感想は2100作品以上! 検索はメニューからどうぞ。

『THE FIRST SLAM DUNK』感想(ネタバレ)…そして私のファーストスラムダンクになる

THE FIRST SLAM DUNK

そして私のファーストスラムダンクになる…映画『THE FIRST SLAM DUNK』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:The First Slam Dunk
製作国:日本(2022年)
日本公開日:2022年12月3日
監督:井上雄彦
THE FIRST SLAM DUNK

ざふぁーすとすらむだんく
『THE FIRST SLAM DUNK』のポスター。5人のチームメンバーが揃ったデザイン。

『THE FIRST SLAM DUNK』物語 簡単紹介

湘北高校のバスケ部はバスケットボール・インターハイへの出場を決め、2回戦に突入した。相手は秋田県代表の山王工業。高校バスケの最強として昔から王者と評されてきた強豪校である。挑戦者として位置する湘北高校のチームは、宮城リョータ、三井寿、流川楓、桜木花道、赤木剛憲の5人が試合開始から全力でぶつかっていく。その最中、宮城リョータは自身の心に押し込めていた過去を思い出す。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『THE FIRST SLAM DUNK』の感想です。

『THE FIRST SLAM DUNK』感想(ネタバレなし)

スポンサーリンク

ファーストな「SLAM DUNK」に

2023年度(令和5年)における日本の映画興行収入ランキングで、「頭脳は大人(自称)」や「キノコ異世界に迷い込んだ配管工」を抑えて、堂々の1位に輝いたのは、バスケに情熱をぶち込む少年たちの映画でした。

それが本作『THE FIRST SLAM DUNK』

本作はバスケットボールを題材にした青春モノとして金字塔と言える“井上雄彦”による漫画『SLAM DUNK』(スラムダンク)を原作としたものです。

漫画は1990年から1996年まで「週刊少年ジャンプ」で連載され、日本のバスケ人気の中核となり、全国の学校では『SLAM DUNK』に触発されてバスケ部が大盛り上がりとなりました。

漫画はアニメ化され、1993年から1996年まで全101話が放送。基本的に原作に沿った映像化ではあるものの、オリジナル・ストーリーも挟みつつ、原作の途中までを描いて終了していました。

そんな『SLAM DUNK』のアニメが、実に26年の歳月を経て原作者“井上雄彦”の監督&脚本で映画化ということで、それはもうファンにしてみれば落ち着いていられない事態です。本作の公開前の最新情報発表時にかつてのアニメシリーズとは声優が変更されたことでネット上では不満の声が広がり、少し不穏な空気にもなりました。『SLAM DUNK』らしいファンダムの期待と緊張感が漂ってましたね。

しかし、蓋を開ければ興行収入158.7億円の特大ヒット。ファンもかつての熱狂を取り戻し、リピーターも続出の異例のロングラン上映(2022年12月からの公開)。誰よりも製作陣がホっと胸をなでおろしたのかもしれません。

そんな中、私は『SLAM DUNK』…漫画もアニメも見たことがないという完全な初心者で、蚊帳の外。『SLAM DUNK』の名前は知ってるくらいだったので、この『THE FIRST SLAM DUNK』で初めて触れるつもりで呑気にいました。最初は映画を観る前にアニメシリーズを少し観ておこうかとも思ったのですが、初めてがこの映画というのも貴重な新鮮な体験になるなと思い直して、そのまま映画館に向かいましたよ。

私にとっても「ファースト」な『SLAM DUNK』でしたが、往年のファンにとっても初体験の『SLAM DUNK』になったでしょうから、良いタイトルですね。

『THE FIRST SLAM DUNK』は変わった立ち位置の作品で、以前のアニメシリーズの続きを直接的に描くわけでもなく、かといってリメイクとも違う、独自の一作です。

描かれるのはアニメ化されていなかった…そして原作で最も熱気が頂点を迎えるインターハイの第2回戦。しかし、主人公は原作の桜木花道ではなく、同じバスケ部の宮城リョータを据え、ここまでの生い立ちを間に挟めていく構成です。

そういう点では、非常に既存のファンのためのスペシャルな一作という感じですけども、それでいてちゃんと『SLAM DUNK』初見でも楽しめるようになっていました。

原作読んでない私が言うのもなんですが、本作はものすごく脚色が上手いのだと思います。さすが何度も企画をスクラップ&ビルドしているだけあって、無駄なく練り込まれてました。

そんなこんなで、後半の感想では、私はファンダム目線のアツい語りは一切できませんが、もう少し具体的に「ここが良かった」という話をだらだら書いてます。

スポンサーリンク

『THE FIRST SLAM DUNK』を観る前のQ&A

Q:『THE FIRST SLAM DUNK』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:とくにありません。過去作を観ていなくても問題はないです。
✔『THE FIRST SLAM DUNK』の見どころ
★バスケに特化した映像表現。
★初見もファンも引き込む脚色。
✔『THE FIRST SLAM DUNK』の欠点
☆この映像表現で他のストーリーも見たくなる。

オススメ度のチェック

ひとり 4.0:初めて触れる人でも
友人 4.0:一緒に観戦
恋人 4.0:作品好き同士で
キッズ 4.0:バスケ好きな子に
↓ここからネタバレが含まれます↓

『THE FIRST SLAM DUNK』感想/考察(ネタバレあり)

スポンサーリンク

あらすじ(前半)

沖縄。ごく平凡な住宅地の一角にある小さな野外のバスケットボールのスペース。そこに2人の若者がバスケをしていました。

「上手くなったな、リョータ」と幼いリョータを褒めるのは兄のソータです。いつもこうやって1対1(1on1)に付き合ってくれ、弟の上達を支えてくれます。ソータはすでにミニバスで名選手として実力を発揮。リョータに刺激を与えています。

しかし、2人の父は突然亡くなり、その葬儀の後、仏壇の前で「俺がこの家のキャプテンになるよ」とソータは母に力強く告げます。それでもソータは秘密の隠れ家でひとり泣き、悲しさをこぼしていました。

リョータはそんな兄の一面も見ます。「いいか、俺がキャプテンで、お前が副キャプテンだ」…そう言われ、ますます兄との繋がりを増します。

また1on1をしているとき、リョータは兄のソータに必死に食らいつき、成長をみせようとします。「またやろう」とリョータ。しかし、ソータは友人と船で釣りにでかけることになっており、「ドリブル、練習しろよ」と言って船に乗り込みます。

拗ねるリョータは「もう帰ってくるな」と泣きわめいて船に罵声を浴びせるのでした。まさか帰らぬ人となるとは知らずに…。

月日は流れ、神奈川県代表の湘北高等学校バスケットボール・インターハイの2回戦に進出。相手は王者として名をはせる秋田県代表の山王工業高校。近年も「インターハイ3連覇」という凄まじい記録を持っており、湘北高校は無名の挑戦者として前に立つことになります。

湘北高校の先発メンバーは、宮城リョータ、三井寿、流川楓、桜木花道、赤木剛憲の5人。とくに桜木花道はバスケを初めて数カ月という異例の抜擢です。

試合開始。いきなり怖いもの知らずの桜木花道の気合いの先制点。しかし、すぐに追いつかれ、「2対2」の同点となります。両チームとも、最初から本気でぶつかり合っていました。

相手のシュート・ブロックのボールが桜木花道の顔面にあたって、そのままゴールに入るというラッキーもあり、「36対34」で湘北高校が王者の山王をリードするという下馬評を覆す前半戦となりました。

そんな中、背番号7番の宮城リョータは昔を思い出します。兄のソータが海難事故で亡くなってからもリョータはバスケに打ち込んでいました。母カオルと妹アンナが試合を観戦に来ます。背番号は兄と同じ7番。小柄ながらキレのいい動きです。けれども相手選手に兄の話題をだされ、動きは乱れます。兄の代わりにはなれない…どこかで大人はそう呟きます。一方、母はソータの面影を感じていました。

母は引っ越そうかと兄のものを片付け、取り乱してリョータを強引に追い出してしまいます。宮城家は沖縄を離れ、神奈川県へ引っ越すことになりました。新しい地でもリョータは心を塞ぎ込み、バスケをしながらも孤立する日々。

しかし、赤木剛憲、三井寿、流川楓、桜木花道に出会い、変化が訪れました。そして、かつて兄が「勝ってみせる」と息巻いていたあの山王と戦っているのです。

後半戦に突入すると、熟練の山王は本調子を取り戻し、前半だけで疲弊した湘北は追い詰められ、点差が開いていきます。

勝利は夢にすぎないのか…。諦めるしかないのか…。

この『THE FIRST SLAM DUNK』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2024/06/20に更新されています。
スポンサーリンク

本当のスポーツの動きを観戦しているような

ここから『THE FIRST SLAM DUNK』のネタバレありの感想本文です。

日本はアニメ映画が豊富で毎年たくさん公開されていますが、この『THE FIRST SLAM DUNK』は突出してエポックメイキングな一作になったと思います。ハリウッドに対する『スパイダーマン スパイダーバース』と等値の、業界に激震を起こすアニメーション映画だったのではないでしょうか。

何よりも目を見張るのが映像表現。本作は、とくにキャラクターに関してはモーションキャプチャーを用いたCGで構成されており、ロトスコープ風の生っぽい動きになっています。

こういうCGベースのキャラクター表現は昨今の日本のアニメ市場ではすっかり定着しつつあり、ひと昔前は「作画コストの削減」のために活用されるイメージだったCGですが、おそらくスマホゲームなどの表現の浸透もあって、アニメ風のCGキャラに違和感はなくなりつつあります。

とは言え、やはりアニメ風のCGキャラは本来の2Dアニメーションとは表現の味が異なりますし、まだまだ発展途上な感じではありました。

しかし、この『THE FIRST SLAM DUNK』は原作者“井上雄彦”のこだわりもあってか、稀にみる作り込みになっており、凄いものを見たなという感動がありました。

そもそもスポーツのアニメ作品はいくらでもありますが、もともとが動きの激しい題材なので、アニメーションで表現するのは大変です。だから、ある程度の決めの絵を作っておき、多少は使い回すこともよくあります。スポーツのアニメがオーバーアクションしやすいのはそのほうが作画コストを抑えて派手な雰囲気に作れるからというのもあるでしょう。

けれどもそれはリアルなスポーツではありません。本物のスポーツは、アスリートは誰ひとり、そしてどのタイミングでも同じ動きを繰り返したりしません。全身のあらゆる筋肉、骨、神経、フィジカルやメンタルの体調としてのコンディション…それらが噛み合って「動き」を作り、それが毎回違うからこそスポーツは不確実性があってエキサイティングな場を生み出します。それが醍醐味です。

その現実における生の「動き」をアニメーションで表現する難易度は最難関なのですが、『THE FIRST SLAM DUNK』はそこをしっかり勝負してました。

ただでさえ、バスケは攻守の切り替えがせわしなく、動きがハイテンポです。それでもこの映画はちゃんとキャラクターの動きがひとつひとつ作り込まれ、どれもその一瞬の動きとなっています。なので、まさに本当に試合を観戦しているような感じで観客は固唾を飲んでしまえます。展開を知っているファンでさえ「この後、どうなるんだ?」という緊張を味わえたのではないかな。

最後のワンプレイの音のない演出なども、この映画の技法を信頼できるからこそ成り立ってます。あそこで動きがリアルじゃないと、少し白けてしまいますから。

バスケットボール選手の動きに関する知見のチームプレイの成せる完成度ですし、バスケをリアルに描こうというわかりやすくかつ究極の目標に一致団結できたゆえの結果だと思います。

スポンサーリンク

結果よりも挑戦に意義がある

『THE FIRST SLAM DUNK』はストーリー面では、宮城リョータというキャラクターに大きく焦点が絞られています。

この宮城リョータの物語は、相当に重いです。父の死、そして兄ソータの死が重なり、心を塞ぎこんでしまった少年。本作は思春期のメンタルケアの過程でもあります。表面上はストイックにみえても、その内実では心の傷跡が埋められない。そんな男らしさを過剰に背負いすぎた宮城リョータが、母を含む家族、そしてバスケ部の友人たちの支えを受け入れて、自身の壁を乗り越える。レジリエンスが丁寧に描かれていました。

サイドのストーリーは控えめにして、カタルシスとしてのエモーショナルな部分はバスケのプレイに全て乗っけていく構成も良かったです。

これだけシリアスな宮城リョータのストーリーアークを主軸にしているので、作品全体が重すぎてしまう懸念もあるのですが、そこでバランスを調整してくれるのが、桜木花道という存在。

本来の主人公ですが、本作を観ていてよくわかりますが、桜木花道は主人公じゃなくてもイキイキと輝けるし、むしろ脇にいるほうがそのポジションが際立っているような気さえしてきます。私みたいに原作を知らずに観ていると、「この桜木花道が主人公って大変じゃないか!?」って心配にすらなってくる…。

これは桜木花道のあのバスケ・チームにおける役割とも一致していますし、そういう意味で、本作で桜木花道が主役じゃなくて大正解だったなと思いました。主役じゃなくても美味しい桜木花道がそこにいました。

桜木花道に引っ張られすぎてギャグシーンが増えてしまうと、宮城リョータの物語が減退するだけですし…。他のメンバーのストーリーも目立ちすぎない程度には入っているし…。このちょうどいい脚色。本作の脚色は良いお手本になりそう…。

そんな感じで、『THE FIRST SLAM DUNK』、これを鑑賞してしまったら、他のスポーツ・アニメがちょっと物足りなくなる…それくらいのインパクトはありました。

こうなったら、原作の他のエピソードも(すでにアニメ化されたものも含めて)、もう一度この映像表現でアニメーション化して眺めたくなりますよね。そうなってしまうとまた原作者“井上雄彦”の悩みと重圧が増えてしまうけども…。

現状のアニメ業界はネームバリューのあるタイトルが圧倒的に商業上で評価され、もてはやされています。だからこの『THE FIRST SLAM DUNK』だって、せこい考え方をするなら「とりあえず有名タイトルだし、作れば質に関係なく一定の客は入るだろう」と見通すことができます。そうやって打算的に制作されているアニメ映画も、まあ、どれとは言いませんけど、たくさんあるでしょう。

けれども『THE FIRST SLAM DUNK』はあえて難しい挑戦をしました。諦めることなく…。今の日本のアニメ業界でこういう商業的実りの無い挑戦を実践できる機会はあまりないです。結果論としてこの『THE FIRST SLAM DUNK』は大ヒットしましたけども、もし全然ヒットしていなくても、私は「素晴らしい挑戦だった」と評価したいです。

『THE FIRST SLAM DUNK』
シネマンドレイクの個人的評価
7.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)

作品ポスター・画像 (C)I.T.PLANNING,INC. (C)2022 THE FIRST SLAM DUNK Film Partners ザ・ファースト・スラム・ダンク

以上、『THE FIRST SLAM DUNK』の感想でした。

The First Slam Dunk (2022) [Japanese Review] 『THE FIRST SLAM DUNK』考察・評価レビュー
#SLAMDUNKMOVIE #THEFIRSTSLAMDUNK #スポーツ #バスケ