ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲
映画『ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲』(ジョニー・イングリッシュ3)の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Johnny English Strikes Again
製作国:イギリス(2018年)
日本公開日:2018年11月9日
監督:デヴィッド・カー

あらすじ

大規模なサイバー攻撃によってイギリスの諜報機関「MI7」の現役スパイたちの情報が漏洩してしまい、残された最後の頼みの綱として、隠居状態だったジョニー・イングリッシュが呼び出される。

ネタバレなし感想

彼が帰ってきた

かつてない激しい対立と憎悪に揺さぶられている世界。自分とは違う“他人”が隣に立つことを拒絶し、追い払おうとする人たちがいます。ネット上では、過去の負の歴史をなかったことにしようとする人もいるし、ポリコレやフェミニズムといった平等を求める活動になにかと敵意を向けたがる人もいます。

そんな荒んだ社会に疲れた時はどうすればいいでしょうか。

答え。インターネットのルーターの電源を切ってください。そして、スマホからSIMカードを抜き取りましょう。そうすればパソコンはただの“ワープロ”に、スマホはただの時刻やメモを確認する“板”になります。

それだけではダメです。そのまま映画館へ行くのです。チケット売り場に直行して「ジョニー・イングリッシュ」と告げてください。本作『ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲』がストレスでサンドバッグ状態だったあなたを待っています。

映画が始まれば、その映像に映るのは「一体いつの時代なんだ」とびっくりするような“変わらない男”の姿。旧時代的な男性観を外側に被っているように見えて実際の中身はジェンダーを吹き飛ばすかのような独自の個性を爆発。国家も宗教も主義も関係なし。とりあえず車に乗れればそれでいい。

この男こそ、現代社会という名の狂ったシステムを再起動するための、バグから生まれた救世主なのかもしれません。

ということで『ジョニー・イングリッシュ』シリーズの3作目にして最新作、『ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲』の話。まさかこの2018年に3作目が公開されるとは思いませんでした。

『Mr.ビーン』で有名なイギリスのコメディアン俳優“ローワン・アトキンソン”の代表的な作品。もとは1992年のクレジットカード(Barclaycard)のCMでキャラクターとして登場したものが発案のネタになっており、2003年に1作目が公開。2011年には続編である『ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬』が公開。そして2018年に3作目。つまり、10年に1回くらいのサイクルで私たちの前に出現するのが、このジョニー・イングリッシュなのです。

スパイ映画といえば『007』シリーズがありますが、最新作は監督降板のニュースがあったりと、なにかと苦戦中。ジャームズ・ボンドを演じる俳優はそ誰か問題で毎回揉めますが、それに加え。変化する時代に合わせて作品をどう展開すべきかという、いかにもイマドキな論点もこのクラシックなスパイ映画は直面しています。

しかし、『ジョニー・イングリッシュ』シリーズはそんなのお構いなし。“ローワン・アトキンソン”が好きなようにやる。それが全て。揺るぎません。

“ローワン・アトキンソン”もなんだかんだで63歳なのですが、全く衰えを感じない、いつもの笑いを全力で披露してくれます。この人といえば、こういう笑わせるキャラ以外、思い浮かびませんよね。インタビュー映像とかで真面目に話している姿を見ると、なんか違和感を感じますよ。

考察は必要ありません。ネタバレ? いや、そんなものも関係ないです。ジョニー・イングリッシュは死にません。求められるのはツッコミと笑顔になることだけ。

前作を観ておくこともないです。観てもいいですけど、お話のつながりはたいしてどうでもいいので。

鑑賞前のおすすめ PiCKUP!
↑『ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬』…シリーズ2作目。うっかりミスで一国の大統領の暗殺を防げなかったイングリッシュが戻ってくる話。そんな失敗でも職場復帰できる優しい世界…。

たまにはこんな映画もいいのではないでしょうか。

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

サイバー攻撃よりも危ない男

大規模なサイバー攻撃を受け、身元がバレるとマズいエージェントたちの情報が漏洩してしまったイギリスの諜報機関「MI7」。インターネットの危険性を初っ端から実感させる幕開けですが、よく考えると別の世界線のイギリス諜報機関も、普通に本名で活動しているスパイがいたりしたので、今さら何を騒いでいるんだという感じもしないでもない。

でも、とにかくヤバいということで、パニックになったMI7は引退していたエージェントを招集。そこに含まれていたのがいろいろと伝説を残しているエージェント「ジョニー・イングリッシュ」なのでした。

いや、他に適切な候補はいなかったのか。1作目の「イングリッシュ以外のエージェント全員爆殺事件」だってあったし、人材対策は講じているものだと思ったけど、そんなものはなかった。人手不足の中小企業みたい…。まあ、2作目の時点でMI7は「東芝」に買収されていたので、今は経営再建中で「サザエさん」ですら手放した東芝ですから、厳しいのかもしれない。そういうことにしておこう。

そして、案の定、自分一人しか頼れない状況をまたしても作り上げたイングリッシュは世界を救うべく、お気に入りの車のエンジンを全開に飛び出すのです。

これは毎回思うことですが、このシリーズ、世界を脅威に陥れようと暗躍する敵サイドと、イングリッシュのしでかすヘマが、脅威レベルとしては“どっこいどっこい”なため、全然緊迫感はないです。むしろ、今作のイングリッシュはサイバー攻撃以上に危険な存在な気がしてくる。この男がコンピュータ・ウィルスみたいなものです。

本作で敵となるITで成功をおさめたカリスマのヴォルタも、イングリッシュに付き合ってくれるだけ、すごくいい奴に見えてきます。こいつも案外バカなんじゃないか。

この世界はきっとたいして悪い奴はいないんですよ。インターネットを手中におさめても、世界中のユーザーのデスクトップ画像を猫の写真にするくらいの野望なんでしょう。

平和だなぁ、今作も。

ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲

対象年齢が低すぎるギャグ

この3作目の一応のテーマは、邦題のサブタイトル「アナログの逆襲」にもあるように、昨今では当たり前になったインターネット情報社会にイングリッシュがメスを入れる!ということなのでしょう。

ただ、イングリッシュは正確には別に「デジタルがわからない古いアナログ人間」ではないし、どっちかといえば「デジタルもアナログも通用しない非常識人間」なので、そのテーマのコンセプトは大きく根底から揺らいでいるような感じもしないでもない(あれ、デジャブ…)。

ともかくそんな小難しい社会風刺なんて忘れて、イングリッシュこと“ローワン・アトキンソン”の名演を楽しもうじゃないですか。

本作は予算がシリーズ最小規模だったそうですが、だいたい一人の俳優の顔芸とスラップスティック・ギャグだけでもたせているので、とくに支障はなし。

対象年齢が低すぎる、子どもでも笑えるギャグの連発です。序盤のウェイター潜入シーンでの、突然鳴り出したスマホにあたふたしてひたすら手でお手玉している場面に代表されるように、本当に全く“意味のない”笑いが逆に心地いいというか。こういうことで笑える余裕が人生、欲しくなったりするもので。

この“ローワン・アトキンソン”のシリーズは、スパイ映画でありながら性的なネタが全くないのも特徴で、今作でも美女オフィーリアに会っても「綺麗だな~(メロメロ)」という、クレヨンしんちゃん以下の煩悩しかないイングリッシュ。その夜は薬のせいもあってすっかりハイに、ダンスのキレも最高潮なのでした。ここの60代の踊りとしてはキレがありすぎるパリピ・シーンも愉快。ずっと踊っていればいいのに…。

“ローワン・アトキンソン”の真骨頂を見せるのが、VRのシーン。動く床が起動せず、外に出てしまったVRゴーグルを装備したイングリッシュが、街中を縦横無尽に暴れ、また元の場所になぜか帰ってきて、本人だけはご満悦。個人的にはせっかくのイマドキなVRを登場させたのですから、もっとこの後のシーンでもガンガン活用させてほしかったのですけど、ちょっともったいなかったですね。本番の適地潜入で「ここ、VRでやったところだ!」みたいになっていたシーンがもっと欲しいかな。

まあ、でも楽しいのでいっか。

また10年後に会いましょう

批評家だって語りようがないくらい、徹底してあえてチープさで攻めていくこのシリーズですが、しっかりキャストは揃えているのが謎。公式サイトでも「無駄に豪華すぎる」と書かれているとおり、本作もなかなかのメンバーです。

ヒロインは、2008年に007の『慰めの報酬』でボンドガールに抜擢された“オルガ・キュリレンコ”。最近だと『スターリンの葬送狂騒曲』に出演し、短い出番だとしてもミステリアスでインパクトを残す存在感なのですが、今作に至ってはイングリッシュと並ぶと「豚に真珠」としか言いようがなく…。よく出演してくれました。

イギリス首相の役には、大物女優“エマ・トンプソン”を用意。本人は聡明な人なのに、この作品に出ると、知能指数が3段階くらい減っているとしか思えないキャラに見えてくる…。どんな人間でも出演すれば頭が悪く見えてくる、これが『ジョニー・イングリッシュ』の力です。

一方の男性陣は、イングリッシュの仲間となって隣で活躍(?)するボフを演じた“ベン・ミラー”といい、悪事を画策するもタブレット手裏剣でノックダウンするヴォルタを演じた“ジェイク・レイシー”といい、なんか楽しそうなので、これはこれでよし。

ちなみに、“チャールズ・ダンス”、“マイケル・ガンボン”、“エドワード・フォックス”がシークレットゲストで出演していました。

監督は“デヴィッド・カー”という人で、『おーい、ミッチェル!はーい、ウェッブ!!』『フレッシュ・ミート』『セレブになりたくて ~サイモンの青春日記~』『Inside No.9』『真夏の夜の夢』とテレビ作品でキャリアを積んでいたようですが、私は全然観たことがなく、何も比較もできず…。まあ、でも誰が監督するかよりも、“ローワン・アトキンソン”が出ていることの方が大事な映画ですからね。これが映画監督デビュー作みたいですが、「ジョニー・イングリッシュの3作目でデビューしました」ってどんな気分なのだろうか。

ともあれ、気分を再起動するにはぴったりの映画。また、10年後に続編を作ってください。

最近の子どもたちにもぜひ「実写版クレヨンしんちゃん」みたいなもんだとテキトーな説明でこのシリーズを見せてあげてほしいですね。

ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 34% Audience 68%
IMDb
6.6 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 4/10 ★★★★

関連作品紹介

スパイを題材にしたコメディ作品

・『SPY スパイ』(2015年)
…メリッサ・マッカーシー主演作。スパイを支援するオペレーターの女性がスパイとして活躍してしまうドタバタ喜劇。ジェイソン・ステイサムが熱演する男スパイが最高にアホでGOOD。

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