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『エクソシスト 信じる者』感想(ネタバレ)…続編はビリーバーに厳しい

エクソシスト 信じる者

続編はビリーバーに厳しい…映画『エクソシスト 信じる者』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:The Exorcist: Believer
製作国:アメリカ(2023年)
日本公開日:2023年12月1日
監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン
自然災害描写(地震)

エクソシスト 信じる者

えくそしすと しんじるもの
エクソシスト 信じる者

『エクソシスト 信じる者』物語 簡単紹介

ヴィクターは12年前に妻を亡くし、娘のアンジェラを1人で育てていた。ある日、アンジェラが親友キャサリンと一緒に森へ出かけたまま行方不明になってしまう。3日後、2人は無事に保護されるがその様子はどこかおかしく、突然暴れたり叫んだりと常軌を逸した行動を繰り返す。そしてヴィクターは50年前に同じような状況に直面した人がいることを知る…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『エクソシスト 信じる者』の感想です。

『エクソシスト 信じる者』感想(ネタバレなし)

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「エクソシスト」はもう何人目?

「悪魔祓い」と言えば映画などの中のフィクションだと思っている人もいるかもしれませんが、現実に存在します。そして、これもフィクションの影響だと思いますが、キリスト教のイメージが濃いですが、悪魔祓いは何もキリスト教だけに絡んだものではありません。

そもそも悪魔祓いの起源をたどると、紀元前1000年のメソポタミアまで遡れるそうですNational Geographic

キリスト教の長年の歴史の中で形式化していった悪魔祓いが大衆に認知され始めたのは、テレビ伝道師が活躍するようになった1950年代以降で、60年代のカリスマ運動において関心がさらに高まりますHISTORY

そして決定的なトドメとしてポップカルチャー化へと爆発的に突き進む出来事となったのが、1973年の映画『エクソシスト』です。

“ウィリアム・ピーター・ブラッティ”の書いた小説を原作に、彼がそのまま脚本も担当し、『フレンチ・コネクション』で既に高評価を得ていた“ウィリアム・フリードキン”が監督を手がけて生まれた映画『エクソシスト』。

アカデミー賞で脚色賞に輝き、ホラー映画の傑作となっただけでなく、後に脈々と続き量産される悪魔祓い映画というジャンルの雛型ともなりました

そんな話題作ですから当然のようにシリーズ化の企画が進みます。まず1977年に『エクソシスト2』が作られました。しかし、この映画には1作目の生みの親である”ウィリアム・ピーター・ブラッティ”も“ウィリアム・フリードキン”も関わっておらず、彼らはこの映画を認めず、決裂をさらに悪化させるだけでした。そこで今度は”ウィリアム・ピーター・ブラッティ”が脚本と監督までやって作ったのが『エクソシスト3』(1990年)。

そして次が厄介です。2004年に前日譚的な『エクソシスト ビギニング』が公開され、2005年に『ドミニオン』(原題は「Dominion: Prequel to the Exorcist」)も公開されるのですが、これはもともと2005年のほうが最初にあったもので、そちらが完成前から不評で、製作段階でいじくり回したバージョンが2004年に先に公開され、でもやっぱり2004年のほうは不評だったので元のバージョンも公開したという…。

オマケに2006年からはドラマシリーズまでありました(2シーズンで終わったけど)。

悪魔もきっと戸惑うであろう迷走をみせていた『エクソシスト』シリーズ。しかし、2023年、またまた懲りずにやってきました。悪魔も師走に大忙しです。

それが本作『エクソシスト 信じる者』

今作は1作目の正当続編を謳っており、最近流行りのいわゆるレガシークウェル。なので2作目から5作目は無視。シリーズ6作目だけど「エクソシスト6」ではないです。

しかも、新たに3部作を作ると言うのです。今作はこれまでのワーナーブラザースや20世紀フォックスの配給ではなく、ユニバーサル配給で、ブラムハウス制作となるのですが、噂によれば配給権に4億ドルもかかったとか。おそらく3部作とする前提の商談だったのかな…。

その新続編3部作の初手となる『エクソシスト 信じる者』を監督するのは、“デヴィッド・ゴードン・グリーン”。2018年からの『ハロウィン』の新続編3部作を手がけたのでその実績を買われてのことなんでしょう。

シリーズが増えると登場した悪魔に憑りつかれる犠牲者の数も増えるけど、エクソシストの数も増えるし、もう何人目になるのかも数えてられないな…。

俳優陣は、『あの夜、マイアミで』『ナイブズ・アウト: グラス・オニオン』“レスリー・オドム・Jr”『対峙』“アン・ダウド”などの大人勢はもちろん、やはりこのシリーズは悪魔に憑りつかれる子ども役も印象的になります。今作でその大役を務めるのは、『ナイトブック』“リディア・ジュウェット”と、今回で初出演かな?な“オリビア・オニール”

加えて、元祖『エクソシスト』で母親の役を演じた“エレン・バースティン”もカムバックします。2023年時点で90歳と高齢なのですが、普通に元気そうですね。今は俳優の養成に力を入れているようで、今回の出演のギャラもそこにつぎ込んでいるみたいです。いい人だな…。

『エクソシスト 信じる者』が初めての悪魔祓いという人も安心してください。初回無料ではありませんが、初心者にも優しく悪魔祓っていきますから。

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『エクソシスト 信じる者』を観る前のQ&A

Q:『エクソシスト 信じる者』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:初代の映画『エクソシスト』に登場したキャラクターが登場します。観ておくと物語により深く入り込めます。
✔『エクソシスト 信じる者』の見どころ
★元気な悪魔。
✔『エクソシスト 信じる者』の欠点
☆新鮮さは薄い。

オススメ度のチェック

ひとり 3.0:興味あれば
友人 3.0:ホラー好き同士で
恋人 3.0:恐怖を共有
キッズ 3.0:やや怖いけど
↓ここからネタバレが含まれます↓

『エクソシスト 信じる者』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):もう信じられない

ハイチにて、砂浜で取っ組み合っている犬の姿を撮影する写真家のヴィクター・フィールディング。一緒に滞在している妻のソレーヌは妊娠しており、大きく膨らんだお腹を抱えて、市場を歩いています。ソレーヌは見知らぬ子に話しかけられ、祈祷を受けてお腹の子に祝福をもらいます。

ソレーヌが砂浜でヴィクターと合流し、信仰深い2人は教会へ。荘厳な作りに見惚れます。

しかし、ソレーヌが部屋で休んでいると激しい揺れが襲います。地震です。パニックになる中、倒壊する建物から避難しようとしますが、外にいたヴィクターは瓦礫の下敷きになった瀕死のソレーヌを発見。病院に搬送されるも、母体を助けるか、赤子を助けるかの選択を医者に迫られ…。

13年後。アメリカのジョージア州。ソレーヌを亡くしたヴィクターは娘のアンジェラと仲良く暮らしていました。

退屈な学校が終わった後、アンジェラは親友のキャサリンと一緒に楽しく森で遊びます。暗くなっても降霊術の真似みたいなことをしてふざけています。

一方、ヴィクターはスタジオで家族写真を撮る仕事をしていました。もう信仰心はありません。ただ訪れる家族の写真を撮るだけ。写真をチェックしていたヴィクターはなんとなく違和感を感じていましたが、無視します。

帰宅したヴィクターはアンジェラがまだ帰ってきていないことに気づきます。そこでキャサリンの母ミランダと父トニーと一緒に森に捜索に向かうことにします。

懐中電灯を頼りに、大声で名前を叫びますが、見つかったのは鞄と靴。その状況からただ事ではないものを感じたものの、警察犬を導入した警察の本格的な捜査も虚しく、何もこれ以上の手がかりは見つかりませんでした。焦燥感だけが身を侵食し、大切な人がまた奪われる恐ろしさに耐えるしかできないヴィクター。キャサリンの両親とも険悪な関係になってしまいます。

失踪から数日後、アンジェラとキャサリンが唐突に見つかりました。それも牧場の納屋にいたのです。

ヴィクターは大急ぎで病院に駆けつけ、再会します。命に別状はなく、疲れているようですが、会話はできます。警察は事件性も含めて2人の体を隅々まで調べます。しかし、とくに明確な事件性は見いだせず、容体も安定しているので、家に帰れることになりました。

ヴィクターはアンジェラと家に戻って事情を聞きますが、母の霊とコンタクトをとろうと思ったそうで、迷子になって彷徨ったとしか語りません。

なんとかまた穏やかな生活に戻ろうとしますが、家で休んでいるはずのアンジェラの様子がおかしいです。不自然な言動と説明のつかない現象が頻発します。

そしてその異変は恐怖へと変貌し…。

この『エクソシスト 信じる者』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2024/02/05に更新されています。
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あの悪魔じゃありません

ここから『エクソシスト 信じる者』のネタバレありの感想本文です。

『エクソシスト 信じる者』を観る前に、元祖『エクソシスト』を見返したのですが、50年前の映画とは言え、その面白さは錆びついてなく…いや、むしろめちゃくちゃ今観ても面白い映画でした。あらためてホラー映画史に残る名作だなと痛感です。

この1作目からの正統続編を謳う『エクソシスト 信じる者』は、続く物語としてどう攻めるのかというのが注目点ですが、オーソドックスに元祖の雰囲気を継承しようという姿勢は感じました。

全体的に作りがジャンルっぽくない、リアル寄りです。“デヴィッド・ゴードン・グリーン”監督がそういうスタイルの作り方を好むのでしょうけど。

冒頭はハイチから始まり、そこで選択の苦悩を経験することになったヴィクターの視点で物語が進みます。この地震の描写は地震大国出身の私から見るとそこまでリアルだとは思わなかったですが、あんまりリアルにしてもトラウマを誘発させるだけだからそんなに嬉しくないんだけども…。

リアル度はアメリカに舞台が移ってからが本番。アンジェラとキャサリンの2人が行方不明になる展開でも、誘拐の可能性も含めた捜査が行われる過程が淡々と生っぽく描かれていましたし、2人が見つかってからも性犯罪などの可能性もあるので2人が病院でレイプ検査を受ける姿を映し出したり(直接的に何が起こったのか問わずに慎重に配慮している関係者の姿もいかにもありそう)、ここも非常にリアル。まるで実録犯罪モノのようです。

そして映画中盤、アンジェラとキャサリンが異常行動を見せ出していくあたりから、この映画はガラっとジャンル映画としてのスーパーナチュラル・ホラーへと舵を切ります。

今作の悪魔も元気です。牧師には威勢よく罵声を浴びせ、素早い高速移動をみせ、よく隠れたりもする。やんちゃな子猫みたいなもんですよ。

なお、これまでのフランチャイズでは憑りついてくる悪魔は「パズズ」というアッカドの悪霊の設定でしたが、今回は「ラマシュトゥ」というパズズと関連もある別の悪魔の設定になっています。

まあ、それがなんなんだという話ではあるのですけど、本作が3部作を想定していることを考えると、きっと次の展開ではパズズとラマシュトゥのコラボレーションになるんじゃないかなと推測はできますよね。悪魔デュエットです。実際はどうなるやら…。

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2023年に『エクソシスト』を作るのは…

『エクソシスト 信じる者』は後半になるにつれ、新鮮さに欠けることが映画全体の物足りなさに繋がってしまっていて、そこは残念でした。

そもそも現代の映画界においては、悪魔祓い映画なんて腐るほどあるのです。『ヴァチカンのエクソシスト』は日本でも2023年に“プチ”バズリを見せていましたが、どうやって個性をだすのかはこのジャンルの最大の見せ場です。

それに対して『エクソシスト 信じる者』は有名なIP(知的財産)頼みで、中身で攻めていける武器が乏しかったかな、と。まだ『エクソシスト・シャーク』のほうがよっぽど設定上の斬新さはあったかもしれない(クオリティは別ですけど)。

今作ではカトリックがそんなに役に立たず、バプテスト派、ペンテコステ派、ブードゥー教…といろいろな宗派が集って悪魔祓いに挑むのですが、その構図が面白さにはとくに直結しません。これをやるならもっと各宗派のキャラクターのバックグラウンドのエピソードを充実させて、人間関係を見せていくこともできただろうに…。

根本的に、異なる宗派が集って悪魔祓いって成立するのか?という疑問もあるけど…(ひとりの葬式で仏教・キリスト教・イスラム教の方式で一斉に執り行うようなものだよね)。

そしてクリス・マクニールの出番のあっけなさ。せっかく“エレン・バースティン”が出演してくれたのに、両目を十字架でぶっ刺されるという役回りで終わるのは、ちょっと雑だったな…。次回作に何か考えているのかもしれません。それはわかるし、エンディングでこれ見よがしにリーガンも登場しましたけど、それでも今回の映画だけの役目としては意味が薄かったですね。

『ハロウィン』みたいにもっとレガシー・キャラクターに重きを置いたストーリーだと良かったのに…。

また、何より元祖『エクソシスト』の面白さというのは「一体何が起きるんだ!?」というとんでもない映像を目撃しまったという恐ろしい快感にあると思うのです。当時は特殊効果であそこまでの演出を見れただけでも衝撃でした。

しかし、今回の『エクソシスト 信じる者』は2023年の公開です。私たちは日々の映画館で、空を飛んだり、宇宙で戦ったりするような奴らを散々見ているわけで…。

なので今さら本作で子どもが宙に浮かんで天井によくわからないものを吐いたとしても、全然驚きも何もなく、ぞっとすることもない…。想定内です。

やっぱり『エクソシスト』は現代で再映画化するのはかなり難易度高いなと思います。他作品として要素を拝借して改変はいくらでもできるほどの型としての完成度がいいのだけど、このレガシーを受け継いだ作品を手がけるのは厳しい。手強い作品ですよ。

『エクソシスト』は真面目過ぎるのも困りものですよね。他のホラー映画だったらもっと若者向けにポップにしたりするのですが、それも作品イメージ的にできないし…。

すでに3部作でやることは確定しているので、もうどう足掻いても作ることにはなるのかもしれませんが、相当に思い切ったアレンジというか、方向性の斬新さで攻めるなどしないと、観客をアっと言わせづらいのじゃないでしょうか。

“ウィリアム・ピーター・ブラッティ”は2017年に亡くなり、“ウィリアム・フリードキン”も2023年8月7日に亡くなったばかり。この2人が生きていたら、この映画には何と言ってコメントしたんでしょうかね。

『エクソシスト 信じる者』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 22% Audience 59%
IMDb
4.9 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
3.0

作品ポスター・画像 (C)2023 UNIVERSAL STUDIOS エクソシスト・ビリーバー

以上、『エクソシスト 信じる者』の感想でした。

The Exorcist: Believer (2023) [Japanese Review] 『エクソシスト 信じる者』考察・評価レビュー