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『スター・トレック BEYOND』感想(ネタバレ)…そこは最後のフロンティア?

スター・トレック BEYOND

そこは最後のフロンティア?…映画『スター・トレック BEYOND』(スタートレック ビヨンド)の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Star Trek Beyond
製作国:アメリカ(2016年)
日本公開日:2016年10月21日
監督:ジャスティン・リン

スター・トレック BEYOND

すたーとれっく びよんど
スター・トレック BEYOND

『スター・トレック BEYOND』物語 簡単紹介

宇宙の最果てにある未知の領域を探索するジェームズ・T・カーク率いるU.S.S.エンタープライズ号のクルー達。これまでの数多くの奇想天外な経験を得て、クルーはチームとして団結を深めていった。その旅の道中、エンタープライズは物資補給のために宇宙基地ヨークタウンに停泊する。一時の休息。そして将来の葛藤。しかし、新たな謎の敵との遭遇とクルー達を襲うかつてない困難が飛び込んでくる。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『スター・トレック BEYOND』の感想です。

『スター・トレック BEYOND』感想(ネタバレなし)

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フロンティアはいつも論争に満ちている

「スター・ウォーズ」シリーズと並ぶ2大SF大作である「スター・トレック」シリーズ。歴史は「スター・ウォーズ」よりも長い作品です。

そのはずですが、知名度は明らかに「スター・ウォーズ」シリーズの方が上。「スター・トレック」シリーズの話を知らない人にしてもたいてい「スター…トレック? なにそれ、スター・ウォーズのパクリ?」とか言われたりして、そのたびにスタトレ・ファン(通称「トレッキー」)は深く傷ついているのです。安易にパクリとか言わないであげてください…本当、悲しくなってくるから…。

じゃあ、「スター・トレック」シリーズを初めて観たいと思ったとき、何をオススメできる?と聞かれたらそれはそれで困るという由々しき問題。なにせ作品数があまりにも膨大なのです。どちらかといえば、オールドなファンである自分にしてみれば、オリジナルであり始まりでもある最初のドラマシリーズから鑑賞してと言いたいところですが、いかんせん古い。そして、話数が多い。思い入れがない状態で望むにはかなりハードルが高いとは思います。

そのためでもあるのでしょう。2009年の『スター・トレック』から始まったシリーズのリブートは、初心者への新しい入口となる役割を果たしています。とりあえずここから見れば、そこまでの問題もなく、作品の世界観に「はじめまして」できる。どんなものでも新規ファンの獲得は大事ですからね。

そんなリブートも『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(2013年)を通過して、本作『スター・トレック BEYOND』で3作目となります。といっても「スター・ウォーズ」と違って3部作ではないですから、必ず続けてみる必要性もそこまではありません。

「スター・ウォーズ」より一足先に新作展開に成功しているという意味でも先駆者ですが、昔からのファンはそれどころではないはず。新作だ続編だスピンオフだと展開するのは、ファンしてみれば常に心配の種でもあります。本作でも、心の奥に上手く説明できない暗黒物質が渦巻いていたことでしょう。

なにしろ本作はストーリーと同様に製作面でも「スター・トレック」シリーズがこれまでに経験していない未知の領域をちょっと冒険しています。

リブート2作の監督だった、そして『スター・ウォーズ フォースの覚醒』を成功させた“J・J・エイブラムス”に代わり、本作の監督をまかせられたのは“ジャスティン・リン”。男どもが車をぶっ飛ばしてヤンチャする「ワイルド・スピード」シリーズでおなじみの監督がてがけるということは、当然アクション面が強化されるということです。

このエンタメ成分増量をファンが喜ぶかは賛否両論。「スター・トレック」シリーズの大きなアイデンティティといえば、作品に巧妙に潜在する人種や宗教などの社会問題でしたが、本作はちょっと弱めですから否定意見があるのも理解できます。一応、登場人物のひとりがゲイであるような描写もあったり、それとなくそういう要素も入れてますけど、やっぱりアクションがガンガン目立ってます。

また、監督以外にも火種はあります。脚本をてがけるひとりは、最近だと『マン・アップ!60億分の1のサイテーな恋のはじまり』などで登場のコメディ俳優“サイモン・ペッグ”。自身も「スター・トレック」のファンだと公言する彼は、脚本もして出演もする…こんなのファンが妬みたくなるのも当然です。

まさに「『俺のスター・トレック』はこれだ!論争」の勃発は避けられない。作品自体は、価値観の異なる者どうしの融和を訴えているのですが、作品外の人間模様はそうはなってないのも興味深いものです。まあ、これも作品への愛あってこそですけどね。こういうあーだこーだと言い合えるのもファンに愛されている証拠なのだし、ひとまず微笑ましいこととして受け取っておきましょう。私も最初の鑑賞の時くらいは自分のこうるさいマニア魂をオフにしておくことにします。

マニアックなファンじゃない、そんなの知らないよという一般層の人は何も気にせず宇宙の冒険を楽しむといいと思います。大迫力のアクションもより際立って興奮できる、大画面のスクリーンでの鑑賞がおすすめです。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『スター・トレック BEYOND』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):私たちの武器は船じゃない

惑星連邦の大佐であるジェームズ・T・カークは停戦調停の代理人としてティーナックス星を訪問しましたが、平和の意思は伝わらなかったようで、転送でなんとかUSSエンタープライズに退散。

深宇宙に出てから今日で966日。5年の任務のうちの3年目に突入。クルーたちは献身的に仕事をしていましたが、カーク船長は無限に続く探査に意味を見い出せなくなってきていました。亡くなった父親よりも年をとり、人生を見つめ直すカーク。レナード・マッコイ(ボーンズ)にだけはその悩みを打ち明けます。

補給基地のヨークタウンに到着。クルーはそれぞれ自分の時間を過ごします。パヴェル・チェコフは初めての基地に大興奮。ヒカル・スールーは夫と子どもとの久しぶりの再会を楽しみます。ウフーラは恋人だったスポックとの関係に距離ができていました。一方でスポックもまた人生を悩みます。

その頃、ヨークタウンの管理室では船籍不明の船が接近し、対応に迫られます。カークも立ち会う中、その船で接近してきた人物のメッセージを聞きます。

「私たちの探査船が航行不能になり、私だけポッドで脱出。探査船は近くの星に不時着しました。救助が必要です。星雲の中を飛べる船が必要です」

助けに行けるのはエンタープライズだけ。カークは自分たちの船で向かうことを志願します。実はカークはこの基地の副提督を申請しており、エンタープライズはスポックに任せようと考えていました。ひとまず今はこの任務をクリアして帰還後に話し合うことにします。

エンタープライズは休暇もろくになく出発。カークはクルーに呼びかけます。「星図にない星に向かう危険な任務。しかし、このエンタープライズには他の船にはない最強の武器がある。君たちだ」

不安定なエリアを航行し、アルタミッド星が見えてきました。すると正体不明の船が接近してきます。妨害電波を発しており、カークは非常事態を察知。互いに交戦状態となります。敵の攻撃は容赦なく、こちらのワープドライブは不能に。船体の破損は壊滅的なレベルに達し、かつてないピンチに追い込まれます。敵の部隊が乗り込んできて、クルーたちはやられていきます。敵はどうやらティーナックスの遺物に狙いをつけているようです。

モンゴメリー・スコットは必死にエンジンを修理し、カークは星雲に突っ込むように指示。しかし、敵の攻撃はエンタープライズに致命的な攻撃を加え、船は無惨な姿に…。

カークは決断します。「船を捨てろ」

脱出ポッドを乗り込むクルーたち。この絶体絶命を乗り越えることはできるのか…。

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シンクロするストーリーと製作者とファン

ベタだけど“燃える”展開がてんこもりで「楽しかった」というのが私の率直な感想。

『スター・トレック BEYOND』はリブート1作目から観ていくとわかるのですが、どうやらかなり時間経過があって、すっかりエンタープライズ号のチームも経験値を積んでベテランの余裕を醸し出しています。その一方、そろそろチームも次のステップに進んでいくために、それぞれが己のセカンド・キャリアを考え始める時期に突入。

まずこのしみじみとした各キャラクターが背負う人生の歩みをどこまで観客が理解しているかで、少し本作の感情移入度合いは変わってくると思います。シリーズを追ってきた身からすれば、そろそろそんなことを考えるタイミングか…と一緒に頷けるのですが、これが初見という人がもしいたら、なんでそんなに哀愁に満ちているの?と若干の置いてけぼりをくらうでしょう。

でもこればかりはしょうがないというか、「スター・トレック」シリーズ自体そういうものなので、私なんかは冷静沈着です。

ただ、そんなオールド・ファンにも新鮮な衝撃を与えるためか、本作は序盤でいきなり最大級の事態に見舞われるという展開が描かれます。

それが「スター・トレック」の象徴であるエンタープライズ号が大破し、クルーがバラバラになってしまう大事件。ここから物語が動き出します。思えば、このリブート「スター・トレック」シリーズも本作3作目にしてチームやファンがバラバラになっていました。J・J・エイブラムスは「スター・ウォーズ」へ行ってしまったし…。ファンもリブートへの想いは各々複雑ですし…。てなわけで、本作の展開は狙ったわけじゃないでしょうけど現実とシンクロしているといえるのではないでしょうか。

でも結局、散り散りになった人たちが集結して一致団結する過程があっさりだったのが残念ではあります。バラバラになったクルーもいつのまにか割と普通に合流してました。もっと大団円を期待してたのに。クルー救出シーンよりも、カークとチェコフがボロボロのエンタープライズ号を文字通りひっくり返すという大技を決めるシーンのほうが派手って…それでいいのか? ちなみにそのシーンは、なんで怪我なくカークとチェコフが切り抜けられたのがさっぱりわからないくらいのメチャクチャ度でした。なんかスポックの負傷がどうでもよくなりましたね。

破壊されるエンタープライズ号も一気に爆発するのではなく、部分部分が徐々にバラバラになっていくのがわかっているなという感じです。それにしてもエンタープライズ号の防御能力って、あらためて考えると強いのだか弱いのだかわからないな…。

このあたりはアクション面とストーリー面の整合性の問題であり、そこまで気にしなければたぶん大方は問題ないレベル。

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アクションましまし

アクションシーンは本当に映画的な見ごたえがたっぷりでした。

バイク影分身は絵的には楽しいです。“ジャスティン・リン”監督らしいと感じる最大のポイントなのは誰もが承知の部分ですが、こうやってテクノロジーを融合したアクションの見せ場を作れるのは「スター・トレック」っぽさだと思います。「ワイルド・スピード」だとこれはさすがにやると現実離れしすぎですからね(まあ、あちらの映画もあのテンションとノリだといつかリアルを完全に度外視してもおかしくないのであれですが…)。

そして、終盤の「孤立単体の旧時代的存在 vs 大量の新時代的存在」も単純だけどグッとくる。船体でぷちっとつぶすあの場面なんかとくにですが、乗り物シーンの豪快さがインフレしてて“ワイルド”でした。ジャスティン・リン監督の今までにない映像をなんとか見せてやろうという心意気が感じられます。

キャラクター&ドラマの部分は正直、もっと冒険してほしかったと思わなくもないです。

新規メンバーであるジェイラの立ち位置も、ハマりそうでハマってなかった気もする…。彼女は、後半はスコッティと一緒に船に乗ってるだけで、一番の見せ場アクションがない。演じた“ソフィア・ブテラ”は『キングスマン』(2015年)のほうが爽快なアクションをしてましたね。ジェイラはコメディ寄りだったのが意外で面白かったんですけど。

アクション面でのクリフハンガー的演出のオンパレードに反比例するかのように、ドラマ面でのチームのまとまりが事務的な感じ。やっぱりすでにチームが完成されつくしているので、バラバラになっても平然とまとまるだけなのが淡白な原因なのかもしれませんカークもビジネスライクな雰囲気がしましたし…大人になっちゃったんだなと寂しくなりました。

これは私の勝手な推測でしかないですけど、今の「スター・トレック」シリーズは「スター・ウォーズ」シリーズと違って完全なコントロール化で連続した3部作と作ろうなどと考えておらず、個別ごとに作品を組み立てる方式なんじゃないかと。だから壮大なストーリーの伏線を張ることができず、どうしてもキャラのドラマも単調になってしまうのかもしれないですね。あとは「スター・トレック」シリーズは自由度が意外と高いぶん、何から手を付けるべきかの選択肢も多すぎて、逆にまとまりづらいという難点もあるのかな。どちらもどっちで作る側は大変ですね。

製作者やファンは論争止まらずなのに、作品内の論争の熱は低い。ここもシンクロしても良かったんですよ? そんな風に観客側としては思いますが、難しさも確かに理解できる…。

問題は4作目を製作するのかどうか。さすがにここまで矢継ぎ早に作中の時間軸をサクッと描いてしまったら、もう続きを普通に作るのも面白味がないかも。でも「スター・トレック」ですから、そこはなんでもやっちゃっていいと私は思ってます。

フロンティア…開拓精神で冒険しないと、ね。

『スター・トレック BEYOND』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 85% Audience 80%
IMDb
7.1 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★
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関連作品紹介

「スター・トレック」作品の感想記事です。

・『スタートレック ディスカバリー』

・『スタートレック ピカード』

作品ポスター・画像 (C)2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED. スタートレック ビヨンド

以上、『スター・トレック BEYOND』の感想でした。

Star Trek Beyond (2016) [Japanese Review] 『スター・トレック BEYOND』考察・評価レビュー