感想は2500作品以上! 詳細な検索方法はコチラ。

映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』感想(ネタバレ)…世界中に平和と繁栄をもたらせるのは

プロジェクト・ヘイル・メアリー

この2人だけ…映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Project Hail Mary
製作国:アメリカ(2026年)
日本公開日:2026年3月20日
監督:フィル・ロード、クリストファー・ミラー
プロジェクト・ヘイル・メアリー

ぷろじぇくとへいるめありー
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』のポスター

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』物語 簡単紹介

地球の生命を脅かす宇宙規模の原因不明の異常現象が観察され、人類は静かに騒然としていた。このままでは地球の人間は滅亡してしまうという噂が流れる中、中学教師をしていたグレースになぜか白羽の矢が立つ。実は彼はこの謎を解くかもしれない論文を以前に執筆していたが、学会で揉めてその業界からは身を引いていた。そして、グレースは地球を救うための壮大なプロジェクトに参加するが…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の感想です。

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』感想(ネタバレなし)

スポンサーリンク

ネタバレしようじゃないか

「“ネタバレ厳禁”はどこまで徹底されるべきか問題」はいつもながらの論争の種です。全く初公開の物語ならまだしも、「原作のある作品の映画化」の場合、原作の内容がわりと漏れ出していることはしばしばあります。というか、インターネットでタイトルだけ検索しても、ありがた迷惑なことにAIが要約をまとめてトップに表示してくる今の時代、そこにがっつりネタバレが書いていることもよくあって…。ネタバレを避けるのがことさら難しい状況になっていると言えます。

そんな中、この映画の原作は「ネタバレを踏む前にとにかく読め!」としきりに推奨される小説で、それが2026年に映画化されたものですから、さあ、大変。しかも、映画の宣伝では「ある核心に触れる内容」が堂々と示されていました。原作者も製作に深く関与しているので、「このネタバレは良し!」という判断なのでしょうが、「ネタバレなしで純粋に驚いてほしい」という原作愛読者の想いもわかると言えばわかる…。

そういう私もその原作は好きです。もはや意味ないかもですけど、この感想記事の前半では明確なネタバレはしないでおきます。

でもひとつ言っておきたいのは、仮にネタバレを知ってもこの映画は全然面白いですよ…ということです。中身を知ったらつまらなくなることはありません。この映画の醍醐味はその程度の障害はへっちゃらです。

ということで、本作『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の感想です。

あの“リドリー・スコット”監督の手によって2015年に見事に映画化された『オデッセイ』(原作は『火星の人』)の“アンディ・ウィアー”の小説がまたも映画になりました。今度もSF映画ですが、ひと味違います。けれどもあの『オデッセイ』と同じ、いや、それ以上の大興奮を満喫できるでしょう。

しかも、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の映画化で監督を手がけるのは、“フィル・ロード”“クリストファー・ミラー”のコンビ。

“フィル・ロード”&“クリストファー・ミラー”はいろいろな作品を最近も製作していましたが、2018年の『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』降板の一件があったので、監督作はなんと2014年の『22ジャンプストリート』以来(日本では劇場公開されなかったので、劇場公開作だと同年の『LEGO ムービー』にまで遡る)。

私はさっきも触れたように原作は読了済みで、大好物な中身だと知っています。そのうえ、“フィル・ロード”&“クリストファー・ミラー”監督が映画化してくれるなら、もう観る前からこの映画は今年のベスト10入りだなと思ってました。思えば『オデッセイ』も最高だったし、今回の脚本は『オデッセイ』の“ドリュー・ゴダード”が手がけているし…。

で、主演は“ライアン・ゴズリング”だって? なんだよ、嫌いになる要素が1ミリもないじゃないか…。

ということで本作『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は私が得する映画です。私が事前にネタバレできるのはこれくらいです。

無駄に精神的に疲れるだけの日米首脳会談のニュースとかを見るくらいなら、この『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を鑑賞して元気をもらってください。

スポンサーリンク

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を観る前のQ&A

✔『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の見どころ
★魅力的なバディ。
★人類社会が嫌になった人へのささやかな救済。
✔『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の欠点
☆約170分と少し映画時間が長いので注意。

鑑賞の案内チェック

基本
キッズ 4.0
子どもでも観れます。
↓ここからネタバレが含まれます↓

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』感想/考察(ネタバレあり)

スポンサーリンク

あらすじ(序盤)

ひとりの男がある部屋で目覚めます。久しぶりに深く呼吸したかのようにむせ返る男。傍にはロボットアーム型の自律AIがいて、マニュアルどおりにこちらの健康状態を確かめようとします。わけもわからず男は張ってその部屋を出ようとし、手近の梯子を上ります。

しかし、何かの拍子に他のベッドも展開し、ヤオイリュヒナという2人の人物は眠ったまま死亡してしまったことがわかります。どうやら自分だけコールドスリープから覚醒したようです。

ここはどこかと施設内をふらふら歩き回り、窓を見た瞬間、そこにあったのは果てしない宇宙空間でした。ここは「ヘイル・メアリー号」という宇宙船。自分はライランド・グレースという科学の知識がある人間。でもなぜこんなところに…。朧げな記憶を必死に呼び覚まそうとしますが…。

時は遡ります。グレースは中学校で科学の教師をしていました。今日も生徒の前で軽妙に授業をしていましたが、ひとりの子が「ペトロヴァ・ラインって何ですか?」と質問してきます。最初はその質問を無視しますが、子どもたちの好奇心は消えません。仕方なく説明をします。

ペトロヴァ・ラインは今、世間で話題騒然となっているものでした。ある日、科学者は太陽の光度が妙に減退しているのを観測しました。そして、太陽から金星まで伸びる赤外線スペクトル帯の形成を発見。それが原因と思われました。このままだと地球の温度はみるみるうちに低下し、人類が暮らすことは極めて困難になってしまいます。

しがない平凡な教師のグレースにはどうしようもないスケールの話でしたが、なぜか重要人物そうなエヴァ・ストラットがわざわざ学校に訪問してきます。なんでも力を貸してほしいとのこと。

実はグレースは以前は分子生物学者で、過去に学会で有名な学者相手に口汚く反論してしまったせいでお払い箱にされ、学会から退いていました。かつてグレースが執筆した地球外生命体に関する論文がペトロヴァ・ライン絡みで関連があるらしいです。

そして秘密の研究室に連れていかれ、ある生命を調べてほしいと頼まれます。それは金星に送り込まれた探査機がペトロヴァ・ラインを構成する粒子状物質を採取した際に、自発的に動き回る微小な粒子を発見し、生命体である可能性が強く示唆されたものでした。「アストロファージ」と名づけられたこの存在が恒星の機能を損なわせるようです。

しかも、実は他のあらゆる恒星がこのアストロファージに侵されており、唯一、「タウ・セチe」という星だけがなぜか無事のようだとも明かされます。

そしてその「タウ・セチe」に片道だけの宇宙船で人を送り込み、アストロファージに対処する手がかりを掴む壮大な「プロジェクト・ヘイル・メアリー」が秘密裏で国際的に進行していたことを知ります。

これはイチかバチかの賭けでした…。

この『プロジェクト・ヘイル・メアリー』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2026/03/20に更新されています。

ここから『プロジェクト・ヘイル・メアリー』のネタバレありの感想本文です。

スポンサーリンク

ユーモアって難しいね…(でも科学は最高!)

はい、ネタバレです。『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は、高度なコミュニケーションが可能な地球外生命体とのファーストコンタクトが主題でした。まさにここから『スタートレック』が始まっていきそうな新しい歴史の出発点です。

正直、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の映画としての成否はこの地球外生命体…通称「ロッキー」をどう描写するかにほぼ懸かってくると思うのです。それくらいこの映画の核をなしています。

“フィル・ロード”&“クリストファー・ミラー”のコンビ監督は、そのミッションをこれ以上ないほどにパーフェクトにこなしたのではないでしょうか。描くのが上手そうだなと思ってましたが、期待を超える出来栄えでした。

『メッセージ』のようなスローテンポでじっくり異質な地球外の存在と恐る恐るコミュニケーションをとっていく語り口ではなく、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は言ってしまえばわりとコテコテなドタバタ劇です。限りなく『ドラえもん』に近いリアリティだと言ってもいいくらいでしょう。

ロッキーを含むあの「エリディアン」と命名した種族は、映像化されたことでハッキリ印象が際立ちましたが、もろに「岩っぽい蜘蛛」みたいな奴です。船内をハムスターボールみたいにゴロゴロと転がりまわって歩くさまは、本当にうるさく、しかもお喋りなので、“ライアン・ゴズリング”演じるグレースが疲弊するのもなんだか頷けます。

しかし、やっぱりこの二者のバディが今作の最高のポイントであり、脚色や演出によって原作よりもさらに強調されていました。

“フィル・ロード”&“クリストファー・ミラー”十八番のユーモアが初遭遇時から炸裂しまくっており、何とも言えない間のギャグといい、あちらこちらで笑わせてくれます。ロッキーの仕草もいちいち愛嬌があり、観ている間、どんどん好きになってしまう…。顔も無いキャラクターなのに、ここまで愛らしさを盛り込めるのは、造形チームの職人技でしたね。

肝心のロッキーは「(地球人のいう)ユーモアって難しいね…」とか言っているのですけど、「いやいや、あんたは存在しているだけでユーモラスだよ」っていう話で…。

このロッキーの種族は、本来は沸点が「マイナス108.1°C」なので気体で存在している「キセノン」をどういう原理か常温でも固体にでき(「キセナイト」と名付けている)、しかも変幻自在に加工できる力を持っています。

私は原作を読んだときから、「これはチートすぎないか?」と思いましたし、作中でも豪快にこのロッキーのキセナイト能力が活かされるのですが、このジャンルにおいてはこの設定は諸刃の剣です。

なぜなら“アンディ・ウィアー”の原作の最大の魅力は精巧な科学考証にあるからです。「科学的にこれはあり得そう」という絶妙な試行で困難を突破していく、そういうサイエンス・サバイバルに面白さがあります。

ロッキーの能力はその面白さを壊しかねないのですけど、原作はそこを上手く食い合うようなことをせず、映画でもバランスを保っていました。映画の場合、科学的な細部の解説までやってられないので、ロッキーとの掛け合いの中でさりげなく示していたりもするのですが、そこも違和感がありません。しっかり科学考証は細かすぎるくらいにやっていて、“アンディ・ウィアー”が今回は製作にがっつり関わっているので抜かりもありません。

グレースとロッキー…二者の間に科学力の優劣が論点にならないのもいいです。お互いに「あなたは凄いね」と素直に相手の科学知識を褒め合い、補い合う。科学は本来はこうでなければという原点です。

何よりも「科学」は宇宙共通の言語なんだ!という喜びに満ち溢れており、今作も科学賛歌が心地いいですね。

スポンサーリンク

課題はだしたのでちゃんとやってね

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』はあのバディだけみると、すごくおふざけ満載なコメディ映画にも思えてしまいますし、確かにそういう側面はあるのですが、背景は尋常ではなくシリアスです。『オデッセイ』よりもはるかに深刻ですから。

そして本作はこのシリアスな事態に対する態度とその回答こそが、SFとしての明確なアイデンティティに直結していると思います。

それは『オデッセイ』との対比でもわかりやすいです。原作の時点で『オデッセイ』(火星の人)を意図的にいじるような展開が多いのが特徴でした。不慮の事態で宇宙ミッション中に孤独に陥る人間(でも別の生命体と遭遇)、地球への帰還を目指す(ことにはならない)、若き世代に教育する(でも教える相手は人間ではない)…わざとらしいくらいに逆をいきます。

グレースのポジションは従来だったらそれこそ『アルマゲドン』みたいに「地球の命運を託されて救いに行く!」という国威発揚的なテンションの大作にありがちなものになりかねないのですけど、そういうのを期待している人にはこの作品は肩透かしです。

このグレースは終盤で明らかになるように強制的に宇宙船に押し込められただけの男ですから。栄誉も感動の犠牲もない、ただ利用されただけ…。地球に愛する者がいて待ってくれていることさえない。ゆえに、同じ“ライアン・ゴズリング”で言えば『ファースト・マン』よりも孤立的で、自暴自棄です。

そんな背景ですから、グレースはタウメーバなんて持ち逃げして地球を見捨てたっていいんですよ。それをしないのはグレースには曲がりなりにも正義感があるのをあの地球の連中はわかっているからです。勇敢でない小さな正義をこんなにも蹂躙するなんて、ほんと、非道です。

だからこの映画内における人類社会はサイテーな奴らなんです。未曽有の危機でも争い合って自滅を加速させると世界が半ば諦めているくらいですし…。

そこには『オデッセイ』のときのような「地球の国々が一致団結すればまだまだ未来は切り開ける!」みたいな前向きな希望はありません。地球人に対して俯瞰的というか、アンチテーゼすら感じます。

でもこの感情は皮肉なことにこの映画の公開日である2026年3月の世界情勢をみているとなおさら痛感しますよね。こんな地球人同士で争っている惑星を生かすだけの意味あるのか?って思いますよ。

なのでグレースが地球に戻ることよりもロッキーに会いに行くことに価値を見いだす選択をとるのは、人間社会に心底うんざりしている感情に共感できる観客ほどカタルシスがあるのだと思います。

本作は「地球人はもっと人権を守れる共同体を築くために努力しろよ。私はもっと先の未来に行ってるからな」という突き放しでもあり、それでも「今度こそ期待に応えろよ」という地球人への宿題でもあるような…。

その失望の共有ができている地球側の存在としてエヴァ・ストラットが効果的に物語を引き立ていました。彼女もこの人類の脆弱さに心の底から辛抱耐えかねていて…。“ザンドラ・ヒュラー”の演技が素晴らしいですね。

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』はこれもホープパンクの一種なのかもですが、ちゃんと今の地球人に今すぐクリアすべき課題を提示するのも忘れない…なんだかんだで大変教育的な指導がよくできているストーリーでした。

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』
シネマンドレイクの個人的評価
9.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)

以上、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の感想でした。

作品ポスター・画像 (C)Pascal Pictures プロジェクトヘイルメアリー

Project Hail Mary (2026) [Japanese Review] 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』考察・評価レビュー
#アメリカ映画2026年 #フィルロード #クリストファーミラー #ライアンゴズリング #ザンドラヒュラー #地球外生命体 #科学 #生物学

SF
気に入ったらぜひシェアをお願いします
スポンサーリンク
シネマンドレイク

ライター(まだ雑草)。LGBTQ+で連帯中。その視点で映画やドラマなどの作品の感想を書くことも。得意なテーマは、映画全般、ジェンダー、セクシュアリティ、自然環境、野生動物など。

シネマンドレイクをフォローする