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『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』感想(ネタバレ)…アフリカ援助はこの男におまかせ

戦狼 ウルフ・オブ・ウォー

アフリカ援助はこの男におまかせ?…映画『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:戦狼2 Wolf Warrior II
製作国:中国(2017年)
日本公開日:2018年1月12日
監督:ウー・ジン
ゴア描写

戦狼 ウルフ・オブ・ウォー

せんろう うるふおぶうぉー
戦狼 ウルフ・オブ・ウォー

『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』あらすじ

元特殊部隊「戦狼」の精鋭で、とある事件から軍籍を剥奪されたレン・フォンは、反政府勢力に殺害された恋人のロンの敵を討つべく、アフリカの地にいた。しかし、現地で内戦が勃発してしまう。一度は戦火を逃れたものの、レン・フォンは元軍人としての義務感や正義感を捨てることができず、内戦下に取り残された同胞を助けるために再び戦地へと身を投じる。

『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』感想(ネタバレなし)

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ウー・ジンの勢いは止まらない

アメコミ映画が好調すぎて高笑いが止まらないマーベルは、さらなる市場拡大のため、今後、中国にゆかりのあるスーパーヒーローを投入するというニュースがありました。

だったらぜひ起用してほしい人がいます。その名も“ウー・ジン”。今、中国で最も勢いに乗っている俳優です。

別名“ジャッキー・ウー”。1974年生まれの現在43歳。幼少期からカンフー生活に身を投じてその武術を習い尽くし、ジェット・リーと同じ学校で同じ師匠に学んだ弟弟子にあたる男です。当然ながら、アクションのキレは最高。体術のみならず、“ジェッキー・チェン”のような愛嬌も持ち合わせた彼を見れば、ファンになることは間違いなし。

そんな“ウー・ジン”は俳優業だけでなく監督としても大成功をおさめており、彼の最新作が本作『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』です。本作では主演・監督・脚本・製作総指揮を務めています。

邦題からは全く伝わりませんが、この映画は「戦狼(Wolf Warrior)」というシリーズの2作目です。前作となる1作目でも“ウー・ジン”が監督を務め、その邦題は『ウルフ・オブ・ウォー ネイビー・シールズ傭兵部隊 vs PLA特殊部隊』。ちょっとどうかしてる邦題ですが、まあ、作品の内容自体、ちょっとどうかしてるので、あながち間違いではない…。その内容はというと、主人公が所属する中国軍の特殊部隊「戦狼」が、麻薬王が雇った元ネイビー・シールズ率いるアメリカ人傭兵団と激しい戦闘を繰り広げるというもの。ほんと、このまんまの話です。

観てない人でも察しが付くと思いますが、典型的な「中国万歳!」映画です。中国の圧倒的な軍事力を誇示し、国土を脅かす存在は許さない…そんなプロパガンダを隠すこともなく全面に押し出してます。

じゃあ、その続編である本作はどうなのか。前作と違ってアフリカが舞台で基本的に主人公が孤軍奮闘すると聞いて「ああ、なら“ランボー”みたいな感じで、だいぶ“中国万歳”要素は薄れてるのかな」…そう考えていた時期が私にもありました。観終わった後の結論をいえば、プロパガンダは相変わらずです。むしろ全くぶれていないし、パワーアップすら見せてます。ここまでくると清々しいです。

しかし、そんな口うるさいことを書きたいのではない(たぶんそこに文句を言ってもどうこう改めるお国ではない…)。本作の魅力はアクション。そのノイズを無視してでも、この怒涛のアクションを味わう価値はあります。軽く前作の10倍はスケールアップしてますから。もう笑っちゃうレベルですよ。

日本の宣伝も一切中国要素を感じさせない戦争大作映画のようなポスターを作るなど涙ぐましい努力が窺えるわけですし、1月のバカ映画のビッグウェーブに乗っかっていきましょう。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):今度はアフリカで

アフリカのマダガスカル海域。数隻のボートが大型コンテナ船を包囲し、網でスクリューを破壊して停止させます。海賊です。銃で攻撃を加え、船員に死傷者が…。

すると躊躇なく海に飛び込むひとりの男。海中で海賊と交戦。驚異の身体能力で相手を次々と倒していきます。一隻のボートを制圧し、見事に海賊を対峙。

この強すぎる男の名はレン・フェン(レイ・フェン)。元「戦狼」部隊の隊員で、今は問題行動ゆえに除隊してアフリカで暮らしていました。

レンはアフリカではフリーのボディガードになっており、船員からも地元の住民からも信頼されています。トゥンドゥ(トゥング)という少年と親しく、その子は「第2の父」としてなついてきて、他愛もない時間を過ごしていました。

レンがなぜアフリカに行くことにしたのか。その理由は上官であり恋人でもあったロン・シャオユンがアフリカで殺害されたと知ったからです。その喪失感はどんなに騒いでもまだ消えていません。手がかりとなる銃弾だけは今も持ち歩いていました。

この地域では疫病が拡大し、緊急事態となっていました。反政府軍「レッドスカーフ」の動きも活発です。

ある日、ビーチで遊んでいると突然の銃撃を受けます。武装した集団が攻めてきます。反政府軍です。街もパニックになっていました。レンはトゥンドゥと一緒に退避。店に逃げますが、すぐに武装集団が占拠してきて、レンは持ち前の格闘戦術で応戦します。

反政府組織は住民を虐殺。こうなれば中国大使館に逃げるしかないです。

ただ、街は逃げ惑う住民で溢れかえっており、反政府組織の攻撃は容赦なし。大勢が乗ったバスさえもロケット砲で爆破してきます。

そこへ中国武装警察が割って入ってきます。なんとか大使館に避難できました。

この騒動の報告を受けた中国はすぐさま艦隊を送り込み、事態の収拾に取り掛かります。レンたちはファン大使と一緒に軍艦への民間人の避難の列に加わります。しかし、トゥンドゥは母を置いていけないと降りてしまい、レンも追います。こうなったら戦うしかない。

レンは孤立した村にいる重要人物を救う危険なミッションに名乗り出ます。

「人民解放軍南東軍区特殊部隊“戦狼”元隊員、レン・フォンです」

反政府組織の狙いはチェン博士という医者のようです。しかもこの反乱の裏にはヨーロッパの民間軍事会社「ディランコープス」が蠢いており、その指揮官のビッグダディは戦力を持っていました。

レンはこのかつてない激戦を突破できるのか…。

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中国は発展途上国の味方です

前作は「中国の圧倒的な軍事力を誇示し、国土を脅かす存在は許さない」というプロパガンダが隅々までいきわたっていたのですが、今作『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』では「世界を守るのは中国です」という実にシンプルな恩着せがましいメッセージがドシンと鎮座していました

とくになんでしょう、中国も“先進国”としての自覚に芽生え、「貧しい国々を助けます」的な先進国特有の上から目線感が沸き上がったのでしょうか。今作の舞台がアフリカなだけに、アフリカ援助をアクション映画のプロットに置き換えただけにすら思えてきます。

笑ってしまったのが、アフリカの貧しそうな人々に食料を配るシーンが唐突に挿入される部分。さっきまで凄いドンパチしてたのにこの変わりようですよ。

あと、アフリカ描写が非常に抽象的でざっくりしているのも特徴。どこの国が舞台なのか不明確なのは仕方ないにしても、スラム街っぽいところにいたかと思えば、いきなりライオンやシマウマのいるサバンナに移動しているなど、「ん?」となるところは多々あります。アフリカに住む人々の描き方もコテコテで、さすがに「アメイジング・グレイス」を歌わせてセンチメンタルな雰囲気を演出し、黒人の子どもに「戦わないで」と言わせるのはやりすぎだと思いましたけど…。

中国がアフリカをどう思っているかすごくよくわかりますよね。

ただ、そんな偉そうことを書きましたが、私たち日本人もアフリカをろくに理解していないので、他国のことをとやかく言える立場じゃないのですが…。

また、中国がアフリカ援助に力を入れているのは事実だし(投資総額では約71兆円を超えているとか)、その一方でアフリカの民間レベルでは対中感情が悪化しているなんて意見も聞きますから、中国側もかなり焦るものがあるのかもしれません。そういう事情を踏まえながら映画を観るとまた発見があると思います。

本作は一部のアフリカ諸国で公開済みとのことで、現地の人はどう思ったのでしょうかね。

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キャプテン・チャイナ

で、肝心のアクション。これがプロパガンダを吹き飛ばすぐらい凄まじい。

まず、冒頭の掴みとなる水中格闘シークエンスです。貨物船を襲おうとする海賊を水中に引きずり込み、一度も水上に出ることなく、一網打尽にする長回し風シーンがアホみたいに凄い。“ウー・ジン”演じるレン・フォンは、サメ映画のサメなのかな…。

それで続いて内戦勃発による街中での阿鼻叫喚の地獄状態。レンはRPGの弾丸を金網で止める荒業を披露。銃弾どころか、RPGも効かないのか…。

さらには人命救助のために向かった施設で、車で突っ込み壁ごと壊して突入するという、全く建物内の人質を気にしている素振りもないダイレクトアタックを決めた後、白熱のカーチェイスが展開。この場面、車が異常に頑丈ですが、たぶんFPSゲームとかでよくある自動回復機能がついているのでしょう

こんなパワープレイで無双しまくるレン。さすがに制作陣もこれでは敵が可哀想だと思ったのか、ここでレンの体調に異変が。謎の病気設定でレンは弱体化。しかし、敵にしてみれば残念なことにレンのパワーダウンは長続きせず、しかも頼りになる仲間を連れて勢いが倍加してしまうという悲劇。

かつての英雄である老兵ホー、イケメンミリオタのイーファン。この二人はとても良いキャラしてましたね。ちゃんとそれぞれに活躍も用意してあるし、3人のコンビネーションの集大成である戦車バトルは圧巻。個人的にはその前のテクニカル車両を3連RPGで仕留めるシーンがバカっぽくて好きです。

でも、最終的には戦車をロープでひっかけてひっくり返すなど、武器に頼らず知恵と体力で勝つのが嬉しいところ。頭も冴えている筋肉バカっていいよね。

レンたちの活躍を見ていたら、すっかり私の心も「中国万歳!」になってるわけですよ(あれ、ちょろい)。というか思うのですけど、これ、中国が凄いんじゃなくて、レンが凄いのですよね。もう中国いらないよね。“キャプテン・アメリカ”ならぬ、“キャプテン・チャイナ”です。

次はどんなプロパガンダとアクションを見せてくれるのか、「3」も楽しみです。

『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 69% Audience 75%
IMDb
6.0 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★

(C)Beijing Dengfeng International Culture Communication Co., Ltd. All Rights Reserved. 戦狼 ウルフオブウォー

以上、『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』の感想でした。

Wolf Warrior II (2017) [Japanese Review] 『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』考察・評価レビュー