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ドラマ『イエロージャケッツ』感想(ネタバレ)…青春は思い出したくない味がする

イエロージャケッツ

青春は思い出したくない味がする…ドラマシリーズ『イエロージャケッツ』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Yellowjackets
製作国:アメリカ(2021年)
シーズン1:2022年にU-NEXTで配信(日本)
シーズン2:2023年にU-NEXTで配信(日本)
原案:アシュリー・ライル、バート・ニッカーソン
イジメ描写 DV-家庭内暴力-描写 児童虐待描写 交通事故描写(車・飛行機) ゴア描写 性描写 恋愛描写

イエロージャケッツ

いえろーじゃけっつ
イエロージャケッツ

『イエロージャケッツ』あらすじ

1996年、高校の女子サッカーチーム「イエロージャケッツ」は州大会を勝ち抜き全国大会出場を果たすが、会場へ向かう飛行機が隔絶された山奥に墜落してしまう。死傷者が多く出た悲劇から25年が経った2021年、かつての過酷なサバイバルから生還したメンバーはすっかり大人になってそれぞれの生活を送っていたが、事故の詳細に関して一切口を開かなかった。そんな中、彼女たちの周りでは不可解な現象が起こり…。

『イエロージャケッツ』感想(ネタバレなし)

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2022年、最もザワつかせた“WTF”ドラマ

映画やドラマの英語圏の感想を焦っていると、わりと頻繁によく見る言葉があります。そのひとつが「WTF」です。これ、何の頭文字だろう?と知らない人にはさっぱりでしょうが、その正体は「What the fuck」の略。和訳すると「なんてこった!」みたいな感じですかね。実際はもっと口汚いですけど…。

作品の感想でこの「WTF」が使われている場合はたいていは何か衝撃的な展開とかが作中であって、視聴者が語彙力を失っている状態を示しています。だから便利なスラングです。驚愕のエンディングなどがあれば、とりあえず「WTF!」です(まあ、作品を批判するときにも使えるのだけど)。

2022年はいろいろなドラマシリーズがすでに配信・放送されましたが、その中でもとくに「WTF」が連呼されていた作品のひとつ、それが本作『イエロージャケッツ』です。このドラマ、なんというか「WTF」と言ってくれと狙っているかのような内容で…。

予告動画が公開された時点で話題だったのですが、本国では「Showtime」で2021年11月から第1話が独占配信されるや、その強烈な物語と映像で騒然となり、一気に注目を集めました。「Showtime」で扱われた歴代ドラマシリーズの中でも上位に入る視聴者数を記録。原作のないオリジナル作品でここまでの話題性というのはスゴイですね。

で、どういう物語なのかというと、これがネタバレ厳禁な内容で…

物語は1996年にとある高校の女子サッカーチームの面々が全国大会に出場するためにプライベートジェットで移動していたところ、それが山中に墜落。かろうじて助かった生存者たちが、その自然に囲まれた森で1年半以上もサバイバルしないといけなくなるという、いわば「漂流・遭難」モノです。

同時に2021年の時代も並行して描かれ、その過酷なサバイバルを生き残った当時の女子たちが中年になった姿が描かれます。

「だったらサバイバルを助かったとオチがわかってしまうし、つまらないじゃん!」と思うでしょうが、なぜかその生き残った現在中年の女性たちは当時のサバイバル生活について積極的に語ろうとしません。その理由はなぜなのか…それが少しずつ明かされていくというミステリー要素が濃いです。『イエロージャケッツ』の個性的な特徴はいくつかあって、まずこの1996年と2021年が並行して描かれて真相が浮き彫りになるというミステリーサスペンスが面白さのひとつ。ただの遭難モノではないのです(言いたいけど言えない…)。

きっと見終わったら「え? あれはどういうことなの?!」「あいつはああだってこと?!」「こういうことじゃない?」と感想や考察を誰かと共有したくなること間違いありません。

もうひとつの特徴は、女性主体で物語が進行するということ。女子たちの漂流・漂着モノと言えば、最近は『The Wilds(ザ・ワイルズ 孤島に残された少女たち)』という、これまたジャンル革新的なドラマシリーズがあったばかりですが、この『イエロージャケッツ』もその系統になります。『イエロージャケッツ』では男子もでてくるのですが、物語を主導するのは女子たちであり、さながら女子版『蠅の王』です。

『イエロージャケッツ』の原案を手がけたのは、ドラマ『The Originals』の“アシュリー・ライル”&“バート・ニッカーソン”のコンビ。エピソード監督には、『ストレイ・ドッグ』の“カリン・クサマ”、『Partisan』の“アリエル・クレイマン”、ドラマ『Y:ザ・ラストマン』の“デイシー・フォン・シャーラー・メイヤー”などが参加しています。

俳優陣はかなり多いのですが、大人勢としては『この世に私の居場所なんてない』の“メラニー・リンスキー”、ドラマ『THE BLACKLIST/ブラックリスト』の“タウニー・サイプレス”、『マー サイコパスの狂気の地下室』の“ジュリエット・ルイス”、『アダムス・ファミリー』の“クリスティーナ・リッチ”など。10代のティーンたちを演じるのは、『海底47m 古代マヤの死の迷宮』の“ソフィー・ネリッセ”、『スクリーム』の“ジャスミン・サボイ・ブラウン”、『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』の“エラ・パーネル”、『When the Streetlights Go On』の“ソフィー・サッチャー”、『スイート・ライフ』の“サミー・ハンラティ”など。

『イエロージャケッツ』はハマる人はどハマりする、ジャンル中毒になるドラマシリーズ。ただ、非常に痛々しくエグい描写…要するにゴア描写が満載なので、その点は覚悟してください。

シーズン1は全10話。1話あたり約55~60分とボリュームがありますが、鑑賞しだすと続きが気になって止まりません。日本では「U-NEXT」での独占配信です。

日本語吹き替え あり
本名陽子(ショーナ)/ 小林ゆう(ナタリー)/ 田村ゆかり(ミスティ)/ 朴璐美(タイッサ)/ 白石涼子(ジャッキー) ほか
参照:本編クレジット

オススメ度のチェック

ひとり 4.5:ドハマりする中毒性
友人 4.5:考察の語り合いが白熱
恋人 4.0:ジャンルが好きなら
キッズ 3.0:残酷描写が満載
↓ここからネタバレが含まれます↓

『イエロージャケッツ』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤):何が起こったのか

1996年。ニュージャージー州のとある高校の女子サッカーチーム「イエロージャケッツ」は見事に勝利をおさめ、全国大会に行くチャンスを掴みました。

そのチームでキャプテンのジャッキーは恋人のジェフを家の部屋に連れ込んで体を交えますが、ジャッキー本人的には退屈に感じていました。ジャッキーを車で迎えに来た親友のショーナと合流します。ジャッキーはショーナの男性経験のなさを無自覚に触れつつ、得意げです。

チームではひと悶着起きていました。選手のひとりのタイッサが過去にヘマしたアリーにボールを渡さないようにしようと他の仲間に持ち掛け、練習中にアリーを強引に蹴り倒して、なんとアリーは骨が飛び出す大怪我を負ってしまったのです。チームは憂鬱な空気になり、なんとかジャッキーが励まします。

その後、夜にパーティがあり、ショーナとタイッサは喧嘩に発展。ジャッキーは全員に集めて、それぞれの良さを語り合わせて一致団結を取り戻させます。ローラ・リー、ヴァネッサ(ヴァン)・パーマー、ロッティ、ナタリー、マネージャーのミスティ…みんな大切な仲間。でもショーナは隠していました。実はジェフとセックスをしていたことを…。

そしてチームは飛行機に乗り、全国大会の地へ向かいます。飛行機は離陸し…。

25年後の2021年。スター・レッジャー紙の記者のジェシカ・ロバーツは、中年女性のショーナのもとを訪ね、「飛行機墜落で何があったの?」と質問します。ショーナは「仲間とも連絡を取っていない」と言い、頑なに語りません。

ショーナはテレビでタイッサの姿を見ます。上院議員選挙に出馬しており、パートナーの女性と仲良く映っており、「同性愛界のカマラ・ハリス」と絶賛されていました。ショーナはタイッサとダイナーでこっそり落ち合い、テレビに迂闊にでていたことを咎めるも、「誰かがが変なことをしない限り何も心配することはない」とタイッサは言います。

ショーナの方と言えば、夫のジェフとはぎこちない倦怠期を迎えており、娘のキャリーとも会話が弾みません。

ショーナはクローゼット奥の金庫に手を伸ばします。そこには封印した、でも削除はできなかった、25年前の記憶が閉じ込められていました。ショーナはあの時の出来事を日記に記録していたのです。

再びその日記を開くと記憶が鮮明に蘇ります。

1996年。パニックになる飛行機。窓を見れば地面が近づいてきて、凄まじい衝撃で墜落したこと。大勢の無惨な死体。そしてあの飢えと孤独に苦しみ抜いた末に辿り着いた狂気の夜…。

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シーズン1:青春は最悪の味だ

『イエロージャケッツ』はさっそく第1話で衝撃の事実が提示されます。飛行機墜落で1年7カ月も山中でサバイバル生活を送った女子サッカーチームの面々。そんな一同は実は人肉を食べて生き抜いていた…。

この遭難漂流にカニバリズムはある種のお約束ですが、本作の場合は「ウルグアイ空軍機571便遭難事故」といった史実をモチーフにしているのだと思われます。実際に人肉を食べて飢えをしのいだ事例はあるのです。

ただ、第1話の時点で、カニバリズムでした!以上の衝撃がありますよね。だって…なんか…オカルトじみたことになっている!という禍々しい映像が見せられるのですから。一体あの墜落スタートからどうしてこんな狂気に陥ったんだ?と誰もが思う。その謎が解き明かされていくのが本作の醍醐味です。

本作は、2021年の生存者(ショーナ、タイッサ、ナタリー、ミスティ)は知っているけど、視聴者は知り得ない真実…という情報量のズレでサスペンスを生み出し、ときにミスリードさせます。さらに現代パートでは生存者を脅迫する行為が起き、生存者さえも知らない何かが今起きていることもわかり、余計に情報は混乱。誰が犯人なのか、誰か嘘をついているのか…鑑賞者は疑心暗鬼になってきます。この翻弄させるストーリーテリングがとても巧みです。

同時に、1996年のパートでは、アンチ青春とも言うべきか、後悔しても遅い・反省しても今さら…そんな苦々しい10代の時期というものを重ねるような物語です。あそこまで壮絶ではないでしょうけど、喧嘩別れした友情、歪んだ承認欲求、成長への焦り、愛への渇望…そんな諸々はよくあること。私は青春を美化するより、こういう歪みをはっきり示す方が好みかな。

本作ではそれが女子主体で展開されるのが特徴的で、実はゲイだったコーチのベン・スコットや、墜落時に投げ出されて死んだコーチのマルチネスの息子であるトラビス(あだ名はフレックス)とその弟ハビなど、男性陣は脇においやられています。後半のマジックマッシュルームのデスカミングではトラビスがレイプみたいな目に遭うし…。

中年になってからもあの4人はそれぞれ辿った人生はかなり違いますが、それでもあの過去を共有して、それが心に突き刺さっている。最終話の最悪な同窓会シーンがまた青春の嫌味を強調していましたね。

でもあの後半のうっかり勘違いでショーナが刺し殺してしまったアダムを4人で遺体処理するシーンの完全に手慣れた淡々とした作業風景とか、ちょっと不気味だけど不謹慎な笑いを突発させるあたり、シュールなユーモアセンスのあるドラマでもありました。

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シーズン1:謎を考察する

ここからは考察タイム。『イエロージャケッツ』のシーズン1の謎を整理します。

あんな第1話を見せられたらてっきりガンガン人が死んでいくのかと思ったら案外と死なない1996年パート。そしてシーズン1最終話では、2021年に自殺したと思われるトラビスの銀行口座を解約した人物を中年ナタリーがスージーに調査させていると「ロッティ・マシューズ」の名が報告され、それを聞く間もなくナタリーは複数の何者かに拉致されてしまいます

つまり、昔から予知能力があったらしいロッティはおそらくあの少女たちを狂気化させた張本人で、なおかつ生存していて、1996年パートを見る限り、何かしらのカルトを今も率いているのではないか…そう推察できます。まあ、ロッティを演じるのは“コートニー・イートン”でしたからね、やはりタダモノじゃない起用ですよ。

となると、根本的な疑問が浮かびます。誰が死んで誰が生き残ったのだろう?…と。

外で凍死したに見えたあのジャッキーが死んだのは間違いなさそうです。それは中年ショーナの大きな後悔になっています。軽飛行機で脱出を試みて空中で爆発四散したローラ・リーも死亡したでしょう。

ではヴァンはどうか? ラストでクマの心臓を捧げて「我らを闇に解き放て」と呟くロッティの背後にヴァンとミスティもいて祈っていたので、カルト信者になって生きていそうです。

となるとミスティはカルト側なのか? ジェシカを監禁して毒を盛った相当にヤバい奴として今も狂気を解き放っていますが、その立場はとても曖昧。ミスティのキャラクターは見事にトリックスターとして機能していますね。

わからないと言えばタイッサも衝撃の真実が最後に明らかになりました。妻のシモーヌが家の地下で発見したおぞましい祭壇空間。犬の首に、あのマークもある。中年タイッサのこれは夢遊病というだけで説明がつくのか?

ショーナも結局はあの妊娠状態をどう処理したのかわからずじまい。キャリーは年齢的に1996年時の妊娠の子ではないですけど、だったらどうしたのか。もしかして出産していて死亡させたのか。食料にしたのか。それとも隠し子として今も生きているなんて驚きの展開もあるのか。

生死に関して言えば第1話冒頭で森をネグリジェ姿で走っていて穴で串刺しになって死んだ少女は誰なのか。最初はロッティに見えましたけど、彼女はカルトのリーダーっぽいし…。でもカルトの初期リーダーを殺して、誰かが次期リーダーになった線もあり得ます。逃げて串刺しになった少女は金のネックレスを持っていたようですが…。

あの第1話で描写されたカルト化した集団の中心にいたのは鹿角で装飾した人物。顔は見えませんでした。ミスティは別に唯一顔見せしていたので彼女ではないことは確かです。アントラークイーンの正体が気になります。

そして何よりもあの山中のキャビンは何なのか。『死霊のはらわた』的な思わせぶりはミスリードなのか。

まだまだ謎はあります。行方不明のハビはどうなったのだろうとか、トラビスは本当に自殺なのかとか…。

結論。わからないことだらけだ…。WTF…。

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シーズン2:いっぱい食べるよ!

※シーズン2に関する以下の感想は2023年12月12日に追記されたものです。

食欲旺盛な『イエロージャケッツ』はシーズン2に突入。これがアニメの第2期とかだったら「おかわり」とか「2皿目」みたいなサブタイトルついてるな…。

1996年パートは本格的な冬になり、飢えをしのぐ過酷な極寒サバイバルへとステージ難易度がアップ。ついにジャッキーをみんなで食べ、人食に手を出します。そして次の生贄をトランプで決めることにし、クイーンを引いたのはナタリー。でも土壇場で逃走し、ハビが氷の下に落ちて凍死したので、ハビを食べることにし…。着実にメンバーが減っていきましたね(同時にショーナの解体技術が磨かれていく)。

一方の現代パートでは、大人ロッティ大人ヴァンが登場し、生存者6人が再び集います。ここでなぜかまた例のトランプ生贄をすることになり、ショーナが引いてしまうも、娘のキャリーの乱入もあって、ミスティがナタリーを薬物注射で殺してしまい…。因果応報です。

全体的にシーズン2はシーズン1と比べると衝撃度は少なめだったかな。まあ、あのシーズン1の衝撃は超えられないですよね。

でもラストのラストで大変なことが起きてました。まさかの小屋の全焼です。おそらく恋人ポールの幻影を見るほどに疲弊していたコーチのベンが放火したのだと思いますが、カニバリズムに同意していなかった彼はハビの隠れていた洞窟に身を潜めているにしても、今後はイエロージャケッツとの対峙は不可避か…?

意外なところでは、カルトを深めていたロッティが1996年パート時点でリーダーを降り、ナタリーにその座を譲っている点。ナタリーがあのままアントラークイーンになるのか、それともまだ波乱があるのか…そこがシーズン3のポイントなのかな。

そして現代パートではアダム殺害の件はウォルターの協力もあって片付いたとして、ショーナと娘キャリーの確執が密かに生じているのも気になり、なんとなく予想を立てたくなってきますね。

『イエロージャケッツ』
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer 100% Audience 78%
S2: Tomatometer 94% Audience 39%
IMDb
7.9 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
8.0

作品ポスター・画像 (C)2020 Showtime Networks Inc. All Rights Reserved イエロージャケット

以上、『イエロージャケッツ』の感想でした。

Yellowjackets (2021) [Japanese Review] 『イエロージャケッツ』考察・評価レビュー