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『ランボー ラスト・ブラッド』感想(ネタバレ)…本当に完結する気あるんですか!?

ランボー ラスト・ブラッド

本当に完結する気あるんですか!?…映画『ランボー5 ラスト・ブラッド』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Rambo: Last Blood
製作国:アメリカ(2019年)
日本公開日:2020年6月26日
監督:エイドリアン・グランバーグ

ランボー ラスト・ブラッド

らんぼー らすとぶらっど
ランボー ラスト・ブラッド

『ランボー ラスト・ブラッド』あらすじ

数多の戦場に身を投じてきたジョン・ランボーは、いまだベトナム戦争の悪夢に苛まれていた。ランボーは祖国アメリカへと戻り、故郷のアリゾナの牧場で古い友人のマリア、その孫娘ガブリエラとともに平穏な日々を送っていた。しかし、ガブリエラがメキシコの人身売買カルテルに拉致されたことで、ランボーの穏やかだった日常が急転し、救出に向かうが…。

『ランボー ラスト・ブラッド』感想(ネタバレなし)

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ランボー信者よ、集え!

映画が教典のようになってしまうことがあります。映画の物語から啓示を得て、登場人物のセリフをお告げのように敬い、その世界によって救済を自得する。そんな経験をしたことのある人は世の中でもごく一部だと思いますが、俗にいうカルト映画の信者たちはそんな状況になっているのです。

“シルヴェスター・スタローン”主演の代表作である『ランボー』シリーズもまさにそんな信者を生み出した映画でした。

1982年の第1作『ランボー』は、アメリカが敗戦したベトナム戦争から帰還した孤独な兵士であるランボーを主人公に、そんな彼の犠牲をアメリカ社会が寄り添うことなくましてや排除してくるという、切ない逃走劇を描いたものでした。今となっては意外ですが、1作目のときはむやみやたらに人を殺しまくる映画ではありません。ベトナム戦争というアメリカのトラウマを体現した、極めて社会派な作品でした。この作品が(少なくとも当時に)支持されるのはよくわかります。

しかし、2作目『ランボー 怒りの脱出』(1985年)は、そのランボーを政府命令で再びベトナムに送って任務にあたらせるという、明らかにジャンル転換がなされ、明確にアクション映画化しました。盛大に殺しまくるランボーのイメージはここで確立し始めます。それでもまだベトナムが舞台ですし、1作目の反転としては理解できなくもない続編だったと思います。

ところが3作目の『ランボー3 怒りのアフガン』(1988年)は、アフガニスタンへソ連軍を倒しに行くというベトナムが全然無関係な話になっており、もはやランボーは「Uber Eats」感覚で仕事を頼まれる人になってしまいました。映画の中身もひたすらに暴力描写を推すバイオレンス・ムービーに特化。

続く4作目『ランボー 最後の戦場』(2008年)は久々の続編ながら、ミャンマーに蔓延る独裁者の軍隊を倒すという、やっぱり外国にノコノコやってきて殺戮しまくる発注業務請負人みたいになっており、ここでも殺しに殺しまくりました。

こんなふうに原点から作品が逸脱しているように思えなくもない発展をする中でもやはり信者の人はその信仰心を揺るがすことはありません。血しぶきを背景に狂人と化す男を見ながらもそこに何かしらの意味を見いだす。これもひとえに主演の“シルヴェスター・スタローン”の信望のなせる御業なのでしょうかね。確かに“シルヴェスター・スタローン”でなければこの「ランボー」シリーズはもっとB級に成り下がっていたと思います。

その「ランボー」シリーズ、もう4作目で終わりだろうと思っていたら2019年に5作目が誕生しました。「最後の戦場」って4作目のときに邦題でつけちゃったのに…。それが本作『ランボー ラスト・ブラッド』です。

タイトルはもちろん1作目の原題「First Blood」への対応であり、満を持してついに完結編になるのか…とファンは感慨にふけりたいところ。でも話を聞いてください。本作、別にこれで完結じゃないっぽいです。“シルヴェスター・スタローン”は言葉を濁しがちですけど、なんかまだやるみたいな口ぶりもしている…。つまりスタローンの気分次第。うん…まあ、本人の好きなようにすればいいのだけど…。日本の宣伝では「最後の戦い」ってまた書いちゃったよ?

ただ『ランボー ラスト・ブラッド』の興行収入を見ると落ちているし、作品人気も確実に低下する中、本当に継続できるかは未知数ですけどね。単に今後の企画が通らないまま“なし崩し的に”この5作目で結果的に完結となる…こともあり得なくはない。だから「完結編(その可能性もある)」みたいな立ち位置…。

そのモヤモヤする『ランボー ラスト・ブラッド』ですが、主演の“シルヴェスター・スタローン”は今回も正々堂々と人をなぶり殺しています。一応、他にも俳優陣が出ていますし、『バベル』の“アドリアナ・バラッザ”とか実力のある人もいるのですが、まあ、ご想像のとおりスタローンの独壇場ですからね、このシリーズ。それは今回も変わらず。

監督は『キック・オーバー』の“エイドリアン・グランバーグ”。脚本はもちろん“シルヴェスター・スタローン”。

最低映画を決めるゴールデンラズベリー賞で「最低リメイク・パクリ・続編映画賞」「人命・公共財軽視の無謀さに対する最低賞」というぴったりすぎる栄光に輝き、『ランボー』の原作者ディヴィッド・マレルからも「dehumanize」という的確な失望コメントを受けたこの『ランボー ラスト・ブラッド』。

でもスタローンは止まらない。観てくれるあなたがいるかぎり!

オススメ度のチェック

ひとり ◯(信仰者にとっては礼拝と同じ)
友人 ◯(ランボー好き同士で熱く)
恋人 △(良いムードの映画ではない)
キッズ △(残酷描写の山盛りです)
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ランボー ラスト・ブラッド』感想(ネタバレあり)

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ハリケーンでも倒せない男

激化するハリケーンが直撃する中、捜索隊は遭難した3人を探していましたが、暴風雨ゆえに撤退を決定。しかし、馬に乗っているボランティアがまだ捜索を続けています。そう、その男こそジョン・ランボーです。

ランボーは1名を発見しますが、すでに死亡。残りの男女2人も発見し、妻は死んでいたことをその片方の男に伝えますが、男は探しに行ってしまいます。そうこうしているうちに濁流が押し寄せてくるのが見えます。ランボーは岩陰に馬を隠し(それでいいの!?)、岩に自分と女性の体を縛り、濁流に備えました。

待機している捜索隊の現場に、馬と女性を連れて帰還したランボー。あの夫は遺体になって発見されていました。「ベストを尽くしたよ」と地元の保安官にねぎらわれますし、女性にも「ありがとう」と言われますが、救えなかった自分を責めてランボーは沈んでいました。

今、ランボーは、アリゾナ州ボウイの牧場で、旧友マリアとその孫娘ガブリエルと共にで暮らしており、家族のようなものでした。水流に耐えうる強靭な馬を育てる平穏な日々です。

そんなランボーの趣味は巨大な地下壕を作ること(モグラなのかな?)。 個人で管理できる次元を超えた、とんでもない長さの地下トンネルが牧場の下には張り巡らされています。

ランボーを「叔父さん」と慕うガブリエルは友達を連れてきたいらしく、トンネルを見せることを許可します。ガブリエルは友達をぞろぞろ連れてきてトンネル見学会が開始。そんな中、ガブリエルはメキシコにいるジゼルとなにやら意味深に電話していました。

ある日、ガブリエルは、父を見つけたからメキシコに会いに行きたいと頼んできます。国境すぐそばの街にいるようです。しかし、ランボーはその父の良からぬ人間性を知っているので断固として許しません。マリアも「会うな」ときつく言い放ち、ガブリエルは目に涙をためて納得します。

ガブリエルは友達のところへ行くと言って車で出ていきますが、決心したように途中でUターン。国境へ向かいます。当然、目指しているのは父親との再会です。

メキシコに渡ったガブリエルはジゼルのもとへ直行。さっそく父の居場所を教えてもらい、会いに行きます。ドアをノックし、父親と対面。想いがこみ上げる中、「なぜ出ていったの」と質問しますが、帰ってきた言葉は鋭利な刃物よりも心を傷つけるものでした。娘への愛は欠片もなく、「もう来るな」とドアを閉じられ、ガブリエルはショックを隠せません。

気分転換しようとジゼルにクラブへと連れていかれ、その喧騒に浸かっていると帽子の男が話しかけてきます。その男は飲み物に何かをいれ…。

一方のランボー。血相を変えてマリアが駆け寄ってきます。なんでもガブリエルはメキシコに行ったらしいとのことで、ランボーは即断即決で車を飛ばします(今回は嫌々じゃない!)。

ガブリエルは捕らえられていました。相手はメキシコでも凶悪と名高い人身売買カルテル。売春のために若い女性を強引に誘拐し紹介しているところであり、放っておけば命も危ない恐怖の存在。

そこへ1個大隊よりも破壊力がある男がぶっとんでいきます…。

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あなたのハートをキャッチ

  • 大統領側近「トランプ大統領、あの問題が発生しました」
  • トランプ「なにかね?」
  • 大統領側近「あるアメリカ人の男がひとりで国境沿いのメキシコの街で大暴れしています」
  • トランプ「…は?」
  • 大統領側近「しかもアメリカにカルテルを誘い込んで大虐殺もしています。国際問題級の一大事です」
  • トランプ「その男は、あれか、中国工作員か? ANTIFAか? フェミニストか? YouTuberか?」
  • 大統領側近「いいえ、ランボーっていう、わりと保守層にも人気の高い男です」
  • トランプ「…聞かなかったことにしよう」

そんなやりとりがあるかどうかは知らないですが、今回のこの『ランボー ラスト・ブラッド』における主人公ランボーの行動、相変わらずの国際的火種になりかねない規模のことを平然とやっています

まあ、それはひとまず置いておいて、今作のランボーも狂ってましたね。いや、年を取って狂人化が激しくなったんじゃないか…

まずガブリエルの父のもとにすっとんでいき、壁ドン威嚇(両手)。ガブリエルを売ったジゼルには、机ドン威嚇(ナイフ)。さすがにここはもうちょっと穏便に尋ねるのでも良かったのではないかと思うのですけど、もうこの高齢化ランボーには「アクセルを思いっきり踏む」以外の行動パターンはありません。

拉致現場のクラブへ行くと怪しい男を脅すために、ナイフで初手グサ!&骨を素手でねじり折るという、それ絶対にグリーンベレーでは教わらないよね?という現CIAもドン引きのオーバー拷問を敢行。

その後、なぜか敵のアジトへの接近は雑であっけなく捕まり、大勢に輪で囲まれ、銃を突きつけられる始末(どうでもいいですけどこうやって銃を向けるのは同士討ちになるからマヌケだよね…)。顔にX字の傷をつけられますが、結構普通に回復します。

そして始まる復讐の大虐殺。今作は「頭脳戦」と宣伝では謳われていましたけど、あれは知能を駆使した戦いだったのかな…。ひたすらにトラップだらけのトンネルで敵をいたぶっているだけだったような…。でもあのラストの大爆破で、怪獣でも出てくるのかというレベルの地響きで地面がうねるのは、知的さゼロで逆に潔かったです。これがランボーだ!という感じ。

最後は心臓を抉り出してフィニッシュ。何もかも過剰だった…。冷静に見るとランボーが悪役なんじゃいかという凶行ですけど、主人公です…5作目です…。

さすがに“シルヴェスター・スタローン”も年なので、イマドキな凝ったアクションの連続で魅せることはできません。そこで堂々と君臨し、暴力をねじこんでいくという、完全にパワープレイに偏った戦闘をお見舞いし、スケール的にはそこまでシリーズ最大規模ではないのに、やっていることは激化した雰囲気を出していますね。

過去作にあった敵陣に乗り込んでいくスタイルではなく、最後はホームで待ち伏せ型の戦法をとるのは意外でしたが、個人的には前者の方が過酷さがあって好きだったのですけど…。あれかな、『007 スカイフォール』を意識したのかな…。

終盤でバンダナ装備でもっと肉弾戦で激闘してくれるとなお良かったなと思いましたが、今のスタローンの限界はここまでなのか…。もう73歳なんですもんね。戦ってる方が不思議だ…。

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ランボーの原点って何だっけ…

そんな大暴走な『ランボー ラスト・ブラッド』ですが、シリーズ歴代で迷走も極まっているなとも思います。

今回は実質的には「父が娘を救う」ストーリーであり、それはもうよくある凡庸なジャンルです。「ランボー」シリーズの個性はほぼほぼ薄まり、いよいよ「ランボー」である意味もなくなってきました。

しかも娘を救えず、終盤は復讐に怒り狂っているだけ。普通ここは「復讐なんてするものじゃない」というストップが何かしらの手段でかかり、主人公が思い詰めて、新しい人生をスタートするきっかけを得る…というのがベターですけど、本作は復讐一直線。

一応、ラストは椅子に座り、ここで死に絶えるのか…という哀愁を漂わせることで映画の奥深さっぽさを醸し出していますけど、死んでいませんからね。

そうです、この『ランボー ラスト・ブラッド』、完結しません。でも明らかにエンドクレジットでは過去作映像を流して「終わりですよ」アピールしているのに終わらないって…観客はどういう気持ちになれと言うのか。

あとやっぱり本作はこれでシリーズが終わりだとしても、完結作としてはとても納得がいくものではないと個人的には不満もくすぶります。

今回のランボーは1作目の原点を逸脱するどころか真逆のことまでしているのが一番の引っかかり。1作目のランボーは「排除する側」に追われるとても不幸な存在。でも今作のランボーは自分が「排除する側」になってしまっています。自分で敵をおびき出してしまうので余計にそう見えますよね。ゼノフォビア(外国人嫌悪)的だと批判されるのも無理はありません。それ以上にキャラクターの立場が完全に逆転し、作品の根幹にあったはずの本質を見失っている状態です。

思い出すべきですが『ランボー3 怒りのアフガン』にてアフガニスタンをソ連から救うという展開になります。でも現実ではソ連崩壊後、アフガニスタンは内戦化し、あげくに911同時多発テロ以降はアメリカに攻撃されます。ランボー的正義が実際は正義を果たしていないことが皮肉にも証明されているわけです。

今回も同じ過ちを繰り返しているだけに思えてきます。昨今のアメリカ・メキシコ関係のリアルを一面的にしか見ていない。このランボーは正義でもなく、ただむしゃくしゃして当たり散らしているだけの老人だと言わざるを得ないような…。今のトレンドがメキシコ・カルテルものなのはわかるのですが、『ボーダーライン ソルジャーズ・デイ』とかいろいろな映画が出ている中、本作は描き込みが1周2周遅れている…。

せめて完結作としてふさわしいものにするなら、戦争帰還兵のテーマに立ち返ってほしかったです。イラク戦争の帰還兵の心の傷を、今度はランボーが自分の経験をもとに癒して生活を支援する側に回るとか、第2のランボーを作らないように身を犠牲にするとか、なんかあったろうに…。本作のPTSD描写も実際の被害者への誤解にしかならない描き方ですし…。

今は『足跡はかき消して』や『ザ・ファイブ・ブラッズ』とか帰還兵題材の良い映画もいくつもあります。

“シルヴェスター・スタローン”、『大脱出』シリーズの醜態ほどではないにせよ、やはりシリーズ展開があまり上手くない…。『ロッキー』シリーズの『クリード』の成功のように、有望な若手にバトンタッチしてバックサポートに回る方が良い気がするのだけど…。

ということでスタローン、有能な若手に託すんだ…結構いっぱいいるぞ…。それだけが願いです。

『ランボー ラスト・ブラッド』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 27% Audience 82%
IMDb
6.2 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 3/10 ★★★

作品ポスター・画像 (C)2019 RAMBO V PRODUCTIONS, INC. ランボー ラストブラッド

以上、『ランボー ラスト・ブラッド』の感想でした。

Rambo: Last Blood (2019) [Japanese Review] 『ランボー ラスト・ブラッド』考察・評価レビュー