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ドラマ『ウィッチャー』感想(ネタバレ)…Netflixが贈るハイ・ファンタジーはこれ!

ウィッチャー

あの名作ゲームを実写化…ドラマシリーズ『ウィッチャー』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Witcher
製作国:アメリカ(2019年)
シーズン1:2019年にNetflixで配信
シーズン2:2021年にNetflixで配信
製作総指揮:ショーン・ダニエル ほか
性描写 恋愛描写

ウィッチャー

うぃっちゃー
ウィッチャー

『ウィッチャー』あらすじ

世界の大国たちは揺れ動いていた。今まさにその勢力図は大きな変化の時を迎えていた。その世界で怪物を狩る孤独な魔法剣士であるリヴィアのゲラルト、魔法使いであるヴェンガーバーグのイェネファー、シントラ女王キャランセの孫娘で“シントラの仔獅子”と呼ばれるシリは、抗うことのできない巨大な運命に翻弄されていく。

『ウィッチャー』感想(ネタバレなし)

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ハイ・ファンタジーVOD戦争、開戦!

壮大な世界観で繰り広げられるハイ・ファンタジーな作品は、映画よりもドラマシリーズの方が適しているのかもしれません。どうしたって時間が限られる映画だといくら続編を連発しようともカットされてしまう要素が出てきます。その点、ドラマシリーズは贅沢に好きなだけ時間を使ってじっくり描けます。もちろん人気が続けば…の話ですが。

2011年の『ゲーム・オブ・スローンズ』の大成功は業界を新しい「ハイ・ファンタジー」ドラマシリーズ戦争へと突き動かしました。そして2020年代、ついに本格的にその戦いの火蓋が切っておろされようとしています。

まず先駆者であるHBOは引き続き『ゲーム・オブ・スローンズ』のスピンオフを投入予定。Amazonは『ロード・オブ・ザ・リング』でおなじみJ・R・R・トールキンの「指輪物語」のドラマシリーズを大展開する企画が進行中。ほぼ完全にディズニーに取り込まれたHuluは将来的プランが見えづらいですが、まあ、きっと何か考えているでしょう。始まったばかりのAppleはまだイマイチ方向性は見えていません。動画配信サービスが増えるので必然的に同ジャンルでの競争が激化するのは避けられません。

そんな中、Netflixが満を持して物語を幕開けさせたのが本作『ウィッチャー』です。

「ウィッチャー」というタイトルをそもそもご存知でしょうか。2007年からゲームが作られ、シリーズが続いているのでゲームタイトルとして認知している人もいると思います。

もともとはポーランドの著名なファンタジー作家“アンドレイ・サプコフスキ”が1986年に書いた短編が始まりであり、長編小説として「ウィッチャーI エルフの血脈」「ウィッチャーII 屈辱の刻」「ウィッチャーIII 炎の洗礼」「ウィッチャーIV ツバメの塔」「ウィッチャーV 湖の貴婦人」が出版されてきました。

地元ポーランドでは親しまれており、漫画化されたり、映画化されたり、TVシリーズ化されたりもしています。すでにビックコンテンツなんですね。私はポーランド発のものだということすら知りませんでした。

その「ウィッチャー」を今回あらためてドラマシリーズとして打ち出すNetflix。相当に気合が入っていることをヒシヒシと感じさせ、予算も大量に注ぎ込んでいると思われます。ハイ・ファンタジーの大作は映像化が大変なぶん、失敗させるわけにもいきませんから、当然の覚悟と言えますが。

Netflixオリジナルドラマ『ウィッチャー』ですが、あくまで原作小説準拠であり、ゲームの方とはそこまでリンクはしていません。でも世界観は同じなのでゲームを知っている人も違和感なく楽しめるでしょう。今回から初めて作品に手を出そうかなと思っている人でも大丈夫。

製作は『ハムナプトラ』シリーズやドラマ『エクスパンス 巨獣めざめる』も手がける名プロデューサー“ショーン・ダニエル”が参加。他にもドラマ『アンブレラ・アカデミー』の“ローレン・シュミット・ヒスリッチ”など大勢が製作に加わっています。

気になる主人公を演じるのは、スーパーマンとしてDC映画ユニバースのまとめ役…だったはずがどこかへ行ってしまった感のある“ヘンリー・カヴィル”です。なんだ、魔法剣士になっていたのか。もうマントは卒業なのかな。というか、こんな大作シリーズに主演するということは、もう全然スーパーマンをやる気はないですよね?

“ヘンリー・カヴィル”以外の他のキャスト陣は比較的まだそこまで有名ではない人で固めている感じです。イギリス系インド家系の出自を持つ“アーニャ・シャロトラ”、さらにまだ新鋭と言っていい18歳の“フレイヤ・アーラン”。この若い二人が“ヘンリー・カヴィル”と肩を並べる主役級のキャラクターを演じています。本作を機に有名になっていくといいですね。

シーズン1は2019年12月20日に配信され、全8話(各1話約60分)とかなりのボリューム。観るのは大変だと思いますが、おそらく結構のシリーズ展開を予定していると思うので、どっしり腰を据えて鑑賞してみてください。

最初は世界観や用語に戸惑うことも多いと思います。感想後半で少し解説しているので参考にどうぞ。

日本語吹き替え あり
東地宏樹(ゲラルト)/ 恒松あゆみ(イェネファー)/ 近藤唯(シリ)/ ちふゆ(ティサイア)/ 佐藤祐四(ヴェセミル)/ 鶴岡聡(ランバート)/ 武田華(トリス)/ 小林親弘(ヤスキエル)/ 森田了介(イストレド)/ 浜田賢二(カヒル) ほか
参照:本編クレジット

オススメ度のチェック

ひとり 4.0:ファンタジー好きは必見
友人 3.5:ゲームを知らない人とも
恋人 3.5:主人公イケメン度が強い
キッズ 3.5:ヌード描写が多少あり
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ウィッチャー』感想(ネタバレあり)

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世界観を整理①:南と北の国々

『ウィッチャー』の世界観をシーズン1だけを観ていきなり把握できる人はあまりいないのではないかな。私もかなり整理が追い付かない部分があったのですが、冷静に整頓するとそこまで難しい世界観でもないです。

まずこの世界。そもそも名前はないっぽいです。大昔、この大陸にはエルフドワーフが暮らしており、対立関係が勃発し、戦いも起こっていました。ところが人間の入植者が大量に侵入したことで情勢は一変。一気にこの大陸の支配者は人間となりました。

その人間たちはこの大陸で大小さまざまな国を建国します。その数は10を超え、この時点でかなり初見にはツラいでしょう。でも話は割と単純。

まず「ニルフガード(Nilfgaard)」という「エムヒル皇帝」が統治する大陸南方の大国が存在し、このニルフガードがまさに全国制覇だ!と言わんばかりに南から各国へと侵略していっています。

大陸の真ん中あたりにある「シントラ(Cintra)」はその猛進しているニルフガードの攻撃をもろに受けることになり、シーズン1ではまさにそのシントラ陥落が描かれることになります。

そしてシントラより北にある「北方諸国」と呼ばれる国々…「ケイドウェン」「レダニア」「テメリア」「エイダーン」の4大国及びその他多数の小規模国家(「リヴィア」など)はそのニルフガードの脅威にさらされる将来が迫る…というのがこの世界情勢。要するに「南(ニルフガード)vs北(大勢)」ってことですね。

地図にしてくれればわかりやすいのですけど…。

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世界観を整理②:魔法使いとウィッチャー

この国家対立に対して独自の立ち位置を持っているのが「魔法協会」。この世界では魔法が存在し、その力はときに非常に強いようです。世界中から魔法の才能に秀でている者が「アレツザ」という魔法学校に集められ、集団生活の中で魔法を磨きます。

女性が多いようですが、男性の魔法使いもいるようです。

そして一人前となった魔法使いは各国に派遣され、国家に従事する魔法使いとなることができます。基本的に中立のようですが、シントラは魔法協会と折り合いが悪いようです。ニルフガードは魔法使い「フリンギラ」によってさらに凶悪に。しかし、学長だった「ティサイア」はニルフガードに攻められているシントラに味方することに決め、一部の仲間(イェネファー、ヴィルゲフォルツ、サブリナ、トリスら)を引き連れて前線に繰り出し、ソドンの丘で大激戦を繰り広げる…のがシーズン1の最終話の話。

その魔法使いとは別の存在であるのが「ウィッチャー」です。「witcher」とは本来は男性の魔法使いを指す言葉ですが、この世界では独自の意味があります。ウィッチャーは魔法に加えて剣術など物理的な戦闘に秀でる者たちであり、魔物を狩ることで暮らしています。集団行動はあまりとらず、ミュータントの化物呼ばわりされて蔑視されていることも。本作の主人公である「ゲラルト」もウィッチャーです。

また人間たちの他に、この大陸に昔から存在したエルフやドワーフ、ハーフリングといった人間以外の種族もいます。しかし、人間からの迫害の対象になっており、ひっそりと身を潜めるしかない状況。ドワーフなどは人間側に労働者として働く選択をしているものもいます。

一見すると重要そうではない脇役っぽい非人間種族ですが、エルフは魔法の原点でもあり、あの魔法協会の魔法の由来にもなっています。そして作中のメイン人物たちも実はエルフとは深い関わりが…。

さらにドラゴンも登場。この世界のドラゴンは複数の種類がいて、緑竜という普通のものから、金竜という高度な知恵と能力を持つものまで。

『ウィッチャー』の世界観はスラヴ神話なんかがモチーフになっているみたいですね。こういう世界観を構築できる人の頭は本当に凄いなと思います。

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シーズン1:壮大なプロローグ

『ウィッチャー』のシーズン1は膨大な世界観に初めて放り出されるのでわかりにくいのは当然なのですが、それに輪をかけて迷子になりやすい要因がありました。それはストーリーの時間軸。

シーズン1の主要キャラクターは3人です。ウィッチャーのゲラルト、魔法使いのイェネファー、シントラから逃げることになったシリ(シリラ)。

ここでわかりにくいのは、ゲラルトとイェネファーの物語時間軸とシリの物語時間軸が違うんですね。ゲラルトとイェネファーの物語はニルフガードによるシントラ陥落以前の時間からゆっくりスタートし、シリの物語はシントラ陥落以降の逃避行を含む割と短い時間の話です。この2つの時間軸はシーズン1の7話でやっと合流します。わかんない人は本当に第7話になってやっと状況を掴める感じです。

加えてゲラルトとイェネファーの物語は単発的に話がポンポン飛びます。二人の見た目は全然変わりませんが(魔法関連で容姿が老化しない)、時間的には数十年が普通に経過しています。

ゲラルトはストレゴボルという魔法使いからクレイデン国の王女レンフリという異常な状況にある女性を殺すように頼まれ苦悩したり、吟遊詩人ヤスキエルと腐れ縁のようになって「白狼」としての武勇が広まったり、テメリアでは魔法使いトリスからある魔物の一件に関与したり、あれこれと物語を紡いでいきます。そしてキャランセ女王の娘のパヴェッタ王女の求婚式に出席した際は、そこで後にシリの父母となるダニーとパヴェッタの秘密を知り、ゲラルトは“驚きの法”により“知らぬうちに手に入れたもの”を望んだ結果、まだお腹の中のシリと運命が結ばれることに。

イェネファーは少女時代は“せむし”であり、その障害から家では家畜以下に扱われていましたが、ふと魔法協会に誘われ、修行。そこでイストレドと恋仲になるも、イェネファーの本当の父はハーフエルフ(つまり彼女はクォーターエルフ)ということが大きな波紋に。さらには全く異なる美しい容姿を手に入れます。エイダーン王に仕え、イェネファーはライリアのカリス王妃と旅する途中で暗殺者に襲われ、赤ん坊を守れずに後悔。このことから自分も赤ん坊を宿す体になりたいと執心し、魔法協会からも遠ざかります。そんな中、一筋の望みですがったジンの呪いで痛い目に遭い、ゲラルトと接触。ジンに望んだ第3の願いによって二人の運命が切っても切れない関係に(最初は本当の愛だと思った)。

一方で祖母キャランセ女王により逃がされたシリは、道中でエルフのダーラに出会ったり、ブロキロンの森でドリュアスの女王エイスネに会ったり、自分の秘めた魔力の力を発揮したり、わけわからん状態に(まあ、観客も混乱ですが)。シーズン1ラストでついにゲラルトと合流。

なんでこうも把握いづらいのか。まるでサブエピソードの組み合わせみたいだなと思ったかもしれません。そうなんです。このシーズン1は原作が「The Last Wish」と「Sword of Destiny」という短編であり、本編である長編のものではないんですね。本来は主要キャラクターの裏ストーリーを深掘りする立ち位置の物語。そこから始まったわけですから、その違和感は至極当たり前。Netflix側も相当にこの「ウィッチャー」というコンテンツを隅々まで使いきる覚悟があるのでしょう。

どちらにせよ壮大なプロローグであるシーズン1。わかってほしいのは、ゲラルトとイェネファーとシリは複雑な運命で結ばれているということ。複雑すぎますけどね。

今後はこの3人が疑似家族的な宿命を背負って大国のせめぎ合いと神話的な伝承に翻弄されていくことになる…はず。

シーズン1は最終話の魔法を使った戦争シーンが印象的。こういう魔法戦争バトルが個人的には好きなので、たっぷり見られる本作は楽しいです。まあ、ぶっちゃけ、魔法使いだけでいいんじゃないかなという気持ちにもなりますが…。

『ゲーム・オブ・スローンズ』に引きずられているせいか、やたらとアダルトな裸体シーンも多めですが、正直、それはあんまりなくてもいい気がする…。それよりも状況説明がほしい。ヤスキエルも歌を歌ってないで世界観の解説をしてくれ。

たぶんシーズン2から本番です。

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シーズン2:壮大な家族の始まり

※シーズン2に関する以下の感想は2021年12月21日に追記されたものです。

『ウィッチャー』のシーズン2はまず物語がシンプルになりました。いや、シーズン1があまりに複雑すぎたのですけどね…。前シーズンと比べたら圧倒的わかりやすさですよ。

見どころも単純で、前半はわりといつもの「ゲラルトの今日の怪物退治のコーナー」みたいな感じで毎度出現する新手のモンスターをぶっ倒していく豪快なオチです。吸血鬼ブルクサ、木の怪物レーシーなど今回もたくさん登場。ちなみに『ウィッチャー 怪物図鑑』というモンスター紹介コンテンツをNetflixはわざわざ用意してくれているのもツボを押さえていますね。

物語全体は一言で言えば「家族を作ろう!」の巻です。ゲラルトは“驚きの法”でシリと関係ができる、まあ、要するに養女になったのですが、なにせあんな男ですからお父さんって柄でもなく不器用です。シリが「私はウィッチャーになりたい!」と頑張って超危険な試練(なんだよ、あのアスレチック…)に無謀に挑んでも、ゲラルトはムスっとした顔で仁王立ちしているだけですからね(褒めるの下手かよ…)。絶対にもっと育児書を読むべきだった…。

そんなゲラルトとシリの心配になってくる父娘の危なっかしさ。場所がケィア・モルヘンというウィッチャーの故郷で、そこにいる男たちも育児に関してはダメダメなので、これは大丈夫か…と思った矢先、トリスがやってきてダメ男たちの育児を軌道修正。でもそこでシリの価値と脅威に気づくトリス。

なんとトリスはヘン・イケイアという古き血の持ち主で、とんでもなく世界を揺るがす存在でした。しかも、エンディングで判明するとおり、実の父はあのニルフガードのエムヒル皇帝です。シリ、あまりにいろいろと背負いすぎている…ちょっとくらいウザいヤスキエルになすりつけてもいいよ…。

ラストはついにイェネファーと和解して、ヴォレス・メイアの憑依の危機を脱し、この3人は家族としてのスタートラインに立ちます。そんな出来立てほやほや家族の戦うべき相手は「実の血縁の父」というあたりがミソですかね。

「ワイルドハント」の不吉な影もありつつ、『ウィッチャー』はドラマシリーズとしてやっと勢いに乗り始めた気がします。アニメ『ウィッチャー 狼の悪夢』やスピンオフ実写『ウィッチャー 血の起源』もあって横の広がりも大盤振る舞いですし…。

ちなみに原作ではシリはバイセクシュアルだと示唆されるのですが、そのへんの描写はドラマシリーズでも描かれるのか、そこも今後に期待です。

『ウィッチャー』
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer 68% Audience 91%
S2: Tomatometer 93% Audience 72%
IMDb
8.2 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★

作品ポスター・画像 (C)Sean Daniel Company, Netflix

以上、『ウィッチャー』の感想でした。

The Witcher (2019) [Japanese Review] 『ウィッチャー』考察・評価レビュー