幼女でもできる猛獣脱出時に大事なこと…映画『ZOOMBIE ズーンビ』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。
製作国:アメリカ(2016年)
日本公開日:2016年7月17日
監督:グレン・R・ミラー
ずーんび
『ZOOMBIE ズーンビ』物語 簡単紹介
『ZOOMBIE ズーンビ』感想(ネタバレなし)
あの人気者動物が人を襲う
よく動物園で着ぐるみを使ったなんとも“ほのぼの”した猛獣脱走対策訓練が定期的に実施されている光景を報道で見かけます。動物園にいる猛獣の姿を模した着ぐるみ(二足歩行)を飼育員が「待て待て~」と追いかけているやつです。あれを見るたびに「これ、本当に訓練になっているのだろうか…」と思ったりするんですが、動物園側はあくまで真面目なようです。
そもそもこの訓練は、「動物の愛護及び管理に関する法律」の第7条の3で定められています。
動物の所有者又は占有者は、その所有し、又は占有する動物の逸走を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
ちゃんと法律で決まっているならしょうがないですね。しっかり対応を予行練習していて偉い。
でも、どうだろうか、動物がゾンビになったときの対策はしているのでしょうか(真顔)。…動物がゾンビになったときの対策はしているのでしょうか(2度目も真顔)。いや、ゾンビ化というのも想定すべき事態のはずでしょう。そこまで準備してこそ万全であり、責任ある動物飼育者としての務めといえるだろう(新聞の社説風に)。
そんなゾンビ対策なんて考えてもみなかったよ!と焦っている動物園関係者の皆さん、安心してください。とても参考になる資料をご用意しました。それが本作『ZOOMBIE ズーンビ』です。
本作はタイトルが「Zoo(動物園)」と「zombie(ゾンビ)」の強引な合わせ技になっているとおり、動物園の動物たちがゾンビになっちゃったという単純明快なストーリー。絶対、タイトルをノリで思いつき、勢いのまま企画にした感じがビンビンするけれど、いいでしょう。語呂の良さに免じて許します。動物がゾンビになるというのは映画に限らずゲームなどでも珍しくないですが、本作はお祭り感が売りなのは言うまでもない…いろんな動物がゾンビになってくれます。動物が脱走するだけでは凶暴度が低いのでゾンビにすれば『ジュラシック・パーク』になるだろうという単純論理は理解できるし、正直その絵を見てみたいという好奇心が駆り立てられるのも事実。ポスターとか楽しそうじゃないですか。いいんです、映画を観る動機なんてこんなものです。
この映画を製作したのは…安心してください。「アサイラム」です。
知らない人のために説明しておくと、企画そのものがパロディでしかないようなトンデモB級映画を量産することで有名なアメリカ・カリフォルニア州の映画製作会社です。『メガ・シャーク』シリーズとかが最近は話題ですね。
B級映画ですから温かい目で見守ってあげてください。でも、つまらないB級映画ではなく、ちゃんとトンデモな展開を用意してくれている面白いB級映画です。個人的には、あの動物が人を襲うシーンだけでも観ていて満足できた気がする。
ゾンビ動物園へ Let’s Go です。そして、これでゾンビ動物の脱走対策もバッチリですね。
『ZOOMBIE ズーンビ』感想(ネタバレあり)
動物は保護する、ゾンビは殺す
本作『ZOOMBIE ズーンビ』を観て思い出したのが、「パラサイト・イヴ」という1998年にプレイステーションで発売されたTVゲーム。このゲームでは、モンスターになった動物が襲いかかってきて、その動物のグロテスクな外見描写が印象でした。舞台の一部が動物園になるので、ちょっと雰囲気が似ています。3%くらいの類似度ですが…。
そんな昔のゲームと比べると、本作のゾンビ動物たちはインパクト弱めです。昔のゲームに衝撃で負けていていいのかと思わなくもないですが、まあ、しょうがない。CGや着ぐるみで再現されたゾンビ動物たちは、目が虚ろで毛がボサボサみたいな感じでしかなかったのが残念。ゾンビ化したことで若干強そうオーラが消えたような動物もいたような…。
この作品が実現できるのも、CGというテクノロジーをB級映画に与えてしまったがゆえであり、多少雑でもノリと勢いで映像化できてしまうようになり、自由度が上がったという現代。それでもひとつのモンスターを創作するだけで1本の作品を持たせている映画も多いなか、この『ZOOMBIE ズーンビ』は、たくさんのゾンビアニマルを作っているだけ頑張っているといえるかもしれません。とりあえず製作者は頑張りました。その苦労は褒めておかないと。
願わくばポスターに描かれているぐらいの外見にしてほしかったというのが要望ですが。ポスターの首が折れて骨が出ているキリンとか最高じゃないですか。あれが見たかったな…。
ゾンビ動物の種類ももうちょっと欲しかったところ。サル、ゴリラ、キリン、ライオン、イノシシ、鳥くらいだったかな…。ポスターにでているクマはいなかったし、カバは歩いてただけでした。個人的には、シマウマとかダチョウとか群れが見たかったですね。やっぱりゾンビ動物園の需要はあるね。これは人気、でそうだ。よし、誰か企画してください(人任せ)。
まあ、いろいろあった不満点もたくさんのトンデモな映像で帳消しにしてくれたのでOKです。腕を噛みちぎるキリン、ライオンに囲まれるマヌケな絵、ゾンビコアラをぶっ倒す女の子、私の中に巣をつくってる!な場面、焼き鳥からのファイヤーバード襲来…楽しかった。もとから猛獣な動物よりも、普段は温厚な動物が人を襲うのを見るのが楽しいということに気づきました。逆に凶暴化した場合、草食動物のほうがよっぽど危険な気がしてきます。まあ、さすがにコアラは予想外ですけど…。
この動物園では動物は絶対にフェンスをよじのぼらないという前提があるのがツッコみどころですが…あれです、みんな高所恐怖症みたいな裏設定があるんです。天敵がいないから感染しないとか言っていたゾウが後半普通にゾンビ動物たちと進軍していたのは…あれです、長い物には巻かれろの精神です、みんなやるでしょう? 女の子と仲良かったゴリラは普通に襲ってきて何のドラマもなく倒されたけど…あれです、しょせん獣ですから。そこにハートウォーミングなドラマは入れない冷たさ。
お話しのテンポが良かったのも地味にうれしい。人間側に悪役がいないのもシンプルで良かったです。そうはいってもゾンビ化の引き金をひいたのは愚かな人間の技術への過信なわけで、自業自得といういつものやつではあります。悪役不在のせいでスッキリするオチがないという欠点もありますが、最近の大手のパニック作品は世論を考慮しているのか、あまり善人を殺したがらないので、この手のB級作は善人であろうとなかろうと死ぬときは死んでしまう展開がなによりも愉快であり、そこさえ楽しめればいいのかなと。不謹慎こそ本望ですから。
なので『ZOOMBIE ズーンビ』の感想なんて「楽しかった」の一言でいいのです。ひとがぞんびどうぶつにおそわれているのがたのしかったです(小学生感想文)。
そういえば、ゾンビ動物の脱走対策のために本作を紹介したのでした。なにか有用な知見を得られましたか。ひたすら人間たちがバカな行動をしていたように見えましたが、でもそんなこともないです。動物園の猛獣脱走対策訓練に役立つ教訓はひとつ。
絶滅危惧種でもいざとなれば容赦なく「殺す」という判断をせよ。
女の子でもそれができてましたからね。勉強になりました(?)。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer –% Audience –%
IMDb
3.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 3/10 ★★★
作品ポスター・画像 (C)2016 SLIGHTLY DISTORTED PRODUCTIONS, LLC. All Rights Reserved.
以上、『ZOOMBIE ズーンビ』の感想でした。
Zoombies (2016) [Japanese Review] 『ZOOMBIE ズーンビ』考察・評価レビュー