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ドラマ『ウェンズデー』感想(ネタバレ)…2022年最大のシップの打ち上げになったのか?

ウェンズデー

2022年最大のシップの打ち上げになったのか? それとも不発か?…ドラマシリーズ『ウェンズデー』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Wednesday
製作国:アメリカ(2022年)
シーズン1:2022年にNetflixで配信
製作総指揮:アルフレッド・ガフ、マイルズ・ミラー、ティム・バートン ほか
恋愛描写

ウェンズデー

うぇんずでー
ウェンズデー

『ウェンズデー』あらすじ

頭脳明晰で皮肉屋なウェンズデー・アダムスは、普通の学校では居場所もなく、のけ者ばかりが集うネヴァーモア学園に入学することになる。母親の母校なんて気に入らず、すぐに抜け出してやろうと考えていたが、この学園の周辺では奇妙な殺人が連続して起こっていた。ウェンズデーは、新たな友や敵を作りながら、不気味な猟奇殺人の謎を探る。どこに怪物がいるかはわからない。手はひとつだけでは足りない…。

『ウェンズデー』感想(ネタバレなし)

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Netflixの新しい顔になるか?

動画配信サービスがメインストリームとなる時代に突入し、各動画配信サービスの顔となるような代表作も明確に存在するようになりました。そしてこれだけ年数が経過してくると、その顔もそろそろ看板交代する時期に差し掛かってきたのかもしれません。

世界の動画配信サービスの先頭を走っていたNetflixでも大きな変化の兆しを示すようなニュースが飛び込んできました。これまでNetflixで扱われている英語シリーズ作品として1週間における最多視聴時間を記録を持っていたのはドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』。2016年から配信されたこのドラマはNetflixの成功を印象づけるサービスのゲームチェンジャーでした。今もその人気は衰えず、2022年に配信された最新シーズンも非常に注目度が高かったです。

ところがその英語シリーズ作品として1週間における最多視聴時間の記録を打ち破る作品がこの2022年も終わりが見えてきた終盤に暗闇からヌっと登場しました。

それが本作『ウェンズデー』です。

『ウェンズデー』はあの1991年に実写映画化もされてカルト的な人気を集めた、アメリカのカートゥーン作家”チャールズ・アダムス”の漫画に基づく新たなドラマシリーズです。最近も2019年からCGアニメ映画になっていましたが、今度はドラマシリーズで来たわけです。ただし、今回はおなじみの丘の上にある洋館に住むアダムス一家を主題にしておらず、そのアダムス一家の長女の「ウェンズデー」を主人公にした一種のスピンオフみたいな立ち位置の作品になっています。

ドラマ『ウェンズデー』では主人公のウェンズデーは15~16歳のティーンであり、青春学園ドラマが展開されます。といってもなにせあのウェンズデーですから、雰囲気はおどろおどろしく、ダークなユーモアに溢れています。

ファンタジックな学園モノであり、ホラーミステリーでもあり、ロマンスも少し混ざっていたり、いろいろな顔を見せる作品です。

このドラマ『ウェンズデー』がNetflixで独占配信されるや否や、爆発的な大ヒットを記録。もともとネームバリューのあるタイトルでしたが、まさか『ストレンジャー・シングス』超えまでいくとは…。

でも私も鑑賞して納得。確かにこれはそれだけのポテンシャルがあります。たぶん最もネクスト「ハリーポッター」のポジションに手を伸ばしているのはこの作品じゃないかな。

ビジュアル的な作品の完成度は抜群です。製作費自体はそんなに贅沢ではないでしょうが、それでも雰囲気は完璧。このプロダクションデザインで勝ちきっています。

ショー・ランナーはドラマ『ヤング・スーパーマン』を率いた“アルフレッド・ガフ”“マイルズ・ミラー”のコンビなのですが、やはり製作総指揮とエピソード監督を務める“ティム・バートン”の功績も大きいでしょう。すっかりディズニーと距離を置いた“ティム・バートン”ですが、見事に居心地のいい次の住処を見つけましたね。

そしてこの俳優を忘れはいけない。このドラマ『ウェンズデー』の成功の決め技となったのが主人公を演じた“ジェナ・オルテガ”です。メキシコ系アメリカ人の父親とメキシコとプエルトリコ人を祖先に持つ母親から生まれたこのまだ20歳の若手は、『スクリーム』『X エックス』などホラー界隈で注目を集めていましたが、このドラマ『ウェンズデー』で完全に一般層にブレイクしました。

もうウェンズデーは“ジェナ・オルテガ”以外あり得ないというくらいにドハマりしています。“ジェナ・オルテガ”は『フォールアウト』も合わせて2022年に最も飛躍した若手俳優の堂々1位になりましたね。これは絶対に今後もあちこちで引っ張りだこですよ…。

“ジェナ・オルテガ”のウェンズデー単体だけでもじゅうぶんに作品を支配できるほどに魅力的なのですが、ここにもうひとつ加わることでこのドラマはさらに熱狂を巻き起こすほどに目が離せないものになっていて…。けれどもその要素は別の論争も生んでいたり…。そんな話は後半の感想で長々と語りたいと思います。うん、これは長くなるからね。

とりあえず2022年の話題騒然のドラマのひとつである『ウェンズデー』、年を越す前に観ておくのもいいでのは?

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『ウェンズデー』を観る前のQ&A

✔『ウェンズデー』の見どころ
★不気味でユーモアもあるダークなファンタジー学園ドラマ。
★主演のジェナ・オルテガのハマリっぷりと、あるキャラとの…。
✔『ウェンズデー』の欠点
☆シップとしてはまた消化不良。
日本語吹き替え あり
遠藤璃菜(ウェンズデー)/ 深見梨加(モーティシア)/ 辻親八(ゴメズ)/ 天野心愛(イーニッド)/ 岩中睦樹(タイラー) ほか
参照:本編クレジット

オススメ度のチェック

ひとり 4.0:雰囲気が好きなら
友人 4.0:話題作を語り合う
恋人 4.0:異性愛ロマンスあり
キッズ 4.0:不気味だけど
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ウェンズデー』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤):黒は好きだけど、事件の黒幕は誰?

若者を安っぽい施設に閉じ込め、夢破れた大人に指導させる…そんなサディズム溢れる解釈のしかたでナンシー・レーガン高校の校内の廊下を闊歩するひとりの少女。ウェンズデー・アダムスは今日も己の世界観は健在です。

ロッカーに閉じ込められた弟パクズリーを助けると、何かを感じます。最近はこうして過去や未来の出来事が幻視のように感じ取れるようになってきたのでした。ウェンズデーはイジメっ子のいるプールにピラニアを放ちます。復讐は快感です。

この一件でウェンズデーは退学となり、今はシックな黒い車の後部座席で父ゴメズと母モーティシアが仲睦まじくイチャイチャしているのを、無表情で見つめています。ラーチの運転で到着したのはネヴァーモア学園。この母の母校が今度の学校です。理解してくれる同胞に出会えると両親は太鼓判。

ラリッサ・ウィームス校長と面会し、特別に編入を認めてもらいました。配属されたのはオフィーリア寮です。そこでルームメイトとなったのは、イーニッド・シンクレア。熱烈に歓迎を受けますが、ウェンズデーはハグを避けます。

そのまま校内を案内してもらいます。ここには4大派閥がいて、牙、毛皮、石、ウロコ…です。牙は吸血鬼、毛皮は人狼、ウロコはセイレーン、石はゴルゴン。イーニッドは人狼でしたが、爪しか変身できない中途半端な状態でした。

ウェンズデーの母は娘の魂胆を見抜き、どんな脱走計画も通用しないと念を押します。そして密かに「ハンド」を監視役に忍び込ませます。

こうしてウェンズデーのネヴァーモア学園での生活が始まりました。

寮母で植物学を担当するマリリン・ソーンヒル先生とも顔を合わせ、翌日から授業開始です。フェンシングでは、学校の女王であるビアンカと対決することになり、激しい接戦のすえ、ウェンズデーはおでこを切られます。それを見ていた男子生徒のローワンは同情してくれました。

手当てがすみ、部屋を出て中庭を歩いていると、上から石像が落ちてきます。たまたま居合わせた男子生徒のゼイヴィアに助けられますが、この石像落下は意図的に狙ったものなのか…。

目ざといウェンズデーはハンドを見つけ、逆に自分に忠誠を誓わせて、この学園から脱出する計画を手伝わせます。

カウンセリングを受けないといけないので、町に診療所があるセラピストのキンボットのもとへ。しかし、ウェンズデーはそこを脱けだし、コーヒーショップで働く同年代のタイラーと知り合います。タイラーの父は保安官でした。

そこでこのちょうどよく外にいるタイラーに助けてもらおうと考え、遊園地に出かけた最中、上手く抜け出すことにします。けれども途中でローワンにぶつかり、禍々しい光景を幻視。ローワンは死ぬかもしれない…。

ウェンズデーは暗闇の森に走り去るローワンを追いかけますが、なぜかローワンはウェンズデーを念力で殺そうとしてきます。

そのとき、謎の怪物が現れ、ローワンをズタズタにします。

学園の周辺で起きている不可解な襲撃による殺人。ウェンズデーを描いたかのような謎の絵。さらにウェンズデーの父の過去の殺人疑惑まで…。

なんてこの学園は凄惨で闇深いのか。ウェンズデーは少しこの学園に興味を持つようになり始めました。これはもっと調べないと…。

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シーズン1:ゴスの覇権をとれる

ドラマ『ウェンズデー』はまた繰り返してしまいますけど、やはり主人公のウェンズデー・アダムスの造形が見事に映像化されており、これだけで大成功です。

“ジェナ・オルテガ”のキャスティングがハマっているのは前述したとおりで、もうこれ以上言うこともないのですが、キャラクター面もしっかり現代的にフィットしており、古さを感じさせません。

今作のウェンズデーはこれまでどおり不気味なもの好きで独自の世界観にのめり込んでいるのですが、皮肉屋で冷笑的な言動が連発する一方で、その芯にはフェミニズム的な“正しさ”がブレることなく存在します。なのでこのウェンズデーも昨今の定番であるZ世代に通用するキャラクター性に更新されています。

同時に優等生的なスタイルにとどまらず、非常にアバンギャルドでキッチュなアプローチのキャラクターでもあるので、そのアグレッシブさが新鮮ゆえに現代の若者層にもインパクトとして支持されやすいのだと思います。

「ゴス」「フリーク」の部類にラベルされる女子が主役でここまで突っ切った作品はなかなかなかったので、『ザ・クラフト:レガシー』の感想でも言及しましたが、このオカルト・ガールなカテゴリとしてはついに覇権をとれる作品が来たかという感じです。

というか最近はドラマ『サンドマン』といい、ゴス系の復活の時代が来ているんじゃないか…。

ドラマ『ウェンズデー』はそのへんの需要もきっちり押えていて、ウェンズデーまわりのサービスも豊富です。例えば、ファッションはやたらと盛沢山。養蜂家、猫耳、メイド、ドレス、スヌード、犬ダルメシアンヘルメットにいたるまで、バリエーション豊かに揃えています。第1話でチェロを弾きまくる姿もいいですよね。

そして最も印象的なシーンのひとつであるダンス。あの何とも言えない奇妙なダンスは、“ジェナ・オルテガ”自身が振付したらしく、天才かよ…と思いました。ダンスパートでは『キャリー』的な気持ちのいい血みどろ(血じゃないけど)もありつつ、ウェンズデーの魅惑がギュっと凝縮された名シーンでしたね。

ウェンズデーばかり書いちゃいましたけど、他のアダムス・ファミリーも最高です。“キャサリン・ゼタ=ジョーンズ”演じるモーティシアと、“ルイス・ガスマン”演じるゴメズ。とくに“ルイス・ガスマン”が良すぎる…。“フレッド・アーミセン”のフェスターおじさんも良かったですけどね。

もちろん本作のマスコットであるハンドも忘れてませんよ(電気マッサージの蘇生がシリアスなのにシュール)。私も家にひと手は欲しい…。

あとやっぱりソーンヒルを演じた“クリスティーナ・リッチ”は存在感ありましたね。1991年映画版『アダムス・ファミリー』でウェンズデーを演じた立場である以上、絶対にこのソーンヒルが黒幕(ローレル・ゲイツ)だとバレバレだったんですが、それ抜きにしても“クリスティーナ・リッチ”の素で漂わす危なそうなオーラは凄いですよ。ドラマ『イエロージャケッツ』も凄かったからな…。

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シーズン1:「Wenclair」狂騒事件

このウェンズデーひとりだけでじゅうぶんなパワーがあるのですが、ドラマ『ウェンズデー』はここにもうひとりを追加することで、ちょっとした騒ぎが起きました。

そのひとりとは、ウェンズデーのルームメイトになるイーニッド・シンクレアです。

イーニッドはウェンズデーと真逆のキャラで、鮮やかな色合いを好み、社交的で、表情豊か。人狼ですがカラフルな爪しかだせず、怖がり。

しかし、このウェンズデーとイーニッドが反発し合いながらも友情を深めていく、そんな姿にシッパー界隈は今年一番の燃料を投下されて大熱狂。「Wenclair」というシップ・ネームがSNSを駆け巡りました。

確かにこのイーニッド、こちらのキャラクター造形も完璧なんですよね。ウェンズデーと組み合わせることでこちらを悶えさせる魔力が限界突破してくる…。演じた“エマ・マイヤーズ”、これはいきなり美味しすぎる役をゲットしちゃいましたね(また「エマ」の名を持つ俳優が追加ですよ)。

一方で残念がる声もあって…。ウェンズデーとイーニッド…同性カップルとはなってないからです。イーニッドはエイジャックスというゴルゴン帽子男子に序盤から夢中で、作中では恋愛関係を深めます。ウェンズデーはミステリアスな謎を解くかたわら、いろいろな男子に囲まれるのですが、タイラーとキスまでして、そのタイラーが怪物「ハイド」だと発覚します。

まあ、ウェンズデーに関しては「殺人モンスターがファーストキスだった」というネタをやりたかっただけでしょうし、これはこれでウェンズデーらしいのですが(ウェンズデーはたぶん男か女かよりも不気味な存在に惹かれるセクシュアリティがありそうではある)、イーニッドについては「え?」と失望感を抱く人がいるのも無理ないです。

なにせあんな冒頭からレズビアン・フラッグのカラーリングのセーターとか着ているのに、クィアじゃないなんてむしろ変じゃないですか。クィア・コーディングの不発すぎますよ。そもそも「アダムス・ファミリー」はその設定からクィア界隈に昔から人気が高く(『ロッキー・ホラー・ショー』と同じ)、普通に考えてもクィアの設定にする方がしっくりきます。

別に同性愛を全く描かないわけでもなく、たしかユージーンの両親は女性カップルとして描写されていた気がするし…。

ゆえにドラマ『ウェンズデー』はガッカリという声も大きく、「PinkNews」も2022年にクィアネスに失望をもたらしたドラマシリーズとして、『ストレンジャー・シングス』や『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』と並べて本作を紹介しています。『ウェンズデー』製作者は『海賊になった貴族』の熱烈な支持を知らなかったんですかね…。

もし終盤でウェンズデーとイーニッドのカップリングが公式のカノンとして描かれていたら、これはもう新年パーティ並みのお祭り騒ぎが繰り広げられていただろうな…。惜しいことをしましたよ、『ウェンズデー』。最高の食材を2つ用意して、それを電子レンジで温めて別々に提供しただけなんですもん…。

しかし、どうですか。まだ絶望するには早いのではないのか。世の中にはシーズンが進むことでクィアの待ち望んだ最高のシッピングが公式ストーリー内で達成された作品だっていくつもあります(逆に序盤で最高のシップの打ち上げに成功しておきながら、最終シーズンで全部台無しにした作品もあるんだけど…)。

『ウェンズデー』も絶対にシーズン2は作られると思いますけど、ぜひ作り手はクィアなシッパー・ファンダムのその手がサムズアップできるようにしてほしいものです。私たち、理想のためならしつこくまとわりつくの得意ですから。

きっと先祖グッディ・アダムスとか、開祖クラックストーンとか、みんなどうでもよくて、このシッピングの行方に目がいってますよ。

『ウェンズデー』
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer 70% Audience 88%
IMDb
8.5 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
7.0

作品ポスター・画像 (C)Netflix

以上、『ウェンズデー』の感想でした。

Wednesday (2022) [Japanese Review] 『ウェンズデー』考察・評価レビュー