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『ザ・リチュアル いけにえの儀式』感想(ネタバレ)…Netflix;男たちの中年の危機(生贄)

ザ・リチュアル いけにえの儀式

中年男たちが北欧で生贄の危機に直面!…Netflix映画『ザ・リチュアル いけにえの儀式』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:The Ritual
製作国:イギリス(2017年)
日本では劇場未公開:2018年にNetflixで配信
監督:デヴィッド・ブルックナー

ザ・リチュアル いけにえの儀式

ザ・リチュアル いけにえの儀式

『ザ・リチュアル いけにえの儀式』あらすじ

長年の友である4人の男たち。中年になっても毎度のように集まり、思い出を作るために何かやろうと話し合う。そこで決まったのは、スウェーデンの森を抜けるハイキングの旅に出かけること。静かな自然の中で喧騒から離れてリラックスする良い機会。しかし、彼らの胸の中には数ヵ月前に経験した取り返しのつかない悲劇があり、その癒えていない傷跡が想像を絶する未知の恐怖へと繋がっていく。

『ザ・リチュアル いけにえの儀式』感想(ネタバレなし)

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中年男性もホラーの餌食に

このサイト「シネマンドレイク」は2021年3月にリニューアルしたのですけど、その際に過去の感想記事をザっと確認している中で、いろいろと思ったことがありました。

そのひとつがホラー映画について。私のこのサイトでは感想記事を作品のジャンルごとにカテゴリ分けしているので「ホラー」に該当する作品の感想記事だけを抽出することができます。で、別に機能の宣伝がしたいわけではなく、そうやってホラーの作品を眺めているとふと考えたことがあって…。

ホラー映画で恐怖を味わうことになるのはたいていは「若者」か「女性」が多いんですね。逆に「中高年男性」が登場人物として恐怖の被害者となっていくケースは少ないように思います。これはなぜなのか。

実際に現実で起きている殺人事件では男性の方が被害に遭っていると言われています。でもホラー映画ではその限りではありません。これは若者や女性を「弱い存在」の対象として作り手や観客が見なしているからなのか。それともフェミサイドのように社会で不可視化されている被害者を映画というフィクションで浮き彫りにさせているからなのか

どちらにせよホラー映画の世界では中高年男性はどこか他人事なポジションになってしまいがち。ではそんな男性が恐怖を体験する作品はないのでしょうか。

最近はこれまでのジャンルのステレオタイプをひっくり返そうというクリエイティブな反転も目立っており、少しずつですが年齢のいった男性が怖い思いをしていくストーリーも現れてきました。

例えば、『ラ・ヨローナ 彷徨う女』は歴史を土台に権力の座につく男性が恐怖の餌食になりますし、2020年のリブート版の『透明人間』はそのホラーの性差の逆転を見事に描いていました。

きっとこれからは中高年男性も例外なく恐怖のどん底に叩き落されていくことでしょう。

そんな中、今回は中年男性たちだけが登場し、戦慄の体験に無様に翻弄されていく姿を描いたホラー映画を紹介します。それが本作『ザ・リチュアル いけにえの儀式』です。

本作はイギリス映画でありますが、大半の舞台になるのはスウェーデンです。とくに秀でた語りがいのある成功のバラ色な人生を送っているわけでもない4人の中年男性たちが、スウェーデンの大自然でハイキング&キャンプをする…けど予想だにしなかった恐ろしい存在が…というスーパーナチュラル(超自然現象)・スリラーです。遊びに来た若者たちではない、人並みの凡夫ってところがミソです。

ホラー映画ファンにとって『ザ・リチュアル いけにえの儀式』は監督も要注目の人物です。“デヴィッド・ブルックナー”というアメリカ人で、この映画が長編単独監督作となります。本作と『The Night House』(アメリカで2021年に公開予定)の評判が良く、その実力が買われて今度のカルト映画『ヘル・レイザー』のリメイク企画に監督として抜擢されました。おそらく今後も目立って大活躍していくホラー映画監督になっていくのではないかなと思います。

俳優陣は『僕と世界の方程式』『ジュラシック・ワールド 炎の王国』の“レイフ・スポール”、『パッチ・オブ・フォグ 偽りの友人』の“アッシャー・アリ”、『ダウントン・アビー』の“ロブ・ジェームズ=コリアー”、ドラマ『チェルノブイリ』の“サム・トラウトン”。この4人がメインで、それ以外はほぼ表立って登場はしません。

原作があって、“アダム・ネヴィル”というイギリスのホラー作家が執筆した小説になっています。

超自然的な化け物系のスリラーが趣味の人は大好物の映画だと思います。

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『ザ・リチュアル いけにえの儀式』を観る前のQ&A

Q:『ザ・リチュアル いけにえの儀式』はいつどこで配信されていますか?
A:Netflixでオリジナル映画として2018年2月9日から配信中です。
Q:グロい映像は多いですか?
A:残酷な描写はたくさんありますが、直接的な人体切断などのゴア描写はほぼないです。

オススメ度のチェック

ひとり◯(気軽に観れるホラー)
友人◎(ホラー映画好き同士で)
恋人◯(恐怖を共有して)
キッズ△(怖いのが苦手でないなら)
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『ザ・リチュアル いけにえの儀式』予告動画

The Ritual | Official Trailer [HD] | Netflix
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ザ・リチュアル いけにえの儀式』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):森に迷い込んだオッサン

パブで酒を飲みかわす冴えない中年男の5人。今度はどこに観光に行くかをああでもないこうでもないと議論中。「アムステルダムは?」「トスカーナは?」「ベルリンは?」「ベルギーは?」

そのときロバート(ロブ)「スウェーデンでトレッキングは?」と提案してきます。ノルウェーとの国境近くにある「キングズ・トレイル」がオススメなのだとか。ただ、他の男たちはイマイチな反応です。でも他に良い案もなく…。

答えも出ないまま街の夜道を歩いているとルークはコンビニでビールを買っていくと言います。フィル、ハッチ、ドムの3人は仕事があるからと遠慮し、3人を外で待たせつつ、ルークはロバートとコンビニの中へ。

何気なくビールを選んでいると、床に女性が座り込み、憔悴しています。怪我をしているのか。これはオカシイ。そう思った瞬間、店から出てきたの明らかに強盗と思われる男2人。ルークは咄嗟に商品棚の裏に隠れますが、近くにいたロバートは強盗犯のひとりに後頭部を強打され、大量の血を流して倒れました。助けを訴えているような目を向けつつ息絶えようとするロバートをルークは怯えて見ていることしかできず…。

それから6か月後。ルーク、フィル、ハッチ、ドムの4人はスウェーデン北部の平原のど真ん中でキャンプをしていました。

「眠れたか?」と続々と起きてくる3人。ルークは先に起きています。

雄大な自然を満喫しながらトレッキングを続行していきます。風景に圧倒される一同。ある場所で石を並べてロバートの写真を置き、追悼します。「良い奴だった。俺たちの中で一番…」

そしてまたも夜はキャンプ。「ロバートが生きていたらここには来なかった」とルーク。ハッチは「前にも言ったけど、あれは誰が何を言おうとお前のせいじゃない」と励まします。

翌朝。目的地はロッジです。フィルとドムは駄話をしながら歩いていましたが、ドムは窪みに足をとられ、挫いてしまいます。悪態をつくドム。平気だろうとルークは冷静ですが、ドムは足を引きずり、痛いことを猛アピール。

キャンプ地に戻るなら6時間。ロッジまで行くなら8時間。電波も届かないので救援は呼べない。

ルークとハッチは密かに会話。森を抜ければ半分の距離でロッジにたどり着けるとハッチ。近道があるなら行こうとドムも同意するので森へ向かいます。なぜか森の境界に朽ちた車があります。

そして薄暗い森へ。4人で記念写真を撮ります。

最初は軽口を叩いて意気揚々としていましたが、木漏れ日の中で異様なものを目撃します。木の枝に大きな雄鹿が引っかかって吊るされているのです。固まる4人。ハンターがやったのか、それともクマがこんなことをできるのか。考えてもさっぱりわかりません。今も血がポタポタと地面を垂れており、殺されたのはついさっきのようです。不気味さに身震いする4人はすぐにその場を離れることにします。

天候は悪化。暗くなってきた中、土砂降りまで。テントを張るか迷っていると、稲光に照らされて樹木に怪しい文字があるのを発見。そして奥にはらしきものが。

ずいぶんとボロボロの家です。ドアを強引にこじ開けると中は酷いありさま。少なくとも普通の人が住んでいたような気配はありません。その瞬間、ルークは変な鳴き声のようなものを聞いたような気がします。

室内は酷いですが外よりはマシ。しかし、2階でフィルがとんでもないものを発見します。藁のようなもので覆われた人間風の物体。死体なのか。これは魔術的な何かではないかと不安を口にしますが、とりあえず見なかったことにします。

これは悪夢よりも恐ろしい地獄の始まりだとも知らずに…。

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あの化け物は何?

『ザ・リチュアル いけにえの儀式』はジャンルとしては、現代人には理解不能な独自の風習や文化の狂気を身をもって体験することになる「ペイガニズム映画」です。北欧に観光に行くと…という導入からして『ミッドサマー』なんかと同じですね。なんでか欧米人の中では北欧はそういうイメージばかり。やっぱりキリスト教ではない自然崇拝が残っているとみなされているからなのかな。

もっと具体的に言えば「ヒーザニズム(heathenism)」「アサトル(asatruar)」のような復興異教主義の類。ただし、『ザ・リチュアル いけにえの儀式』はそれらを正確に描こうなんてしていることもなく、あくまでその要素を部分的にサンプリングして映画の構成に使っているだけですが。

ルークたち4人はスウェーデンの辺鄙な森を近道のつもりで歩いていると、まずシカの異様な死体を発見。どう考えても普通の動物の仕業ではありません。そして木にルーン文字が彫られているのを発見し、たどり着いたボロ家では樹木化したような死体が。

そして謎の鳴き声、謎の強襲者。その正体は信仰しているコミュニティ集団から「巨人族のユトゥン」「ロキの子孫」と語られます。ユトゥンというのは北欧神話の巨人で、精霊みたいなもの。早い話が「トロール」と同質の存在です。北欧神話に登場する世界は9つあり、そのひとつが巨人の住む「ヨトゥンヘイム」(MCUの『マイティ・ソー』シリーズでよく聞くあれ)。ノルウェーには「Jotunheimen」という名前の山地もあるそうで、なんだか神話と日常が一体化していて、ファンタジー好きにはワクワクしてくる地域ですよね。

まあ、あの作中の4人は地獄を体験するのですけど…。

それにしても作中でのユトゥンという化け物の描写や演出が良かったです。なかなか姿を見せず、焦らしてくるような見せ方なのもいいですし、ついに燃える家に照らされて全身像が…!というあの神々しさも感じられる雰囲気もグッド。

作中ではあの化け物のデザインは完全に木っぽい感じでしたし、スラヴ神話の「レーシー」のようでもあるのですが、シカみたいな獣らしさも残しており、良いバランスで結構好みです。『もののけ姫』のシシ神みたいですよね。

正直、私は北欧神話が大好きだし、どちらかと言えばユトゥンとも仲良くしていきたい派なので、もし本作みたいな境遇になったらすっかりあのコミュニティに感化されて「ここで生きていこうよ」なんて言い放つ狂気のキャラクターになっていたかもしれない…。いや、だってあのユトゥン、カッコいいじゃないですか。子どもにだって伝説のポケモンだよって言えば信じそうじゃないですか。崇めたくなるでしょう。つまらない権力者に従うよりはよっぽど…(信者の戯言はカット)。

本作が好きなら『トロール・ハンター』とかも趣味に合うかな。

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中年男性の抱える恐怖

そんなアツくなる信者トークはさておき、『ザ・リチュアル いけにえの儀式』の物語に触れますが、本作は「中年男性の抱える恐怖」というものに向き合ったストーリーなのだと思います。

男性は中年に到達するといろいろな悩みを抱きます。ひとつは「自分はこのままでいいのだろうか」という不安です。とくに「男らしさ」がその不安の軸になっていることも多いです。称賛されるキャリアを得られていないだとか、モテモテな人生を送れていないだとか、加齢によってみすぼらしくなった自分の肉体がバカにされているんじゃないかとか、そういうもの。

冒頭でもルークら5人は世間的には平凡でとるに足らないオッサンの集まりです。それでも人生を楽しんでいこうよということでロバート(ロブ)は「スウェーデンでのトレッキング」を提案するのです。おそらくロバートはあのグループの中で本当に良心だったのでしょう。そういうことってあると思います。ホモ・ソーシャルではあるのだけど、かろうじてひとりの正しさを捨てていない男がいるおかげで、なんとかバランスを保てている集団という…。

しかし、その要になるロバートを殺人事件で失ってしまいます。ここからすでにあのオッサン集団の崩壊が始まります。

スウェーデンに舞台が移り、ルークが映し出されます。きっとルークは寝られなかったのでしょう。というかずっと罪悪感を抱えてこの6カ月を過ごしているのでしょう。つまり、彼は「男らしい」行動をとれなかったのです。あの4人の中では最も男らしさの危機に怯えています。冒頭を見る限りだとルークは中心的ポジションにいるのかなという感じでしたが、あの一件でグループ内でも下位に転落したのです。

ハッチはこういう野外活動に慣れているのか、あの時点ではリーダー格になっています。道中でうんちくもよく語っており、饒舌で余裕そうです。ハッチは不幸な出来事の結果、男らしさの優位性を得たのでそれを利用しようという魂胆も見えます。ルークに同情して見せたり、内心ではフィルやドムを下に見ていたり、明らかにこの状況を楽しんでいる感じもありますね。

ドムはあの4人の中では最もダサさを抱えており、それは本人も自覚気味。足を挫いたとややオーバーにアピールしたりと、典型的な「マンフル(病気や怪我などで”自分の方が辛いんだ!”と男が主張すること)」的言動に終始しています。その劣等感を一番に堆積しているドムは弱体化しているルークに噛みつき、あの男集団にあったかろうじての調和を乱していくことに…。

フィルは寡黙であまり何を考えているのかもわかりません。ただ、彼はあの中では唯一白人ではありませんから、それが立場を無意識に控えめに後退させているとも分析できるでしょう。そのフィルはボロ家での宿泊で気が付けば全裸祈りを捧げてしまっており、相当に精神的に滅入ってしまいます。あそこで彼の抱えていた不満が爆発するのも無理からぬことです。

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中年男性に希望はあるか

『ザ・リチュアル いけにえの儀式』では男たちは自分の恐怖に飲み込まれていき、最終的にはルークが生き残ります。

あそこであのコミュニティからの誘い(それも若そうな女性からの誘いという点が意味深)をルークは断るわけです。それは現実と向き合ってやる!という中年男性の足掻きと言えるのか。それともどんなに現実逃避しても逃げられない底なし沼のようなものなのか。

少なくともルークはロバートを見殺しにしたあのコンビニの幻覚を抜け、新しい空気を吸えたようにも思えるラスト。その先に平和が待っているとは楽観できないですが(たぶんもっとトラウマが酷くなってそうだけど)、こういうスリラー映画のエンディングとしては良い幕引きなんじゃないでしょうか。

ホラー映画が中年男性を主人公に据えるとこういう「男らしさ(マスキュリニティ)」問題を描いていくこともできる。あらためてホラー映画の潜在的なパワーを感じますし、今後もどんどんいろいろなアプローチを楽しみにしたくなりますね。

北欧の観光では森の近道は選ばないように!

『ザ・リチュアル いけにえの儀式』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 73% Audience 60%
IMDb
6.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 7/10 ★★★★★★★

作品ポスター・画像 (C)eOne Films

以上、『ザ・リチュアル いけにえの儀式』の感想でした。