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ドラマ『スタートレック ディスカバリー』感想(ネタバレ)…連帯への欲求は知覚生命の本質です

スタートレック ディスカバリー

連帯への欲求は知覚生命の本質です…ドラマシリーズ『スタートレック ディスカバリー』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Star Trek: Discovery
製作国:アメリカ(2017年~)
シーズン1:2017年にNetflixで配信
シーズン2:2019年にNetflixで配信
シーズン3:2020年にNetflixで配信
原案:ブライアン・フラー、アレックス・カーツマン

スタートレック ディスカバリー

スタートレック ディスカバリー

『スタートレック ディスカバリー』あらすじ

2256年、バルカン人に育てられたマイケル・バーナム中佐は惑星連邦のU.S.S.シェンジョウに副長として勤務中に、クリンゴン帝国との戦争という重大な事態に関与。ジョージャウ船長に反抗してバルカン人の流儀で収拾しようとした結果、敬愛する船長を死なせてしまう。対立と憎悪は連鎖し、戦争はとどまることなく拡大。マイケルは反乱罪で自由を奪われてしまうが…。

『スタートレック ディスカバリー』感想(ネタバレなし)

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スタトレ史上最大の意欲作

私は人生に必要な教養は『スタートレック』と『サウス・パーク』から学んだということにしているのですけど、そう言うとたいていの人からは「え…」とドン引かれるか、冗談だと思われるのですが、本当にそれら作品を見ておけば教養は身につくと確信しています。

とくに『スタートレック』は私のSF好きの源流を支えていますし、それだけでなく科学へのロマンやコミュニケーションの重要性、多様性への肯定など、幅広い生き方の礎に今もなっています。

あらためて「スタートレック」とは何かを全く知らない人向けに説明すると、本作は1966年に初めて放映されたドラマシリーズ『宇宙大作戦』を出発点とするSF作品群です。原作者は“ジーン・ロッデンベリー”。これを1作目として数多くのドラマシリーズや映画が制作され、巨大なファン・コミュニティを形成し(ファンは「トレッキー」と呼ばれる)、今も愛されています。

よく「スター・ウォーズ」と何が違うの?と聞かれますが、「スター・ウォーズ」は光と闇の戦いという割と勧善懲悪なエンターテインメントに徹していますが、「スタートレック」はそうではなく、あくまで宇宙を探査する調査船を主軸にしており、言ってしまえばアドベンチャーの要素が強いです。未知の生命や文化とコンタクトし、良好な関係を作ろうとする、でも融和はそう簡単にはいかず、あれこれ苦労もする…そんな過程を空想科学によって描き出すのが作品の根幹にあります。多くのファンは何よりもそこを気に入っているのです。

1966年の『宇宙大作戦』以降、ドラマシリーズとしては『新スタートレック』(1987~1994年)、『スタートレック:ディープ・スペース・ナイン』(1993~1999年)、『スタートレック:ヴォイジャー』(1995~2001年)、『スタートレック:エンタープライズ』(2001~2005年)と定期的に新作が生み出されて、世界観が拡張されてきました。

そして2017年から登場した新作がこの『スタートレック ディスカバリー』です。ちなみに2020年には『スタートレック ピカード』という別のドラマシリーズも登場していますから、スタトレのドラマシリーズを2本同時に見られるという、なんとも贅沢なことになっています。

映画版は性質上エンタメに偏りがちなので、やはり「スタートレック」の真骨頂はドラマシリーズです。この本作『スタートレック ディスカバリー』もしっかり伝統を受け継いだスタンダードな作品になっています。

ただ、やはり今の時代の最新版ということもあって、本作はこれまでの「スタートレック」史上でも最も先駆的な一作になっているとも言えるでしょう。「スタートレック」はいつも先駆的でチャレンジャーな存在なのですが、『スタートレック ディスカバリー』はかつてないアグレッシブさです。それは後半の感想でネタバレありで語るとして…。

とりあえず本作で初めて「スタートレック」の世界に触れる初心者でも全然OKだと思います。確かに「スタートレック」は世界観のボリュームが尋常じゃないので完全理解するのは大変なのですが(私も理解していない)、最初は手探りで全く問題ないのです。ここから他の過去作品に遡って手を出すも良しです。そうやってちょっとずつ解明していくのも、これぞスタトレっぽい探索の醍醐味じゃないですか。

幸いなことに今は動画配信サービスという便利なものがあるので、シリーズを追いかけやすくなっていますからね。『スタートレック ディスカバリー』はアメリカではCBS All Accessで配信されているのですが、日本を含む多くの国々ではNetflix配信となっています。

宇宙、それは人類に残された最後のフロンティア。これまで以上にグイグイ攻める冒険の旅に飛び込むことになりますが、でも仲間がいるから大丈夫です。

オススメ度のチェック

ひとり◎(初心者でもここから)
友人◎(ファン同士の議論白熱)
恋人◯(気軽にSF世界へ)
キッズ◯(SFの沼にどっぷりと)
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『スタートレック ディスカバリー』予告動画

Netflixオリジナルシリーズ『スター・トレック:ディスカバリー』予告編
↓ここからネタバレが含まれます↓

『スタートレック ディスカバリー』感想(ネタバレあり)

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大胆に未来へジャンプ!

「スタートレック」の世界には「プライム・タイムライン」と「ケルヴィン・タイムライン」という2つの時間線があり、『スタートレック ディスカバリー』は前者です。

時代としてはシーズン1時点では2256年を舞台にしているので、『宇宙大作戦』よりも前を舞台にしています。じゃあ、プリクエル的な前日譚で展開するのかなと思ったら、そうはいきません。

なんとスタトレのこれまでの歴史を全部横断してそのまま未開のステージへ吹っ飛ぶような、やたら豪快なストーリー展開を見せるわけです。シーズン2ではクリストファー・パイク船長率いるUSSエンタープライズが登場し、『宇宙大作戦』の世界観とドッキング。オールド・ファンにはアツい見どころを提供します。

かと思えばシーズン3ではタイムトラベルによってまさかの3188年にワープ。32世紀ですよ。これはもうあらゆる既存のスタトレ作品を通り越して全くの未知の未来。ファンだって知らない世界です。これをやったということは今後の「スタートレック」の世界観の可能性がさらにぐわっと拡大したことになります。ここまで飛躍してみせるとはちょっと初期は想像つかなかった…。鏡像宇宙程度で終わるかと思っていた…。

こういう展開にする理由もいろいろ推察できます。そもそも「スタートレック」シリーズは未来を描くものでしたが、製作時期も古いので「制作当時には未来に思えたもの」が今の時代ではそうは思えなくなってしまうことが一部で起きます。これは未来描写のある作品ではよくありがちなジレンマ。例えば、ドラえもんでも秘密道具が現代では実現してしまっているものもあったり…。その整合性がとれない矛盾をクリアすべく、この『スタートレック ディスカバリー』は3188年へと大胆にジャンプしてみせたわけです。

結果、現代の私たちの感覚でも「これは未来だな…」と確信を持って言える技術がシーズン3以降、ガンガンと登場します。U.S.S.ディスカバリーもパワーアップして、内部装備も宇宙船自体も格段に変わります。これなら今の子たちでもSFとして楽しめますよね。

とくに全てのシーズンで要となるのが「活性マイセリウム胞子転移ドライブ」というワープ技術。早い話がどこでも好きな場所にワープできるチートです。最初、これが登場したときは大丈夫?と思ったのも事実。だって時間をかけて宇宙航行するという面白さが消し飛びますからね。

ただそこはちゃんと考えられていてこの「活性マイセリウム胞子転移ドライブ」を軸にした駆け引きに繋がっており、単なる便利テクノロジーでは終わっていませんでした。それにしてもこの通称「胞子ドライブ」、宇宙植物マイセリウムを活用し、当初は宇宙生物の巨大クマムシを航海士にし、やがて遺伝子操作された人間(ポール・スタメッツ;名前の由来は実在する真菌学者)をトリガーにするという、なかなかに「どうかしている」技術。さすがにこれは未来でもあんまりマネしたくない…。こんなクレイジーだから後の時代を描く作品には登場しない封印扱いになるのかな。

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今の時代を反映するキャラクター

『スタートレック ディスカバリー』はキャラクターも魅力的かつプログレッシブです。

まずシリーズ初のアフリカ系女性主人公となったマイケル・バーナム。スポックの義理の姉という設定ですが、これが良い意味でスポックっぽさとスポックらしくなさを融合しており、独特のパワーのあるキャラです。なにより演じる“ソネクア・マーティン=グリーン”が普通にカッコいいですよね。「スタートレック」史上で一番クールな主人公だと思います。

どうしてもこれまでの「スタートレック」の主人公は艦長を主役にするので白人中高年になってしまいがち。するとステレオタイプなリーダー像になってしまっていました。それをこのマイケル・バーナムは完全に木端微塵に破壊しており、気持ちがいいです。規律違反が多いあたりもそうですが、それでいてあそこまでの主体性を有しているキャラクターに成長するのも良さだったり。

本作は船長がコロコロ変わるのも特色。

シーズン1では鏡像宇宙からやってきたフィリッパ・ジョージャウが船長に。いきなり不安になる人にリーダーを任せます。演じている“ミシェール・ヨー”がまあノリノリで、当然アクションに長けていますから大暴れしますし、なんかもうガラスの天井なんて厚さ1mとかあっても拳だけで微粒子レベルで粉砕しそうですよ。

続くシーズン2ではみんな知ってるクリストファー・パイクが船長に。こっちはこっちで安定のベテランっぷりを発揮。逆に普通すぎて浮いている感じにも見えるのがなんかシュールです。

シーズン3ではケルピアン人のサルーが船長に。私はサルーがお気に入りなので、彼の活躍には大満足。演じている“ダグ・ジョーンズ”、ほんといいですね。“ダグ・ジョーンズ”は『シェイプ・オブ・ウォーター』の半魚人とか、たいていは人間じゃない役をやっているのですけど、今作は人間顔での出番もあるし。非人間種族が船長になれるのもいよいよここまで来た感じもしますし、サルーは過去作で言えばスポックやデータに相当するキャラクターですけど、とても人間味溢れるストーリーが用意されていてしんみりします。

そんなサルー船長のもとで臨時副長になって一時は舵を任せられるシルビア・ティリー。言うなればあのメンバーの中では最もオタクっぽく、要するにトレッキーである視聴者と同じ側にいるポジションですけど、そんなシルビア・ティリーもああいう仕事に立てるのはすごく夢のあるサプライズだったと思います。

それだけでなくLGBTQ要素もかつてなく輝いていました。スタメッツと恋仲になるヒュー・カルバーとか、機関部勤務でサバサバしているジェット・リノとか。ゲイやレズビアンも普通にいて、普通にロマンスしています。以前『スター・トレック BEYOND』でわずかだけ同性愛を示すシーンを登場させるだけで精一杯な感じでしたから、それと比べると格段の改善ですよ。

さらにシーズン3から登場したアディラ・タルはノンバイナリーで、ここまで範囲を広げてくれたのは嬉しいかぎり。だいぶトリッキーな存在で代名詞「they」を表現するのは「スタートレック」らしいといえばそうなのですけどね…。

なお、本作のキャストにはLGBTQ当事者もそれなりに参加しているので、これもまた時代の象徴な感じです。

ちなみに個人的には“デヴィッド・クローネンバーグ”の出演が一番テンションあがりました。科学者の役ですけど絶対に変な映画とか作ってそう…。クローネンバーグ、やっぱり佇まいからして異彩を放っているなぁ…。

こうやって振り返るとこの『スタートレック ディスカバリー』は旧来のファンを喜ばせると同時に、しっかり新規ファンを開拓する間口の広さもあって、全方位型サービス精神に溢れていました。
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惑星連邦の理念を再び

『スタートレック ディスカバリー』はシーズン全体を通して対立と連帯のせめぎあいを描いています。これは「スタートレック」自体がそうだったのですが、本作はそれが色濃いです。

シーズン1ではシリーズおなじみのクリンゴン人との争い。本作のクリンゴン人の見た目は過去作以上に強面になっているので余計に怖い雰囲気。

シーズン2では種族対立ではなく、セクション31を操り生命体の全滅を図るAIとのバトルに。相手は無慈悲に決断を下す存在であり、人間的感情は期待できません。

シーズン3ではあの銀河連邦が「大火」という現象のせいで崩壊状態に。ディスカバリーのクルーたちはまずは自分たちが信頼を得ることから始めないといけません。

いずれでも常に重視されるのは「惑星連邦の理念」です。自衛目的以外で武力行使をしてはならない。

他文明への内政干渉・入植をしてはならない。そんなルールを順守することで、多様な文化や価値観を持つ種族をまとめあげてきました。

本作、とくにシーズン3は私たち現代社会とのリアルタイムなシンクロがひときわ強い一作になりました。フェイクな情報と悪意にまみれた憎悪によって分断が深刻化する世界。それを再び繋げることの難易度の高さはまさに今実感しているところ。

でもやり遂げなければならない。「繋がることへの欲求は知覚生命への本質。それには時間と努力が必要」…その言葉は今の私たちに深く刺さります。

あらためて思うことですが、「スタートレック」はもはやクラシックなSFなのですけど、その理念は今こそ再認識が必要とされているのでしょう。ポスト・トゥルース時代に突入し、科学が軽視される中、科学の魅力を訴えることのカッコよさ。正しいことをしようとすれば「正義の暴走だ」と冷笑される空間にいる中、それでも正しさを貫くことの勇気。

シーズン3にてホログラム世界でずっと暮らしており外の世界を知らないスカールというキャラクターが登場します。あれはまさにネット世界に引きこもり、外に怯える私たちそのもの。自分とは異なる価値観や容姿、性質を持つ存在に遭遇するのが怖い、仲良くなれない、どうしたらいいのか…そんな不安に対して「最初のコンタクトをとろう」と手を伸ばす。

恐怖を煽るのでもなく、劣等感に浸るのでもなく、互いを知り、尊敬し、謙虚に共有する。そんな世界を構築するにはやっぱり「スタートレック」は必要なのです。

『スタートレック ディスカバリー』
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer 82% Audience 50%
S2: Tomatometer 81% Audience 36%
S3: Tomatometer 90% Audience 46%
IMDb
7.2 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 7/10 ★★★★★★★

作品ポスター・画像 (C)CBS Television Distribution スター・トレック ディスカバリー

以上、『スタートレック ディスカバリー』の感想でした。