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『ブラッド・レッド・スカイ』感想(ネタバレ)…Netflix;当機はまもなく血塗れになります

ブラッド・レッド・スカイ

ハイジャックされた旅客機にまさかの存在が…Netflix映画『ブラッド・レッド・スカイ』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Blood Red Sky(Transatlantic 473)
製作国:ドイツ・イギリス(2021年)
日本では劇場未公開:2021年にNetflixで配信
監督:ピーター・ソーワース

ブラッド・レッド・スカイ

ブラッド・レッド・スカイ

『ブラッド・レッド・スカイ』あらすじ

夜のフライトでドイツからニューヨークへ向かう大型旅客機。静かな空の旅になるはずが、テロリスト集団にハイジャックされてしまい、乗客は命の危険にさらされる。横暴な犯人たちの中には人殺しさえも躊躇わない残忍な人間もいた。綿密な計画どおりにコクピットを占拠。乗客を人質にとる。しかし、この飛行機の乗客の中にはこのハイジャック犯さえも予想だにしていない存在が紛れていた。殺戮が始まる。

『ブラッド・レッド・スカイ』感想(ネタバレなし)

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ハイジャックされた旅客機にまさかの存在が

コロナ時代においては飛行機で一番出くわしたくないトラブルは、乗客の中に頑なにマスクを拒否するマスク反対派の人間がいて同席してしまうシチュエーションですかね。まさか乗客がマスクをしないという理由で飛行機が最寄りの空港で立ち往生することになる時代が来るとは思いもしませんでした。健康上の理由でマスクをしないなら事前に説明をしておけばいいのでOKなのですが、単純にマスクが嫌だからつけたくないという人間がこうも社会に表出するとはね…。シートベルトとかはするだろうに。

ある研究によれば、マスクをつけたがらない人の多くは中高年男性で、これもまた歪んだ男らしさのこじらせが関係しているようで、それもまあ考えてみれば納得です。メディアに出てくる「いつまでマスクをつけるんだ」とぼやく芸能人や政治家の男性たちも揃いも揃ってこじらせているタイプなのがその証左。

そんな中、今回紹介する映画に出てくる飛行機での“とある乗客”は、もうマスク拒否迷惑男以上にとんでもないかもしれません。その映画が本作『ブラッド・レッド・スカイ』です。

で、さっそくどんな内容の話なのか語りたいところですが、これがまたどう説明していいものか。本作はネタバレ厳禁なストーリーであり、どこまで事前に言及するのがOKなのか…ちょっと慎重になってきてしまうもので…。

まず飛行中の旅客機が舞台です。その飛行機がハイジャックされてしまいます。ここまでは普通。よくあるサスペンスのパターン(ハイジャックなんてよく起こってほしくはないけど)。ハイジャックされた飛行機の緊迫の機内の人間模様を描いていくのは最近であれば『7500』とか、定番で映画もいっぱいあります。閉鎖的な空間ですからサスペンスフルなストーリーを作りやすいですしね。

しかしこの『ブラッド・レッド・スカイ』はひと味違ってきます。いや、ひと味どころではないかもしれません。そうくる?というまさかの展開がぶっこまれ、事態は予測不可能な状況に…。ハイジャックされた飛行機の乗客にそんな奴が混じっていたなんて…。

そんなこんなで期待を不吉に煽ってくる『ブラッド・レッド・スカイ』。タイトルが不穏ですもんね。ブラッドでレッドですよ。答えを言っているようで言っていない微妙なライン…。

本作はイギリスとドイツの合作映画で、監督は『ノンストップ・バディ 俺たちには今日もない』のドイツ人“ピーター・ソーワース”(ペーター・トアバルト)。2008年には『THE WAVE ウェイヴ』という映画の脚本も手がけており、これはカリフォルニアの高校のカリキュラムで行われた「ナチスの独裁政治を繰り返さないため、実際に独裁政治を行ってみる」という実験によって狂信的な心理状態に陥っていく高校生たちを描くもので、なかなかにぶっ飛んでます。それを踏まえると、本作『ブラッド・レッド・スカイ』にもそのクレイジーなセンスが継承されていて納得です。

本作の撮影は2020年中に行われたのですが、コロナ感染者が出たので一時中断になったりと、撮影もいろいろ大変だったようです。まあ、確かに飛行機内の撮影なんて密も密でしょうからね。そう考えるとよくあんな話を撮れたなぁ…。

ネタバレを踏まないようにサクッと観てしまうのが手っ取り早いものです。残酷なシーン(殺害描写など)はありますが、ジャンル的な側面が強いのでそれほど不快感は少ないのではないかなと思います。まあ、すっごい人が死ぬのであれですけどね。飛行機の機内で鑑賞するのはオススメしないかも…。

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『ブラッド・レッド・スカイ』を観る前のQ&A

Q:『ブラッド・レッド・スカイ』はいつどこで配信されていますか?
A:Netflixでオリジナル映画として2021年7月23日から配信中です。

オススメ度のチェック

ひとり3.5:暇つぶしにちょうどいい
友人3.5:時間があるときに
恋人3.5:恋愛要素はないけど
キッズ3.0:怖いのが平気なら
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『ブラッド・レッド・スカイ』予告動画

『ブラッド・レッド・スカイ』予告編 – Netflix
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ブラッド・レッド・スカイ』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):トランスアトランティック473

緊迫した空気が空港全体に漂っています。大勢の重装備の隊員がポジションにつき、命令を待ちます。スナイパーがスコープを向けるのは滑走路。暗闇のそこにはまだ何もありません。そこに操縦士と副操縦士は死亡との情報が無線で入り込んできます。管制室では作戦本部が作られ、急いで駆け付けたアラン・ドラモンド大佐が指揮をとります。

すると1機の大型旅客機があぶなかっしく揺れながら着陸。なんとかブレーキをかけ、停止します。狙撃手がスコープでコクピットを覗き、アラン大佐が連絡を試みます。コクピットには何やらひとりの男がいるようです。その男は無線で「起爆装置がある」という話をし、処理班が準備。降りてくるように説得しようとしますが、なぜかその男はその指示に従わず、機内に立てこもるような態度をとります。こうなってくるとそのコクピットの男の狙撃もやむを得なしか…。でも「私はテロリストじゃない」とコクピットの男は言います。

しかし、事態は動きます。飛行機の貨物あたりからひとりの少年がスルスルと降りてきたのです。隊員が接近し、救助。

保護した少年のもとに警官の女性がやってきて、「ナオミ」だと自己紹介し、すぐさま有用な情報を聞き出すために「飛行機で何があったか教えて」と訊ねます。

少年は語りだしました。

エリアスという少年はドイツの空港にひとりでやってきて、トランスアトランティックの荷物預り所で手続き。母は遅れて来るようです。そして無事に荷物は渡せたと母に電話するエリアス。

その母・ナディアは暗くなってから部屋を出て、サングラスで空港へ。手荷物検査を通り、夜の便を待ちます。その際、ナディアはひとりトイレで薬を飲み、ゆっくりと息をつき、その後に首筋に注射を打ち、苦しそうに呻きます。

母を待っている間、待合ロビーでエリアスはファリードという男と親しくなります。「ママをアメリカのブラウン先生が治してくれるんだ」とファリードに語るエリアス。

いざ飛行機に搭乗し、機体は離陸。落ち着きがなさそうなナディアに対して、エリアスは寝ています。

ナディアは一瞬眠りにつき、夢を見ました。冬の夜道を走る車。助手席にはナディア。運転席にはニコライという男が。そして後部座席には赤ん坊が。車が停止してしまい、ニコライは助けを呼びに歩いていきますが…。

飛行機の座席で目覚める女性。怒鳴っている男はいるらしく、客室乗務員になだめられて奥に引っ込んでいきました。しかし、乗客には見えない場所で殺戮が起きます。ハイジャックです。事前の計画どおり流れるように静かに邪魔者を排除していく犯人たち。副操縦士さえもグルでした。しかし、そのうちのひとりであるエイトボールは血まみれになるのも気にせずに刺しまくっていました。

そして乗客の前に現れ、ハイジャックを宣言。乗客は震えあがります。

ところが隙を見て動いたナディアがエイトボールに銃で撃たれ、床に倒れます。完全に死亡した…そう誰もが思いました。

しかし、しばらくしてそのナディアの亡骸と思われた体はムクっと起き上がり、息を吹き返します。そして信じられない強さで犯人たちを圧倒。その恐ろしさはまるで血をすするあの存在のようで…。

とりあえずその場は制圧すると、ナディアはこう告げます。「飛行機を操縦できる人はいる?」

ナディアは吸血鬼でした。

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母は…血に飢えている

ハイジャックされた旅客機の乗客の中に吸血鬼(ヴァンパイア)がいた!…なんて、リーアム・ニーソンの次に乗っていてほしくない相手ですよ…。

しかし、この『ブラッド・レッド・スカイ』はその一発オチになりかねない要素を上手く引っ張っていって物語を展開させていきます。よくよく考えると飛行機内に吸血鬼というのはかなりの制限が多いものです。

まず吸血鬼は太陽光がダメですから夜のフライトでないといけないわけです。しかし、ドイツからニューヨークまで飛ぶとなると8時間以上はかかる計算になるので、ギリギリ夜間内に終わる感じもしますが、それでも時差の関係もあってなんとかクリアできます。でもやっぱりかなりタイムリミットは厳しいです。だからあのナディアはあんなに焦っているんですね。ハイジャックの脅威よりもむしろ太陽が出てしまうことの恐怖の方が勝っており、終盤もなんとかニューヨークに向かわせられないか必死です。けれども結局はイギリスに緊急着陸してしまい、にっちもさっちもいかない状況になったことで息子をファリードに託すことを覚悟するのですが…。

この吸血鬼としての正体を現すナディアのビジュアルもまた良かったですね。演じている“ペリ・バウマイスター”という方、素は綺麗な見た目の人なのですが、今作でのおぞましい容姿の変身は迫力満点。ホントに何の躊躇もなく血に飢えた獣としての説得力ある存在感で場を掌握します。あのどんどん吸血鬼として色濃くなっていく変身の変移もいいですね。1931年の『魔人ドラキュラ』で一世を風靡した“ベラ・ルゴシ”のオールド・スタイルをなぞりつつ、ちょっとモンスターっぽさを増している感じ。デザインも最高でした。

で、ハイジャック犯たちと戦闘ですが、単純に考えればハイジャック犯が血祭りになるだけの一方的な殺戮が起こっておしまいな気もします。しかし、ここでハイジャック犯のひとりですでに人間の頃からヤバそうな雰囲気がプンプンと漂っていたエイトボールという奴がまさかの自分にナディアの血を注射し、吸血鬼に変貌。目には目を歯には歯を。ここに来て「吸血鬼vs吸血鬼」の異能力者バトルが勃発。もうこうなってくるとハイジャックはどこへやら。殺るか殺られるかの生死を決める決闘です。

ここで誕生するエイトボール吸血鬼バージョン。こっちはもうナディアと違ってモンスター全開(まあ、元からモンスターみたいな人間性の欠片もない奴だったし…)。デザインも吸血鬼というよりは地獄から這い出たデーモンみたいです。

このエイトボールを演じた“アレクサンダー・シェアー”という人は、俳優としては最近なら『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』で主演しており、とても評価が高いですし、ミュージシャンとしても活動されているんですね。やっぱりあの役をなりきれるだけのパワーがありますね。

考えてみれば『魔人ドラキュラ』vs『女ドラキュラ』ですよ。アツい!

ということで本作は“ペリ・バウマイスター”と“アレクサンダー・シェアー”の演技力のぶつかり合いが何よりも見どころだったかもしれません。

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飛行機でそれはやっぱり怖い

この前半だけでお腹いっぱいになりそうな展開の詰め合わせな『ブラッド・レッド・スカイ』ですが、ここからさらにブラッドでレッドになっていきます。

後半は感染拡大のまさにパンデミックの危機に直面。偶然なのか狙っているのかわかりませんが、まさしくコロナ時代の飛行機の恐怖が映像化されることに…。

飛行機なんてそもそも三密は不可避のシチュエーションですからね(実際に新型コロナウイルスの感染者も機内で続々と確認されているし…席をあける程度じゃダメなんでしょう)。今作にいたっては感染源から猪突猛進で噛みついてくるというハードモード。これでは感染回避をする方が無理というものです。

そんな中で手を噛まれたファリードの片手を何の躊躇いもなく斧で切断するナディアとか、随所に光る決断力が物語のテンポを落とさないのが良かったです。あそこでウダウダと悩むシーンを続けられるのも面倒ですし。それでも機内のパンデミックは止められませんが…。

また、ファリードの人種ゆえに犯人扱いされていくという、ハイジャック映画ではいまだに風評被害が起きやすい人種問題へのくすぐりもあったり、脇の部分の隙間埋めも忘れていない感じもいいですね。

ただ後半はやっぱりぶん投げましたね。最終的にどういうオチになるのかなと思ったら、爆発エンドですよ。それしかないのはわかるけど、本当にそうしちゃうのか。観客の気持ちとしてはラストあたりでさらなる波乱を用意してほしかったですが、まあ、しょうがないか。

あれこれ書きましたが、全体的には満足です。ブラム・ストーカーのゴシック小説「吸血鬼ドラキュラ」の映画化や翻案された作品というのはこれまで星の数ほどにありましたけど、この『ブラッド・レッド・スカイ』は現代的なジャンル映画として挑戦している感じが一番好意的に受け止められるものでした。『ドラキュラZERO』(2014年)みたいに大作にしてスベるよりはこれくらいでいいんじゃないでしょうか。

今後のハリウッドで「吸血鬼ドラキュラ」を映画化するなら、この『ブラッド・レッド・スカイ』を超えるくらいのインパクトは当然期待してしまいますね。

『ブラッド・レッド・スカイ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 75% Audience 58%
IMDb
6.2 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
6.0

作品ポスター・画像 (C)Rat Pack Filmproduktion ブラッドレッドスカイ

以上、『ブラッド・レッド・スカイ』の感想でした。

Blood Red Sky (2021) [Japanese Review]