでの紹介はあくまで便宜的なカテゴライズだと思ってください。

ムーンガール&デビル・ダイナソー

ゲイ

【2023年~】アメコミのマーベルのキャラクター「ムーンガール」を主題にしたキッズ向けのアニメシリーズです。13歳のアフリカ系の少女がその類まれなる才能を活かしながら、恐竜を相棒にいろいろな困難に立ち向かいます。人種のレプリゼンテーションが何よりも素晴らしいですが、主人公の友人のひとりについて、両親がゲイ・カップルであったり、当初からクィアに親和的です。

どこで観れる?

日本では「ディズニー・チャンネル」で観られます。

全力!プラウドファミリー

ゲイ

【2022年~】典型的なファミリーコメディのアニメシリーズですが、アフリカ系の家族を主体にしているのが最大の個性です。主人公の友人のひとりについて、両親がゲイ・カップルとなっており、同性愛差別を乗り越えながらコミュニティで暮らしていく姿が描かれます。人種の多様性に触れていくうえでも大切な物語をたくさん見せてくれます。

どこで観れる?

日本では「Disney+」で観られます。

デッド・エンド:ようこそ!オカルト遊園地へ

ゲイ バイセクシュアル トランスジェンダー

【2022年】テーマパークを舞台に奇想天外な体験をしていく子どもたちを描くファンタジーのアニメシリーズです。ホラーっぽいですが、そんなに怖くはありません。主人公のひとりはトランスジェンダーのゲイであり、もうひとりの主人公は自閉症スペクトラムのバイセクシュアルです。自分のアイデンティティと向き合い、家族と折り合いをつけていく姿がしっかり描かれます。

どこで観れる?

日本では「Netflix」で観られます。

ぼくらベビーベアーズ

ノンバイナリー

【2022年~】『ぼくらベアベアーズ』のスピンオフとなるアニメシリーズです。ベビーベアが魔法の箱に乗ってカラフルな世界を旅しながら、自分の住み家を探します。一部のエピソードでは、「they」の代名詞に関する言及があるなど、ジェンダー・アイデンティティを意識した要素があります(ただし日本語訳では少しわかりにくいですが)。

どこで観れる?

日本では「カートゥーンネットワーク」で観られます。

ゴースト&モリー

クィア

【2021年~】人間の女の子モリーと不思議なゴーストとの奇妙な共同生活を描くディズニーのアニメシリーズです。作中で登場するインフルエンサーな同級生の子(アンドレア・ダベンポート)はクィアとして描かれており、製作者も認めています。ディズニー側もこのキャラをセクシュアル・マイノリティの代表的なキャラとして扱っています。

どこで観れる?

日本では「ディズニー・チャンネル」で観られます。

アウルハウス

バイセクシュアル アセクシュアル / アロマンティック ノンバイナリー

【2020~2023年】ファンタジーの世界に憧れる14歳の少女がひょんなことから魔界の世界で過ごしていくファンタジーアドベンチャーのアニメシリーズです。魔法が好きな子にオススメ。クリエイター兼製作総指揮を務める“ダナ・テラス”はバイセクシュアルを公言しており、主人公もバイセクシュアルとして明確に描かれています。ディズニーのアニメシリーズで真正面から(少なくとも主人公で)セクシュアル・マイノリティを描いた最初の作品となり、大きな話題を集めました。

どこで観れる?

日本では「Disney+」「ディズニー・チャンネル」で観られます。

キポとワンダービーストの冒険

ゲイ

【2020年】人間文明が崩壊した世界を舞台に生き残った子どもと不思議な生物が旅をするファンタジーアドベンチャーのアニメシリーズです。動物好きな子にオススメ。子ども向け作品では珍しく主要登場人物のひとりが「自分はゲイである」とハッキリとカミングアウトするシーンが序盤にあります。特別に持ち上げることもなく、あくまで平凡に同性愛を描いている世界観です。作中の脇役が(明言しませんが)ノンバイナリー設定だったり、主人公がジェンダー規範に縛られない描かれ方だったりも。

どこで観れる?

日本では「Netflix」で観られます。

ロッコーのモダンライフ ハイテクな21世紀

トランスジェンダー

【2019年】『ロッコーのモダンライフ』というアニメシリーズのスペシャルエピソード的位置づけの続編単品作品。作風はシュールな風刺が売りとなっており、ややクセが強め。この作品ではトランスジェンダーが明確に描かれており、しかも「トランスジェンダーをアイデンティティとする子がそれを受け入れてくれない親にどう向き合うか」という、現実でも当事者には避けづらいテーマに真剣に取り組んでいます。変化を素直に受け入れようというメッセージは普遍的な響くものです。

どこで観れる?

日本では「Netflix」で観られます。

永遠に12才!

クエスチョニング

【2019年】12歳の少女が世間を嫌って自分だけの独創的な世界に逃げ込むファンタジーアドベンチャーのアニメシリーズです。主人公は親から「女の子らしくなって」としきりに言われることに嫌悪感を持ち、ジェンダー規範に反抗します。主人公の性的指向や性自認は明確に描かれませんが、迷っている姿を映し出しているともいえ、ある意味ではクエスチョニング(まだわからない状態)とも捉えることができるでしょう。反抗を肯定する優しいストーリーです。

どこで観れる?

日本では「Netflix」で観られます。

マペット・ベビー

多様なジェンダー表現

【2018~2022年】ジム・ヘンソンによって創作された人形劇「マペット」の子ども時代を描くキッズ向けのCGアニメシリーズです。マペットの中でも以前から人気キャラであるゴンゾはもともと性別含めてアイデンティティが不明瞭な存在でしたが、今作では自らの意思でドレスを着るなど、自分らしくジェンダー表現を示そうとする姿が描かれています。

どこで観れる?

日本では「ディズニー・チャンネル」で観られます。

シーラとプリンセス戦士

レズビアン

【2018~2020年】英雄として目覚めた兵士のアドーラを主人公にしたファンタジーアドベンチャーのアニメシリーズです。敵と戦う冒険バトルものや変身要素が好きな子にオススメ。『シーラとプリンセス戦士』は主人公を軸に明確に女性同士の同性愛を真正面から描いたことで大きな話題となりました。ゲイ・カップルの親が登場したり、他のキャラクターにおいてもジェンダーが男女規範に依存しない描かれ方となっていたり、クィアなパワーが炸裂しています。

どこで観れる?

日本では「Netflix」で観られます。

デンジャー&エッグ なかよし2人のおかしな大冒険

クィア レズビアン トランスジェンダー ノンバイナリー

【2017年】活発な少女と用心深い性格でよく喋る手足の生えた大きな卵が、お気に入りの公園でドタバタ劇を繰り広げるコメディタッチのアニメシリーズです。“シャディ・ペトスキー”というトランスジェンダー当事者が創作しており、作中ではとても包括的にジェンダーやセクシュアリティを扱っていますが、恋愛ありきではないのが特徴。当事者の心の葛藤を絵にしたような物語が多数展開。プライド・パレードの描写があるなど、連帯の大切さも描かれます。主人公もどことなくクィアっぽいです。

どこで観れる?

日本では「Amazonプライムビデオ」で観られます。

ラウド・ハウス

バイセクシュアル ゲイ

【2016年~】11人の子を持つ大家族でただ一人の男の子を主人公にしたカオスなファミリーコメディドラマのアニメシリーズです。クセのある演出が特徴で、大人のファンも多いです。2021年についに日本上陸を果たし、一部の待ちわびていたファンは歓喜しました。主人公家族の子のひとりがバイセクシュアルであり、また脇役ですがゲイ・カップルの親も登場します。

どこで観れる?

日本では「Hulu」などで観られます。

悪魔バスター★スター・バタフライ

多様なジェンダー表現

【2015~2019年】異次元の魔法の国ミューニのプリンセスである14歳の少女がドタバタ劇を繰り広げるファンタジーアドベンチャーのアニメシリーズです。魔法が好きな子にオススメ。なぜか吹き替え版では主要登場人物が関西弁となっており、そこも日本で話題になりました。主人公の少年が異性装にまんざらでもなく馴染んでいたり、付き合った女の子がバイセクシュアルだったりします。ディズニー作品ですが、ディズニーのプリンセスのイメージを覆すでしょう。

どこで観れる?

日本では「Disney+」で観られます。

スティーブン・ユニバース

レズビアン ノンバイナリー 多様なジェンダー表現

【2013~2019年】宝石をモチーフにした特殊な存在と少年が織りなすファンタジーアドベンチャーのアニメシリーズです。ほのぼのとしたタッチが特徴ですが、ストーリーは予想外に壮大で深いテーマに発展していくのが魅力。バイセクシュアル&ノンバイナリーを公言する“レベッカ・シュガー”が作品を全面的に創作。男女規範を気持ちよく吹き飛ばす多様なジェンダーが個性的な変身要素とともに描かれます。また、男らしさに縛られない少年の成長譚にもなっています。

どこで観れる?

日本では「dTVチャンネル」内の「ブーメラン」で観られるほか、他の動画配信サービスでも一部配信されています。

RWBY

バイセクシュアル

【2013年~】ルースター・ティース・プロダクションが制作したWEBアニメシリーズで、ファンタジー学園モノのような世界観を舞台にしたバトルアクションとなっています。CGですが、日本のアニメに近いキャラクターデザインが特徴。そこまで明確ではないのですが、主要登場人物のひとりであるブレイクはバイセクシュアルと捉えられる描かれ方になっています。作中では同性カップルも登場します。

どこで観れる?

特別編集映画版(吹き替え)がデジタル配信されています。

アドベンチャー・タイム

レズビアン

【2010~2018年】ちょっとシュールで変わった世界が舞台のコミカルなファンタジーアドベンチャーのアニメシリーズです。ヘンテコで魅力的なキャラクターがいっぱい。絵柄も可愛らしく、小さい子でも安心して見せられます。『アドベンチャー・タイム』では、バブルガムとマーセリンというキャラクターの恋愛関係が親密にじっくり描かれており、終盤ではかなりのラブラブに。本作の製作にはバイセクシュアル&ノンバイナリーを公言する“レベッカ・シュガー”が関わっています。

どこで観れる?

日本では「カートゥーンネットワーク」で観られるほか、他の動画配信サービスでも一部配信されています。

マイリトルポニー トモダチは魔法

多様なジェンダー表現

【2010~2019年】馬の「ポニー」たちの世界を描いた子ども向けアニメシリーズで、子どもだけでなく大人からも絶大な人気があり、巨大なファンダムを形成しています。主役たちは女の子のポニーですが、典型的な“女の子らしさ”にこだわらないキャラクターとして描かれています。アイデンティティを素直に認め合う優しい物語は元気をもらえます。作中では同性カップルも登場します。

どこで観れる?

日本では「ディズニー・チャンネル」「スカパー」「Netflix」などで配信されています。


 

以下は今は日本国内ではちょっと観づらい・観れない作品です。

The Bravest Knight

ゲイ

【2019年】男性の騎士と王子が結ばれて、さらに10歳の女の子を養子に迎えるファミリードラマのアニメシリーズです。ゲイ・カップルをメインで描きつつ、さらに子育てまで描いていくということで、非常にエンパワーメント溢れる表象となりました。

どこで観れる?

アメリカでは「Hulu」で配信されていますが、日本では観られません。

Madagascar: A Little Wild

ノンバイナリー

【2020~2022年】ドリームワークスの人気作『マダガスカル』シリーズのスピンオフのアニメシリーズです。動物園の動物たちが愉快に騒動を巻き起こす作品ですが、このシリーズでは新たなにオカピのキャラクターが追加。このキャラはノンバイナリーであり、声もノンバイナリー当事者である“エズラ・メナス”が演じています。

どこで観れる?

アメリカでは「Hulu」と「Peacock」で配信されていますが、日本では観られません。


ここまで紹介してきた作品を眺めていると「こんなにいっぱいあるんだ!」と思うかもしれません。

しかし、現実ではまだまだ圧倒的にマジョリティ(異性愛・シスジェンダー)を描いた作品が多いです。子ども向けのアニメの業界では以前からずっと「LGBTQを描く」のはタブー視されてきました。子どもに見せるべきではない存在とされ、教育的・道徳的に良くないと忌避されたのです。それは保守的な保護者層や宗教右派の影響力はもちろん、子どもを守るべきだという社会の保護が歪んだかたちで発揮されていたからです。

2010年代後半になってそのタブーは一気に崩壊しつつあります。おそらく今後はもっとたくさんの作品がLGBTQを当たり前に描くでしょう。そんな魅力的な作品に幼い頃から触れた子どもたちが新しい時代を作ります。未来が楽しみです。