ザ・テキサス・レンジャーズ
Netflix映画『ザ・テキサス・レンジャーズ』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Highwaymen
製作国:アメリカ(2019年)
日本では劇場未公開:2019年にNetflixで配信
監督:ジョン・リー・ハンコック

あらすじ

1930年代のテキサス州。冷酷な凶悪強盗殺人の二人組ボニーとクライドが世の中を震撼させ、同時に大衆から熱狂的な支持を集めていた。一向に追い詰めることのできず、失態ばかりの行政。そんな中、二人の逮捕に駆り出された2人の元テキサス・レンジャーが、長年の感を頼りに悪党を追い詰める。

ネタバレなし感想

視点を変えてみた

映画などで悪役ポジションにいる登場人物のことを「ヒール」と呼んだりします。この場合、単なる悪者という意味ではなく、対立構造を存在させるために必然的に求められる「必要悪」としての価値を含んでいることも多々あります。また悪者はときに正義よりも人気を集めることもあるというのも事実です。だからそういう支持者もあってこその「ヒール」だったりします。まあ、それを意識しすぎて自分で自分のことを「私はヒールだ」と言いだしたら、それは“ただの自惚れのダサい奴”になりかねないですが。

とにかく反社会的な犯罪者が大人気になるというのは、フィクションだけでなく、リアルでも起きています。その超有名な事例が「ボニーとクライド」でした。

時は1930年代前半。アメリカ中西部で銀行強盗や殺人を繰り返したボニー・パーカーとクライド・バロウというカップルがいました。無論、やっていることは凶悪極まりないのですが、民衆からは熱狂的な支持を集めていました。その理由は、当時のアメリカは世界恐慌によって酷い失業率に見舞われ、社会に対する不満が溜まっていたことから、義賊として「ボニーとクライド」を称賛したとされています。また、もっとシンプルに二人が若い20代前半のカップルで、スタイリッシュでカッコいいからアイコンとして憧れやすかったというのもあるのでしょう(たぶんデブのオッサン二人組だったら人気でなかったでしょうし…)。

それだけ絶大な関心を集めた「ボニーとクライド」ですから、当然のように映画化の題材になったり、オマージュやパロディの元ネタになったりしてきました。その中でも誰もが名を挙げる最も有名な映画といえば1967年のアーサー・ペン監督の『俺たちに明日はない(原題:Bonnie and Clyde)』です。二人の出会いから最期までを描き切ったこの作品は、アメリカン・ニューシネマの先駆けとなり、映画史に残る名作となりました。ラストの壮絶な例のシーンは有名すぎるくらいですね。

その『俺たちに明日はない』と対をなす逆バージョンとも言える映画が2019年に誕生しました。それが本作『ザ・テキサス・レンジャーズ』です。

そのタイトルのとおり、本作は「ボニーとクライド」を追い詰めていくテキサス・レンジャーの視点で物語が進行していきます。そう、あの撃ちまくる側の方です。

なんでも2005年ごろから企画があったそうで、その時はポール・ニューマンとロバート・レッドフォードで映画化が進められていたとか。しかし、頓挫してしまい、忘れられたのかと思ったら、2017年にNetflixが映画化企画を再始動。Netflixの手にかかると相変わらずトントン拍子で製作が進むもので、あっさり完成しました。

監督は“ジョン・リー・ハンコック”。最近だと『ウォルト・ディズニーの約束』(2013年)や『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』(2016年)を手がけており、実話モノでの手堅い良作が多い印象。テキサス州出身なので、『ザ・テキサス・レンジャーズ』にもぴったりだと考えられたのかもしれませんけど。
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主役となる二人のテキサス・レンジャーを演じるのは、“ケビン・コスナー”“ウディ・ハレルソン”。世間ではすっかり若者が派手に活躍する映画が多いなか、このオッサン(若干もう初老に片足をつっこんでいる)二人のバディ映画なんてそうそう見れないです。オッサン好きにはたまらない至高の一作なのは間違いないでしょう。

もちろんただのオッサン愛好家向け映画ではなくて、ちゃんとボニーとクライドに呼応するようなテーマ性を抱えた二人が主人公となっているので、視点を変えた以上の面白い深みを見いだせる人もいると思います。

『俺たちに明日はない』を観ていなくても何も問題ないので、気軽にどうぞ。

オススメ度のチェック
ひとり◯(映画好きならとくに必見)
友人◯(映画好きなら盛り上がる)
恋人△(恋愛要素もほぼないけど)
キッズ△(残酷描写あり)

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

頑張れ、オッサンたち

何と言っても主人公となるオッサン二人…“ケビン・コスナー”演じるフランク・ハマーと、“ウディ・ハレルソン”演じるメイニー・ゴールト(吹替では“マニー”)の存在感。

完全にボニー&クライドの二人とは表裏の関係あるような真逆な状態。みんなのアイドルスターのようにキャーキャーともてはやされるボニー&クライドに対して、フランク&メイニーはもう渋いとか哀愁を通り越して“痛々しい”くらいで…。

二人とも引退済みの元テキサス・レンジャー。

フランクはセカンドキャリアを成功させ、それなりに裕福な暮らしをしていますが、イノシシ(躾済み)を相棒にしているあたりに残念さが滲み出ています。

メイニーの方は無職でぐうたらとしながら何もせずに過ごしているだけ。子どもからも大丈夫かというような目で見られているのが悲しいあたり。

そんな二人ですから誰も期待していないのですが、警察を総動員しても捕まえられないために藁にもすがる思いでやむを得ず知事も二人を呼び寄せることに承諾。とはいっても、月給130ドルの臨時雇用という、世知辛い待遇(現代の日本に通じますね)。

いざ二人がコンビで仕事を始めるも、二人が現役だった頃は馬に乗って道なき道を駆け回っていたわけで、今では慣れない車での移動と道路だらけの地図を“にらめっこ”するのに手いっぱい。ジェネレーション・ギャップを痛感します。

しかも、肝心の銃の腕前も老化には勝てず。全然マトにあたらない無様さに自分で自分をフォローする虚しさ(子どもにさえ、本当に伝説の人なの?と疑われる始末)。これなら大丈夫とサブマシンガンをぶっ放していましたが、え、じゃあ、例のあの最期のシーンは自分たちが銃がヘタクソだからああしたのか…と観客としては残念すぎる現実を突きつけられる感じでもう…。

自他とも認める“老いぼれ”オッサン・コンビがどうやってノリに乗っているボニー&クライドを追い詰めるのか。そんなカタルシスを期待させる映画の始まりです。

社会の変化を知っていくオッサンたち

で、捜査を開始するもやっぱり案の定、全然上手くいかない二人。

指紋採取など科学的な調査という自分たちとは全く違うスタイルで仕事するFBIを目にし、自分たちの時代遅れをさらに実感。ちなみにジョン・エドガー・フーヴァーの指揮のもと組織再編を行って今の「FBI」という名称になったのは1935年のことらしいので、作中でFBIがあんな風に登場するのは本作の脚色なのかもしれません(組織としては存在しましたけど)。フランク&メイニーとの対比としては上手く効いている存在でしたから、良いのですが。

そんなダメダメなフランク&メイニーも徐々に昔の勘を思い出していき、なかばヤケクソで管轄外の州外にもどんどん足を運び、情報を仕入れていきますが、決定打はなく…。

本作はカタルシスを期待していても一向に報われることはありません。中盤はボニー&クライドが支持される当時のアメリカ社会を眺めていくツアーみたいなものになっていきます。各地を転々とする過程でフランク&メイニーは自分たちでも驚くほどの貧困の拡大と社会への不満を肌で感じとります。

そして偶像崇拝のように信奉されるボニー&クライドの素の姿も。ルイジアナ州で発見した家を物色して見つけた小柄なサイズの衣類。二人はカリスマ性とかでもなんでもなく、ただの若造にすぎないのだと。そこをしっかり強調したいためなのか、本作ではボニー&クライドを演じる俳優がかなり童顔な感じになっていた気がします。ちなみに『俺たちに明日はない』の方だとボニー&クライドを演じたウォーレン・ベイティとフェイ・ダナウェイはいかにも典型的なルックスの良いハリウッドスター風です。つまり、本作の方が史実の二人に近いのでしょうね。

この描写の仕方は意図しているかどうかはわかりませんが、ものすごく現代にも重ねやすい構図です。社会への不満が暴力への快感として転換し、それに若者たちがのめり込んでいく。現在のヘイトなどの新反動主義にも通じるのではないでしょうか。

そういう意味では本作は『俺たちに明日はない』のようにボニー&クライドをカリスマ視せずに明らかに客観視した映画になっています。ラストの死体となった彼が暴走した大衆に雑に扱われる光景は痛烈でした。

ザ・テキサス・レンジャーズ

オッサンたちの抱える根深い罪

一方で、ではボニー&クライドに制裁を下すテキサス・レンジャーの方をヒーローに描いたのかというとそうでもないのが本作の大切な部分。

これに関してはまずテキサス・レンジャーの成り立ちを知っておく必要があります。そのへんに疎いと彼らを普通の警察として考えてしまいますからね。

テキサス・レンジャーはそもそも先住民に対する自警団として組織されたのが出発点にあります。もともとこの地方はメキシコの一部で「テハス」と呼ばれ、1835年に起きたテキサス革命(テキサス独立戦争)によって「テキサス共和国」として独立したという経緯があります。その流れでテキサス・レンジャーは国境警備にあたる騎兵部隊に発展し、やがては警察組織として形作られました。現在も州公安局の一部に組み込まれています。

だからその歴史上、先住民やメキシコ人を大勢殺めてきた存在でもあるのがテキサス・レンジャーです。

作中でもフランクたちが過去の話をします。「一晩だけで二人で50人以上殺した」「酔っぱらって寝ている無抵抗の奴らを撃った」「13歳の少年も撃った」「あの顔を忘れられない」…と。

つまり、ボニーとクライドよりも自分たちの方がよっぽど殺した数で言えば上で非道な行為に手を染めてきたんですね。だから「殺人鬼に憧れるなど言語道断だ」「綺麗事では済まされない」と発言するわけで、あれは一般常識の倫理観を語っているのではなく、身をもって知っている言葉なのです。

そのテキサス・レンジャー史を交えることで、本作は単なる二者の対立の枠にはおさまらない、善悪を越えた暴力の歴史を物語る映画に最終的になっていきます。カタルシスも当然ないわけです。なので考えようによってはものすごく酷い話です。暴力に染まった若者たちがさらに昔から暴力に染まった大人につぶされるのですから。オッサン映画とか気楽なこと、言っている場合じゃなかったですね…。

最後に映し出される立ち去る二人の車は、途中で運転手を自分たちで交代しますけど、あれは「もう誰にもこの暴力の負の連鎖を継がせるつもりはない」という拒否のイメージなんだと私は思いながら観ていました。

現実ではそうなっていないのが悲しいですが…。

ということで結構苦い後味を残す作品だった『ザ・テキサス・レンジャーズ』。『俺たちに明日はない』と対をなすほどのインパクトはないにせよ、考えさせるだけの効果のある銃弾は私の体には撃ち込まれました。

『ザ・テキサス・レンジャーズ』を観たけど、『俺たちに明日はない』を観たことがない人がいれば、ぜひそちらもこの流れで鑑賞すると良いですよ。

ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 51% Audience 85%
IMDb
7.2 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★

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↑『俺たちに明日はない』…ボニーとクライドの映画化として屈指の一作。邦題センスの素晴らしさも特筆すべきところでしょうか。
作品ポスター・画像 (C)Netflix