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『リベンジ・リスト』感想(ネタバレ)…ジョン・トラボルタ、まじおこなんですけど

リベンジ・リスト

ジョン・トラボルタ、まじおこなんですけど…映画『リベンジ・リスト』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:I Am Wrath
製作国:アメリカ(2016年)
日本公開日:2017年6月17日
監督:チャック・ラッセル

リベンジ・リスト

りべんじりすと
リベンジ・リスト

『リベンジ・リスト』あらすじ

数々の殺しを請け負ってきた過去を持ちながら、現在の車の修理工という職も失ったスタンリー・ヒルは、ある日、目の前で強盗に妻を殺害される。容疑者は逮捕されるが、なぜか釈放され、事件は闇へと葬られてしまう。そんな理不尽さへの怒りから、スタンリーは封印していた力を解放していく。このまま怒りを内に溜めこんでいる必要性はどこにもなかった…。

『リベンジ・リスト』感想(ネタバレなし)

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復讐して、何が悪い

あ~、イライラするな…誰かを殴りたいな~…。こんな奴を見かけたら絶対に近寄ってはいけないですが、まあ、誰でもそういうイラつきを蓄積することはあるものです。問題はそれをどうやって解消するのかということ。運動でそのストレスを発散してもいいし、美味しいものを食べることで満足感で上書きしてもいい。でも私は映画を観る…それが映画ファンの嗜み。そんなときのアクション映画は格好のリラックス素材です。そう、クスリ…いや、この例えは良くないな、なんだ、映画は…目で見るサンドバックみたいなもの。

「普通の人だと思ってナメていたら、実は恐ろしい殺人能力を秘めた奴だった」系のアクション映画は、その単純明快な筋書きから難しいことを考えずに気軽に観られる作品としてファンを集めてきました。最近だとキアヌ・リーヴス主演の『ジョン・ウィック』が高い評価を得て、今年はその続編『ジョン・ウィック チャプター2』が公開されます。

それにしても「普通の人だと思ってナメていたら、実は恐ろしい殺人能力を秘めた奴だった」系の主人公野郎はなんでこうも真っ先に実力行使の復讐に突っ走るのか。他の仕事とかプライベートだと優柔不断なのに、こと復讐となると即断即決。まあ、そこが良いのですけど。

そんな愚鈍な男たちに続く、本作『リベンジ・リスト』の主役は“ジョン・トラボルタ”です。

“ジョン・トラボルタ”は別にアクション系メインの俳優ではありません。『サタデー・ナイト・フィーバー』(1977年)で一躍有名になったように元はミュージカル畑の人。歌って踊れる男でした。2007年の『ヘアスプレー』では女性役に挑戦し、新境地を開拓するなど、器用な役者技も見せてもいました。たぶんそのダンスの動きのキレがアクションにも活かされているのでしょう(勝手な想像)。

それにしてもこの『ヘアスプレー』。作品の万人ウケの良さからあまり映画を観ていない人でも知っていたりするのですが、主役は“ジョン・トラボルタ”で、今はこういう見た目の人だよと教えるとほぼ驚愕されるんですよね。しょうがないか、全然違うもの…。

この“ジョン・トラボルタ”、他にも語りがいがあることがあり、大の飛行機マニアで自分でジャンボジェット機の操縦資格を持っており、飛行機も保有していて、自宅には滑走路があるという、もはやどうして俳優やっているんだというレベルの飛行機への情熱があるんですね。子どもの名前も「ジェット」にしたくらいですよ。

しかし、そんな話題性も溢れる彼も映画キャリアは大空を飛び立つどころか、墜落気味で…。『パルプ・フィクション』あたりをピークに絶不調。とくにそれを決定的にしたのは2000年の『バトルフィールド・アース』です。これ、原作がサイエントロジーの創始者だったり、もうあらゆる意味でアレな映画なのですけど、“ジョン・トラボルタ”自身もサイエントロジーの熱心な信奉者ということできっと本人は自信満々だったのでしょうが…。

こんな状況もあって明らかに映画業界から少し腫れもの扱いになってしまった感は否めない。そんな“ジョン・トラボルタ”の怒りがこの『リベンジ・リスト』にはこもっている。そういうことにしておおこう。

本作のキャッチコピー「復讐して、何が悪い」の潔さにまた惹かれます。確かに本作の“ジョン・トラボルタ”は悪役にすら見えてくる暴れっぷりです。やっぱり本人はあれこれと溜まっているんですよ。うん、しょうがない。

“ジョン・トラボルタ”の復讐にどうぞお付き合いください。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『リベンジ・リスト』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):神の怒りが満ちる

コロンバスでは治安悪化が深刻化し、ギャングの抗争は警察との激しい衝突を頻繁に引き起こしていました。銃の流出もそれを過激にさせています。

オハイオ州のメザーブ知事は自身の取り組みによって銃犯罪は半減し、麻薬とギャングを一掃したと高らかに民衆に宣言。歓声をあげる市民の後ろでは、パイプラインに反対する抗議の声もあがっていますが、知事は独自の調査で安全性を確かめていると自信たっぷりに述べます。

一方、スタンリー・ヒルは空港に到着。妻のビビアンが迎えに来てくれます。スタンリーは失業中で採用を目指していました。しかし、駐車場で仲良く2人が歩いていると、急に襲撃され、妻は刺されてしまいます。暴力を振るわれたスタンリーの横には息絶えたビビアンの亡骸が…。

コロンバス市警のギルモアが対応してくれます。「2~3人の犯人だった」と当時の状況を説明。自動車整備工なので犯人の車の走行音でエンジンの種類を特定できました。ウォーカー刑事が引き継ぎ、調書をとります。

スタンリーは悲しみに暮れ、葬儀でも妻の遺体から離れようとしません。娘のアビーと抱き合い、思い出を振り返ります。スタンリーは祈りは捧げず、悲痛な感情を内に閉じ込めるだけ。

知事の周囲は慌ただしくなっていました。治安回復を語ったそばで、死者が出てしまったのです。犯人逮捕の早期解決を目指すとマスコミの前で語る知事。

犯人は意外にも早く見つかり、スタンリーの証言もあって逮捕することができました。しかし、自分がこいつが犯人だと証言した男はあっさりその場で釈放されたのです。全く意味がわからない事態に大声で文句を言いますが、「どうせやつは中毒死する」と警察は冷たい態度。

警察は被害者のことなど何も考えていない。スタンリーは独自に行動することにします。

あの例の入れ墨の男を夜の街で目撃し、感情が爆発したスタンリーは家の壁を破壊し、中からを取り出します。そして仲間のデニスに連絡をとります。実は2人は特殊部隊に所属していた過去があったのです。妻と出会ったことでその世界とは距離を置くことにしていたのでした。

床屋をやっているデニスのもとへ向かうと「お前の計画はやめておけ」と忠告されます。復讐は意味がない、と。それでもスタンリーの硬い意志を目にし、ギャングの情報を教えてくれます。相手の名前はチャーリーです。ギャングであるレミ・Kの手下であり、敵は判明しました。

「本気でやるのか?」

怒りに突き動かされるスタンリーはもう止まりません。

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怒りのジョン・トラボルタ

『リベンジ・リスト』の原題は「I Am Wrath」。すごい単刀直入。劇中でも“ジョン・トラボルタ”演じる主人公スタンリー・ヒルがそう言ってました。「wrath」は「激怒」という意味で、劇中で登場した旧約聖書のエレミヤ書の一節(But I am full of the wrath of the LORD, and I cannot hold it in.)からとっています。妻を殺され自暴自棄になったスタンリーの投げ捨てた聖書が偶然その一節が載ったページで開くっていうシーンは、さすがに出来過ぎて笑っちゃいましたが、「I Am Wrath」とデカデカと背中にタトゥーを掘る様は愚鈍な復讐鬼丸出しで逆に良かったです

観る前からわかっていることですが、ストーリーは超平凡。平常運転です。物語の流れもいかにもテンプレどおり。公式サイトの隠す気のない黒幕からも、もうストーリーはいいやと投げ捨ててる感が窺えます。

しかも、『リベンジ・リスト』は敵が比較的弱く、さらに主人公側にはスタンリーの他にデニスという有能な相棒もいるので、一方的にフルボッコされるだけ。「普通の男だと思ってナメていたら、実は恐ろしい殺人能力を秘めた奴だった」系はそういうものなので、別に良いのですが。ただ、本作はそれにしても展開がのんびりしているというか、メリハリは薄いのがやや残念。ホント、終盤の知事邸への強襲シーンになってからようやく殺人能力の解放が見えてくるので、もう少し展開を早めてほしかったところ。

家のクローゼットの壁を破壊して武器やらパスポートやらを取り出し、相棒とともにいざトレーニング…のシーンは、もっとワクワクさせてくれてもいいじゃないですか。個人的には、最初は腕が鈍っていて銃撃も下手で、段々勘を取り戻していく…みたいなのが見たかった…。

アクションは『ジョン・ウィック』を手がけたスタントチーム「87イレブン・デザイン」が担当しただけあって、今流行りのコンバット系・近接ガンアクションでカッコいい。でも、真新しさはないのが寂しいです。“ジョン・トラボルタ”ならもっとやれると思うので、彼のらしさをふんだんに活かしてほしかったかな。ちなみに、本作は企画段階ではニコラス・ケイジが主演する予定だったらしいですね。

監督は、アーノルド・シュワルツェネッガー主演『イレイザー』や、ドウェイン・ジョンソン主演『スコーピオン・キング』などこれまでもアクション系を手がけてきた“チャック・ラッセル”なので安定感はあります。

そういえば、なんでスタンリーは知事に一時的とはいえ格闘でおされたのかもよくわからなかった…。スタンリーの強さの程が終始不明ですね、本作は。それよりもデニス演じる“クリストファー・メローニ”がスタンリー以上なアクション活躍を見せていたのが意外でした

そもそも今回のスタンリー、あんまり激怒って感じの見た目じゃなかったような…。“ジョン・トラボルタ”の顔があんまり怖くないというのもあるけれど。でもこのたいして怖そうに見えない顔つきの人が怒ると怖い…というギャップの意味では良い配役です。

まあ、怒りも収まったみたいだから、めでたし、めでたし…? いや、本当に収まっているのか、トラボルタさん。そんなんじゃ、今までの苦汁は全部吐き出していないでしょう。

今度はそうだなぁ、墜落しそうになっている飛行機をどれだけ食い止めることができるかというタイムアタックに挑戦するとか、もっと飛行機絡みで頑張ってほしいです(願望)。

『リベンジ・リスト』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 11% Audience 33%
IMDb
5.4 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 3/10 ★★★

作品ポスター・画像 (C)2016 I Am Wrath Production, Inc. リベンジリスト

以上、『リベンジ・リスト』の感想でした。

I Am Wrath (2016) [Japanese Review] 『リベンジ・リスト』考察・評価レビュー