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『スパイラル:ソウ オールリセット』感想(ネタバレ)…犯人があらすじを語るのです

スパイラル:ソウ オールリセット

犯人があらすじを頼まれてもいないのに語りだす…映画『スパイラル ソウ オールリセット』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Spiral: From the Book of Saw
製作国:アメリカ(2021年)
日本公開日:2021年9月10日
監督:ダーレン・リン・バウズマン
ゴア描写

スパイラル:ソウ オールリセット

すぱいらるそうおーるりせっと
スパイラル:ソウ オールリセット

『スパイラル:ソウ オールリセット』あらすじ

地下鉄の線路上で四散して見るも無残な姿になった遺体が発見された。それは猟奇犯が警察官をターゲットに仕掛けたゲームの始まりだった。捜査にあたるジークと相棒のウィリアムを挑発する不気味な渦巻模様と青い箱。やがて、警察署内でも伝説的な刑事で、ジークの父であるマーカスまでもが姿を消し、状況はさらに混乱していく。それでもジークは自分のキャリアを証明するためにこの捜査に血眼になっていくが…。

『スパイラル:ソウ オールリセット』感想(ネタバレなし)

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「ソウ9」!

1万円出してくれたら100倍にして返してあげるよ…なんて言われたら絶対に詐欺だと直感できるでしょう。うん、間違いなくそれは正しい判断。そんな美味しい話があるわけ…。

いや、ある。映画業界にはあるのです。“そう”なんです。

…何が? いや、だから“そう”なんです。そう、ソウ、『ソウ』ですよ!

映画ファンは「そう」と耳に入ってきたら、アベンジャーズの「ソー」か、スリラー映画の『ソウ』か、どちらかを連想するはず(たぶん)。

『ソウ』という映画は2004年に公開されました。もう17年も前なのか…。10代の子は知らないのも無理ないな…。でも話題性が高かったので後追いで知っている人もいるでしょう。この『ソウ』というスリラー映画は完全なオリジナル作品で決して期待大というわけでもない、目立たない低予算映画だったのですが、公開されると瞬く間に話題をかっさらい、異例の大ヒット。製作費120万ドルに対して興行収入1億300万ドル以上を記録し、約100倍近い利益をあげたのでした。

この『ソウ』がこれほどまでにヒットしたのはもちろん面白いからなのですが、残酷性と中毒性のある勢い重視のショッキング・ストーリーがエンタメとして最適なバランスでした。今思えば監督はあのジェームズ・ワン、脚本はリー・ワネルでしたからね。誕生したての才能の成功です。

そんな『ソウ』は当然のようにシリーズ化されます。でも全部観た人はどれくらいいるのでしょうかね。何作品あるか言える人は少ないのでは…。

『ソウ2』(2005年)、『ソウ3』(2006年)、『ソウ4』(2007年)、『ソウ5』(2008年)、『ソウ6』(2009年)、『ソウ ザ・ファイナル 3D』(2010年)、『ジグソウ:ソウ・レガシー』(2017年)…。なんだかんだでもう8作目ですよ。こんなに続くとは思わなかった…。まあ、でも量産しやすいほどに面白さが1作目の時点でシンプル化されていたとは言えるかも。

その『ソウ』が2021年に9作目を投入。まだやるのか。やります。それが本作『スパイラル:ソウ オールリセット』です。

といっても物語が完全に繋がっているわけではなく、緩い世界観の共有なので、そこまで鑑賞のハードルは高くありません。新主人公による新章という感じです。

もともと“クリス・ロック”による発案らしく、彼が主演もしています。“クリス・ロック”は日本では知名度は全然ないと思いますが、アメリカでは有名なコメディアンであり、アカデミー賞授与式で司会をしたこともありました。また、俳優業や監督業もしており、監督作としては『ヒップホップ・プレジデント』(2003年)、『セックス・アンド・ザ・バディ』(2007年)などを手がけています。

監督には『ソウ』シリーズの2作目・3作目・4作目を担った“ダーレン・リン・バウズマン”がカムバック。脚本は『ジグソウ:ソウ・レガシー』の“ジョシュ・ストールバーグ”“ピーター・ゴールドフィンガー”。もちろん制作会社は『ソウ』シリーズでもっているようなものな「ツイステッド・ピクチャーズ」です。

そう考えるといつもの布陣であり、実際にそこまで劇的に変わったわけではないです。

“クリス・ロック”以外の役者陣は、今回も絶好調で口が汚い“サミュエル・L・ジャクソン”、『ティーン・スピリット』で監督デビューもした“マックス・ミンゲラ”、ドラマ『NCIS ネイビー犯罪捜査班』の“マリソル・ニコルズ”、他には“ダン・ペトロニエヴィッチ”、“ゲネル・ウィリアムズ”など。

恒例のように痛々しさ100%の残酷描写が連発しますが、そういうのが平気な人で『ソウ』シリーズの行く末を見守りたい人はぜひどうぞ。

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『スパイラル:ソウ オールリセット』を観る前のQ&A

Q:『スパイラル:ソウ オールリセット』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:完全な新規ストーリーとして楽しめます。しかし、全く過去作が無関係というわけではなく、過去作で描かれた事件があったという前提の世界観です。作中でも過去作の事件に関する言及がたびたび登場します。知っているとさらに楽しい…くらいの認識でいいかな。まだ観たことがないならぜひ1作目の『ソウ』を鑑賞してみては?
Q:怖いのが苦手でも観れる?
A:残酷描写が苦手なら多くのシーンで目をつぶることになるでしょう。

オススメ度のチェック

ひとり 3.0:シリーズに付き合い続ける?
友人 3.0:趣味がよほど合うなら
恋人 2.5:ロマンス気分は無し
キッズ 2.0:残酷描写がたくさん
↓ここからネタバレが含まれます↓

『スパイラル:ソウ オールリセット』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):蚊取り線香じゃないよ!

独立記念日のお祝いで夜も賑やかな場所。人出も多く、たくさんの人が思い思いに楽しんでいます。そこにひったくりが発生。たまたま現場に居合わせたひとりの帽子の刑事が犯人とおぼしき人間の後を追います。犯人はどうやら地下道へと逃げたようです。

刑事は銃を構えて慎重に地下を進みます。そこはひっそり暗い道で、レールが弾いてあります。前方に人影が見えて緊張が高まりますが、いきなり背後から襲われ…。

目覚めると手は拘束され、不安定な足場の上に立たされていました。そして何よりも困惑なのが、舌が固定されていたこと。少しでも動けば舌が引きちぎれてしまいそうです。場所は地下のレールの上。

すると目の前のディスプレイが映り、「ボズウィック刑事、ゲームを始める」と音声が流れます。「もうすぐ電車が来るぞ」と淡々と危機を知らせる映像。舌を引き抜いて生きるか、ぶらさがったまま死ぬか。

刑事は血まみれになりながらなんとか手の拘束をほどき、舌を外そうとするができません。そして無抵抗なままに電車に轢かれました。舌だけを残して…。

ある日、別の場所。ジークは管轄外の潜入捜査を上司のアンジー・ガーサから激怒されていました。「独断でそんなことをするなんて…チームプレイを学びなさい」ともっともな怒りをぶつけられますが、当のジークは「パートナーなんていらない」と拒否。アンジーが「マーカスを見習いなさい」というと一気に不機嫌さを増すジーク。マーカスはジークの父で、優秀な刑事として尊敬を集めていました。

結局、ウィリアム・シェンクという若手が相棒になることに。全く納得しておらず、ろくに会話もしようとしないジーク。

さっそく現場へ向かいます。ジークはウィリアムに先輩風の自慢語り。捜査のために地下鉄の現場へ。そこにあったのはぐちゃぐちゃになった無残な遺体。お喋りなジークも思わず口を覆います。

署に戻るとジーク宛てに小包み。USBメモリで犯人からの声明映像でした。警察への憎しみがあるらしい内容でしたが、ジグソウの模様が映像の背後にあるのが気になります。

ジグソウ…かつて社会を震撼させた猟奇的な殺人鬼です。死んだはずですが、これは模倣犯なのか…。

翌日、壁にジグソウの模様がある場所を発見。そこにあった箱の中ら被害者の舌が見つかり、警官バッジもありました。犠牲者はボズウィック刑事だと特定。

遺体に残る「Fitbit」から移動記録を特定しつつ、「これは俺の事件だ」とジークは同僚をはねつけます。ジークは父を見返すチャンスだと考え、自己中心的になっていました。やむを得ずジークに任せることにするアンジー。

そんな焦るジークの家に父マーカスがやってきて、事件を聞いたらしく、「ジグソウの模倣犯なら難しい」と飄々と呟きます。その態度に露骨にイラつくジーク。

しかし、謎の犯人の行動はどんどん過激にエスカレートし、犠牲者を増やしていくことに…。

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拷問を考えるのも大変だ

『ソウ』は1作目から定番を確立しています。だいたいはこんな感じ。

ここはどこだ!?なんでこんなことに!? → 殺戮のゲームが始まる → 脱出しようと必死に謎を解く → 犠牲者が出ていく → これが答えだろう! → 間違い → 何度も繰り返す → 謎が明かされる → そんな…(絶望)

とくに1作目はシチュエーション・スリラーとしてはソリッドすぎるほどに最小限で構成されており、予算がなくても面白い映画は作れるというお手本のようなものです。『ソウ』が火付け役となって類似作品もいっぱい生まれました。

今回の『スパイラル:ソウ オールリセット』は新章なので1作目を踏襲しているのかなと思ったのですが、物語自体は主人公がどこかに監禁されるというゲーム性はなく、刑事として捜査していくパートが主であり、スタイルは全然違いました。

それだけでなく今回の犯人はターゲットとする警察官にゲーム性ありの嗜虐的な仕掛け(一応は生きるか死ぬかの選択肢を用意している…ということになってるけど、あれはもう死ぬしかないのではと思わなくもない)で罠にハメるのですが、毎度毎度場所も変わっており、かなり不確実性の高い手段に出ています。なので今回の犯人の計画は破綻しやすいと思うのですが、そこはツッコんではいけないんだろうな…。

個人的にはそろそろ拷問方法もアップデートしてほしいなと思いますよ。死体が全てバクテリアに分解されて自然の土に還るというSDGsに配慮したやつとか、降参しないと自分の子ども時代に書いた恥ずかしい作文がどんどんネットに公開されていくというインターネットの底なし恐怖を味わうとか…。いや、これは冗談にしても、残忍に加虐していく方法ってわりとネタが尽きやすいんですよね。そもそも論として相手を殺すのにバリエーションとか気にする必要は本来はないですから。だからこそこの『ソウ』シリーズもすっかり真新しさを失っているというか、そのショッキングさだけでは売りこめなくなってきていました。

それに対する『スパイラル:ソウ オールリセット』の答えは…平凡だった。というよりも言葉を濁しながらも結局は同じことを言っているようなものだった…。なんだろう、最近の日本の政治家の論法みたい…。

でもラストのマーカス・バンクスの受ける状況はちょっと面白かったですけどね。あれ、絶対にとんでもないコストが実際はかかるだろうに…。“サミュエル・L・ジャクソン”はノリノリだったろうなぁ…。

ただあそこだけはツッコミたい。SWAT、アホすぎないだろうか…。普通、もう少しよく見て発砲するかどうかを判断するだろうに…。相手の身体に爆弾とか巻き付けてあったらとか想定しないのか…。

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説明したくなっちゃう病

私はあまり好きじゃない定番の描写というものがあって、それは犯人があらすじをべらべらと語りだしてしまうパターンです。

例えば、こうこうこういう理由でお前を罠にハメたんだ…とか、俺はこんな屈辱的な人生を送ってきたから憎しみが蓄積されたんだ…とか、ここをこういうふうにしてこの仕掛けを機能させているんだ…とか。頼まれてもいないのに語っちゃうやつ。

一部のジャンル映画ではよくある光景なのですが、この『スパイラル:ソウ オールリセット』ではそれが悪目立ちしていました。まず警察をひとりひとり別の罠にハメて殺していくので毎回説明が入るんですね。どうして舌なのか、指なのか、ちゃんと解説してくれる。お前、映画の考察マニアかよ…。

その拷問も見せ場だけを凝縮したような編集版みたいなものなので、なんだかファスト映画投稿者みたいですよ。

しかも何よりも本作は犯人が最初からバレバレです。消去法で考えればどう考察してもあのウィリアム・シェンク以外に犯人が成立しません。そうじゃないと全くの未登場の新キャラが犯人になってしまうしかない。こうなってくると最後の種明かし的なジークとウィリアムの対峙もそんなに盛り上がらない。

いまどき汚職腐敗警察に復讐したいだなんて珍しくもないでしょうし…。

1作目の約20倍近い製作費で作られた本作ですが、100倍を稼ぐことはできず、それどころか2倍も稼げないままに終わってしまいそうです。コロナ禍だったから…という言い訳はあまり通用しないかも。でも続編企画は始動しているそうで、そこは低予算ジャンルなのであまりダメージはないのかな。なんか永遠に作られていくんじゃないか、この『ソウ』シリーズ…。

今度はもうちょっと低予算の極限で頑張って工夫を凝らしてほしいですね。

『スパイラル:ソウ オールリセット』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 37% Audience 75%
IMDb
5.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
3.0
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関連作品紹介

ソリッド・シチュエーション・スリラーの映画の感想記事です。

・『ブラッド・レッド・スカイ』

・『オキシジェン』

・『ビバリウム』

作品ポスター・画像 (C)Lionsgate スパイラル フロム・ザ・ブック・オブ・ソウ

以上、『スパイラル:ソウ オールリセット』の感想でした。

Spiral: From the Book of Saw (2021) [Japanese Review] 『スパイラル:ソウ オールリセット』考察・評価レビュー